グルカゴン〈バクスミー点鼻〉が低血糖時の救急処置薬として販売承認取得!

薬剤師のしぐです。

これまでいくつか糖尿病治療薬についてまとめてきました。

そして、今回まとめるのが「低血糖治療薬」という、初の薬効分類の医薬品!

低血糖についてまとめた内容はコチラ

糖尿病の治療薬として利用されているインスリンや、インスリン関連のSU剤などによる副作用である低血糖。これまで低血糖発生時にはブドウ糖など糖分の摂取という対処が通常の対応でした。

今回新しく製造販売承認を取得したこの医薬品、グルカゴン〈バクスミー点鼻粉末剤〉。日本イーライリリーさんからの販売を予定してます。

新作用機序の医薬品となるため、まとめてみるよ。

グルカゴン〈バクスミー点鼻粉末剤〉低血糖治療薬で初の点鼻粉末剤

グルカゴン〈バクスミー点鼻粉末剤〉は、注射薬以外の低血糖治療薬としては初の選択肢である点鼻薬です。室温保管が可能で、持ち運びができる1回使い切りの製剤で、患者本人以外の家族や看護者が投与することが可能で、重症低血糖の救急処置を行うことができる。

患者本人の意識がなく、飲食不可であっても低血糖に対応できるところがこのバクスミー点鼻粉末剤の1番のウリになります。

同薬は鼻粘膜から吸収されるため、重症低血糖に陥り意識消失状態の患者に対しても使用可能。また、薬剤は点鼻容器に充填されており、調整作業が不要なため緊急時に迅速に使用できる

 グルカゴン〈バクスミー点鼻粉末剤〉の安全性は、成人1型糖尿病および2型糖尿病患者72例(それぞれ33例、39例)を対象とした国内第Ⅲ相2剤2期クロスオーバーランダム化比較試験で検証された。

同薬とグルカゴン注射薬1mg筋肉内投与を比較した結果、いずれの群においてもインスリン誘導による低血糖が30分以内に100%回復し、非劣性が示された。また、回復までの平均時間はそれぞれ12.0分、11.0分だった。

グルカゴン〈バクスミー点鼻粉末剤〉の特徴

低血糖は糖尿病治療で最もよく見られる注意すべき合併症の1つです。血糖値が異常に低くなることで自律神経症状のみならず中枢神経症状を認めることがあり、長時間低血糖状態に暴露されると障害を残す可能性もある。

重症低血糖は、第三者によるブドウ糖等又はグルカゴンの投与等を必要とする低血糖症状であり、重症低血糖の治療は緊急を要するものの、医療機関外での治療選択肢は介護者によるグルカゴン注射剤の投与に限定されている。

本剤は、グルカゴン注射剤の使用時の調整作業や手順に起因する介護者の救急処置の負担等を軽減することを目的とした即時使用が可能な製剤です。

低血糖に対するグルカゴンの作用機序

グルカゴンは肝臓のグルカゴン受容体に結合して活性化し、肝臓に蓄積されたグリコーゲンをグルコースに分解して血液中に放出させることにより血糖値を上昇させる。

グルカゴン〈バクスミー点鼻粉末剤〉の用法用量

通常、グルカゴンとして1回3mgを鼻腔内に投与する。

低血糖時に点鼻で処置するタイプは国内初とのこと。

グルカゴン〈バクスミー点鼻粉末剤〉の適応症、効能効果

低血糖時の救急処置

「低血糖時の救急処置」を適応として販売されます。

低血糖は、血糖値が正常の値を超えて急速に落下することで生じる緊急の状態で、冷や汗、動悸、意識障害、けいれん、手足の震えなどの症状があらわれます。

インスリンを含む薬物治療により低血糖になる可能性があり、とくにインスリン治療中の糖尿病患者では重症低血糖が起こることがあるため回復に他者の援助が必要となることが多くあります。

