インスリンはどう保管する?使用中の冷蔵庫・夏場・車内・30℃超えを薬剤師が整理
こんばんは。
薬剤師のしぐです。
今回は、インスリンを使用している患者さんから、季節を問わず聞かれるこの質問。
「インスリンって、冷蔵庫に入れておけばいいんですよね?」
これ。
実は、そんなに単純ではありません。
未使用なのか、すでに使用を開始しているのか。
さらに、
- 夏場に持ち歩くとき
- 車で移動するとき
- 冷蔵庫に入れ忘れたとき
- 30℃を超えてしまったかもしれないとき
- 保冷剤を使うとき
などなど。
インスリンは毎日使用する薬だからこそ、保管方法について聞かれる場面はかなり多いですよね。
特に最近の日本の夏。
普通に生活していても「30℃以下」を維持するのが難しい場面があります。
そしてインスリンは、高温になると成分が変性し、十分な効果が得られなくなるおそれがあります。
しかも厄介なのが、
「見た目が普通だから大丈夫」とは限らない
というところ。
今回は、インスリン製剤の保管について、
「患者さんにどう説明すればいいのか?」
という薬局目線も含めて、改めて整理してみます。

まず結論!インスリン保管で覚えておきたいポイント
まずは、ざっくりここだけ。
インスリン保管の基本
| 状態・場面 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 使用開始前 | 多くの製剤で2〜8℃の冷蔵保存 |
| 使用中 | 多くの製剤で30℃以下の室温保管 |
| 直射日光 | 避ける |
| 車内 | 放置しない |
| 暖房・家電などの熱源付近 | 避ける |
| 凍結 | NG |
| 30℃を超えた可能性がある | 自己判断せず確認する |
| 見た目がおかしい | 使用しない |
現在のメーカー情報でも、使用開始前は2〜8℃、使用中は30℃以下という製剤が多くなっています。
ただし!
ここはかなり大事です。
すべてのインスリン製剤で、まったく同じ保管方法・使用開始後の期限というわけではありません。
製剤によっては使用中の冷蔵保存が可能なものもありますし、使用開始後に使用できる期間も異なります。
そのため、最終的には必ず、
「その患者さんが使用している製品の電子添文・取扱説明書を確認する」
これが基本です。
使用前と使用中でインスリンの保管方法は違う
ここ、患者さんにも意外と知られていないポイントです。
使用開始前のインスリン
多くのインスリン製剤では、
2〜8℃の冷蔵庫内で、凍結を避けて保管
します。
ただ、
「冷蔵庫に入れておけば絶対安心!」
というわけでもありません。
冷蔵庫でも凍結には注意
冷蔵庫の、
- 冷気の吹き出し口
- 冷凍室の近く
- 強く冷える場所
などでは、インスリンが凍結する可能性があります。
インスリンは一度凍結すると、薬液が変化して期待した効果が得られなくなる可能性があるため、使用できません。
冷蔵庫の中でも、
「冷やしすぎない」
ことが大切なんですよね。
使用中のインスリンは冷蔵庫に入れなくてもいい?
これも薬局でかなり聞かれる質問。
「開封したあとも冷蔵庫ですよね?」
と思われている患者さん、けっこう多いです。
多くのインスリン製剤では、使用開始後は、
30℃以下の室温で保管
します。
さらに、
キャップなどで遮光し、直射日光を避ける
ことも重要です。
ただし、製剤によっては使用開始後も2〜8℃で保存できるものがあります。
逆に、使用開始後は冷蔵庫に戻さないよう案内されている製剤もあります。
なので、
「インスリンは全部、使用中なら室温!」
ではなく、
「基本は30℃以下。製剤ごとの保管条件を確認」
くらいで覚えておくのがいいと思います。
インスリン療法そのものを整理したい方はこちら

夏場のインスリン保管は特に注意!
そして本題。
個人的に、このテーマで一番伝えたいのがここです。
夏場のインスリン。
30℃以下と言われても、
最近の日本の夏では外気温が35℃を超えることも珍しくありません。
つまり、
普通にバッグへ入れて持ち歩いているだけでも、高温になる可能性があります。
特に危険なのが次の場所。

