薬剤師のしぐです。
みなさま、この通知はご覧になりましたでしょうか。
ラニチジン、ニザチジンに続き、まさかのメトホルミンでも発がん性物質が検出されたみたいですね、、、。
でもこれはあくまで「シンガポールでの話」ですからね。
そんなこんなで、今回の騒動の詳細を書いてくよ。
さらにさらに、メトホルミンが主役であるビグアナイド製剤についても振り返ってみます。
メトホルミン製剤から発がん性物質NDMA検出について
けっこういろんなところで目に、耳に入るようになってきましたね。
12/9(月)に厚生労働省から上記通達があり、全メトホルミン製剤製薬メーカーに指示が出ています。
分析の結果は12/27までに報告することになってますね。
念のために、日本の全メトホルミン製剤での調査・報告を通達したみたいですが、今のところほぼほぼ検出はされてないんだとか。
ちなみにこのシンガポールで検出された発がん性物質の「NDMA」って、少し前に騒ぎになったラニチジン・ニザチジンの時と同じ成分ですよね。
NDMAとは、「N-ニトロソジメチルアミン」のこと。一応ね。
ウチの薬局に説明に来てくれた某メーカーさんのメトホルミン製剤については、70年間毎日しっかり服用継続しても、発がんリスクの上昇は考えられないほど微量と言われています。
との説明。ふ、含まれてるんだ、、、と考えるか、そんなに継続して問題ないなら含まれてるうちにはいらないなと考えるかは、聞く人次第だろーなーとか。思っちゃいますよね。
ただ、以前はイロイロありはしたけれども、今や糖尿病治療ガイドラインでの第一選択薬に名を連ねるこのメトホルミン製剤。
そう簡単に自主回収やら、供給停止やらできない状況ですからねー。
特に問題ないとの報告がほぼほぼだと思うので、日本では普通に使われると思うのですが、患者さんからの質問は増えそうですよねー、、、。
まあ質問されても、「糖尿病に対する治療の必要性について改めて説明し、服用を中止しないように回答するように」とのお国様からの指示がありますので。
我々「保険薬剤師」の立場ではお国様には逆らえませんからね!
とりあえず、現状把握をしっかりできるように、薬局スタッフには逐一情報共有が必要だと思い、新しい情報が入るたびにみんなで話していかないと。
メトホルミン製剤について!まずは、その歴史
そんなこんなで、ここからはメトホルミンについて!まとめるよ。
復習を兼ねて、読んでみてね。
まずは紆余曲折のあったその歴史がこんな感じ。
1959年 | フランスで新規承認 |
1961年 | 日本でメトホルミンとして発売開始 |
1970年 | フェンホルミンによる乳酸アシドーシスが問題になる。 日本ではメトホルミンの適応・用法用量が変更になる。 |
1994年 | FDA(米国食品医薬品局)がメトホルミンを認可 |
1995年 | Multicenter Metformin Study 発表 |
1996年 | Biguanides and the Prevention of the Risk of Obesity-1 Study 発表 |
1998年 | UK Prospective Diabetes Study34 発表 |
2002年 | Diabetes Prevention Program 発表 |
2005年 | International Diabetes Federation が2型糖尿病治療ガイドライン発表 |
2006年 | Melbin Observational Research study 発表 |
2010年 | 維持量750〜1500mg/日、最高用量2250mg/日 のメトグルコ錠発売 |
2010年 | メトグルコで、10歳以上の用法用量追加 |
と、こんな感じ。
自分が薬剤師になりたての頃は、メトグルコってなかったんですよね。
メトホルミン製剤ではメルビン錠っていう錠剤がありました。
その後、最高用量が750mg/日→2250mg/日投与できる薬剤として、メトグルコ錠が発売になりました。ちなみにメルビン錠も、メトグルコ錠も同じ大日本住友さんが販売してるんですよね。
同じお薬の最高投与量を変更するより、新しい医薬品として販売したほうが都合がよかったのかな??
ジェネリックとか、特許とかの関係??てことなんですかね。
いろんな試験の詳細は下記にまとめたよ。
Multicenter Metformin Study とは
肥満を伴う 2 型糖尿病患者を対象に行われた大規模臨床研究。これにより、
メトホルミン単独療法、SU薬との併用療法で優れた血糖改善効果および安全性が示された。
Biguanides and the Prevention of the Risk of Obesity-1 Study とは
BIGPRO-1 Studyともいい、この大規模臨床研究により肥満者におけるインスリン抵抗性改善と糖尿病発症予防の可能性が示された。
UK Prospective Diabetes Study 34 とは
UKPDS34ともいい、この大規模臨床研究により肥満2型糖尿病患者での心血管合併症や、それに伴う死亡といった糖尿病関連イベント抑制効果が証明された。
Diabetes Prevention Program とは
DPPともいい、この大規模臨床研究により肥満耐糖能異常者、とくに比較的若く、肥満傾向の強い患者において、メトホルミンによる体重減少と顕性糖尿病への進展抑制が示された。
Melbin Observational Research study とは
MORE Studyともいい、日本で観察研究を行い、メトホルミンは日本人2型糖尿病治療において有用であり,血糖コントロールの十分な改善が得られていない症例に対しては,増量によってより良い血糖コントロールが得られることが示された。
メトホルミン〈メトグルコ錠〉について
メトホルミンの先発・GEの薬価
まずは自分が1番大好き、、、じゃなくて、大事だと考えるお金の話。
先発品のメトグルコ錠と、GEの比較です。
- 250mg:10.1円/錠 → GE:10.1円/錠
- 500mg:14.7円/錠 → GE:10.1円/錠
250mgは薬価差がないので、GEに変えても薬局にも、患者さんにもなんのメリットもないんですよね。
でも500mgは薬価差があるので患者さんの負担も少し減るし、薬局でもGE変更率の数値に含まれるので変える意義があるんです。ウチの薬局ではコロコロ商品名が変わると患者さんも訳が分からなくなるかなーと思って250mgも積極的にGE変更してってます。
薬局は在庫金額が増えちゃうからねー。
メトグルコのみに在庫を絞ってる薬局さんもあるでしょうね。
メトグルコ錠の効能効果
2型糖尿病(食事療法・運動療法で十分な効果が得られない場合に限る)
メトグルコ錠の用法用量
通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2〜3回に分割して食直前または食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日750mg〜1500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日の最大投与量は2250mgまでとする。
通常、10歳以上の小児にはメトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2〜3回に分割して食直前または食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常500〜1500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日の最大投与量は2000mgまでとする。
メトホルミン〈メトグルコ錠〉の作用機序
糖新生抑制
肝臓にて、乳酸やアミノ酸からグルコースが生成されるのを抑制します。
インスリン 抵抗性改善
インスリンの、脂肪細胞や骨格筋へグルコースを取り込むという働きを助けます。
糖吸収抑制
小腸からの食事に含まれる糖分の吸収を抑制します。
その他
上記以外にも、アミノ酸異化に関わる遺伝子発現抑制や、アデニル酸シクラーゼ活性抑制作用、グリセロリン酸脱水素酵素活性抑制や腸内細菌叢の変化などなど、多様な作用を持ってます。
メトホルミンによる血糖値改善効果
HbA1c改善効果
・750mg/日投与群:−0.7%
・1500mg/日投与群:−1.1%
空腹時血糖値改善効果
・750mg/日投与群:−18.3mg/dl
・1500mg/日投与群:−28.3mg/dl
上記の通り、メトホルミンは用量依存的な血糖値改善効果を示すのです!
あと、肥満・非肥満に関わらず同程度の血糖改善効果を示すのも特徴の1つ。
メトホルミンの副作用について
成人では、63.9%で副作用が認められ、主なものはこんな感じ。
- 下痢(40.9%)
- 悪心(15.2%)
- 食欲不振(12.3%)など
小児では、51.4%で副作用が認められ、主なものはこんな感じ。
- 下痢(29.7%)
- 悪心(18.9%)
- 腹痛(10.8%)など
ちなみに、成人における臨床試験では750mg/日〜2250mg/日の投与群全例で
低血糖症状発現は0だった!!とのこと。0%だよ。すごいよね。
低血糖について以前まとめてるので、みてみてね
乳酸アシドーシスとは
乳酸アシドーシスの発生機序
主な作用機序の1つに、肝臓における乳酸からの糖新生抑制があります。
この機序により、体内で乳酸が増加してしまい乳酸アシドーシスが起こってしまうっていうことですね。
乳酸アシドーシスの初期症状
初期症状はこちら。
- 悪心、嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 倦怠感、脱力
- 筋肉痛、痙攣
メトホルミンの初期副作用と区別が難しいとよく言われます。
メトホルミンによる乳酸アシドーシスの発生頻度
発生頻度は、10万人あたり5人前後。腎障害患者など、リスクの高い患者での発生がほとんどです。
乳酸アシドーシス発生時の対処
乳酸アシドーシス発生時は、直ちにビグアナイド系薬剤を中止し、血液透析による乳酸・ビグアナイド系薬剤の除去や輸液による強制的な利尿、炭酸水素ナトリウム投与によるアシドーシスの補正等の処置が行われます。
メトホルミンとヨード造影剤
これもよく聞くよねー。
メトホルミンは、ヨード造影剤との併用が禁忌です。
併用禁忌の理由
併用禁忌の理由が、ヨード造影剤投与により一過性に腎機能低下が起こるから。
腎機能低下によりメトホルミンの腎排泄が低下し、乳酸アシドーシス発生のリスクが高まるからですね。
休薬期間
ヨード造影剤を使用する検査前2〜5日程度服用中止し、検査後48時間後に再開する。
ヨード造影剤を用いる検査とは
いくつかあるのですが、よく聞く検査でいうと、尿路造影検査、CT検査、血管造影検査などがあります。
MRI検査は大丈夫ですね。
詳細まとめたことがあるので貼っておきます。
カンタンにまとめるぞっ
カンタンにまとめると、こんな感じの理由で使いやすいんだよね。
- 安価
- 長期の使用経験がある
- 体重増加を起こしにくい
- 心血管イベントを軽減できる
- 低血糖を起こしにくい
- 乳酸アシドーシス、ヨード造影剤には注意しよう!
今回はこんな感じですねーー
意外としっかりまとめられたかも!!
さらに、先発医薬品のメトグルコ錠でも自主回収がでてしまったので、まとめてあります。
他にもインスリン関係の内容でけっこう書いてるので、リンクはっときます。
新薬だったり、インスリン使用のプランだったり
ではではーーーしぐでしたっ
コメント
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