アトモキセチン錠3社でニトロソアミンを管理値以下で確認|自主回収ではない?【2026年】
こんばんは、薬剤師のしぐです。
2026年9月10日、東和薬品、ニプロ、第一三共エスファの3社が、アトモキセチン錠に含まれるニトロソアミン化合物の管理について医療関係者向けに案内しました。
対象となるのは、ADHD(注意欠如・多動症)の治療に使用されるアトモキセチン錠です。
「ニトロソアミンが確認された」と聞くと、
「自主回収になるの?」
「今持っている薬は飲んでも大丈夫?」
「すぐに中止した方がいいのでは?」
と不安になる患者さんやご家族もいると思います。
しかし、今回の発表では3社とも、N-ニトロソアトモキセチンが暫定管理値以下であることを確認した製品のみを出荷するとしています。
つまり、今回の発表は自主回収のお知らせではありません。
この記事では、過去に行われた自主回収との違い、ニトロソアミンのリスク、患者さんが自己判断で服用を中止してはいけない理由、薬局で確認したいポイントについて整理します。

2026年9月、アトモキセチン錠3社が情報提供
2026年9月10日、以下の3社がアトモキセチン錠のニトロソアミン化合物について情報提供しました。
| 製造販売業者 | 対象製品 | 対象規格 |
|---|---|---|
| 東和薬品 | アトモキセチン錠「トーワ」 | 5mg・10mg・25mg・40mg |
| ニプロ | アトモキセチン錠「ニプロ」 | 5mg・10mg・25mg・40mg |
| 第一三共エスファ | アトモキセチン錠「DSEP」 | 5mg・10mg・25mg・40mg |
PMDAにも、3社の情報提供文書が掲載されています。PMDA「医薬品におけるニトロソアミン類混入リスクへの対策」
3社の文書では、製剤中にN-ニトロソアトモキセチンが存在することを確認したため、厚生労働省と品質管理方針について協議したと説明されています。
その結果、海外当局のガイドラインを参考に設定した暫定管理値「5.583ppm」以下であることを確認した製品のみを出荷する方針となりました。
今回は自主回収ではない
ここが今回、最も誤解されやすいところです。
今回の発表
- N-ニトロソアトモキセチンの存在は確認された
- 暫定管理値は5.583ppm
- 全規格で暫定管理値以下であることを確認
- 管理値以下の製品のみを出荷
- 今回の案内に伴う新たな自主回収ではない
- 患者さんが自己判断で服用を中止する必要はない
「検出された」という言葉だけを見ると危険な印象を受けますが、医薬品では「存在するか」だけでなく、「どれくらい含まれているか」「どの基準で管理するか」が重要です。
今回の3社の発表は、検査せずにそのまま出荷するという話ではありません。
検査によって暫定管理値以下であることを確認した製品だけを出荷するという品質管理上の情報提供です。

過去にはアトモキセチン錠の自主回収が行われている
今回の発表を理解しにくくしている理由の一つが、過去にアトモキセチン製剤の自主回収が複数回行われていることです。
たとえば2025年10月には、
- アトモキセチン錠5mg・10mg「トーワ」
- アトモキセチン錠5mg・10mg「ニプロ」
- アトモキセチン錠5mg「DSEP」
について、一部ロットの自主回収が公表されました。
さらに2024年にも、アトモキセチン錠「ニプロ」「DSEP」「JG」や、アトモキセチンカプセル「サワイ」「日医工」などで自主回収が行われています。
つまり、整理すると次のようになります。
| 時期・対応 | 内容 |
|---|---|
| 過去の自主回収 | 管理上問題となる一部の規格・ロットを市場から回収 |
| 2026年9月の案内 | 暫定管理値以下であることを確認した製品のみ出荷 |
| 患者さんの対応 | 自己判断で中止せず、疑問があれば医師・薬剤師へ相談 |
過去に回収が行われた事実と、今回の製品管理に関する案内は分けて考える必要があります。

ニトロソアミンとは?
ニトロソアミン類は、アミン類と亜硝酸塩などが反応することで生成する可能性のある化合物です。
医薬品では、原薬の製造工程、添加物との反応、保管中の変化などによって生じる可能性があります。
一部のニトロソアミン類には、DNAを傷つけることによる発がん性の可能性が示唆されています。
ただし、重要なのは「検出されたら直ちに健康被害が生じる」という意味ではないことです。
発がんリスクは、
- 化合物の種類
- 摂取量
- 服用期間
- 1日の投与量
- 生涯にわたる累積曝露量
などを踏まえて評価されます。

N-ニトロソアトモキセチンの許容限度値と暫定管理値
N-ニトロソアトモキセチンの1日許容摂取量は、100ng/日とされています。
これは、原則として生涯にわたって毎日摂取することを想定して設定される、非常に長期的なリスク評価のための数値です。
今回の情報提供文書には、次の2つの値が登場します。
| 管理指標 | 数値 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 本来目指す許容限度値 | 0.83ppm | 1日許容摂取量100ng/日を基にした管理値 |
| 暫定管理値 | 5.583ppm | 供給継続と安全性を踏まえて設定された暫定的な出荷管理値 |
各社は現在、N-ニトロソアトモキセチンの含有量を低減した製剤の開発を進めています。
最終的には、0.83ppm以下であることを確認するための安定性試験も並行して実施するとしています。

暫定管理値が許容限度値より高くても大丈夫?
「0.83ppmが許容限度値なのに、なぜ5.583ppmで出荷できるの?」
ここは患者さんから質問される可能性があります。
1日許容摂取量100ng/日は、生涯70年間にわたって毎日摂取することを前提に設定された値です。
一方、アトモキセチンを生涯にわたって服用し続けるケースは、一般的には想定されにくいと考えられています。
そのため各社は、暫定管理値で管理された製品を使用した場合でも、生涯発がんリスクが著しく高まる可能性は低いと判断しています。ニプロ「ニトロソアミン化合物の管理について」
ただし、「リスクが完全にゼロ」という意味ではありません。
できる限りニトロソアミンを低減しながら、治療の中断や医薬品不足による不利益も避けるという考え方で管理されています。

アトモキセチンとは?
アトモキセチンは、ADHDの治療に使用される選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。
脳内のノルアドレナリンの働きを調整することで、
- 不注意
- 落ち着きのなさ
- 衝動性
- 集中しにくさ
などの症状を改善します。
中枢刺激薬とは異なるタイプのADHD治療薬で、小児だけでなく成人にも使用されます。
効果が安定するまでに時間がかかることがあり、一定期間継続して服用することが大切な薬です。
患者さんが自己判断で服用を中止してはいけない理由
「発がん性の可能性」と聞くと、今すぐ薬を中止したくなるかもしれません。
しかし、患者さん自身の判断だけで服用を中止することは推奨されていません。
急に中止すると、ADHDの症状が再び強くなり、
- 学校や仕事に集中できない
- 忘れ物やミスが増える
- 衝動性が強くなる
- 日常生活や人間関係へ影響する
といった不利益が生じる可能性があります。
今回の3社製品は、暫定管理値以下であることを確認した製品のみが出荷されます。
心配な場合も、まずは薬袋、お薬手帳、PTPシートなどでメーカー名を確認し、処方医または薬剤師へ相談してください。
患者さんから相談されたときの説明例
アトモキセチンからニトロソアミンという物質が確認されていますが、今回のお薬は国やメーカーが協議した暫定的な管理値以下であることを検査したうえで出荷されています。今回、新たに自主回収されるという案内ではありません。自己判断で中止すると治療に影響する可能性があるため、まずはそのまま服用し、不安な点は医師や薬剤師へ相談してください。
「絶対に安全です」と断定するのではなく、
- 今回は自主回収ではない
- 管理値以下を確認した製品だけが出荷される
- 長期的なリスクを踏まえた管理が行われている
- 自己判断で中止しない
という順番で説明すると伝わりやすいと思います。
薬局で確認したいポイント
薬局では、情報を見ただけで一律に返品や変更を行うのではなく、今回の案内と過去の回収情報を切り分けて確認する必要があります。
1.メーカーと規格を確認する
今回の対象は、
- アトモキセチン錠「トーワ」
- アトモキセチン錠「ニプロ」
- アトモキセチン錠「DSEP」
の5mg・10mg・25mg・40mgです。
2.今回の案内を「自主回収」と誤認しない
PMDAのページには、過去の自主回収文書と今回の品質管理文書が並んで掲載されています。
必ず文書の日付、メーカー、規格、ロット、発表内容を確認します。
3.在庫品を独自判断で廃棄・返品しない
今回の文書だけを理由に、薬局在庫を一律に廃棄したり返品したりする必要はありません。
卸やメーカーから個別の案内が届いた場合は、その内容に従います。
4.調剤時のメーカー変更を記録する
供給状況によってメーカーが変更になった場合は、
- 変更前後のメーカー
- 規格
- 錠数
- 患者さんへの説明
- 必要に応じた処方医への情報提供
を記録しておくと安心です。
5.患者さんの不安に対応する
薬袋やインターネットの記事だけを見て、突然服用を中止する患者さんが出ないよう注意が必要です。
特に小児では、本人だけでなく保護者にも分かりやすく説明します。