車の中
これはもう、
絶対に置きっぱなしにしない。
くらいでいいと思います。
添付していただいたリリーの資料でも、
「自動車の中は思った以上に高温になることがあります」
と注意喚起されています。
真夏の車内は、外気温以上の高温になることがあります。
「10分だけだから」
「日陰だから」
でも油断しないほうがいいです。
インスリンだけではなく、車を離れるなら一緒に持っていく。
これが一番わかりやすいですね。
超速効型インスリン・ルムジェブについてはこちら

窓際・直射日光にも注意
家の中なら安心。
と思いがちですが、
窓際も注意。
直射日光が当たり続けると、室温以上にインスリン周辺の温度が上がる可能性があります。
例えば、
- リビングの窓際
- キッチンの窓辺
- 出窓
- 車のダッシュボード
など。
「室内だから30℃以下だろう」
ではなく、
インスリンそのものが高温にならない場所に置く
と考えたほうがいいですね。
トースター・電子レンジ・暖房器具の近くも避ける
これも意外と盲点。
キッチン周辺に、
「毎日使うからここに置いておこう」
とインスリンを置いているケース。
トースターや電子レンジ、炊飯器などの近くは、使用時にかなり熱くなることがあります。
添付資料でも、
熱源となる電化製品の近くは高温になる可能性がある
として注意されています。
暖房器具の近くも同様。
冬だから高温は関係ない!
ではないんですよね。
インスリンが30℃を超えたらすぐ使えなくなる?
ここ。
おそらく検索でも、かなり需要があるところだと思います。
「インスリンを30℃以上のところに置いてしまいました。使えますか?」
という質問。
結論から言うと、
「30℃を少しでも超えた瞬間、すべて廃棄」
と単純に判断できるものではありません。
一方で、
「見た目が普通だから大丈夫」
とも判断できません。
インスリン製剤は高温になることで成分が変性し、薬効が低下する可能性があります。
そして添付資料で特に重要なのが、
30℃を超えて保管しても、必ずしも外観異常が起こるわけではない
という点。
つまり、
見た目が透明。
濁りもない。
変なものも浮いていない。
だから大丈夫!
とは限らないわけです。
高温環境に置いてしまった可能性がある場合は、
- どの製品か
- 何℃くらいだったか
- 何時間程度だったか
- 未使用か使用中か
などによって判断が変わることがあります。
自己判断でそのまま使用せず、薬局・医療機関・メーカーへ確認する
のがおすすめです。
メーカーによっては、規定された保管温度を外れた際の安定性確認情報も用意されています。

見た目がおかしいインスリンは使用しない
高温による変化が目で確認できる場合もあります。
特にわかりやすいのが、
懸濁タイプのインスリン製剤。
正常であれば、十分に混和すると均一に白く濁ります。
ところが、高温などによって異常が生じると、
- 十分混ぜても均一に白くならない
- 半透明になる
- 透明っぽくなる
- 液中に塊がある
- 薄片や浮遊物が見える
- カートリッジの内壁に付着物が見える
といった変化が現れることがあります。
こうした場合には、
使用しない。
ここは患者さんにも、はっきり伝えていいところですね。
透明なインスリンなら見た目で判断できる?
これも要注意。
透明なインスリンでは、
高温による変化が外見だけではわからない場合があります。
なので、
「透明だから問題ない」ではありません。
むしろ、
見た目では判断できないことがある
ということを患者さんに知ってもらうほうが重要だと思います。
夏場の持ち歩きに保冷剤を使ってもいい?
「じゃあ、保冷剤で冷やせばいいですよね?」
となります。
これも、
冷やしすぎには注意。
インスリンは高温にも弱いですが、
凍結にも弱い。
凍らせた保冷剤をインスリンへ直接当てると、部分的に凍結してしまう可能性があります。
メーカー情報では、冷蔵庫で冷やした保冷剤をタオルなどで包み、保冷バッグに入れるといった方法が紹介されています。
つまり、
夏場の持ち歩き
高温にしない。でも冷やしすぎない。
このバランスです。
保冷剤を使うなら、
インスリンへ直接密着させない
というのはぜひ伝えておきたいところ。
インスリンとGLP-1、DPP-4阻害薬の違いを整理したい方はこちら

