
こんにちは。薬剤師のしぐです。
今回は、レゴラフェニブ〈スチバーガ〉についてまとめていきます。
「3週間飲んで、1週間休む」「手足症候群に注意」。まず覚えたいのは、この2つ。でも、実際に薬局で関わると、それだけでは足りないんですよね。
足の裏が痛くて買い物に行けない。食欲が落ちて、食後の薬をどう飲めばよいか迷っている。血圧は上がっているけれど、本人は元気そう。こうした小さな変化を、次の受診までに拾えるかどうかが大切になります。
さらに、2026年4月には「高アンモニア血症」が重大な副作用に追加されました。手足や血圧だけでなく、「いつもと違う眠気・意識の変化」にも目を向けたい薬です。
先に結論。レゴラフェニブ〈スチバーガ〉は、服用日程と食事を整え、治療開始早期から副作用を具体的に確認することが重要です。休薬や減量も含めて、安全に治療を続けられるよう支える。ここに、薬局が関われる余地があります。
※情報確認日:2026年10月12日。国内の電子添文・適正使用資料に基づく整理です。個別の服用量・休薬・再開は治療施設の指示に従ってください。
レゴラフェニブ〈スチバーガ〉とは?複数のキナーゼを阻害する飲み薬
レゴラフェニブ〈スチバーガ〉は、経口のマルチキナーゼ阻害薬です。スチバーガ錠40mgは、1錠にレゴラフェニブ40mgを含みます。
キナーゼは、細胞内の情報伝達に関わる酵素。レゴラフェニブ〈スチバーガ〉は、腫瘍の増殖だけでなく、腫瘍を支える血管新生や周囲の環境に関係する複数のキナーゼを阻害します。
たとえば、VEGFRは血管新生、KITやRAFなどは腫瘍の増殖に関わります。標的が1つではないので「マルチ」なんですね。
ただし、「いろいろな標的を抑えるから、どのがんにも使える」という意味ではありません。使用できるがん種や、それまでの治療歴を確認する必要があります。
どのがんに使う?国内の適応と前治療の確認
国内の適応は、次の3つです。
| 対象 | 薬局で押さえたいこと |
|---|---|
| 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌 | 一次・二次治療としての有効性・安全性は確立していない |
| がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍(GIST) | イマチニブ、スニチニブによる治療後が対象 |
| がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌 | 前治療歴と肝機能を含め、適応を慎重に判断する |
肝細胞癌の主要な承認根拠となったRESORCE試験は、ソラフェニブ治療後の患者さんを対象にしています。今の治療では前治療の選択肢も増えていますが、試験結果をどの治療歴にもそのまま当てはめないことが大切です。
処方箋だけでは、がん種や前治療が分からないこともあります。患者さんの治療説明書や病院からの情報を確認し、「何の治療で、今はどの段階なのか」を把握しておきたいですね。
なお、他の抗悪性腫瘍薬との併用について、国内電子添文では有効性・安全性は確立していないとされています。研究段階の併用と、国内の標準的な使い方を混同しないようにします。
飲み方は「3週間服用・1週間休薬」
標準用法は、1日1回160mgを食後に3週間服用し、その後1週間休薬。これを1サイクルとして繰り返します。
| 期間 | 標準的な服用日程 |
|---|---|
| 1~21日目 | 1日1回160mg(40mg錠を4錠)、食後 |
| 22~28日目 | 休薬 |
| 次のサイクル | 病院の指示と体調・検査結果を確認して開始 |
患者さんの状態によって減量されるため、実際の処方が3錠や2錠の場合もあります。薬局では「標準は4錠」という知識と、「この患者さんが今飲む錠数」を分けて確認します。
特に迷いやすいのが、途中で休薬したあとの日程です。「余った薬を全部飲んでから1週間休む」と自己判断すると、病院が予定したサイクルからずれることがあります。
開始日、服用終了日、休薬期間、次の受診日をカレンダーに書き込み、変更があれば更新する。地味ですが、この確認は本当に大事です。
飲み忘れたときは2回分をまとめない
飲み忘れに気づいたら1回分を服用します。ただし、次の服用時間が近い場合は1回分をとばします。2回分を一度に飲むことは避けてください。
飲み忘れを取り戻そうとして、翌日に多く飲んだり、休薬期間を短くしたりしないことも伝えます。吐いた場合の追加服用など、迷う場面は治療施設や薬局へ確認してください。

