モビコールLD/HDが長期供給制限へ|HDは12月から出荷停止、成人の代替薬と薬局対応

こんばんは、薬剤師のしぐです。
モビコール配合内用剤LD/HDの供給が、長期にわたり制限される見込みです。EAファーマは2026年9月、海外製造所で現地規制当局から品質システムについて指摘を受け、是正対応のため製造・出荷を一時停止していると公表しました。
このモビコール。実は最近も自主回収がありました、、、

「いつも通りモビコールで」と処方が出ても、薬局で次回分を用意できないかもしれない。しかも、LDは小児患者に限定した出荷、HDは2026年12月から一時出荷停止の予定です。単純に「HDがなければLDを2包」とはいかないのが、今回の難しいところです。
モビコールって、便を硬くしたくない患者さんにとって本当に使いやすい選択肢でした。がん治療中、便秘が落ち着いている患者さんから「この薬なら調子がいい」と聞くこともあるはずです。その薬が長く使いにくくなる。供給ニュースとして一行で片づけるには、現場への影響が大きいと感じます。今回は公表内容を確認しながら、成人の代替、小児への供給、外来がん治療中のフォローまで整理します。
供給制限はいつから、いつまで?
| 製品 | メーカーが公表した出荷対応 | 薬局での受け止め |
|---|---|---|
| モビコール配合内用剤LD | 2027年6月頃まで限定出荷。小児患者に限定して使用するよう要請 | 成人のHDの代替として確保する運用は避け、既存の小児患者への継続を優先 |
| モビコール配合内用剤HD | 2026年11月まで限定出荷。2026年12月から2027年6月頃まで一時出荷停止 | 継続患者の残薬・次回受診日を確認し、主治医と早めに代替を検討 |
2027年6月頃は出荷再開の見込みであり、すべての薬局でその時点から通常通り入手できると確約された日ではありません。是正と当局の確認状況によって変更される可能性があります。メーカーは既に市場へ出荷された製品について、有効性・安全性に影響する問題を確認していないと説明しています。供給上の問題と、手元にある薬の品質上の問題を混同しないことが大切です。
ここ、誤解しやすい――「製造停止」と「手元の薬の品質」
品質システムの指摘と聞くと、「今、患者さんが飲んでいる分も危険なの?」と心配になりますよね。今回の発表では、海外製造所が査察で指摘を受けて製造・出荷を一時停止した一方、既に市場に出た製品については有効性・安全性に影響する問題は確認されていないとされています。患者さんへの説明では、この二つを分けたいところです。
もちろん、個別の体調不良や副作用の相談は別の話。供給制限の発表を理由に手元の薬を自己判断で中止する必要はありませんが、飲んでいて腹痛や下痢が強い場合は普段どおり相談してもらいます。
なぜモビコールは使いやすかったのか
モビコールはマクロゴール4000と電解質を含む粉末製剤。水に溶かして服用すると、腸管内に水分を保持して便を軟らかくし、排便を促します。LDの有効成分量の2倍がHDの1包に入っており、LD 2包とHD 1包は成分量として対応します。ただし今回、成人患者にLDへの切り替えを勧められる供給状況ではありません。

便が硬くなるタイプの患者さんに使いやすく、排便状態を見て用量を調整できた点が臨床上の強みでした。成人では通常、LD 2包またはHD 1包を初回1日1回とする用法です。服用時はLD 1包につき約60mL、HD 1包につき約120mLの水に溶かします。腹痛・下痢が出る場合は見直しが必要です。
薬局目線でありがたかったのは、「何日出ていないか」だけでなく「出るけど硬い」「いきむのがつらい」という訴えを聞き、便の状態を見ながら処方元と用量を相談しやすかったこと。HDが出てからは、LDを2包使う患者さんの開封回数が減りました。飲み切るまでの分包数、必要な水の量、飲み続けられるか。そういう小さな負担も、がん治療中には案外大きいんですよね。
なお、2026年9月改訂の添付文書には1歳児への用法・用量が追加されています。小児の在庫優先を考える際は、古い「2歳以上」の資料だけで判断せず、最新の添付文書と個々の処方を確認してください。

