N-ニトロソベタヒスチンを薬剤師目線でやさしく整理
最近、医薬品の安全性情報でちょこちょこ見かける言葉。
ニトロソアミン化合物。
名前からして、ちょっとこわい。
なんか強そう。
そして、患者さんに説明するには少しむずかしい。
今回のPDFでは、めまい治療薬として使われるメリスロン錠6mg/12mgで、ニトロソアミン化合物の一種であるN-ニトロソベタヒスチンが検出された、という内容が報告されています。
ただ、最初にいちばん大事なことを言っておくと、
現時点で、メリスロンを自己判断で中止する必要はありません。
ここはかなり大事です。
「発がん性が……」
「不純物が……」
みたいな言葉だけが先に広がると、不安だけが大きくなってしまいます。
でも、今回の話は、
“すぐ危ないから飲むのをやめて!”という話ではありません。

ニトロソアミン化合物って、ざっくり何?
ニトロソアミン化合物は、ざっくり言うと、
長期間、一定量以上を摂取した場合に、発がんリスクが問題になる可能性がある不純物
です。
医薬品だけでなく、食品や水、環境中でも話題になることがあります。
ポイントは、
「ある/ない」だけで判断するものではない
ということ。
大事なのは、
どのくらいの量が入っていたのか
どのくらいの期間飲む薬なのか
実際に患者さんがどれくらい飲んでいるのか
このあたりを合わせて考えることです。
つまり、
検出された=即アウト
ではありません。
ここ、患者さんにもすごく伝えたいところです。
今回の主役は「N-ニトロソベタヒスチン」
今回、メリスロン錠で検出されたのは、
N-ニトロソベタヒスチンという物質です。
メリスロンの成分はベタヒスチンメシル酸塩。
今回のPDFでは、このベタヒスチンに関連するニトロソアミン化合物として、N-ニトロソベタヒスチンが検出されたとされています。
ちなみに今回の対象は、
メリスロン錠6mg
メリスロン錠12mg
です。
PDFには、6mgのPTP100錠・PTP1000錠・ボトル500錠、12mgのPTP100錠・PTP1000錠が対象として記載されています。
「発がん性」って聞くと不安になるけど…
ニトロソアミン類は、体内で代謝されたあと、DNAに影響を与える可能性があるとされています。
なので、発がん性が問題になることがあります。
……と聞くと、やっぱりドキッとしますよね。
でもここで大事なのが、
リスクは“量”と“期間”で考える
ということです。
たとえば、今回の資料では、メリスロン錠の平均服用日数はレセプトデータから年間19日程度とされています。
つまり、毎日ずーっと何十年も飲み続ける薬としてだけ評価するのではなく、
実際の使われ方も踏まえてリスクを見ているわけです。
そのうえで、PDFでは、現在の服用レベルでは患者さんの生涯発がんリスクを著しく高める可能性はほとんどない、と判断されています。
「一日許容摂取量を超えた」ってどういうこと?
今回の資料では、N-ニトロソベタヒスチンが、設定された一日許容摂取量を超えていたことが書かれています。
ここだけ読むと、
「え、超えてるの?大丈夫なの?」
ってなります。
でも、この“一日許容摂取量”は、かなり安全側に見積もって設定されるものです。
なので、
超えた=すぐ健康被害が出る
ではありません。
もちろん、超えないように管理することは大事です。
だからこそ、メーカーは限値を下回る製剤へ切り替えて供給を続ける、という対応を取っています。
ここは、
「問題があるから放置」ではなく、「見つかったから管理を強化する」
というイメージが近いです。
じゃあ、患者さんはどうしたらいい?
結論はシンプルです。
自己判断でメリスロンを中止しないこと。
これに尽きます。
メリスロンは、めまい症状に使われる薬です。
不安だからと急にやめてしまうと、
めまいが悪化したり、ふらつきが出たり、日常生活に影響が出ることもあります。
特に高齢の方では、めまいによる転倒もこわいところ。
なので、患者さんには、
「心配な場合は、自己判断でやめずに、医師や薬剤師に相談してください」
と伝えるのがよさそうです。

薬局で聞かれたら、どう説明する?
患者さんから、
「この薬、発がん性の物質が入ってたって本当ですか?」
と聞かれたら、こんな感じで説明するとよさそうです。
今回、メリスロン錠でニトロソアミン化合物という不純物が確認されたというお知らせが出ています。
ただ、現在の評価では、すぐに服用を中止したり、薬を変更したりする必要はないとされています。
心配な場合は、自己判断で中止せず、主治医や薬剤師に相談しながら考えていきましょう。
このくらいの温度感がちょうどいいと思います。
不安をあおりすぎない。
でも、軽く流しすぎない。
このバランス、大事ですね。
薬剤師として押さえておきたいこと
今回の話で薬剤師として押さえておきたいのは、次の4つです。
1つ目。
メリスロン錠6mg/12mgで、N-ニトロソベタヒスチンが検出された。
2つ目。
ニトロソアミン化合物は、長期間・一定量以上の摂取で発がんリスクが問題になる可能性がある。
3つ目。
今回の評価では、現時点で処方中止や変更は不要とされている。
4つ目。
今後は、一日許容摂取量に基づく限値を下回る製剤へ切り替えて供給される予定。
このあたりを押さえておけば、患者さんから聞かれたときにも落ち着いて対応できそうです。
まとめ
今回のメリスロン錠の件は、
N-ニトロソベタヒスチンというニトロソアミン化合物が検出された
という安全性情報です。
ただし、今回の情報で大事なのは、
検出された=すぐ危険、ではない
現時点で処方中止や変更は不要
自己判断で服用をやめない
心配なら医師・薬剤師に相談
今後は限値を下回る製剤へ切り替え予定
ということ。
医薬品の安全性情報って、言葉だけ見るとどうしても不安になります。
でも本来は、
患者さんを不安にさせるための情報ではなく、薬をより安全に使うための情報
なんですよね。
だからこそ、薬剤師としては、こわがらせすぎず、でもちゃんと伝える。
メリスロンを飲んでいる患者さんにも、
「今すぐやめなきゃ」ではなく、
「心配なら一緒に確認しましょう」くらいの温度感で届けたいところです。

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