
こんにちは、薬剤師のしぐです。
「痛み止めを買いたいんですが、ここでも買えますか?」
処方箋を受け付ける薬局で、こんな相談を受けたとき。商品がないからと、別の店舗を案内するだけで終わっていないでしょうか。
2026年10月10日の都道府県会長協議会で、日本薬剤師会の岩月進会長が、NSAIDsを含むOTC医薬品を全ての薬局で取り扱うべきとの考えを示したと報じられました。薬剤師の責任のもと、地域住民が市販薬を安全・適切に使えるようにする趣旨です。
薬局で働く側からすると、なかなか重い問いかけです。
薬剤師はいる。処方薬の相談も受けている。でも、市販薬を買いたいという相談には応えられない。そうした薬局のあり方を、改めて考えるきっかけになる発言だと思います。
しぐ的な結論は、OTCを販売できる体制を整えることに賛成。ただし、品ぞろえと一緒に「誰に使えて、どんなときは受診が必要か」を判断する体制まで用意したい、ということです。
日薬会長は何を求めた?「全ての薬局」の意味を整理
今回の発言は、薬局全体にOTCの取り扱いを求めるものとして報道されています。
ここで混同したくないのが、「全ての薬局」と「全てのOTC製品」です。
公開されている報道の範囲では、世の中にある全ての市販薬、全ブランド、全包装を各薬局が在庫するよう求めたとは確認できません。NSAIDsを含む市販薬を薬局で取り扱い、安全な使用を支えるという方向の話として受け止めるのが適切です。
また、会長の発言をもって、直ちに全薬局への販売義務が新設されたと読み替えることもできません。発言・提言と、法令や通知による義務は区別して考える必要があります。
| 気になる点 | 今回の整理 |
|---|---|
| 誰の発言? | 日本薬剤師会・岩月進会長 |
| いつ、どこで? | 2026年10月10日の都道府県会長協議会での発言として報道 |
| 求められた方向 | NSAIDsを含むOTCを全ての薬局で取り扱い、安全な使用を支えること |
| 全商品を在庫するという意味? | 公開範囲では、そのような具体的要求は確認できない |
| これだけで販売義務が発生する? | 発言を根拠に、新たな法的義務ができたとはいえない |

NSAIDsとは?市販の痛み止めも確認することが多い
NSAIDsは、非ステロイド性抗炎症薬のことです。ロキソプロフェンやイブプロフェンなどが知られ、痛みや発熱に対して使われます。
身近な薬ですが、購入する人の年齢や持病、現在使っている薬によって、選び方が変わります。
「いつもの痛み止め」で確認を省かない
薬局でまず確認したいのは、次のような内容です。
- 誰が使うのか、年齢はいくつか
- どのような症状が、いつから続いているか
- すでに飲んだ痛み止めやかぜ薬はあるか
- 治療中の病気や、服用中の薬はあるか
- 薬でぜんそくやアレルギーを起こしたことはあるか
- 妊娠・授乳に関する確認が必要か
たとえばロキソニンSでは、15歳未満、解熱鎮痛薬などでぜんそくを起こしたことがある人、腎臓病など一定の病気で治療中の人、出産予定日12週以内の妊婦などは服用しないよう記載されています。
これはロキソニンSの具体例です。全てのNSAIDs製品に同じ条件を一律に当てはめず、実際に販売する製品の使用上の注意で判断します。
商品名が違っても、薬が重なることがある
「病院の痛み止めが残っているけれど、市販の痛み止めも買っておこう」
「かぜ薬を飲んだけれど、頭痛が残るから別の薬を足したい」
こうした相談では、処方薬も市販薬も含め、すでに使っている薬を確かめる必要があります。ロキソニンSは、服用中に他の解熱鎮痛薬やかぜ薬、鎮静薬を併用しないよう定めています。
商品名だけでは成分を判断しにくいので、お薬手帳、薬の現物、箱や成分欄の写真が役立ちます。
普段から処方薬を渡している薬局なら、その人の治療内容を踏まえて確認できる場面もあります。ただし、薬歴に全ての市販薬や他院の薬が記録されているとは限りません。「いつもの患者さんだから分かっている」で省略しないことが大切です。

OTC類似薬の負担見直しで、薬局の相談はどう変わる?
2027年3月1日から、対象となるOTC類似薬を保険診療で使う場合に、薬剤費の4分の1を別途負担する仕組みが始まります。
市販薬そのものに新しい25%の負担を課す話ではなく、対象の医療用医薬品を処方・調剤する際の制度です。また、全ての対象薬が保険診療から完全に外れるわけでもありません。子どもやがん・難病患者など、一定の場合には別途負担の対象外となります。
対象範囲や負担の考え方は、コチラで整理しています。

