薬剤師のしぐです。
先日、高カリウム血症治療薬である「カリメート」と「アーガメイト」の違いについてまとめました。
「アーガメイトゼリー」の名称変更がこちら
さらに、少し前に、高カリウム血症に対するGI療法についてもまとめていました。
カリウムって、いろんな検査値の中でも結構命に直結する検査値だったりしますからね。
腎障害・肝障害時にはより注意が必要になる検査値です。
そんな高カリウム血症に新薬が発売になります。
ロケルマ懸濁用散です。
このロケルマ懸濁用散の製薬メーカーは、大手のアストラゼネカさん。
ネキシウムやシムビコートといった各疾患での治療薬の中でも実績を残してきている、安心の製薬メーカーさんです。
ネキシウム・シムビコートに関してで書いたことのある内容がコチラ
新薬「ロケルマ懸濁用散」について、基本的な概要から既存の治療薬との違い、薬価などまとめます。
ロケルマ懸濁用散の有効成分
ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物
初めて聞く成分ですね。
高カリウム血症治療薬として、1970年発売のポリスチレンスルホン酸Na〈ケイキサレート〉、1975年発売のポリスチレンスルホン酸Ca〈カリメート〉に次ぐ製剤。
下記記載が紹介されています。
カリウム吸着薬は、1971年にポリスチレンスルホン酸ナトリウム〈ケイキサレート〉、75年にポリスチレンスルホン酸カルシウム〈カリメート〉が発売された。
ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物〈ロケルマ〉は45年ぶりとなる2020年5月に発売された新有効成分のカリウム吸着薬である。
実に45年ぶりの新成分!!
ではでは、概要から説明していきます。
ロケルマ懸濁用散の適応・効能効果
高カリウム血症
おおー。シンプルイズザベスト。
ちなみに、カリメートとケイキサレートの適応・効能効果は「急性及び慢性腎不全に伴う高カリウム血症」です。
なのでロケルマ懸濁用散の方が適応の範囲は広くなりますね〜
ロケルマ懸濁用散の用法用量
通常、成人には、開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間経口投与する。なお、血清カリウム値や患者の状態に応じて、最長3日間まで経口投与できる。
以後は、1回5gを水で懸濁して1日1回経口投与する。なお、血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1日1回15gまでとする。
血液透析施行中の場合には、通常、1回5gを水で懸濁して非透析日に1日1回経口投与する。なお、最大透析間隔後の透析前の血清カリウム値や患者の状態に応じて適宜増減するが、最高用量は1日1回15gまでとする。
ロケルマ懸濁用散の用法用量における注意点
本剤投与開始3日目に1回10gを1日3回投与する場合には、3日目の投与前に血清カリウム値が治療目標値に達していないことを確認すること。また、本剤投与開始3日後にも血清カリウム値が治療目標値に達していない場合は、他の治療方法を検討すること(血液透析施行中を除く)。
本剤投与開始時及び投与量調整時は、1週間後を目安に血清カリウム値を測定すること。以後は、患者の状態等に応じて、定期的に血清カリウム値を測定すること。
血清カリウム値が3.5mEq/L未満に低下した場合、本剤の減量又は中止を考慮すること。血清カリウム値が3.0mEq/L未満に低下した場合、本剤を中止すること。血清カリウム値に応じて、カリウム補充の必要性を検討すること。
ロケルマ懸濁用散交付時の注意点
- 分包内の全ての薬剤を容器に空け、約45mLの水に懸濁すること。
- 本剤は溶解しないため、十分に懸濁し、沈殿する前に服用すること。沈殿した場合は、再び懸濁して服用すること。服用後に容器に本剤が残っていないことを確認すること。
- 懸濁後の薬剤は保管せず、廃棄すること。
カリメート散や、ケイキサレート散と違い、すごく懸濁しやすいのも特徴の1つのようです。
懸濁後も比較的サラサラしていて、飲みやすいんだとか。
ロケルマ懸濁用散の食事による影響
食事による服用時間の制限なし。
食事の有無や食前・食後・食間を問わず服用可能です。
ロケルマ懸濁用散の作用機序
本剤は、均一な微細孔構造を有する非ポリマーの無機結晶であり、消化管内に存在するカリウムイオンを選択的に捕捉して水素イオン及びナトリウムイオンと交換する。本剤は、カリウムを捕捉して糞中に排泄させ、消化管内腔における遊離カリウム濃度を低下させることにより、血清カリウム濃度を低下させ高カリウム血症の改善をもたらす。
本剤の粒子径は消化管粘膜の細胞間隙の大きさに比較し極めて大きく、分子構造は生理的温度で安定であることから、消化管から体内に吸収されないと考えられる。
経口投与後、消化管のうち主に腸管内でカリウムイオンを捕捉することで対外に排出し、血清カリウム値を低下させるという作用機序になります。