「LD 2包=HD 1包」は計算上の話
有効成分・電解質の含量はHD 1包がLD 2包に対応します。通常時なら規格の違いを整理するうえで便利な知識です。ただ、今回のLDはメーカーが小児患者に限定して使うよう要請しています。「成分量が同じ」という薬学的な説明と、「成人に使う在庫を確保できるか」という供給上の判断は別です。
12歳以上の小児でも成人と同じ初回量が添付文書に示されています。供給要請の「小児」に年齢上限の詳細が明記されていないこともあり、境界に当たる患者さんは処方元、卸、メーカー情報を照らして対応したいところです。「小児だから必ず供給される」とも断言できません。
がん治療中の便秘で、モビコールがなくなる影響
外来がん薬物療法中は、便秘の原因が一つとは限りません。抗がん薬自体の影響に加え、制吐薬、疼痛管理に用いるオピオイド、食事や水分摂取量の低下、活動量の変化などが重なることがあります。普段モビコールで安定していた患者さんほど、供給の途切れは生活のしやすさに直結します。
便秘が続くと、お腹が張って食べにくい、次の治療までに体調を整えにくい、といった困りごとにつながります。国立がん研究センターのがん情報サービスも、排便回数という数字だけでなく、気持ちよく排便できるかを重視しています。モビコールを切り替える際も「毎日出れば成功」ではなく、患者さんがもともと保てていた便の硬さや生活のしやすさを目標にしたいところです。
ただし、「抗がん剤による便秘には必ずモビコールが第一選択」とは言い切れません。原因・便の硬さ・排便回数・腸閉塞の疑い・併用薬によって選択は変わります。オピオイドによる便秘について、日本緩和医療学会のガイドラインは下剤の定期投与を推奨していますが、特定の製品を全員の第一選択とは定めていません。複数の下剤で改善しない場合にはナルデメジンなどを検討する位置づけです。
たとえば、制吐薬を使った数日だけ便秘になる方、オピオイド開始後から続く方、食事量が減って便そのものが少なくなった方では、同じ「3日出ない」でも話が違います。モビコールがなくなるから新しい便秘薬、で終わらせず、「いつから」「何を使い始めてから」「硬いのか、出したいのに出ないのか」を聞く意味があります。
特に腹痛が強い、嘔吐がある、お腹が著しく張る、排ガスが止まったといった場合は、単純な便秘として下剤だけを増やさず、主治医に速やかに相談する必要があります。腹水や腹部の病変がある患者さんでは、腸閉塞などの評価が優先される場合があります。

「便秘のあとに下痢」も、聞き方を変えたい
外来がん治療のフォローでは「下痢していませんか?」と尋ねることが多いはず。でも、しばらく便が出なかった後に水様便だけが少量出る場合、単なる下痢として判断できないことがあります。便が残っていないか、下剤を追加した直後か、痛みや張りを伴うかを一緒に確認します。

抗がん薬による下痢、感染、免疫療法中の大腸炎など別の原因もあります。便秘薬の切り替え後に下痢が出た=新しい便秘薬だけが原因とも決めつけず、治療内容とタイミングを見直す。このあたりは薬局からのフォローアップが生きるところです。
成人患者の代替は「グーフィスで一律置換」ではない
EAファーマの通知は、成人患者向けの代替品としてグーフィス錠5mgを挙げています。ただしグーフィス(エロビキシバット)は胆汁酸の再吸収を抑える薬で、モビコールと作用機序が異なります。LD/HDの包数をグーフィスの錠数に機械的に換算することはできません。切り替えは処方医の判断と症状の再評価が必要です。
さらに見落とせないのが、グーフィスの添付文書には薬剤性および症候性の慢性便秘症を対象とした有効性・安全性の臨床試験は実施していないと記載されていること。メーカーが「成人の代替品」と挙げたことと、「抗がん薬やオピオイドによる便秘でも同じように効くことが確かめられている」ことは同義ではありません。腫瘍などによる腸閉塞が確認・疑われる患者さんは禁忌です。
| 選択肢 | 考える場面・確認点 |
|---|---|
| グーフィス(エロビキシバット) | メーカーが成人の代替として提示。作用機序が異なり、腹痛・下痢や服用時刻、添付文書の禁忌を確認 |
| 酸化マグネシウム | 便が硬い場合など。腎機能、高齢、長期服用時の血清Mgや併用薬を確認 |
| ルビプロストン、リナクロチドなど | 便秘の経過や副作用・禁忌を踏まえ、医師が個別に検討 |
| センノシド等の刺激性下剤 | 排便パターンに合わせて検討。腹痛や効き過ぎ、漫然使用に注意 |
| ナルデメジン | オピオイド誘発性便秘なら病態に応じて検討。一般的な抗がん薬関連便秘の単純な代替ではない |
切り替え時に患者さんへ伝えるなら
「同じ便秘薬に名前だけ変わります」ではなく、働き方が違うため、便の硬さやお腹の痛みがどう変わるか見ていきます、と伝えるほうが誠実です。グーフィスは通常、成人で1日1回食前。モビコールにはない服用タイミングの確認が必要です。食事が不規則、朝はほとんど食べられないという方なら、実際にいつ飲めそうかまで聞きたいところです。
酸化マグネシウムも「昔からあるから安心」で済ませない薬です。腎機能が低下している方や高齢者では高マグネシウム血症のリスクを考え、長期の継続なら検査値や併用薬を含めて確認します。特にがん治療中は腎機能や水分摂取が変わることがあります。
水分制限のある方に一律に飲水を増やす指導は適切ではありません。モビコールから変更する際は、今までの便通コントロール、腎機能、腹部症状、飲める水分量、同時に使っている便秘薬まで確認したいところです。
小児患者の継続をどう守る?
LDが「限定出荷」と聞くと、薬局に一定数届く印象を持つかもしれません。しかしメーカーの要請は小児患者への使用に限るというもの。小児の定期処方がある薬局なら、次回来局日と必要包数を把握し、卸と供給を確認する必要があります。保護者への説明でも「必要なときは必ずあります」と約束せず、次回受診前に不足の兆しがあれば処方医へ早めに相談できる導線を作っておきたいところです。
「成人には使わない」と一言で済ませるだけでは、小児の継続が守れるわけではありません。限られたLDを、いつ・どの患者さんに何包必要かまで見える状態にすることが薬局の役割だと思います。
保険薬局で今から確認したいこと
- 対象患者を抽出:LD/HDの規格、1日量、次回処方日、残薬、年齢を確認。成人HDの継続患者を優先して連絡する。
- 卸から最新の入荷状況を確認:メーカーの出荷区分と自店への納入可能量は同じではない。取り寄せ確約を避ける。
- 成人の処方元へ早めに情報共有:LDは小児優先、HDは12月から停止予定と伝え、症状に応じた代替を相談。患者さんだけの判断で薬を変更しない。
- がん患者では原因を仕分ける:抗がん薬、5-HT3受容体拮抗薬などの制吐薬、オピオイド、食事・水分摂取の変化を確認。オピオイド誘発性便秘ならその治療歴も伝える。
- 切り替え後を追う:排便回数だけでなく便の硬さ、いきみ、腹痛、下痢、生活への支障を確認し、必要なら処方元へフィードバックする。
処方元へ伝える内容も、患者さんごとに変える
単に「モビコールがありません」だけでは、医師も代替を選びにくいはず。たとえば次のように、便秘の情報を添えて提案します。
モビコールHDを1日1包で使用中。残薬は約2週間分、次回受診は3週間後です。普段は2日に1回、硬い便で腹痛はありません。制吐薬を治療後3日間使用し、オピオイドの使用はありません。HDは供給停止予定、LDは小児向け限定出荷です。成人の便秘治療薬について、次回受診前の変更をご検討いただけますか。
これは連絡内容の架空の例です。実際は症状、処方日数、禁忌、入荷状況を確認してから伝えます。オピオイドを使っている患者さんならその開始・増量時期、すでにナルデメジンを服用しているかも加えたいところです。
患者さんには「今飲んでいる薬の品質に問題が見つかったという発表ではありません。ただ、今後入手しにくくなるため、次回からの治療を医師と相談しています」と伝えると、供給情報を過不足なく説明できます。
フォローアップで聞きたい五つ
- いつ、どのくらい出たか。排便回数だけでなく便の硬さも。
- いきみ、残便感、腹痛、腹部膨満、吐き気はどうか。
- 食事・水分を普段どおりとれているか。飲水制限はないか。
- 切り替えた薬の飲み方が生活に合っているか。飲み忘れはないか。
- 便秘薬以外に、制吐薬やオピオイドなど変更があったか。
「以前より少し出にくい」段階で拾えれば、数日後に強い腹痛が出てから対応するより選択肢があります。薬を渡した日だけで完結させず、次回来局や電話など普段のフォローの中で便通を確認したいですね。

