大阪府薬剤師会が零売に「新しい医薬品区分」を提言|薬剤師の対面評価がつなぐ新たな選択肢

スポンサーリンク

大阪府薬剤師会が零売に「新しい医薬品区分」を提言

薬の容器と金色のアーチで新たな医薬品区分を表現した静物

こんにちは、薬剤師のしぐです。

零売を巡る議論に、興味深い提案が出てきました。

大阪府薬剤師会の伊藤憲一郎会長が、医療用医薬品と一般用医薬品の中間に位置する、新しい医薬品区分の創設を検討すべきだとの考えを示しました。前提となるのは、薬剤師による専門的な対面評価です。

これは、新しい視点で、かなりおもしろい提案だと感じます。

零売を認めるか、規制するか。その議論から一歩進んで、「地域で必要とされている薬の提供を、安全な仕組みとしてどう整えるか」を考えているからです。

薬局には、処方箋を持っていない方からの相談もあります。そんなときに大切なのは、薬を買える場所を増やすことと、適切な判断を受けられる機会を増やすことを、一緒に考えることではないでしょうか。

ただし、今回の話はあくまで提言です。新しい区分が決まったわけではなく、今すぐ薬局で販売できる医薬品が増えるわけでもありません。

大阪府薬剤師会は何を提言した?

2026年10月6日の定例記者会見についての報道によると、伊藤会長は零売を巡る東京地裁判決を尊重する姿勢を示す一方、現行制度と地域の現実のニーズとの間に隔たりがあると指摘しました。

そこで示したのが、医療用医薬品と一般用医薬品の間に、薬剤師の専門的な対面評価を前提とした新たな区分を設けるという考え方です。

今回の提案を理解する鍵は、「対面で薬を渡す」よりも踏み込んだ「対面で評価する」という部分です。

患者さんの訴えや薬の使用状況を確認し、薬局での対応が適切か、医療機関につなぐ必要があるかを考える。その専門的な判断を、制度の中にどう位置づけるかという論点として受け止められます。

正式な区分名、対象成分、販売量、費用負担などの具体的な制度設計は、確認できた報道では示されていません。

零売とは?「処方箋が要らない薬なら自由に売れる」ではない

零売はもともと、医薬品を包装単位から分けて販売することを指します。近年の議論では、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を、処方箋なしで販売する行為を指して使われることが多くなっています。

ここで混同しやすいのが、医療用医薬品と処方箋医薬品です。

医療用医薬品の中には、処方箋医薬品に指定されていないものもあります。しかし、そのことだけで、一般用医薬品のように日常的・自由に販売できるという意味にはなりません。

厚生労働省は、処方箋医薬品以外の医療用医薬品についても処方箋に基づく交付を原則とし、やむを得ない場合の販売について取扱いを示してきました。2025年の薬機法改正でも、処方箋に基づく販売と例外的な販売の枠組みを法律上整理しています。

薬剤師の確認をイメージした薬瓶とノートと虫眼鏡

今回の提言は、こうしたルールをそのまま広げるという話ではありません。薬剤師が関与して提供する薬を、別の区分として制度的に検討するという話です。

おもしろいのは「薬剤師の判断」を制度の中心に置いていること

この提案の良いところは、薬剤師が関与することの意味を、制度づくりの出発点にしているところだと思います。

薬局での相談は、「この薬をください」で終わるとは限りません。

いつから症状があるのか。以前にも同じ症状があったのか。ほかに薬を使っているのか。使い続けているのに改善していないのか。

話を聞くことで、薬の提案より受診を優先した方がよいと判断する場面もあります。

薬剤師の専門性には、薬を選ぶことと、薬局で対応できる範囲を見極めることの両方が含まれます。

新しい区分をつくるのであれば、その両方が機能する仕組みにしてほしいところです。相談の結果、薬を販売せず医療機関につないだ対応も、患者さんを支える大切な仕事だからです。

リボンでつながる三つの薬の容器

実は日薬の「共用医薬品」提案にもつながる

今回の考え方には、以前からの議論とのつながりもあります。

日本薬剤師会は、政策提言2022で「医療用一般用共用医薬品(仮称)」という類型の創設を提言しています。大阪府薬剤師会の今回の提案についても、その考え方に近いものと報じられています。

そのため、「大阪府薬剤師会が初めて思いついた、まったく新しい構想」と紹介するのは正確ではありません。

それでも、零売を巡る裁判や医薬品へのアクセスの問題を背景に、薬剤師の対面評価を前提とする区分を改めて提起したことには、意味があると思います。

以前からの構想を、今の薬局や患者さんが直面している課題につなげ直す。そこに、今回の提言のおもしろさがあります。

要指導医薬品や第1類医薬品との違いは?

