地域医薬品提供体制モデル事業とは?個人薬局・チェーン薬局・薬剤師会の役割を考える

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地域医薬品提供体制モデル事業とは?個人・チェーン薬局の役割

金色のリボンで結ばれた三つの薬局建物と医薬品の模型

薬剤師のしぐです。

薬が足りない。夜間の処方に対応できる薬局が分からない。在宅で必要な薬を、いつもの薬局だけでは用意できない。

そんなときに必要なのは、地域の薬局がつながって、患者さんの治療を支える仕組みです。

2026年度の「地域における医薬品提供体制等の構築・強化に係るモデル事業」が公表されました。今回は地域薬剤師会が主体となる取組みに加え、薬局が主体となる健康サポート機能の検証も設けられています。

ここで考えたいのが、個人薬局・チェーン薬局・地域薬剤師会の役割分担。地域に薬局が何軒あるかだけでなく、困ったときに、どの薬局が何を引き受けられるか。そこまで見えるようになって、初めて「地域の提供体制」が動き出します。

地域医薬品提供体制モデル事業の概要

厚生労働省が公表した2026年度事業は、医薬品提供、在宅医療、セルフケア・セルフメディケーションに関する地域の取組みを実施し、効果や他地域へ広げる際の課題を検証するものです。

募集区分は次の2つです。

項目事業Ⅰ事業Ⅱ
主なテーマ2025年度事業を踏まえた好事例の均てん化健康増進支援薬局の認定制度化を見据えた健康サポート機能の効果検証等
取組み主体地域薬剤師会薬局
採択予定10〜20課題10〜20課題
1課題の配分額最大1,000万円が目安最大500万円が目安
取組みの方向地域の拠点薬局との連携、拠点薬局の整備行政・保険者等との連携を含む、住民の健康保持増進

申込期間は2026年10月13日〜30日の予定です。10月11日の確認時点では、実施要綱と申請書類は準備中でした。

なお、これは事業に要した経費を支払う仕組みであり、表の上限額がすべての応募者に一律交付されるという意味ではありません。応募条件や対象経費は、公開される要綱で確認が必要です。

また、事業Ⅱには複数薬局や地域薬剤師会と共同する取組みも含まれます。「薬剤師会の事業」「薬局の事業」と完全に切り離して考える必要はありません。

なぜチェーン薬局の動向が注目されるのか

2026年10月10日付のPHARMACY NEWSBREAKは、日薬の都道府県会長協議会でモデル事業が説明され、健康増進支援薬局に関する区分でチェーンの動向への留意が示されたことを、見出し・公開冒頭で報じています。

ただし、この報道だけから特定チェーンの応募方針や採択結果まで読み取ることはできません。現時点で注目したいのは、薬局を主体とする事業Ⅱで、企業として持つ仕組みを地域の健康支援にどう生かすかという点です。

店舗網、研修、情報システム、本部による運営支援。これらを地域に開けば、他薬局との連携や継続的な健康相談を支える力になり得ます。これは制度の説明を踏まえた実務上の見方で、特定企業が実施を決定したという話ではありません。

一方、企業内で仕組みが完成していても、周囲の薬局や医療機関から利用できるとは限りません。同じ会社の店舗どうしで完結する連携を、地域全体の連携にどうつなげるか。チェーン薬局の動きを見る際は、そこまで注目したいところです。

大きさの異なる薬局と共通の広場をつなぐ陶器の模型

個人薬局・チェーン薬局・地域薬剤師会の役割分担

役割を経営形態だけで固定する必要はありません。個人薬局にも高度な在宅対応を担う薬局がありますし、チェーン薬局にも地域に長く根差した店舗があります。

そのうえで、地域の話し合いの出発点として、次のような分担が考えられます。以下は本記事からの提案であり、制度で決められた分担ではありません。

担い手生かせる強み地域で担いたい役割
個人薬局継続した患者対応、生活背景の把握、地域の関係者とのつながり日々の困り事の把握、服薬支援、必要時の他薬局への接続
チェーン薬局店舗網、本部支援、研修や情報基盤地域の不足機能の補完、継続運用の支援、企業外の薬局との協力
地域薬剤師会複数薬局と関係団体をつなぐ立場地域課題の整理、共通ルールづくり、行政・医療機関との調整

「個人薬局は日常対応、チェーンは拠点」と最初から決めつけてしまうと、実際の強みを見落とします。まず各薬局の機能と余力を確認し、役割はその後に決める。これが現場で無理なく動く体制につながります。

日本薬剤師会のアクションリストも、地域薬剤師会と薬局それぞれの取組みを示し、地域の実情に沿った連携を重視しています。

すでにある地域の取組みから学べること

2025年度の事業実績には、埼玉県で在宅医療連携薬局グループ(HCG)を5地域7地区に構築し、拠点薬局を設けて、夜間・休日を含む緩和医療の医薬品提供体制を強化した取組みが掲載されています。

東京都では、二次医療圏ごとの実態調査とブロック会議を重ね、地区ごとの課題や好事例を共有しました。実施体制には日本チェーンドラッグストア協会、日本保険薬局協会への協力要請も示されています。

共通するのは、薬局の機能を把握して、地域の関係者が話し合い、必要な体制を組むという順番です。

「薬剤師会とチェーンは別々に動くもの」と考えるより、同じ地域課題を一緒に解く相手として、連絡の窓口や意思決定の流れを整える。その積み重ねが、今回のモデル事業にもつながるはずです。

薬局実務では「在庫がある」の先まで決めたい

供給不足で他薬局の在庫を探す場面を考えてみます。

薬瓶と錠剤シートを載せた二つのトレイをつなぐリボン

在庫共有システムで薬が見つかっても、その在庫が別の患者さん用に確保されていれば、提供できません。受け取りまでに数時間かかるなら、その間の治療への影響も考える必要があります。