よくある質問
モビコールLDも完全に出荷停止ですか?
2026年9月時点の発表では、LDは小児患者への使用を求める限定出荷です。成人患者のHDの代わりとして使うことは、メーカーの要請と供給状況を踏まえて慎重に判断する必要があります。
HDはいつから入手できなくなりますか?
メーカーの予定は2026年11月まで限定出荷、12月から2027年6月頃まで一時出荷停止です。薬局での実際の在庫や納入時期は地域・卸により異なり得ます。
手元のモビコールを飲み続けて大丈夫ですか?
メーカーは既出荷品について有効性・安全性への影響を確認していないとしています。自己判断で中止せず、処方通り使用してください。腹痛や下痢などがあれば通常どおり医師・薬剤師へ相談してください。
グーフィスに替えれば同じ効果が得られますか?
両剤の作用機序は異なり、同じ用量への換算もできません。便秘の原因、症状、他の薬、禁忌を踏まえて医師が判断します。切り替え後も便通の変化を確認します。
小児の患者はこれまでどおり必ずLDを受け取れますか?
メーカーは小児への使用を優先するよう要請していますが、限定出荷のため、各薬局への納入が保証されるわけではありません。残薬と次回受診日を共有し、早めに確認することが大切です。
抗がん剤治療中はモビコールが第一選択ですか?
患者さんごとに異なります。モビコールが役立つ場面はありますが、制吐薬やオピオイドなど原因を確認し、腸閉塞を疑う症状があれば先に受診・評価が必要です。
まとめ
モビコールの長期供給制限では、LDを必要とする小児患者の継続を支えながら、成人のHD使用患者について早めに代替を検討する必要があります。再開予定は2027年6月頃。ただし、予定は変わり得ます。
「薬が変わっても便が出ればよい」と考えるのではなく、これまでモビコールで保てていた便の硬さ、腹部症状、患者さんの生活を引き継げるかを見ていく。特にがん治療中の便秘は原因が重なります。供給のニュースをきっかけに、いつもの便通フォローを一段丁寧にすることが、薬局にできる対応だと思います。
ではではーしぐでした


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