ツカチニブ【ツカイザ錠】ってどんな薬?内服薬としてのHER2阻害薬の立ち位置や、服用上のポイント

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HER2陽性乳がんに登場した「飲むHER2阻害薬」を整理してみた

こんばんは。薬剤師のしぐです。

HER2陽性乳がんの治療薬って、ここ数年で本当に選択肢が増えてきました。

トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1、T-DXd……。

「HER2を狙う薬」とひとことで言っても、抗体薬、抗体薬物複合体、そしてチロシンキナーゼ阻害薬など、かなり幅広くなっています。

そんな中で登場したのが、ツカチニブ。

商品名は 【ツカイザ錠】です。

今回は、添付文書の内容もふまえながら、

「ツカチニブって、どんな薬?」

「薬剤師としてどこを見ればいい?」

「患者さんには何を伝える?」

というところを、かんたんに整理していきます。

ツカチニブ【ツカイザ錠】は「HER2を標的とする内服薬」

ツカチニブは、分類としては

抗悪性腫瘍剤/HER2チロシンキナーゼ阻害剤

です。

HER2は、がん細胞の増殖に関わる受容体のひとつ。

ツカチニブはこのHER2のキナーゼ活性を阻害することで、腫瘍の増殖を抑えると考えられています。添付文書でも、作用機序として「HER2のキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制する」と記載されています。

つまり、ざっくり言うと、

HER2陽性乳がんに対して使う、飲み薬タイプのHER2阻害薬

です。

この「飲み薬」というところが、薬局的にはかなりポイントです。

点滴だけで完結する治療ではなく、患者さんが自宅で内服する薬なので、服薬状況、副作用、併用薬、飲み間違いなど、保険薬局でも関われるポイントが多い薬だと思います。

適応は「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌」

ツカイザ®の効能・効果は、

化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌

です。

ここで大事なのは、初回治療からいきなり使う薬ではないということです。

添付文書では、臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴などをよく理解したうえで、国内外の最新ガイドライン等を参考に適応患者を選択するよう記載されています。