「薬剤師が関わる薬なら、すでに要指導医薬品や第1類医薬品があるのでは?」と思う方もいるかもしれません。

これは、もっともな疑問です。

既存の区分でも、薬剤師による情報提供や確認が必要な医薬品はあります。一方、今回の提案は、医療用と一般用の間に新しい区分を設けるというものであり、既存区分との関係や承認・販売要件の違いは、今後整理する必要があります。

区分・構想この記事で押さえたい点
医療用医薬品医療の中で使用されることを前提とする。処方箋医薬品に指定されていないものもある
要指導医薬品既存の区分。薬剤師の関与など、法令で定めた販売要件がある
一般用医薬品第1類・第2類・第3類などの既存の分類がある
今回提案された新区分医療用と一般用の中間を想定する構想。具体的要件や対象薬は未確定

「中間」という表現は、リスクが一律に中程度という意味ではありません。安全性は成分だけでなく、用量、使用期間、対象者、症状などによっても変わります。

OTC類似薬の負担見直しとも関わる。ただし、別の制度

今回の提言では、OTC類似薬を巡る患者負担や自己判断への懸念も背景に挙げられています。

薬の負担が変わると、「処方してもらうのと、市販薬を買うのと、どちらがいいの?」という相談につながる可能性があります。価格に加えて、効能・効果、用量、剤形、使用目的、治療を続ける必要性などを確認することが大切です。

ただし、OTC類似薬の保険給付見直しと、新しい医薬品区分の創設は、異なる制度上の論点です。

薬をどう提供するかと、費用をどう負担するかは、分けて考える必要があります。

新しい区分ができれば安くなる、保険が使える、負担増の対象外になる、といったことは、現段階で決まっていません。

また、OTC類似薬の見直しを、すべての対象薬が一律に保険から外れる話として説明するのも適切ではありません。負担の仕組みや、別途の負担を求めない患者・療養の範囲についての検討と区別して理解したいところです。

ヒルドイド・ヘパリン類似物質の違い|剤形・パラベン・OTC類似薬の追加負担を解説
ヒルドイド・ヘパリン類似物質の違い|剤形・パラベンこんにちは、薬剤師のしぐです。「ヒルドイドとヘパリン類似物質、何が違う…

実現に向けて、薬局の現場から考えたいこと

リボンでつながる薬局と診療所の模型

ここからは、提言の決定事項ではなく、薬局実務から見た検討課題です。

どの薬を、どの範囲で扱えるのか

対象成分だけでなく、用量、使用期間、販売量、年齢、基礎疾患などの条件も必要になると考えます。薬剤師の判断で扱う範囲と、医師の診察が必要な範囲を明確にすることが出発点です。

受診につなぐ基準を、現場で使える形にする

症状が長引く、繰り返す、悪化する場合など、薬局だけで対応を続けることが適切でない場面を見逃さない仕組みが求められます。

薬の販売が可能になるとしても、受診の必要性がなくなるわけではありません。

判断の記録と、その後の確認をどうするか

何を確認し、なぜその対応を選んだのか。その記録は、安全性と説明責任を支えるものです。再来局時に前回の相談内容がわかれば、同じ薬を繰り返し販売するだけの対応も避けやすくなります。

医療機関との情報共有も、本人の同意や個人情報の取扱いを含めて整理する必要があります。

相談にかかる時間や体制をどう確保するか

対面評価には、確認する時間と、相談できる環境が必要です。研修、相談スペース、人員、責任範囲、費用の扱いまで含めて設計しなければ、現場で続けられる制度にはなりません。

薬剤師に仕事を追加するだけで終わらせず、その判断を支える条件まで整えることが大切だと思います。

まとめ|薬局での「判断」をどう生かすか。前向きに考えたい提言

大阪府薬剤師会の提言は、零売を巡る議論に、薬剤師の専門的な対面評価を軸にした選択肢を示しました。

これは、かなりおもしろく、前向きに検討する価値のある視点だと感じます。

患者さんが必要な薬にアクセスできること。そのときに、安全性を確認する専門家が関わること。そして、必要な場合には医療機関につながること。

この3つを一緒に考える制度であれば、地域の薬局が果たせる役割は、より具体的になるはずです。

まだ提言の段階ですが、対象薬や販売要件だけでなく、薬剤師の判断をどう支え、どう評価するのかまで含めて、今後の議論に注目したいと思います。

FAQ

Q. 新しい医薬品区分は、もうできたのですか?

A. いいえ。2026年10月11日時点で確認した情報では、創設を検討すべきだという提言です。制度化や販売開始が決まったという発表ではありません。

Q. 医療用医薬品を、どれでも処方箋なしで買えるようになりますか?

A. そのような提案として確認されたものではありません。対象成分や条件は未確定で、現行の販売ルールが今回の提言によって変わるわけではありません。

Q. 要指導医薬品や第1類医薬品と同じですか?

A. 同じと決まっているわけではありません。既存区分との関係、対象薬、承認・販売要件などを今後整理する必要があります。

Q. 薬剤師が病気を診断するということですか?

A. 今回の提言だけで、薬剤師に医師と同じ診断・処方の権限が認められるわけではありません。薬剤師が評価できる範囲と、医師の診察につなぐ条件の制度設計が必要です。

Q. 新しい区分になれば、薬代は安くなりますか?

A. 価格、保険適用、相談にかかる費用などは決まっていません。費用の問題は、販売区分とは分けて確認する必要があります。

Q. 日薬の「共用医薬品」とは関係がありますか?

A. 日本薬剤師会は政策提言2022で「医療用一般用共用医薬品(仮称)」の創設を提言しています。大阪府薬剤師会の今回の構想も、その考え方に近いと報じられています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました