ロンサーフ錠が胃癌の適応追加。用法用量の注意点、副作用等。tas-102について

薬剤師のしぐです。

がん認定専門薬剤師取得を目指して日々学習しています。

前回まとめた、メインとなる抗がん剤に+αの薬剤として最強の働きをする抗がん剤ベバシズマブ(アバスチン)の内容を見てくれてる方が結構いるので、今回はロンサーフ錠についてまとめてみます。

このロンサーフ錠はアバスチンとも併用される、「メインとなる抗がん剤」です。

自分の薬局では徐々に使用患者が増えています。

ロンサーフ錠の有効成分

有効成分は「トリフルリジン(FTD)・チピラシル(TPI)」

各成分の作用機序

トリフルリジン(FTD)の作用機序

トリフルリジン(FTD)はDNAの複製時にチミジンの代わりにDNA鎖に取り込まれ、DNAの機能障害を引き起こして細胞増殖抑制・細胞死による抗腫瘍効果を発揮すると言われています。

チピラシル(TPI)の作用機序

チピラシル(TPI)はトリフルリジン(FTD)の肝臓での分解に関与するチミジンホスホリラーゼ(TP)を阻害し、FTDの血中濃度を維持しバイオアベイラリティを高めます。

上記2種類の薬剤が配合モル比「トリフルリジン:チピラシル=2:1」で配合された薬剤です。含有量の詳細はコチラ。

トリフルリジン(FTD)チピラシル(TPI)
ロンサーフ錠T1515mg7.065mg
ロンサーフ錠T2020mg9.42mg

抗がん剤の定番である5-FUであるフルオロピリミジンとは異なる作用機序を有していることも、特徴の1つです。

ロンサーフ錠の効能効果・適応症

  • 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
  • がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌

上記2種の適応を取得しています。

おもしろいのが、〈効能・効果に関連する使用上の注意〉にある下記1文。

  • 本剤の一次治療及び二次治療としての有効性及び安定性は確立していない。

一次治療・二次治療では用いない感じ。切り札感がある。

実際の現場でも、標準的な治療が困難な場合に限って用いることになってます。

ちなみに、米国での適応は下記の通り。

なんだかこっちの方が具体的で、わかりやすかったりしますよね。

フルオロピリミジン療法、オキサリプラチン療法、イリノテカン療法や抗VEGF抗体療法、および抗EGFR抗体療法を含む既存治療の施行後、またはこれらの治療法が適応とならない、遠隔転移を有する成人の結腸・直腸癌

ロンサーフ錠の用法用量

通常、成人には初回投与量(1回量)を体表面積に合わせて次の基準量とし(トリフルリジンとして約35mg/m2/回)、朝食後及び夕食後の1日2回、5日間連続経口投与したのち2日間休薬する。

これを2回繰り返したのち14日間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。
なお、患者の状態により適宜減量する。

体表面積(m2初回基準量
(トリフルリジン相当量)
1.07未満35mg/回(70mg/日)
1.07以上〜1.23未満40mg/回(80mg/日)
1.23以上〜1.38未満45mg/回(90mg/日)
1.38以上〜1.53未満50mg/回(100mg/日)
1.53以上〜1.69未満55mg/回(110mg/日)
1.69以上〜1.84未満60mg/回(120mg/日)
1.84以上〜1.99未満65mg/回(130mg/日)
1.99以上〜2.15未満70mg/回(140mg/日)
2.15以上75mg/回(150mg/日)

投与スケジュールはこの図がわかりやすいです。

ちなみに、しっかり食後に服用することが大切。

食後に服用することで、CmaxもAUCも低下してしまうのですが、安全性の観点から食後服用と規定しているとのことです。

添付文書はこちら

患者さんには「副作用の発現率が上がってしまうのでしっかり食後に服用するように」と指導する必要がありますね。

休薬基準

こちらも添付文書から。

各コース開始時、「投与開始基準」を満たさない場合は本剤を投与しない。また、「休薬基準」に該当する有害事象が発現した場合は本剤を休薬し、「投与再開基準」まで回復を待って投与を再開する。

