
こんばんは、薬剤師のしぐです。
「バイオシミラーに変えても、今までと同じように治療できる?」
「注射薬のジェネリックなら、薬局ですぐ変更できる?」
バイオシミラーは、先行バイオ医薬品と同等/同質の品質・安全性・有効性を持つことを確認して承認される薬です。治療の選択肢を広げ、薬剤費の軽減にもつながります。
ただし、薬局での変更手続き、適応、自己注射の操作まで、すべてがジェネリックと同じではありません。2026年度の制度改定と承認審査の最新の考え方も含め、実務で押さえたい点を整理します。

先に結論|バイオシミラーで押さえる5つのポイント
- 先行品と同等/同質であり、「安いから効果が弱い薬」ではありません。
- 薬局で、先行品から一般のジェネリックと同じ扱いで自由に変更することはできません。
- 製品ごとに適応・規格・デバイス・保管条件を確認します。
- 2026年度にバイオ後続品調剤体制加算50点が新設されました。インスリン製剤は対象外です。
- 有効性比較試験は一律に必須ではなく、十分な科学的根拠があれば省略できる場合があります。

バイオ医薬品・バイオシミラーとは?
バイオ医薬品は、遺伝子組換え技術や細胞培養技術などを使い、細胞がタンパク質を作る力を利用して製造する薬です。インスリンや抗体医薬品などが代表例です。
分子の構造が複雑で、製造工程も品質に関わります。そのため、先行品と一分子ずつ完全に同一であることではなく、品質・安全性・有効性が同等/同質であることを確認して開発するのが、バイオシミラーです。国内では「バイオ後続品」と呼ばれます。
「似ている」という言葉から不安を感じるかもしれませんが、単に外見や働きが似ているだけで承認されるわけではありません。品質特性や生物活性、薬物動態などを比較し、必要な評価を積み上げます。
https://shg11710blog.com/biosimilar-pharmacy/
ジェネリック医薬品との違い
| 比較項目 | 一般的なジェネリック医薬品 | バイオシミラー |
|---|---|---|
| 主な対象 | 化学合成で作る低分子医薬品 | タンパク質などのバイオ医薬品 |
| 先発・先行品との関係 | 同一の有効成分を同一量含む | 品質・安全性・有効性が同等/同質 |
| 評価の考え方 | 生物学的同等性試験などで治療学的同等性を確認 | 品質特性の詳細な比較を基礎に、必要な非臨床・臨床データを総合評価 |
| 有効性を比較する臨床試験 | 通常、改めて大規模に実施しない | 必要性を個別に判断。省略できる場合もある |
| 薬局での変更 | 処方箋の記載や変更調剤のルールに従う | 先行品からの切り替えは処方医との確認・連携が必要 |
| 切り替え時の確認 | 剤形、添加剤、飲みやすさなど | 適応、規格、投与方法、デバイス、保管条件など |
どちらも、承認に必要な根拠を確認した医薬品です。バイオシミラーだけを「品質が不十分な薬」と捉える必要はありません。
2026年の重要な更新|有効性比較試験は必ず必要?
以前の解説では「バイオシミラーは比較臨床試験が必要」と書かれることがありましたが、一律に断定するのは適切ではありません。
2026年5月12日のQ&Aでは、品質特性の比較試験や非臨床試験に加え、薬物動態(PK)や薬力学(PD)の試験で同等性/同質性を保証する十分なデータが得られれば、臨床的有効性を比較する試験を省略できることが改めて明確になりました。5月18日にはPMDAから、その必要性を判断するための検討事項も示されています。
これは、すべての臨床試験を不要にするという意味ではありません。得られたデータでどこまで説明できるかを、製品ごとに判断します。
また、科学的な説明が可能であれば、臨床試験を行っていない効能・効果へ結果を適用する「外挿」が認められる場合があります。ただし、先行品の適応が自動的にすべて付くわけではありません。調剤する製品自体の最新の電子添文で確認します。
2026年度改定|バイオ後続品調剤体制加算とは?
2026年度調剤報酬改定では、バイオ後続品を適切に調剤・説明できる薬局の体制を評価する加算が新設されました。
| 項目 | 押さえたい内容 |
|---|---|
| 名称 | バイオ後続品調剤体制加算 |
| 点数 | 50点 |
| 基本となる条件 | 施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た薬局で、対象のバイオ後続品を調剤すること |
| 対象外 | インスリン製剤 |
| 特別調剤基本料Aの薬局 | 所定点数の10%に相当する点数 |
| 体制面 | 適切な保管、患者への説明、調剤に必要な体制の整備 |
| 掲示 | 積極的な調剤を行っている旨を薬局の内側・外側の見えやすい場所に掲示 |
施設基準には、成分ごとのバイオ後続品の割合が80%以上となる成分数が、対象となる調剤実績のある成分数の60%以上であることが「望ましい」とされています。この表現を、一律の必須割合と読み替えないことも大切です。
算定対象や使用割合の計算に用いる品目は、厚生労働省の対象リストと最新通知で確認します。薬価改定で、先行品の価格がバイオ後続品以下となり、実績計算上の対象から外れる品目もあるためです。
インスリンのバイオシミラーも薬学的な説明・手技確認は大切ですが、この加算の対象とは分けて考えます。


薬局で先行品からバイオシミラーへ変更できる?
先行品が銘柄名で処方されている場合、一般のジェネリックと同じ感覚で、薬局の判断だけでバイオシミラーへ置き換えることはできません。
患者さんが希望する場合は、治療状況や切り替え理由を確認し、処方医に照会して方針を共有します。「変更不可の記載がないから自由に変更できる」と判断しないことが重要です。
また、バイオシミラーが処方されていても、別メーカーの製品への変更可否を自己判断しないようにします。適応、規格、投与方法、処方内容を確認し、不明点を解消してから調剤します。
切り替え前に確認したい項目
| 確認項目 | 実務で見るポイント |
|---|---|
| 処方内容 | 製品名、規格、投与量、間隔、切り替え開始日 |
| 適応 | 患者さんの疾患・年齢に対して承認されているか |
| デバイス | ペン・シリンジの種類、操作、投与完了の確認方法 |
| 保管 | 冷蔵条件、凍結防止、室温で扱える期間、遮光 |
| 残薬 | 旧製品をいつまで使うか、重複投与を防げるか |
| 費用 | 高額療養費や公費、調剤料等を含めた実際の負担 |
| 継続性 | 入荷見込み、次回分の確保、問い合わせ先 |

自己注射薬は「同じように使えるはず」で済ませない
薬の治療上の位置づけが同等でも、注射器の操作まで同一とは限りません。
キャップの外し方、注射針の取り付けの要否、空打ちの要否、注入後の保持時間、投与完了の表示や音などは製品によって異なります。以前の製品の手順を、そのまま当てはめないようにします。
薬局では、説明を聞いてもらうだけでなく、患者さんに手順を言葉で説明してもらったり、練習器で操作してもらったりすると、つまずく部分を確認しやすくなります。
視力、握力、手指の痛み、家族の支援の有無まで確認すると、生活の中で使える製品を考えやすくなります。用量や投与間隔は自己判断で変えず、処方された方法に従ってください。
バイオシミラーにすると、自己負担は必ず安くなる?
薬剤費の軽減は期待できますが、窓口で支払う額が必ず下がるとは限りません。
高額療養費制度で上限額に達している場合、公費負担がある場合などでは、薬価が下がっても実際の支払いが変わらないことがあります。調剤報酬の加算なども含めて比較が必要です。
さらに、薬価改定によって先行品とバイオ後続品の価格関係が変わる場合もあります。「必ず何割安い」と決めつけず、その時点の薬価と患者さんの制度利用状況から試算します。
費用を確認することは、患者さんが納得して治療を続けるための大切な支援です。経済的なメリットだけで切り替えを急がせず、不安や使いやすさも一緒に確認したいところです。
どんな領域で使われている?
バイオシミラーは、自己注射薬だけでなく、病院で投与する点滴薬にもあります。
| 主な領域 | バイオ後続品がある成分の例 |
|---|---|
| 糖尿病 | インスリングラルギン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト |
| 関節リウマチ・炎症性疾患など | エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ |
| がん治療など | トラスツズマブ、リツキシマブ、ベバシズマブ |
| 好中球減少症への対応など | フィルグラスチム |
| 骨粗しょう症 | テリパラチド |
上記は代表例です。同じ成分の製品でも承認されている効能・効果に違いがあり得るため、疾患名だけで代替可能と判断しません。

薬剤師の視点|切り替えた「次の1回」まで支える

バイオシミラーの説明で大切なのは、品質や価格を伝えた後、患者さんが実際に使えるところまで確認することです。
「説明は分かったけれど、帰宅するとどちらを使うか迷う」
「前のペンと音が違い、注射できたか不安になる」
こうした困りごとは、薬の評価だけでは見えてきません。
切り替え時には、旧製品の残数、新製品を使い始める日、次回投与日を一緒に整理します。切り替え後は、操作に迷わなかったか、注射部位の反応や体調の変化がなかったかを確認します。
体調の変化があれば、切り替えとの前後関係、実際の投与状況、併用薬などを整理して処方医に共有します。最初から「気のせい」と扱わないことが大切です。製品名や使用時期、必要に応じてロットを追える記録も、安全性情報の確認に役立ちます。
バイオシミラーの普及を、患者さんが治療を続けやすくなる機会につなげる。ここに、薬局が関わる意味があると考えます。
よくある質問
Q. バイオシミラーは効果が弱いのですか?
先行品と同等/同質の品質・安全性・有効性を持つことを確認して承認されます。価格が低いことを理由に、効果が弱いと考える必要はありません。
Q. 切り替えれば、副作用もなくなりますか?
副作用がなくなるわけではありません。先行品と同様、成分ごとの注意事項に沿って観察します。新しい症状が出た場合は医師・薬剤師へ相談してください。
Q. 薬局で希望すれば、その場で変更できますか?
処方内容と処方医の方針を確認します。先行品からの切り替えを、通常のジェネリックへの変更と同じ扱いで進めることはできません。
Q. 先行品と同じ病気に全部使えますか?
必ずしも同じではありません。製品ごとの最新の効能・効果、用法・用量を確認します。
Q. インスリンBSにも50点の加算が付くのですか?
バイオ後続品調剤体制加算では、インスリン製剤は対象外です。他の調剤報酬まで一切かからないという意味ではありません。
Q. 有効性比較試験を省略した製品は、評価が不十分ですか?
省略には科学的な根拠が必要です。品質の比較やPK・PDなどから同等性/同質性を十分に説明できるかを個別に判断します。「何も比較せず承認する」という意味ではありません。
まとめ|納得して選び、使い続けられるように
バイオシミラーは、先行品と同等/同質の品質・安全性・有効性を持つ治療の選択肢です。
2026年度の加算新設で、薬局の保管・説明・調剤体制も評価されるようになりました。一方で、適応やデバイス、変更手続き、自己負担は個別の確認が必要です。
薬局では「安くなる薬です」で説明を終えず、「どう使い、いつから切り替え、困ったときにどこへ相談するか」まで一緒に整理したいところです。
※2026年10月18日時点の確認内容を反映しています。個別製品の使用・切り替えは、最新の電子添文と処方医の指示に従ってください。


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