食後に飲む理由は?高脂肪食を避けるポイント
レゴラフェニブ〈スチバーガ〉は、食事の影響を受けます。空腹時の服用は避け、高脂肪食後の服用も避けることが望ましいとされています。メーカーの患者向け説明では、できるだけ高脂肪食を避け、食後30分以内に服用する案内です。
ここは、少しややこしいところです。
高脂肪食では、薬そのものの血中濃度が一律に下がるわけではありません。未変化体と、作用を持つ代謝物(M-2、M-5)で影響が異なり、高脂肪食後は低脂肪食後に比べて活性代謝物の曝露量が低下します。
つまり、「脂っこい食事なら薬がよく吸収されるはず」と考えてしまうと、説明を間違えやすいんですね。
患者さんには、難しい薬物動態の数字よりも、「空腹で飲まない」「服用前の食事は脂っこくしすぎない」と伝えるのが実用的です。揚げ物や脂の多い肉、バターやクリームを多く使った食事が、服用前の定番になっていないか確認します。
これは、食事全体を厳しく制限するという話ではありません。食欲が落ちている患者さんに「脂質は全部だめ」と説明すると、さらに食べられなくなることもあります。食事がほとんど取れない日は、服用方法も含めて病院に相談してもらいます。
低用量から増やすReDOS試験とは?標準用法と分けて考える
レゴラフェニブ〈スチバーガ〉では、副作用と治療継続のバランスを考えた投与方法が研究されています。代表的なのが、既治療の転移性大腸癌を対象としたReDOS試験です。
このランダム化第Ⅱ相試験では、初回サイクルを80mg/日から開始し、忍容性を確認しながら週ごとに120mg、160mgへ増量する方法と、160mg/日から開始する方法を比較しました。
3サイクル目を開始できた患者さんの割合は、漸増群43%、標準用量開始群26%。これは治療継続に関する主要評価項目の結果であり、「低用量のほうが生存期間を延ばすと証明された」という意味ではありません。
また、2019年の試験であり、今回初めて出た新しい承認情報でもありません。国内の標準用法が、一律に80mg開始へ変更されたわけではないことにも注意が必要です。
薬局で大切なのは、「2錠だから処方ミス」と決めつけず、開始量、増量予定、変更条件を確認すること。逆に、患者さん自身が「来週は3錠」と判断するのも避けたいところです。
増量するか、同じ用量で続けるか、休薬するか。その判断に役立つ情報を集めて病院へ伝えることが、薬局の役割になります。

手足症候群は「保湿していますか?」から一歩先へ
レゴラフェニブ〈スチバーガ〉で特に注意したいのが手足症候群です。電子添文の記載頻度は50.3%ですが、がん種や集計対象、用量などによって頻度は変わるため、個人の発症確率を示す数字ではありません。
手のひらや足の裏に赤み、痛み、水疱、角質の厚みなどが現れます。圧迫や摩擦がかかる部分に症状が出ることもあり、「少し痛いだけ」が歩行や家事の負担につながる場合があります。
治療前から、保湿と刺激を減らす準備を
手足の状態を治療開始前から確認し、保湿に加えて、圧迫・摩擦・熱いお湯などの刺激を減らします。靴がきつくないか、長時間歩く習慣がないか、強く握る作業が多くないか。生活に合わせて考えると、説明が具体的になります。
厚い角質やタコがある場合は医療者に相談し、無理に削ったり切ったりしないようにします。傷や強い炎症がある部分では、保湿剤の種類や塗り方も確認が必要です。
保湿剤を渡すだけで終わらせず、「どの時間に、どの部分へ塗るか」まで一緒に決めたいですね。
保湿剤の特徴は、コチラの記事でも整理しています。

