薬剤師のしぐです。
先日、大塚製薬さんからトルバプタン〈サムスカ錠〉が新しい適応・効能効果、用法用量の申請を行うと発表されました。
なので、今回はトルバプタン〈サムスカ錠〉について!
心不全の適応も持ってるので、結構詳しく調べたこともあります。
ではでは、まとめていきます
サムスカ錠の有効成分
トルバプタン
実は、禁忌の項目でも出てきますが、類似化合物としてモサブタバン〈フィズリン錠〉という医薬品も存在します。このモサブタバン〈フィズリン錠〉も、トルバプタン〈サムスカ錠〉同様大塚製薬さんの医薬品です。
トルバプタン〈サムスカ錠〉の適応・効能効果
規格によって、適応の幅が違ってきます。
サムスカ錠・サムスカOD錠7.5mg
- ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留
- ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留
- 腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制
サムスカ錠・サムスカOD錠15mg
- ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留
- 腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制
サムスカ錠・サムスカOD錠30mg
- 腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制
そして、最後に、最強にわかりやすくまとめられている表がコチラ!
効能・効果 | サムスカ錠7.5mg OD錠7.5mg | サムスカ錠15mg OD錠15mg | サムスカ錠30mg OD錠30mg | サムスカ顆粒1% |
心不全における体液貯留 | ○ | ○ | − | ○ |
肝硬変における体液貯留 | ○ | − | − | ○ |
常染色体優性多発性のう胞腎 | ○ | ○ | ○ | ○ |
トルバプタン〈サムスカ錠〉の使用上の注意
心不全及び肝硬変における体液貯留の場合
本剤は他の利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、抗アルドステロン薬等)と併用して使用すること。なお、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドとの併用経験はない。
常染色体優性多発性のう胞腎の場合
以下のいずれにも該当する場合に適用すること。
- 両側総腎容積が750mL以上であること。
- 腎容積増大速度が概ね5%/年以上であること。[臨床試験には、両側腎容積750mL以上で、腎容積の増加が速いと推定される患者を組み入れた。]
- 投与開始時のクレアチニンクリアランスが60mL/min未満の患者における有効性及び安全性は確立していない。[臨床試験には、投与開始時のクレアチニンクリアランスが60mL/min以上の患者を組み入れた。]
トルバプタン〈サムスカ錠〉の用法用量
心不全における体液貯留の場合
通常、成人にはトルバプタンとして15mgを1日1回経口投与する。
肝硬変における体液貯留の場合
通常、成人にはトルバプタンとして7.5mgを1日1回経口投与する。
常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制の場合
通常、成人にはトルバプタンとして1日60mgを2回(朝45mg、夕方15mg)に分けて経口投与を開始する。1日60mgの用量で1週間以上投与し、忍容性がある場合には、1日90mg(朝60mg、夕方30mg)、1日120mg(朝90mg、夕方30mg)と1週間以上の間隔を空けて段階的に増量する。なお、忍容性に応じて適宜増減するが、最高用量は1日120mgまでとする。
そして、最後に、最強にわかりやすくまとめられている表がコチラ!