また、術前・術後薬物療法における有効性・安全性は確立していないとも明記されています。

なので、イメージとしては、

進行・再発HER2陽性乳がんで、すでに複数のHER2治療を経験している患者さんに使う選択肢

という位置づけです。

ツカチニブは単独では使わない。基本は3剤併用

ツカチニブは単独投与ではなく、

トラスツズマブ+カペシタビン+ツカチニブ

の3剤併用で使います。

添付文書上も、用法・用量は

トラスツズマブ及びカペシタビンとの併用において、通常、成人にはツカチニブとして1回300mgを1日2回経口投与

となっています。

そして、用法・用量に関連する注意として、

本剤単独投与での有効性及び安全性は確立していない

と記載されています。

ここ、薬局で患者さんに説明するときは、

「このお薬は、点滴のHER2治療薬と、カペシタビンという飲み薬と組み合わせて使うお薬です」

くらいに伝えるとわかりやすいかなと思います。

飲み方:ツカチニブは1回300mgを1日2回

通常量は、

ツカチニブ 1回300mg、1日2回

です。

製剤は、

・ツカイザ錠50mg

・ツカイザ錠150mg

の2規格があります。

通常量なら、150mg錠を使って

1回2錠、1日2回

というイメージです。

ちなみにカペシタビンは、体表面積に応じた用量で、

朝食後・夕食後30分以内に1日2回、14日間連日投与、その後7日間休薬

というスケジュールになります。

つまり患者さん側から見ると、

ツカチニブは毎日継続

カペシタビンは14日飲んで7日休み

というスケジュールの違いが出てきます。

ここは服薬指導でかなり大事です。

同じ「飲み薬」でも、

ツカチニブとカペシタビンで飲み方のリズムが違う

ので、カレンダーや服薬管理表があると安心です。

個人的には、新薬の処方日数制限がある間は、処方医も、患者さんも、薬局薬剤師ですらわけがわからなくなりそうで、不安しかない印象。

減量ステップも押さえておきたい

ツカチニブは、副作用が出た場合に休薬・減量・中止を検討します。

添付文書では減量レベルとして、

とされています。

薬局で見るときは、

「150mg錠だけだったのが50mg錠も追加になった」

「用量が250mgになっている」

みたいな処方変化が起こりえます。

なので、ツカイザで50mg錠が出てきたときは、

あ、減量調整かもしれない

とアンテナを立てたいところです。

副作用で特に見たいのは「下痢」「肝機能」「ILD」「心機能」

ツカチニブで薬剤師が特に押さえたい副作用は、このあたりです。

1. 下痢

ツカチニブでかなり重要なのが下痢です。

添付文書では、重大な副作用として

重度の下痢:10.6%

が記載されています。

また、その他の副作用としての下痢は

72.6%

とかなり高頻度です。

ここはもう、服薬指導で絶対に外せません。

患者さんには、

「下痢はよく出る副作用です。回数が増える、水のような便が続く、食事や水分がとれない、ふらつく、尿が少ないなどがあれば、早めに病院へ連絡してください」

と伝えたいところです。

特にカペシタビンも併用されるので、下痢が出たときに

ツカチニブ由来なのか、カペシタビン由来なのか

を薬局だけで断定するのは難しいです。

だからこそ、薬局では原因探しよりも、

重症化させない

脱水に持ち込まない

早めに主治医へつなぐ

この3つが大事だと思います。

2. 肝機能障害

ツカチニブでは、肝機能障害にも注意が必要です。

重大な副作用として、

高ビリルビン血症:21.9%

AST増加:20.0%

ALT増加:20.0%

などを伴う肝機能障害が記載されています。

添付文書でも、投与開始前および投与中は定期的に肝機能検査を行うよう記載されています。

薬局でできることとしては、

「だるさが強い」

「食欲が落ちる」

「皮膚や白目が黄色い」

「尿の色が濃い」

「吐き気が続く」

こういった症状がないか確認すること。

もちろん検査値は病院での確認が中心ですが、患者さんの訴えから拾えるサインもあります。

3. 間質性肺疾患

頻度不明ですが、添付文書では間質性肺疾患も重大な副作用として記載されています。

重要な基本的注意では、初期症状として

呼吸困難、咳嗽、発熱

などの確認、胸部画像検査の実施、症状が出た場合には速やかに医療機関を受診するよう説明することが記載されています。

ここは患者さんにもわかりやすく、

「息切れ、から咳、発熱が続くときは、風邪と思い込まずに連絡してください」

と伝えたいところです。

がん治療中の患者さんは、感染症、肺転移、薬剤性肺障害など、いろいろな要因が絡みます。

だからこそ、薬局で「ちょっと様子見でいいですよ」と軽く言わないことが大事です。

4. LVEF低下

HER2標的治療薬で忘れてはいけないのが心機能です。

ツカチニブでも、左室駆出率、つまりLVEF低下があらわれることがあるため、投与開始前および投与中に心エコーなどの心機能検査を行うことが記載されています。

患者さんには、

「息切れが強い」

「むくみが出てきた」

「動くと苦しい」

「急に体重が増えた」

といった心不全っぽい症状を確認しておくとよさそうです。

カペシタビン併用なので、手足症候群もかなり重要

ツカチニブそのものの話をしていると忘れがちですが、実際にはカペシタビンと併用します。

そして添付文書上でも、その他の副作用として

手足症候群:64.9%

が記載されています。

これはカペシタビン併用の影響もかなり意識したいところです。