地域の連携で共有したいのは、在庫数に加えて、実際に提供できるか、いつ対応できるか、誰へ連絡すればよいかという情報です。

さらに、他薬局で調剤を受けることになった場合は、必要な服薬情報を適切に引き継ぎ、継続的な支援をどうつなぐかも決めたいところです。患者さんに「こちらに電話してみてください」と伝えるだけでは、確認作業を患者さんへ渡すことになってしまいます。

薬局側で受入れの可否を確認してから案内する。対応後の情報を必要な範囲で共有する。そうした小さな手順が、地域の提供体制の質を左右します。

医薬品の譲渡や患者情報の共有には、それぞれの法令・許可・手続きに沿った対応が必要です。特に医療用麻薬は、在庫が見つかったことだけで薬局間の譲渡ができるわけではありません。仕組みをつくる段階で、必要な手続きを関係行政と確認しておくことが大切です。

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夜間・在宅対応を一部の薬局へ集中させない

地域に頼れる薬局があるのは心強いことです。ただ、毎回同じ薬局・同じ薬剤師へ相談が集中すれば、その体制を維持するのは難しくなります。

そこで決めておきたいのは、対応を依頼する基準、連絡の順番、対応できないときの次の窓口、そして負担の分担です。

例えば、拠点薬局が夜間の緊急対応を担い、日中の継続的なフォローは普段の薬局が引き受ける。地域の会議や研修の運営を、別の薬局が支える。こうした形なら、すべての薬局が同じ設備を持たなくても、それぞれが地域を支えることができます。

もちろん、各薬局が負う基本的な責任はあります。そのうえで、自薬局で完結できない対応を、誰につなぐかまで用意しておくことが重要です。

夜の家と薬局の模型に添えた薬包と温かな灯り

チェーン薬局の動きで確認したい5つの点

今後、企業や業界団体から発表が出たときは、次の点を見ていきたいと考えます。

  1. どの地域課題を解決する取組みなのか。
  2. 企業外の薬局も連携に参加できるのか。
  3. 行政、保険者、医療機関、地域薬剤師会とどうつながるのか。
  4. 紹介を受けた患者さんの支援をどう継続するのか。
  5. 事業終了後の人員・費用・運営をどう維持するのか。

参加店舗数や相談件数は大切な情報ですが、それだけで地域への効果は判断しきれません。薬を受け取れるまでの時間、必要な相談先につながった割合、スタッフの負担なども見ていくと、実際に役立つ仕組みかどうかが分かりやすくなります。これらは本記事で提案する評価の視点です。

個人薬局も、今から準備できることがある

募集への応募を検討するかどうかにかかわらず、まず自薬局の機能を整理しておきたいところです。

在宅の受入れ状況、時間外の連絡方法、対応できる調剤、OTC相談、他薬局に相談したい業務。これを一枚にまとめるだけでも、地域での話し合いに参加しやすくなります。

同時に、日々の「困った」を記録しておくことも有効です。薬が見つからなかった事例、受入れ先の確認に時間がかかった事例、退院時の情報が十分に届かなかった事例。個々の経験を持ち寄れば、地域が優先して整えるべき機能が見えてきます。

地域連携薬局の役割を整理した記事も、地域で求められる機能を考える際の参考になります。

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まとめ:地域の患者さんを、地域の薬局で支える

今回のモデル事業は、地域薬剤師会の取組みと、薬局の健康サポート機能の取組みを、2つの区分で進めるものです。

チェーン薬局の動向には注目したい。ただ、それと同じくらい大切なのが、個人薬局を含めた地域の薬局どうしで、実際に使える連携をつくることです。

「この薬局では難しい。でも、地域のこの薬局とつながれば対応できる」。そこまで具体的に案内できる体制を目指したいですね。

地域薬剤師会が調整し、チェーン薬局が持つ仕組みを生かし、個人薬局が日々の患者支援を積み重ねる。役割は地域の実情に合わせて変わっても、患者さんの治療を途切れさせないという目標は共通です。

薬局の将来像を考えるときにも、「自薬局の機能」と「地域にどう貢献するか」を一緒に考えることが大切になってきます。

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FAQ

Q. 地域医薬品提供体制モデル事業とは何ですか?

医薬品提供、在宅医療、セルフケアなどに関する地域の取組みを実施し、その効果や他地域へ広げる際の課題を検証する厚生労働省の事業です。

Q. 2026年度の募集期間はいつですか?

公表された申込期間は2026年10月13日〜30日の予定です。10月11日時点では実施要綱と申請書類は準備中のため、正式な条件は公開後に確認してください。

Q. 事業Ⅰと事業Ⅱの違いは何ですか?

事業Ⅰは地域薬剤師会を主体に好事例の普及や拠点薬局との連携・整備を進めます。事業Ⅱは薬局を主体に、健康増進支援薬局の認定制度化を見据えた健康サポート機能の効果検証等を行います。

Q. チェーン薬局だけが参加できるのですか?

公表概要では事業Ⅱの主体は「薬局」とされており、チェーン薬局に限定する記載はありません。個別の応募資格は実施要綱で確認が必要です。

Q. 採択されると健康増進支援薬局に認定されますか?

公表概要は認定制度化を見据えた効果検証等を目的としており、モデル事業の採択自体が認定を意味するという説明はありません。

Q. 在庫共有システムだけで提供体制をつくれますか?

在庫情報に加え、提供可能性、対応時間、連絡先、患者さんの受入れ、情報の引継ぎまで決める必要があります。システムを現場で使える運用に結びつけることが重要です。

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