疾患 | 投与方法 | サムスカ錠の投与量 |
心不全における体液貯留 | 1日1回 | 15mg |
肝硬変における体液貯留 | 1日1回 | 7.5mg |
常染色体優性多発性のう胞腎 | 1日2回 | 【段階的に漸増】 1日60mg(朝45mg、夕方15mg) 1日90mg(朝60mg、夕方30mg) 1日120mg(朝90mg、夕方30mg) |
用法用量における注意点
ちょっとボリュームがありすぎるので、簡潔にまとめるとこんな感じ
心不全・肝硬変
- 体液貯留所見が消失した際には投与を中止すること
- 目標体重(体液貯留状態が良好にコントロールされているときの体重)に戻った場合は、漫然と投与を継続しないこと
- 体液貯留状態が改善しない場合は、漫然と投与を継続しないこと
- 血清ナトリウム濃度が125mEq/L未満の患者、急激な循環血漿量の減少が好ましくないと判断される患者、高齢者、血清ナトリウム濃度が正常域内で高値の患者に投与する場合は、半量から開始することが望ましい
- 口渇感が持続する場合には、減量を考慮すること
- CYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、フルコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は避けることが望ましい。やむを得ず併用する場合は、本剤の減量あるいは低用量からの開始などを考慮すること
- 夜間の排尿を避けるため、午前中に投与することが望ましい。
常染色体優性多発性のう胞腎
- 夜間頻尿を避けるため、夕方の投与は就寝前4時間以上空けることが望ましい
- 口渇感が持続する場合には、減量を考慮すること
- CYP3A4阻害剤との併用は避けることが望ましい。やむを得ず併用する場合は、下表を参照し、本剤の用量調節を行うこと。
通常の用法・用量 | 弱い又は中等度のCYP3A4阻害剤との併用時の用法・用量(通常用量の1/2量) | 強力なCYP3A4阻害剤との併用時の用法・用量(通常用量の1/4量) |
1日60mg(朝45mg、夕方15mg) | 1日30mg(朝22.5mg、夕方7.5mg) | 1日15mg(朝11.25mg、夕方3.75mg) |
1日90mg(朝60mg、夕方30mg) | 1日45mg(朝30mg、夕方15mg) | 1日22.5mg(朝15mg、夕方7.5mg) |
1日120mg(朝90mg、夕方30mg) | 1日60mg(朝45mg、夕方15mg) | 1日30mg(朝22.5mg、夕方7.5mg) |
ここでも出てきましたね、、、併用に注意しなければいけない薬剤「クラリスロマイシン」。
トルバプタン〈サムスカ錠〉の食事による影響
健康成人にトルバプタン15mgを単回経口投与した時、空腹時投与に比べ食後投与ではCmax及びAUCはそれぞれ1.3倍及び1.1倍であった。
健康成人(外国人による成績)にトルバプタン60mg又は90mgを単回経口投与した時、空腹時投与に比べ食後投与ではCmaxはそれぞれ1.4倍及び2.0倍、AUCはそれぞれ1.1倍及び1.0倍であった。
食事の影響はほとんど受けないってことですね〜
トルバプタン〈サムスカ錠〉の作用機序
トルバプタンは、バソプレシンV2-受容体拮抗作用を薬理学的特徴とする薬剤であり、腎集合管でのバソプレシンによる水再吸収を阻害することにより、選択的に水を排泄し、電解質排泄の増加を伴わない利尿作用(水利尿作用)を示す。
ナトリウムやカリウムに作用せず、水分子を直接排泄する作用があります。
また、多発性のう胞腎においてはバソプレシンによる細胞内cAMPの上昇を抑制することにより、腎容積及び腎のう胞の増大を抑制する。
トルバプタン〈サムスカ錠〉の特徴
「利尿剤」という分類ではあるが、注意することが多い薬剤。
純粋に水のみを利尿するため、急激なNa値の上昇や脱水による意識障害にも注意が必要と言われていて、投与初日は6時間おきに血清Na値の測定が求められています。
原則入院下での投与開始が望ましいが、実際は外来での服用開始もよくみられます。
常染色体優性多発性のう胞腎で用いる場合は、登録医師の確認も行う必要があります。
注意することが、多いですね〜
トルバプタン〈サムスカ錠〉の禁忌
- 本剤の成分又は類似化合物(モザバプタン塩酸塩等)に対し過敏症の既往歴のある患者
- 無尿の患者[本剤の効果が期待できない。]
- 口渇を感じない又は水分摂取が困難な患者[循環血漿量の減少により高ナトリウム血症及び脱水のおそれがある。]