インスリンは冬場の保管にも注意
夏場ばかり気になりますが、
実は冬も注意。
特に、
- 車内
- 屋外
- スキー場
- 寒冷地
- 冷蔵庫の吹き出し口
などでは凍結する可能性があります。
一度凍ったインスリンは使用しない。
これも大事です。
なので、
インスリンは「暑すぎてもダメ、冷やしすぎてもダメ」。
意外と繊細なんですよね。
薬局で患者さんへ伝えたい「夏場のひとこと」
個人的には、患者さんへインスリンをお渡しするとき、
全部を長々説明する必要はないと思っています。
夏なら、
「使用中のインスリンは高温に弱いので、車の中や窓際には置かないでくださいね」
これだけでもかなり違います。
さらに持ち歩きが多そうな患者さんなら、
「保冷剤を使う場合は、直接インスリンに当てないでください」
ここまで。
旅行予定がある患者さんなら、保管方法を少し詳しく確認する。
患者背景によって一言変える。
こういうところが薬剤師の服薬指導では大切なのかなーと思っています。
インスリンの保管でよくある質問【FAQ】
Q1.使用中のインスリンは冷蔵庫に入れなくても大丈夫?
多くのインスリン製剤は、使用開始後は30℃以下の室温で保管します。ただし製剤によって保管条件が異なるため、その製品の取扱説明書や電子添文を確認してください。
Q2.インスリンを冷蔵庫に入れ忘れました。使えますか?
製品、温度、放置時間などによって判断が異なります。自己判断せず、薬剤師・医療機関・メーカーへ確認してください。
Q3.30℃を超えたらすぐ捨てないといけませんか?
一律に「30℃を超えた瞬間すべて使用不可」とは判断できません。ただし、高温にさらされたインスリンは見た目に異常がなくても品質が変化している可能性があります。継続使用する前に確認してください。
Q4.インスリンを車に置いておいても大丈夫?
おすすめできません。特に夏場の車内は短時間でも高温になる可能性があります。車を離れる場合はインスリンも持っていきましょう。
Q5.保冷剤と一緒に持ち歩いていい?
可能ですが、凍らせた保冷剤をインスリンへ直接当てるのは避けましょう。冷やしすぎによる凍結にも注意が必要です。
Q6.凍ってしまったインスリンを溶かせば使える?
使用しないでください。一度凍結したインスリンは品質が保たれない可能性があります。
Q7.見た目が透明なら、高温になっても大丈夫?
見た目だけでは判断できません。高温にさらされても外観異常が現れない場合があります。
インスリン+GLP-1配合剤のゾルトファイについてはこちら

まとめ|インスリンは「30℃以下」だけ覚えるのではなく保管場所まで確認しよう
今回は、
インスリン製剤の保管方法
についてまとめました。
ポイントは、
- 使用前は多くの製剤で2〜8℃の冷蔵保存
- 使用中は多くの製剤で30℃以下
- 直射日光を避ける
- 車内には放置しない
- 熱源の近くに置かない
- 保冷剤で凍結させない
- 見た目がおかしければ使用しない
- 見た目が正常でも高温曝露時は自己判断しない
- 製剤ごとの保管条件・使用期限を必ず確認する
このあたり。
インスリンを使っている患者さんにとっては、毎日のこと。
でも、
「どこに置いていますか?」
まで確認する機会って、意外と少ないんですよね。
特に夏場は、
「30℃以下で保存してください」
だけではなく、
「車の中には置かないでください」
まで具体的に伝える。
これだけでも、かなり実用的な服薬指導になると思います。
インスリンは正しく保管してこそ、正しく効果を発揮してくれる薬。
これからも薬局で、ちょっとした一言を大切にしていきたいですね。
ではではー。
しぐでしたっ。

コメント