痛みと、できなくなった動作を聞く
「手足は大丈夫ですか?」だけでは、患者さんが遠慮して「大丈夫」と答えてしまうことがあります。
| 聞きたいこと | 具体的な質問例 |
|---|---|
| 足の痛み | 歩くと痛みますか?買い物や通勤はいつも通りですか? |
| 手の痛み | ペットボトルを開けたり、箸を使ったりできますか? |
| 皮膚の変化 | 赤み、水疱、ひび割れ、硬くなった部分はありますか? |
| ケアの実施 | 保湿剤はどこに、いつ塗っていますか? |
| 経過 | いつから始まり、昨日と比べて悪化していますか? |
痛みで歩行や日常動作に支障がある場合は、次の受診まで我慢してもらうのではなく、早めに治療施設へ連絡します。保湿だけでは対応できない症状もあり、外用治療や休薬・減量の検討につなげる必要があります。
2026年の重要更新:高アンモニア血症に注意
2026年4月21日の使用上の注意改訂で、重大な副作用に高アンモニア血症が追加されました。肝機能異常を伴わずに発現する症例が認められたことが、改訂の背景です。
ここは「肝機能の検査が大丈夫だから安心」と言い切れない点が重要です。
家族から「今日は異常に眠っている」「会話がかみ合わない」「いつもと反応が違う」と相談された場合、単なる疲れと決めつけないようにします。意識障害がある場合、電子添文ではアンモニア値の測定を考慮するとされています。
眠気だけで高アンモニア血症と判断することはできませんが、急な意識の変化は速やかな医療評価が必要です。呼びかけへの反応が悪い、意識がはっきりしない、けいれんがある場合は、救急要請を含めて対応してください。
患者さん本人だけでなく、ご家族にも「いつもと違う様子」を連絡してよいと伝えておきたいですね。
肝機能・血圧・食事と水分もセットで確認する
肝機能障害:自覚症状と検査の両方が必要
重篤な肝機能障害は警告に記載されています。治療前・治療中の定期検査が重要で、体調がよさそうに見えても検査を省けるわけではありません。
強いだるさ、食欲低下、皮膚や白目の黄ばみ、尿の色の変化などを確認し、気になる変化があれば病院へ連絡します。だるさを「抗がん薬だから仕方ない」で終わらせないことが大切です。
高血圧:症状がなくても測定する
血圧上昇は、自覚症状だけでは分かりません。家庭で測定できる場合は記録を残し、治療施設からの連絡基準を共有します。
「高かったです」よりも、「いつ、どのくらいで、普段とどう違うか」が分かると、病院も判断しやすくなります。強い頭痛、視覚の異常、胸痛、意識の変化などがある場合は、数値の確認を待たず速やかに相談します。
下痢・食欲低下:回数だけでなく飲めているか
下痢では、普段の排便回数からどれくらい増えたか、夜間も続くか、血便や腹痛がないかを聞きます。あわせて水分摂取、尿量、ふらつき、体重の変化を確認します。
口内炎や味覚変化が「食べられない」理由になることもあります。食事量が落ちているのに「食後に飲んでください」だけでは、患者さんが困ってしまいますよね。
水分が取れない、尿が少ない、血便や強い腹痛がある場合は早めの医療評価が必要です。止痢薬の使い方は病院の指示を確認し、症状が強いときに薬だけで様子見を続けないようにします。
血圧・手足・食事と水分をまとめて確認する視点は、コチラとも共通します。ただし、がん種や併用薬、休薬基準はそれぞれ異なります。

減量・休薬は治療を続けるための調整
レゴラフェニブ〈スチバーガ〉には、手足症候群、肝機能検査値異常、高血圧などに応じた用量調節基準があります。減量して継続する場合は40mg単位で、電子添文上の下限は1日1回80mgです。
| 状況 | 薬局での確認・対応の要点 |
|---|---|
| 手足症候群 | 痛み・皮膚の状態・生活への影響・発現回数を共有する |
| 肝機能検査値異常 | AST・ALTだけでなく、ビリルビンや経過も確認する |
| 高血圧 | 血圧記録、症状、降圧薬の使用状況を共有する |
| その他の強い副作用 | 重症度と経過を確認し、治療施設の判断につなぐ |
具体的な休薬・再開条件は症状ごとに異なります。この表だけで用量を決めず、電子添文の基準と治療施設の指示を確認します。
患者さんが「薬を減らしたら効かなくなるのでは」と不安を感じることもあります。必要な調整をしながら治療を続けるための対応であると伝え、自己判断で増減しないことを確認します。
副作用の評価に使うCTCAEは、有害事象の重症度を共通の基準で表すものです。2026年10月時点ではv6.0が公開され、日本語訳JCOG版もあります。実務では治療施設やプロトコールの採用版を確認し、最新版の公開と、その施設で使う評価基準を分けて考えます。
併用薬の確認は、お薬手帳の外まで
相互作用では、CYP3A4誘導薬・阻害薬、ロスバスタチンなどのBCRP基質薬、イリノテカンが電子添文の併用注意に挙げられています。
「抗がん薬の濃度が変わる」だけでなく、併用薬の濃度が上がる場合もあるため、他科の処方や臨時の薬も確認します。市販薬、サプリメント、健康食品も含め、新しく始めたものがないか聞きたいところです。
また、創傷治癒を遅らせる可能性があるため、手術前には投与中断が必要です。手術や抜歯などの予定があれば事前に治療施設へ相談し、薬局だけで休薬日数を決めないようにします。