室温保存でき、高カリウム血症の既存薬では飲みにくさ、服薬量の多さが課題となっていましたが、同剤は懸濁顆粒剤で持ち運びがしやすく、服薬量も少なくなるというメリットがあります。
ロケルマ懸濁用散との相互作用
抗HIV薬、アゾール系抗真菌剤、チロシンキナーゼ阻害剤等
本剤を50mg/Lの濃度で人工胃液(pH1.2)に添加したところ、人工胃液のpHは2.9に上昇した。したがって、本剤は一時的に胃内pHを上昇させる可能性があり、それに伴って標記薬剤等の胃内pHに依存してバイオアベイラビリティが変化する薬剤の作用を減弱するおそれがある。
その他の薬剤
本剤とクロピドグレル、ダビガトラン、グリピジド(国内未承認)、ロサルタン、フロセミド、アトルバスタチン、アムロジピン、ワルファリン又はレボチロキシンを併用投与し、併用薬の吸収に及ぼす本剤の影響を検討した結果は下表のとおりであった。(添付文書より)
クロピドグレル及びダビガトランの曝露量が低下し、アトルバスタチン、フロセミド及びワルファリンのCmaxが増加したが、これらの影響は臨床的に問題となるものではなく、用量調整を必要とするものではないと考えられた(外国人データ)。
併用薬 (経口投与) | 併用薬の 投与量 | 例数 | 測定対象 | Cmax | AUC0-t |
アムロジピン | 5mg | 18 | アムロジピン | 1.11[1.02,1.20] | 1.05[1.00,1.11] |
クロピドグレル | 75mg | 24 | クロピドグレルカルボン酸体a) | 0.68[0.57,0.82] | 0.88[0.82,0.94] |
ダビガトラン | 75mg | 24 | ダビガトラン | 0.57[0.40,0.82] | 0.59[0.40,0.88] |
アトルバスタチン | 10mg | 24 | アトルバスタチン | 1.69[1.44,1.97] | 1.04[0.95,1.14] |
グリピジド | 5mg | 24 | グリピジド | 1.04[0.92,1.17] | 1.02[0.95,1.10] |
フロセミド | 20mg | 24 | フロセミド | 1.66[1.10,1.71] | 1.06[0.98,1.15] |
レボチロキシン | 50μg | 18 | レボチロキシン | 1.04[1.00,1.08] | 1.06[1.02,1.09] |
ロサルタン | 25mg | 18 | ロサルタン | 0.98[0.74,1.30] | 1.03[0.93,1.15] |
ワルファリン | 5mg | 18 | R-ワルファリン | 1.34[1.21,1.49] | 1.07[1.03,1.12] |
S-ワルファリン | 1.38[1.18,1.62] | 1.12[1.07,1.17] |
幾何平均値比[90%信頼区間]a)クロピドグレルは血中で速やかに加水分解されることから、クロピドグレルの吸収を反映する指標として代謝物であるカルボン酸体が測定された。
自分的に気になるのはゲフィチニブ〈イレッサ錠〉ですね。H2ブロッカーやPPIとの相互作用が有名ですからね。
ロケルマ懸濁用散の特徴
とりあえず、現時点でわかっている特徴がコチラ
- 国内初の非ポリマー無機陽イオン交換化合物
- 無味無臭
- 懸濁後も比較的サラサラして飲みやすい
- 水分で膨張しない
- 食事による影響なし
- 開始用量を除いて、1日1回投与
- これまでの同効薬で多かった便秘の副作用が少ない
ロケルマ懸濁用散の性状、服用方法
ロケルマ服用に関して、重要な服用方法も含め、コチラ!
- 無味無臭
- 約45mlの水に懸濁して服用する
ロケルマ懸濁用散の禁忌
今のところ、禁忌の情報はないです。
ただ、カリウム値低下による中止基準は確認が必要です。「用法用量における注意点」でも説明した通り【血清カリウム値が3.0mEq/L未満に低下した場合、本剤を中止すること。】となっています。
ロケルマ懸濁用散の薬価
- ロケルマ懸濁用散分包5g:1095.2円/包
- ロケルマ懸濁用散分包10g:1601円/包
この薬価だけが少しネックになってるみたいですね。
圧倒的に、高額ですからね。
ロケルマ懸濁用散の新薬処方日数制限解除へ
ついに1年経ちますね。
2021年6月から新薬処方日数制限が解除となります!
コレからが、本格的に処方数が増えていくんですかね。
今回はこんな感じー!
既存薬のカリメートやアーガメイトゼリー、ケイキサレートなど嵩張る薬剤を、袋いっぱいにして大荷物で持って帰る患者さんもよく見かけます。
ロケルマ懸濁用散の登場で、少量で効果的な薬剤となればこういった患者さんの負担も減りますかねー。
間違いなく、コンプライアンス向上に繋がりますからね。
ではではーしぐでしたっ
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