「管理値以下」と「検出されていない」は同じではない
今回の情報を伝える際には、「安全でした」「問題ありませんでした」だけで終わらせないことも大切です。
正確には、
- N-ニトロソアトモキセチンの存在は確認されている
- 現在は暫定管理値以下であることを確認した製品のみ出荷
- 各社はさらに含有量を低減した製剤を開発中
- 将来的には0.83ppm以下での管理を目指している
という状況です。
「検出されていない」ではなく、「検出されたうえで管理値以下に管理されている」と理解するのが適切です。
まとめ
2026年9月、東和薬品、ニプロ、第一三共エスファの3社が、アトモキセチン錠に含まれるN-ニトロソアトモキセチンの管理について情報提供しました。
今回押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
- 対象は「トーワ」「ニプロ」「DSEP」の5mg・10mg・25mg・40mg
- N-ニトロソアトモキセチンの存在を確認
- 暫定管理値は5.583ppm
- 暫定管理値以下を確認した製品のみ出荷
- 今回の発表に伴う新たな自主回収ではない
- 各社は0.83ppm以下を目指した製剤開発を継続
- 患者さんは自己判断で服用を中止しない
- 薬局では過去の自主回収情報と今回の案内を混同しない
ニトロソアミンという言葉だけが独り歩きすると、患者さんの不安や治療中断につながる可能性があります。
「検出されたかどうか」だけではなく、「どのような基準で管理され、現在どのような製品が出荷されているか」まで確認して伝えることが、薬局薬剤師の重要な役割になりそうです。
※本記事は2026年9月14日時点の公表情報を基に作成しています。回収・供給状況は今後更新される可能性があります。
FAQ
Q1.今回、アトモキセチン錠は自主回収されるのですか?
今回の2026年9月の案内は、新たな自主回収のお知らせではありません。3社は暫定管理値以下であることを確認した製品のみを出荷するとしています。
Q2.手元のアトモキセチン錠は飲み続けても大丈夫ですか?
自己判断で中止せず、処方どおり服用してください。不安がある場合は、薬袋やPTPシートでメーカーを確認し、処方医または薬剤師へ相談しましょう。
Q3.ニトロソアミンが検出されたら、がんになるのですか?
検出されたことだけで、直ちにがんになるという意味ではありません。リスクは含有量、1日の摂取量、服用期間などを基に評価されます。
Q4.なぜ過去には自主回収されたのですか?
過去には、一部の規格やロットで当時の管理基準を上回ることなどを理由に自主回収が行われました。今回の案内では、暫定管理値以下を確認した製品のみが出荷されます。
Q5.薬局で別のメーカーに変更できますか?
処方内容、変更調剤の可否、在庫状況などによって異なります。希望する場合は薬剤師へ相談してください。患者さん自身で服用を中止したり、別の薬へ変更したりすることはできません。


コメント