患者さんには、

「手のひらや足の裏が赤くなる」

「ヒリヒリする」

「皮がむける」

「痛くて歩きにくい」

「物を持ちにくい」

などがあれば、早めに相談してもらうよう伝えたいです。

保湿剤の使用、刺激を避けること、熱いお風呂や強い摩擦を避けることなども、実務的には大事ですね。

クレアチニン上昇は“腎機能悪化”と決めつけない

個人的に、添付文書を見ていて薬剤師的にかなり大事だと思ったのがここです。

ツカチニブは、

糸球体機能に影響を及ぼさないものの、クレアチニンの腎尿細管輸送を阻害し、血清クレアチニンを増加させることがある

と記載されています。

つまり、血清Crが上がったからといって、単純に

「腎機能が悪化した!」

とは言い切れないケースがあります。

もちろん、脱水や腎障害の可能性もあるので軽視はできません。

ただ、ツカチニブでは見かけ上のクレアチニン上昇が起こりうる、というのは知っておきたいポイントです。

特に下痢がある患者さんでは、脱水による腎機能悪化も重なる可能性があります。

なので、Cr上昇を見たら、

ツカチニブによる輸送阻害の影響か

下痢・脱水による本当の腎機能悪化か

他の薬剤の影響か

を丁寧に考える必要があります。

相互作用はかなり重要。CYP3A、CYP2C8、P-gpを意識

ツカチニブは、相互作用チェックがかなり大事な薬です。

添付文書では、ツカチニブは

主にCYP2C8で代謝

CYP3Aでも一部代謝

CYP3Aを強く阻害

CYP2C8とP-gpも阻害

すると記載されています。

ここ、薬局的にはめちゃくちゃ大事です。

ツカチニブは、

自分が影響を受ける薬

でもあり、

相手の薬に影響を与える薬

でもあります。

併用禁忌が多い。薬局での確認必須

添付文書上、併用禁忌にはかなり多くの薬剤があります。

たとえば、

リバーロキサバン

アゼルニジピン

エプレレノン

シンバスタチン

スボレキサント

トリアゾラム

ルラシドン

イバブラジン

チカグレロル

イブルチニブ

などが含まれています。

薬局的に特に注意したいのは、

抗凝固薬:リバーロキサバン

降圧薬:アゼルニジピン含有製剤

MRA:エプレレノン、フィネレノン

睡眠薬:スボレキサント、トリアゾラム、ダリドレキサントなど

脂質異常症薬:シンバスタチン

あたりです。よく見る薬ばっかり。

とくにリバーロキサバンは、循環器・整形外科・内科などで広く使われます。

ツカチニブ側がCYP3AやP-gpに影響するため、リバーロキサバンの血中濃度上昇、出血リスク増大が問題になります。

「抗がん薬だから病院で全部見ているはず」ではなく、

保険薬局でも併用薬を確認する価値はかなり大きいと思います。

併用注意も実務的に大事

併用注意では、

強いCYP3A誘導薬:フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン、リファブチン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウなど

強いCYP3A阻害薬:イトラコナゾール、ケトコナゾール、クラリスロマイシンなど

CYP2C8阻害薬:クロピドグレル、デフェラシロクス、アビラテロンなど

CYP3A基質薬:フェンタニル、タクロリムスなど

P-gp基質薬:ジゴキシン、エベロリムス、シロリムスなど

が挙げられています。

特に外来で現実的に気になるのは、

クラリスロマイシン

クロピドグレル

ジゴキシン

フェンタニル

タクロリムス

セイヨウオトギリソウ含有食品・サプリ

あたりでしょうか。

また、強いCYP2C8阻害薬と併用する場合は、ツカチニブの開始用量を

1回100mg、1日2回

とすることが記載されています。

通常の300mg BIDから見るとかなり下がるので、ここも処方を見るうえで重要です。

PPIはどうなの?オメプラゾールとの相互作用データあり

HER2-TKIというと、薬によっては胃酸分泌抑制薬との相互作用が気になることがあります。

ツカチニブでは、添付文書にオメプラゾールとの相互作用データが記載されています。

健康成人でオメプラゾール併用時、ツカチニブのAUCinfとCmaxの比はそれぞれ

0.88、0.87

とされています。

大きく曝露が低下するタイプの薬ではなさそうですが、薬局ではPPIよりもむしろ、CYP3A・CYP2C8・P-gpの相互作用を優先して見たい印象です。

食事の影響:高脂肪食でAUCは上がる

ツカチニブ300mgを高脂肪食後に単回投与したとき、空腹時と比べて

AUCinfは1.49倍

Cmaxは1.08倍

と記載されています。

Cmaxは大きく変わらないものの、AUCは上がっています。

実際の服用タイミングについては処方医の指示に従う必要がありますが、患者さんには少なくとも、

自己判断で飲み方を変えない

飲み忘れたときの対応は事前に確認しておく

カペシタビンの食後30分以内と混同しない

あたりを伝えたいです。

臨床試験:HER2CLIMB試験でPFS延長

ツカチニブの根拠として重要なのが、海外第Ⅱ相試験の HER2CLIMB試験 です。

対象は、タキサン系抗悪性腫瘍薬、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1などの治療歴があるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん患者です。

