抗がん剤による副作用:骨髄抑制を血液成分から理解する!確認する検査値

薬剤師のしぐです。

最近は薬局で主に受ける処方箋の内容や、門前病院との薬薬連携の推進状況等から、抗がん剤の勉強をすることが多くなってます。

国が調剤薬局に求める業務内容も、「町のかかりつけ薬局」「専門性を高めた高度薬学管理機能をもつ薬局」に二分化していくことが必須と考えられますからね。

自分の薬局は大学病院門前薬局となるため、会社からは専門性を高め高度薬学管理機能をもつ薬局を目指すように言われています。

そんなこんなで、会社も抗がん剤の勉強会等々、積極的にやってくれてます。

今回はそんな抗がん剤につきものの「骨髄抑制」について!

検査値の見方や、各血球成分の働きまで解説してみます。

骨髄抑制とは!発現機序

骨髄は骨の中心にある組織で、白血球・赤血球・血小板などの血液の成分をつくっています。骨髄にある細胞が、抗がん剤や放射線治療といったがん治療でダメージを受けると、これらの血液成分をつくり出す働きが正常に機能しなくなります。この副作用のことを骨髄抑制といいます。

がん細胞だけではなく、骨髄を含め、健康な細胞にもダメージを与えてしまうわけですね。

化学療法は、分裂・増殖の盛んながん細胞に働きかける作用が強く、同じように分裂・増殖の盛んな骨髄の細胞にも影響を及ぼしてしまいます。

骨髄抑制のGrade分類

表:骨髄抑制のグレード分類。Grade1は白血球3000未満、ヘモグロビン10グラムデシリットル未満、好中球1500未満、血小板75000未満。Grade2は白血球3000から2000、ヘモグロビン10から8グラムデシリットル、好中球1500から1000、血小板75000から50000。Grade
3は白血球2000から1000、ヘモグロビン8から6.5グラムデシリットル、好中球1000から500、血小板50000から25000。Grade4は白血球1000未満、ヘモグロビン6.5グラムデシリットル未満、好中球500未満、血小板25000未満。Grade5は全て死亡。
Grade1:軽度の有害事象で、治療を要しない。
Grade2:中等度の有害事象、最小限の治療、局所治療、非侵襲的治療を要す。
Grade3:高度の有害事象、入院や侵襲的治療、輸血、手術などを要す。
Grade4:生命を脅かす、または集中治療や緊急処置を要する事象。
Grade5:有害事象による死亡。

赤血球とは(RBC)

基準値

男性 4.35〜5.55 10の6乗/μL
    女性 3.86〜4.92 10の6乗/μL

赤血球は直径8〜10μmで、中央部がへこんだドーナツのような形をした細胞で核はありません。

核が抜けた直後の赤血球にはmRNAが残存していて、染色すると青く染まります。これを網状赤血球といい、幼弱な赤血球のことを指します。

この網状赤血球が多い時には体内外で出血や血管内で赤血球が崩壊(溶血)し、骨髄での造血が盛んなことが考えられます。

逆に網状赤血球が少ない時には、白血病や化学療法、放射線療法による骨髄抑制が起きていることを示唆します。

血球の中で1番数が多く、血液1リットルあたり約500万個と言われています。体重65キロの人でな、25兆個ほどの赤血球が全身にいきわたっていることになります。

赤血球の主な役割は酸素の運搬です。これは赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素)の働きによるものです。肺で酸素を受け取った摂家級は、それを全身の組織の供給します。また、組織が排出する 二酸化炭素を肺へと運搬します。

赤血球の寿命は約120日で、役目を終えた赤血球は脾臓で分解され、主成分であるヘモグロビンビリルビンに変換され、肝臓で処理された後に胆汁に排出されます。

白血球とは(WBC)

基準値:3.3〜8.6 10の3乗/μL

白血球には好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球5種類があり、それぞれ大きさが異なってきますが、総じて赤血球より大きいのが特徴です。

また、血管内皮細胞の隙間から血管外に遊走できることも白血球の特徴の1つです

一般的に、血液1μLあたり4000〜9500個の白血球が存在していると言われていますが、血管から組織に遊走した白血球の数を含めると、より多くの白血球が体の中存在することになります。

白血球の寿命はそれぞれ異なっていて、好中球は約1日、リンパ球のうち大型リンパ球は数十日、小型リンパ球は数年から20年におよぶものもあるんだとか。

また、血管から組織に遊走すると寿命が長くなることも知られています。

ちなみに、好中球、好酸球、好塩基球の3つを総称して顆粒球とも呼ばれています。

好中球とは(Neut)

基準値:40〜60 %

白血球全体の55%前後を占めるのが好中球です。

直径10〜15μm。中性の色素によく染まるので好中球と呼ばれています。

好中球の働きは、侵入してきた細菌や真菌を貧食、殺菌、分解、排除することです。細菌や真菌が組織に侵入すると真っ先に局所に遊走して水際で侵入を食い止めます。ただし、ウイルスに対しては無力です。

がん薬物療法でみられる重篤な副作用の1つである骨髄抑制。外からの細菌などと戦うためにある血液成分の白血球や好中球などが減少することで、体の免疫力が低下してしまい、時に発熱してしまいます。

この好中球減少に伴う発熱を「発熱性好中球減少症(FN)」と呼びます。

FNは、好中球が500/μL未満の状態で、かつ体温が37.5℃以上の発熱を生じた場合と定義されています。この発熱性好中球減少症になると、死に至ることもあるため、発症後は速やかな治療が必要となります。

抗がん剤治療患者で、「頓服発熱時」の用法で、アセトアミノフェンやシプロフロキサシン、レボフロキサシンなどの処方を見ることがありますが、これはFNに対して速やかに対応するための処方というわけですね。

好酸球とは(EOS)

基準値:2〜4 %

好酸球は白血球全体の5%前後を占め、直径は12〜16μm。酸性の色素によく染まることから好酸球と呼ばれています。

好酸球は主にアレルギーや炎症に関与しています。実際、喘息患者ではアレルゲンが気管支内に侵入すると好酸球がロイコトリエン(LT)や血小板活性化因子(PAF)などの化学物質(ケミカルメディエーター)を遊離し、その結果、気管支平滑筋の収縮や血管の透過性が亢進して気管支の内腔が狭くなり喘息発作が起こるのです。

蕁麻疹や花粉症などにも好酸球が関与します。また、好酸球には寄生虫を駆除する作用があり、回虫などの寄生虫がいると血液中の好酸球が増えることが知られています。

好塩基球とは(BASO)

基準値:0〜2 %

好塩基球は白血球全体の1%前後を占め、直径は10〜16μm。塩基性の色素に染まる大型の顆粒を内包しているのでそう呼ばれています。

顆粒の中には、ヒスタミン、ヘパリン、ヒアルロン酸などが含まれており、アレルギー反応の際にヒスタミンを放出して局所の痒みや腫れの原因となるとともにアナフィラキシーショックや蕁麻疹、気管支喘息などを誘引するといわれています。

その役割については不明な部分が多い、謎の白血球です。

リンパ球とは(LYMP)

基準値: 26〜40 %

免疫反応のうの主役を演じるのがリンパ球です。白血球全体の40%前後を占め、直径は6〜10μm。働きの違いからB細胞、T細胞(ヘルパーT細胞、キラーT細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞に分類されます。

免疫を大別すると、非自己(異物)と結合して異物を無力化あるいは死滅させる抗体(免疫グロブリン)を作る体液性免疫と、リンパ球自体が遺物と結合して異物を排除する細胞性免疫に分かれます。

この中で、体液性免疫に関してはB細胞が担当しています。

細胞性免疫に関してはキラーT細胞、NK細胞が担当しています。

B細胞やT細胞は過去に遭遇した異物を記憶し、主にその記憶をたどって異物を排除しますが、NK細胞は過去に遭遇したことのない初めての異物にもも速やかに排除する能力を有しています。

例えば、がん細胞や移植した他人の臓器などを排除するのは主にNK細胞です。

単球とは(MONO)

基準値:3〜6 %

単球は白血球全体の10%前後を占め、直径は12〜20μmと白血球の中でも最も大きい細胞です。1個の核を持っているため単球と呼ばれます。

単球として血液中にいる期間はおよそ数時間から数日間で、その顔は血管外に出てマクロファージは組織内を活発に遊走し、異物を見つけると貧食し細胞内にあるペルオキシダーゼなどの酵素によって殺菌します。

血小板とは(PLT)

基準値:15.8〜34.8 10の4乗/μL

血小板は約3μmと小さく、血液1μLあたり15〜40万個存在します。巨核球の細胞質がちぎれてできたもので核はありません。

かつて血小板は、血栓をつくる血球という意味で栓球と呼ばれていました。実際、イモリの血小板は核を持った細胞ですが、人の血小板には核がなく、細胞としての形態をなしてないので栓球から血小板という名称に変わったのです。

あたかも血液中を漂うゴミのように見えますが、出血というハプニングから私たちを守ってくれています。

骨髄で作られる血球成分の検査値についてはこんな感じ。

どの抗がん剤でもほとんど1番の頻度で発生してしまうこの骨髄抑制。

副作用の早期発見のためにも、この検査値は把握しておく必要があります。

自分が勉強した時の資料が少し古いので、また新しい情報が入ったら随時更新していきます。

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ではではーしぐでした。

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