薬局フォローは、初回サイクルから具体的に
副作用が現れやすい治療開始早期は、次の来局まで待つだけでは変化を拾いにくい場合があります。
薬局としての実務案は、開始後1週間前後を最初の確認の目安とし、増量予定がある場合はその前後にも情報を集めることです。これは一律の義務や承認用法ではなく、病院の診療日程、患者さんの状態、連絡体制に合わせて調整します。
| 時期 | 確認すること |
|---|---|
| 初回投薬 | 開始日・錠数・休薬日、食事、手足の状態、血圧、連絡先 |
| 開始後早期 | 手足の痛み、血圧、下痢、食事と水分、だるさ、意識の変化 |
| 増量・減量の前後 | 指示された量、変更日、症状の経過、残薬 |
| 休薬期間 | 症状の改善、次サイクル開始の指示、受診・検査予定 |
病院への報告は、「副作用あり」だけでなく、いつ始まり、どの程度で、生活にどう影響しているかを伝えます。
たとえば、「服用開始6日目から足底痛。平地歩行で痛みがあり、買い物を控えている。水疱は確認できず。保湿は1日2回。現在の服用量は120mg、次週の増量指示は未確認」といった形です。これは報告例であり、その内容だけでGradeを確定するものではありません。
特定薬剤管理指導加算2の算定は、注射抗がん薬治療や施設基準などの要件確認が必要で、経口薬のフォローだけで自動的に対象になるわけではありません。制度の整理は、コチラをご覧ください。

算定の可否を確認することと、必要な副作用フォローを行うことは、両方大切にしたいですね。
まとめ:飲み方の説明から、生活の変化を拾うフォローへ
レゴラフェニブ〈スチバーガ〉のポイントは、3週間服用・1週間休薬、空腹時を避けて高脂肪食後にも注意すること、そして治療開始早期から副作用を確認することです。
手足症候群では「保湿しているか」だけでなく「歩けるか・手が使えるか」。血圧では「症状があるか」だけでなく測定記録。さらに2026年の改訂を踏まえ、急な眠気や意識の変化も確認します。
飲み薬だからこそ、病院を離れたあとの生活が見えにくい。でも、その生活の変化に気づけるのが、薬局の強みでもあります。
「薬を渡して終わり」から、次の診療につながる情報を届けるところまで。レゴラフェニブ〈スチバーガ〉は、その大切さを感じる薬の1つですね。
ではでは、しぐでしたっ。
FAQ
スチバーガは毎日ずっと飲む薬ですか?
標準用法では3週間服用し、1週間休薬します。途中で休薬した場合や減量した場合は、次の開始日も含めて治療施設の指示を確認します。
スチバーガは空腹時に飲めますか?
空腹時を避けて食後に服用します。高脂肪食後の服用も避けることが望ましく、食事がほとんど取れないときは治療施設へ相談してください。
2錠から始まる処方は間違いですか?
一律に間違いとはいえません。標準用量は160mgですが、患者さんの状態に応じた減量や、医師の判断による投与計画があります。処方意図と増量予定を確認します。
足の裏が痛いときは保湿だけでよいですか?
痛みや水疱、日常動作への支障があれば、早めに治療施設へ相談します。外用治療に加え、休薬・減量の検討が必要になる場合があります。
肝機能検査が正常なら、強い眠気は心配ありませんか?
肝機能異常を伴わない高アンモニア血症も報告されています。いつもと違う強い眠気、会話の異常、反応の低下は速やかに相談し、意識障害がある場合は救急対応が必要です。
飲み忘れた分は翌日に追加できますか?
2回分をまとめて飲んではいけません。気づいた時点で1回分を服用しますが、次の服用時間が近い場合は1回分をとばします。日程を自己判断で延長しないでください。


コメント
[…] […]