- 高ナトリウム血症の患者[本剤の水利尿作用により高ナトリウム血症が増悪するおそれがある。]
- 適切な水分補給が困難な肝性脳症の患者[適切な水分補給が困難なため、循環血漿量の減少により高ナトリウム血症及び脱水のおそれがある。]
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
- 重篤な腎機能障害(eGFR 15mL/min/1.73m2未満)のある患者[本剤の効果が期待できない。]
- 慢性肝炎、薬剤性肝機能障害等の肝機能障害(常染色体優性多発性のう胞腎に合併する肝のう胞を除く)又はその既往歴のある患者[肝障害を増悪させるおそれがある。]
トルバプタン〈サムスカ錠〉の警告
- 心不全及び肝硬変における体液貯留の場合
- 本剤投与により、急激な水利尿から脱水症状や高ナトリウム血症を来し、意識障害に至った症例が報告されており、また、急激な血清ナトリウム濃度の上昇による橋中心髄鞘崩壊症を来すおそれがあることから、入院下で投与を開始又は再開すること。また、特に投与開始日又は再開日には血清ナトリウム濃度を頻回に測定すること。
- 常染色体優性多発性のう胞腎の場合
- 本剤は、常染色体優性多発性のう胞腎について十分な知識をもつ医師のもとで、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、本剤投与開始に先立ち、本剤は疾病を完治させる薬剤ではないことや重篤な肝機能障害が発現するおそれがあること、適切な水分摂取及び定期的な血液検査等によるモニタリングの実施が必要であることを含め、本剤の有効性及び危険性を患者に十分に説明し、同意を得ること。
- 特に投与開始時又は漸増期において、過剰な水利尿に伴う脱水症状、高ナトリウム血症などの副作用があらわれるおそれがあるので、少なくとも本剤の投与開始は入院下で行い、適切な水分補給の必要性について指導すること。また、本剤投与中は少なくとも月1回は血清ナトリウム濃度を測定すること。
- 本剤の投与により、重篤な肝機能障害が発現した症例が報告されていることから、血清トランスアミナーゼ値及び総ビリルビン値を含めた肝機能検査を必ず本剤投与開始前及び増量時に実施し、本剤投与中は少なくとも月1回は肝機能検査を実施すること。また、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
トルバプタン〈サムスカ錠〉の薬価
- サムスカ錠・OD錠7.5mg:1084.7円/錠
- サムスカ錠・OD錠15mg:1650.1円/錠
- サムスカ錠・OD錠30mg:2505.9円/錠
- サムスカ顆粒1%:1613円/g
トルバプタン〈サムスカ錠〉の新しい適応・効能効果
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善
水利尿(電解質を含まない水分の排泄)を促進する経口バソプレシンV2受容体拮抗薬。抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)はバソプレシンが生理的調節機構を逸脱して過剰に又は不適切に分泌され、V2受容体を介する抗利尿作用により希釈性低ナトリウム血症をきたす疾患と言われています。
放置すれば徐々に悪化して中枢神経症状を呈するようになり、脳ヘルニアなどにより死に至ることもあり、統計学的に国内のSIAHD患者は1700人とされています。
日本内分泌学会から開発要望が出され、未承認薬等検討会議での議論を経て、厚労省から開発要請されていました。
用法用量などに関してはまだ情報を得られていないため、情報が入り次第追記していきます!
今回はこんな感じ。
サムスカ錠発売当初はまさか院外処方で見かけることになるとは思ってもいませんでした。
そして、こんなサムスカ錠をこんなに使用する店舗に配属されることになるとは、、、。
集計をかけてみたのですが、毎月サムスカ錠7.5mgは1500錠以上、15mg錠は100錠前後、30mg錠は500錠前後使用することがわかりました。思ったよりすごい使用量でした。
7.5mgに至っては1包化することも多く、「全自動錠剤分包機プラウド 」で専用のカセットも持っています。
そんなサムスカ錠も発売から10年近く経ち、ちらほらGE発売が近いような噂も聞こえてきます。
時が経つのは早いですね、、、
ではではーしぐでしたっ
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