この制度によって、薬局では次のような相談が増える可能性があります。
「市販薬にした方が安いですか?」
「病院で出ている薬と、同じ成分の市販薬はありますか?」
「この症状なら、受診せず市販薬で対応できますか?」
ここで薬局が用意したいのは、費用と安全性を一緒に説明できる体制です。
「同じ成分なら切り替えて大丈夫」とは限らない
医療用とOTCでは、同じ成分でも、効能・効果、使用できる年齢、用法・用量、使用上の注意が一致するとは限りません。
継続治療が必要な人に対して、薬代だけを理由に自己判断で処方薬をやめるよう勧めるのは適切ではありません。切り替えを考えるなら、症状や治療目的を確認し、必要に応じて処方医へ相談する流れが必要です。
今回の発言とOTC類似薬の制度を結びつけて考えるなら、薬局は「市販薬を買える場所」であると同時に、「今の治療を踏まえて選び方を相談できる場所」であってほしいと思います。
ロキソニンSの区分変更議論ともつながる
ロキソニンSなどのリスク区分変更をめぐっては、薬剤師の関与や販売体制が議論されています。
このテーマは、コチラでまとめています。

なお、2026年10月11日に確認したメーカーの製品情報では、内服のロキソニンSは第1類医薬品として掲載されています。変更の議論があることと、店頭での区分がすでに変わったことは分けて考えます。
今回の会長発言を踏まえた、しぐとしての受け止めはこうです。
安全な使用に薬剤師の関与が必要だと考えるなら、薬剤師がいる薬局で、その相談を受け止められる体制もつくりたい。
もちろん、登録販売者も市販薬販売を担う専門家です。それぞれが対応できる範囲を理解し、判断に迷う場面を薬剤師や医療機関につなぐ関係を育てることが、生活者の安心につながると思います。
調剤薬局が始めるなら、商品選びと業務設計を一緒に

OTCの取り扱いを増やすといっても、小さな薬局がいきなり大きな売場を作るのは難しいものです。スペース、仕入れ、期限管理、スタッフの知識、相談時間など、考えることはあります。
以下は会長発言の具体的な実施要件ではなく、薬局で進めるための実務提案です。
地域の相談から、最初の商品を考える
頭痛や発熱、鼻症状、便秘、皮膚の乾燥など、実際に受けている相談を振り返ると、自薬局に必要な品目が見えてきます。
解熱鎮痛薬でも、「人気商品だから」と決める前に、成分、使用対象、配合成分の有無、包装量、説明のしやすさを確認したいところです。仕入れ先や取り寄せの方法も含めて、相談に応えられる範囲を決めておきます。
受付から薬剤師へ、相談を確実につなぐ
処方箋を持っていない人も、相談者です。
受付で「市販薬のご相談ですね。薬剤師におつなぎします」と案内できれば、薬局の利用しやすさは変わります。
忙しいときの担当者、相談する場所、待ち時間の案内まで決めておくと、現場で動きやすくなります。商品を並べる準備と、相談を受ける準備を同時に進めたいですね。
説明した後の行動まで伝える
販売時には、用法・用量に加えて、改善しない場合の相談先や中止の目安を伝えます。
ロキソニンSでは、1~2回服用しても改善しない場合は服用を中止して相談すること、3~5日使っても症状を繰り返す場合は中止して受診することが示されています。
「飲んで様子を見てください」だけでは、いつまで待つのかが分かりません。販売した製品の説明に沿って、次の行動まで具体的に伝えることが大切です。
しぐ的には、「薬局で買えてよかった」が積み重なるといい
「調剤が忙しい」「OTCはなかなか売れない」「期限切れになるのが心配」。現場の事情は、よく分かります。
そのうえで、処方薬について詳しく相談できる薬局で、市販薬の相談にも応えられることには価値があると思います。
買おうとしていた薬が、すでに飲んでいる薬と重なっていた。
今の持病では、その製品を使えなかった。
痛み止めを足す前に、医療機関へ相談する必要があった。
そんな場面で、購入者の次の行動を一緒に考えることができます。
「この薬局で聞けてよかった」
そう感じてもらえる対応を積み重ねることが、薬局にOTCを置く意味になるのではないでしょうか。
OTCを取り扱うなら、販売、適正使用の確認、受診への橋渡しまで。今回の発言を、自薬局の相談体制を見直すきっかけにしたいですね。
よくある質問
全ての薬局でOTCを販売する義務ができたのですか?
今回の会長発言だけを根拠に、新たな法的義務ができたとはいえません。薬局全体にOTCの取り扱いと安全な使用への対応を求める考えとして報じられています。
全ての市販薬を在庫しなければいけませんか?
公開されている報道の範囲では、全商品・全ブランドを在庫するよう求めたとは確認できません。地域の相談に応じた品目と、仕入れ・相談対応を検討するのが現実的です。
NSAIDsは市販薬なら誰でも使えますか?
使える年齢や持病、妊娠時期、併用薬などの条件があります。製品ごとに使用上の注意が異なるため、実際に使う製品で確認してください。
OTC類似薬は全て保険適用外になりますか?
全てが保険診療から完全に外れる制度ではありません。2027年3月1日から、対象薬の薬剤費の4分の1を別途負担する仕組みが始まります。一定の場合には別途負担の対象外となります。
処方薬と同じ成分のOTCなら、自分で切り替えてよいですか?
同じ成分でも、効能・効果や用法・用量などが異なる場合があります。継続治療中の薬を自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談してください。
ロキソニンSは、もう指定第2類になっていますか?
2026年10月11日に確認したメーカーの製品情報では、第1類医薬品として掲載されています。区分変更の議論と、実際に適用される販売区分は区別してください。


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