試験では、

ツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン

プラセボ+トラスツズマブ+カペシタビン

が比較されました。

主要評価項目である無増悪生存期間、PFSの中央値は、

ツカチニブ群:7.8か月

対照群:5.6か月

ハザード比は 0.54 で、統計学的に有意な延長が認められています。

つまり、既治療のHER2陽性進行・再発乳がんに対して、

トラスツズマブ+カペシタビンにツカチニブを上乗せする意義が示された

ということです。

日本人データ:HER2CLIMB-03試験

国際共同第Ⅱ相試験のHER2CLIMB-03試験では、日本人53例を含む患者が対象となっています。

日本人集団48例における独立中央判定の奏効率は、

35.4%

でした。

副作用は日本人集団53例中53例、つまり

100%

に認められています。

主な副作用は、

手足症候群:66.0%

下痢:58.5%

悪心:43.4%

好中球数減少:34.0%

白血球数減少:30.2%

ALT増加:30.2%

口内炎:28.3%

AST増加:24.5%

血中ビリルビン増加:22.6%

倦怠感:22.6%

などでした。

ここを見ると、薬局でのフォローはやっぱり、

下痢

手足症候群

口内炎

倦怠感

肝機能関連の症状

骨髄抑制っぽい感染兆候

このあたりが中心になりそうです。

薬剤師としてのチェックポイント

ツカチニブを見たときに、薬局で確認したいことを整理するとこんな感じです。

服薬スケジュール

ツカチニブは1日2回継続。

カペシタビンは14日投与・7日休薬。

この違いを患者さんが理解できているか確認します。

下痢

回数、水様便、持続期間、食事・水分摂取、尿量、ふらつき。

「我慢しすぎない」説明が大事です。

手足症候群

手のひら・足の裏の赤み、痛み、皮むけ、歩行への影響。

保湿や刺激回避も確認します。

口内炎・悪心・食欲低下

食事量が落ちていないか。

脱水や体重減少につながっていないか。

肝機能障害のサイン

黄疸、尿の色、強い倦怠感、吐き気、食欲不振。

呼吸器症状

息切れ、咳、発熱。

間質性肺疾患を意識して、風邪扱いで流さない。

心機能

息切れ、むくみ、急な体重増加、動悸。

併用薬

リバーロキサバン、アゼルニジピン、エプレレノン、シンバスタチン、睡眠薬、クラリスロマイシン、クロピドグレル、ジゴキシン、フェンタニル、タクロリムス、セイヨウオトギリソウなど。

患者さんへの説明例

実際に説明するなら、こんな感じが自然かなと思います。

このお薬は、HER2というがん細胞の増殖に関わる目印を狙う飲み薬です。

点滴のお薬やカペシタビンという飲み薬と組み合わせて使います。

下痢、手足の赤みや痛み、口内炎、吐き気、だるさなどが出ることがあります。

特に下痢が続くと脱水になることがあるので、回数が増えたり、水のような便が続いたり、水分がとれないときは早めに病院へ連絡してください。

また、息切れ、咳、発熱が続くときも、風邪と思い込まずに相談してください。

併用してはいけない薬もあるので、他の病院や薬局で薬をもらうときは、ツカイザを飲んでいることを必ず伝えてください。

このくらいの温度感が、患者さんには伝わりやすいと思います。

ツカチニブ【ツカイザ】まとめ

ツカチニブ【ツカイザ錠】は、

HER2陽性の手術不能又は再発乳がんに使う、経口HER2チロシンキナーゼ阻害薬です。

基本は、

ツカチニブ+トラスツズマブ+カペシタビン

の3剤併用。

薬剤師目線では、ポイントはかなりはっきりしています。

下痢を早く拾う

手足症候群を見逃さない

肝機能障害を意識する

ILDっぽい咳・息切れ・発熱を軽く見ない

心機能低下の症状を確認する

併用禁忌・併用注意をしっかり見る

特にこの薬は、飲み薬でありながら、相互作用のインパクトが大きいです。

「抗がん薬は病院で管理しているから大丈夫」ではなく、

保険薬局だからこそ拾える併用薬や生活上の変化がある

という薬だと思います。

ツカチニブは、HER2陽性乳がん治療の選択肢を広げる薬。

だからこそ、薬剤師としては、効果を支えるために副作用と相互作用を丁寧に見ていきたいですね。

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