 投与開始基準
投与再開基準
休薬基準
血色素量8.0g/dL以上7.0g/dL未満
好中球数1,500/mm3以上1,000/mm3未満
血小板数75,000/mm3以上50,000/mm3未満
総ビリルビン1.5mg/dL以下2.0mg/dLを超える
AST(GOT)、ALT(GPT)施設基準値上限の2.5倍(肝転移症例では5倍)以下施設基準値上限の2.5倍(肝転移症例では5倍)を超える
クレアチニン1.5mg/dL以下1.5mg/dLを超える
末梢神経障害Grade 2以下Grade 3以上
非血液毒性Grade 1以下
(脱毛、味覚異常、色素沈着、原疾患に伴う症状は除く)
Grade 3以上

(GradeはCTCAE v3.0に基づく。)

前コース(休薬期間を含む)中に、「減量基準」に該当する有害事象が発現した場合には、本剤の投与再開時において、コース単位で1日単位量として10mg/日単位で減量する。ただし、最低投与量は30mg/日までとする。

 減量基準
好中球数500/mm3未満
血小板数50,000/mm3未満

本剤50mg/日を投与する場合は、朝食後に20mgを、夕食後に30mgを投与する。

ロンサーフ錠の副作用

副作用の発現頻度80%以上と結構高いです。

骨髄抑制

好中球減少(52.9%)、貧血(31.8%)、白血球減少(27.4%)、血小板減少(18.1%)、リンパ球減少(4.8%)、発熱性好中球減少症(3.0%)等

この内容も見てみてね

注意が必要なのは、この骨髄抑制の好発時期

イリノテカンやオキサリプラチンを含む治療レジメンの投与歴がある患者さんは、骨髄抑制の好発時期を投与後2週間前後と理解してることが予想されます。

ロンサーフ錠による骨髄抑制は投与開始後3週〜4週で出現するため、この理解の違いに注意が必要です。

自覚症状もでにくいため、血液検査の頻回実施が推奨されています。

感染症

肺炎(0.6%)、敗血症(0.6%)等

感染症は2週目以降に発症しやすくなっています。発熱や倦怠感に注意が必要です。

その他

悪心(39.6%)、疲労(28.1%)、食欲減退(26.5%)、下痢(23.6%)、嘔吐(20.1%)等

消化器症状については、軽症であることも多くメトクロプラミドやドンペリドン、ロペラミドといった医薬品で対応し、症状コントロールすることが多いです。

消化器症状は1週〜2週でみられやすい副作用となります。

ロンサーフ錠の薬価

  • ロンサーフ錠T15:2522.7円/錠
  • ロンサーフ錠T20:3384.5円/錠

1錠あたりでみると、結構高額。でも用法用量が特殊で、実際に患者さんが服用するのは思ったほど高額にはなりません。

TAS-102とは

開発コード:TAS-102

結構珍しいんですが、このロンサーフ錠のことを開発コードの「TAS-102」と呼ぶことが多々あります。レジメンなんかでも、「TAS-102+Bmab」といった感じで。

Bmabは、最初に紹介した「アバスチン」のことですねー。

ロンサーフ錠まとめ

  • トリフルリジン、チピラシルの合剤
  • 特殊な用法、体表面積に合わせた用量で用法用量決定。食後服用。
  • 三次治療以降の結腸大腸なん、胃がんに適応をもつ
  • 骨髄抑制、消化器症状の副作用に注意
  • 開発コード:TAS-102

こんな感じですねー

レゴラフェニブ(スチバーガ)と使い分けがされるこのロンサーフ錠。

次はレゴラフェニブ(スチバーガ)についてまとめて比較していきます。

以前まとめたリムパーザについてはコチラ!

ザイティガとプレドニンの併用についてはコチラ!!

ではではーしぐでしたっ

オススメ書籍でも紹介してます、この月刊薬事さんの増刊号。

問題形式で各癌種ごとの標準治療や癌腫の詳細を学べます。

ぜひぜひ、1度は読んでいただきたい1冊になってますよ。

コメント

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