「バクスミー点鼻粉末剤は、重症低血糖のリスクを抱える成人および小児の糖尿病患者さんが、より安心して日々の生活を過ごせるように開発されました。患者さんの容態が急変した際に簡便かつ速やかに投与することができ、患者さんおよびご家族の負担やストレスを減らすことを期待しています」と、日本イーライリリーさんが言っております。

バクスミー点鼻粉末剤を用いる「重症低血糖」とは

ここで、バクスミー点鼻粉末剤を使用する「重症」の定義について確認してみたのですが、この重症の対象になるのは「血糖値でも症状でもなく、他者の援助を必要とする低血糖」のことだそうです。

自分でなんとか意識を保ち、糖分を摂取可能な状態では適応にならない。ということですね。

バクスミー点鼻粉末剤使用時の注意点

低血糖を生じた患者に本剤を投与しても、意識レベルの低下等の低血糖症状が改善しない場合は、直ちに、ブドウ糖等を静脈内投与するなど適切な処置を行うこと。

本剤の繰り返し投与によるグルコース濃度上昇作用の増大は認められていないため、本剤又は他のグルカゴン製剤の追加投与は行わないこと。なお、回復した場合でも糖質投与を行うことが望ましい。

バクスミー点鼻粉末剤使用時の重要な基本的注意

患者及びその看護者(家族等)が対処できるように、投与方法及び保管方法について十分指導すること。また、低血糖に関する注意についても十分徹底させること

この『看護者(家族等)』というのは、ほんとに家族の範囲に限られるそう。念のために学校関係者に預けておくことはできないらしく、エピペンのような使用はできないようです。

自分の家族に糖尿病患者さんがいたら、全家族に持っておいてほしいですね。緊急時、誰でも助けられるように。そういった処方も、あり得るらしいですよ。

点鼻後の副作用

副作用発現頻度は、本剤3mg経鼻投与(36例)では50.0%(18例)であった。

主な副作用は下記分であった。

  • 嘔吐30.6%(11例)
  • 頭痛22.2%(8例)
  • 悪心16.7%(6例)
  • 鼻部不快感8.3% (3例)

低血糖症状を起こしやすい血糖値

血糖値  症状   
70mg/dL以下あくび・空腹感・イライラ・吐き気
50〜30mg/dL冷や汗、手のふるえ、動悸、痙攣
20mg/dL以下低血糖昏睡、意識障害

普段の血糖値がかなり高い患者さんでは、急激な血糖値の低下に伴い上記の数値以上でも症状がでることがあるので注意が必要です。

バクスミー点鼻粉末剤の処方制限本数

新薬では必ず設けられるこの「処方本数制限」。原則、2週間分が処方の限度になります。

このバクスミー点鼻粉末剤はもちろん新薬です。、なんとこの緊急時にしか使用しない使用方法ということもあり、処方本数制限は認められていません。

ただ、下記【保険給付上の注意】は把握しておく必要があります。

バクスミー点鼻粉末剤:保険給付上の注意

本製剤を1回2瓶以上処方する場合は、複数必要と判断した理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

こちらは処方する医療機関でのお話で、調剤薬局ではこの確認の必要と、レセプト摘要への記載は必要ないんだそうです。

今回はこんな感じです。

まだまだ、メーカーさんに聞いて確認したいことがたくさんあるので「ルムジェブ注」と一緒に日本イーライリリーさんに確認してみます!

内服のGLP-1作動薬についても聞いてみたいこともあるし。

この新型コロナウイルスが収束したらリリーさんに確認しておきます。

ではではーしぐでしたっ

最後に紹介したいのがコチラ!

最近自分が気に入ってるレシピプラス糖尿病治療で用いられる注射剤特集

インスリンから GLP-1作動薬の各デバイスの使い方や、プレフィルド製剤の使い方までまとめてくれています。

薬についての説明に加えて、使用方法についても説明が必要になる注射製剤。

とてもわかりやすく、詳しくまとまってるのでとてもオススメです!!

コメント

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