RSウイルス感染症とは?症状・検査・治療と2026年の流行見通し、ワクチンを薬剤師が解説

こんばんは、薬剤師のしぐです。
「RSウイルスって、赤ちゃんがかかる病気ですよね?」「咳の薬を飲めば治る?」「今年はいつ流行するの?」
薬局でも聞かれるRSウイルス感染症。身近な感染症ですが、小さな赤ちゃんでは呼吸状態が悪くなることがあり、保護者の方にお伝えしたいポイントがいくつもあります。
そして、以前の記事を書いた2019年から、予防の選択肢も大きく変わりました。2026年度には、妊婦さんへのRSウイルスワクチンが定期接種になっています。
今回は、症状・検査・治療の基本に加えて、2026年の流行見通しと新しい予防法を整理します。先に結論をお伝えすると、RSウイルスでは、熱の高さだけでなく「呼吸・飲める量・尿」を見ることが大切です。
RSウイルスとは?大人も何度も感染する呼吸器感染症
RSウイルスは、鼻水、咳、発熱などを起こすウイルスです。2歳までにほぼすべての子どもが少なくとも一度は感染するとされています。
一度かかれば生涯かからなくなるわけではありません。子どもも大人も繰り返し感染します。
年長児や健康な大人では風邪のような症状で済むことが多い一方、生後6か月以内の乳児、とくに月齢の低い赤ちゃんでは、細気管支炎や肺炎などに進むことがあります。早産児、心臓や肺に病気がある子ども、免疫不全などがある子どもも注意が必要です。
高齢者、とくに慢性呼吸器疾患などの基礎疾患がある方でも、重症肺炎の原因になります。
**「子どもの病気だから、大人は関係ない」と考えないこと。**大人の軽い風邪が、家庭内の赤ちゃんへの感染につながることもあります。
2026年はいつ流行する?秋冬だけの感染症ではありません

流行する季節は、以前と変わってきています
以前は秋から冬に注意する感染症というイメージがありました。しかし、近年の国内では春から増加し、夏にピークを迎える年もあります。流行時期には年ごと、地域ごとの差があります。
そのため、「冬になったら対策を始める」「夏が終わったから安心する」という考え方では、流行を見逃す可能性があります。
2026年9月下旬も、埼玉県ではやや多い状況です
埼玉県の2026年第39週(9月21日〜27日)の週報では、RSウイルス感染症の定点当たり報告数は、前週の1.62(修正後の値)から1.22に減少しました。ただし、県は「やや多い状況」としています。
この週は連休などで診療日数が通常と異なった可能性もあり、1週間の減少だけで流行が収束したとは判断できません。
これは、指定された医療機関1か所当たりの報告数を示す指標です。「県民の1.22%が感染した」という意味ではありません。また、埼玉県の数字を全国の流行状況として扱うこともできません。
それでも、少なくともこの時点では、地域の流行への注意を続ける必要があることがわかります。
今年の秋冬の流行見通しは?
2026年10月2日時点で確認した公的情報からは、「今年は全国で何月に最大のピークが来る」「昨年より必ず大流行する」とまでは言えません。
ここからの実務上の見通しは、秋も地域によって感染が続いたり増えたりする可能性を考え、冬まで季節だけで判断せず備えるというものです。これは流行の規模やピークを断定する予測ではありません。
地域の週報に加えて、保育園・幼稚園での発生状況も確認しましょう。小児科からの報告を中心とする流行データだけでは、成人や高齢者の感染状況を十分に把握できない点にも注意が必要です。

感染経路と潜伏期間|家庭内でもうつります
主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
咳やくしゃみなどの飛沫を浴びるほか、鼻水などが付いた手やおもちゃ、ドアノブに触れ、その手で目・鼻・口に触れることで感染が広がります。
潜伏期間は2〜8日、典型的には4〜6日です。
きょうだいや保護者が「少し鼻水が出るだけ」という場合も、赤ちゃんに触れる前の手洗いや咳エチケットを意識したいところです。鼻水を拭いた後に、そのまま授乳や食事の準備をする場面にも気をつけましょう。
症状は?熱が下がっても呼吸の確認を

最初は鼻水や発熱などの風邪症状が見られます。その後、咳がひどくなり、ゼーゼーする呼吸や息苦しさが出る場合があります。
「熱が下がったから、もう大丈夫」と思っていても、咳や呼吸の状態が悪くなることがあります。赤ちゃんは鼻づまりや呼吸の苦しさによって、母乳やミルクを飲みにくくなることもあります。
薬局で確認したいのは、次の3点です。
| 見るポイント | 家庭で確認すること |
|---|---|
| 呼吸 | いつもより速い、胸や肋骨の間がへこむ、苦しそうにしていないか |
| 飲める量 | 母乳・ミルク・水分が、いつもより明らかに減っていないか |
| 尿と元気 | おむつが濡れる回数が減る、ぐったりする、反応が悪いなどの変化がないか |
呼吸が苦しそう、飲めない、尿が明らかに少ない場合は、早めに医療機関へ相談してください。
息が止まる、唇や顔色が青紫になる、反応が乏しい、強い呼吸困難がある場合は、救急対応が必要です。119番を含め、すぐに対応しましょう。
月齢の低い赤ちゃんでは、目立つ咳や高熱がなくても重症化することがあります。夜間・休日に判断を迷う場合は、こども医療電話相談「#8000」も相談先になります。
検査はどうする?全員が検査を受けるわけではありません
医療機関では、鼻咽頭ぬぐい液などを使った抗原検査が行われます。状況に応じて、核酸検査などが用いられる場合もあります。
ただし、咳や鼻水のある子ども全員に、RSウイルス検査が必要というわけではありません。年齢、重症化リスク、呼吸状態、検査結果が診療方針に与える影響などを踏まえて判断されます。保険で検査できる条件も、検査の種類などによって異なります。
「検査をしなかったから十分に診てもらえていない」ということではありません。検査結果だけでなく、呼吸や水分摂取などを診察で評価することが大切です。
また、陰性でも症状が悪化しているなら再相談が必要です。薬局でも、「検査は陰性でした」という情報だけで安心せず、今の状態を確認したいですね。
治療薬はある?基本は対症療法と全身状態の管理
一般的なRSウイルス感染症の診療では、ウイルスを直接排除する特効薬を使う治療ではなく、対症療法が中心になります。
軽症の場合は、水分や栄養を保ちながら回復を待ちます。症状に応じて解熱薬などが処方されることがあります。重症の場合には、酸素投与、点滴、呼吸管理などが必要です。
咳や痰の薬が出ても、呼吸状態は別に確認する
症状に応じて薬が処方されても、それはRSウイルスそのものを退治する薬ではありません。
薬を飲ませていることと、呼吸状態が安全であることは、別に確認する必要があります。咳止めや解熱薬を使っていても、飲めなくなったり呼吸が苦しくなったりしたら、次の受診日まで待たずに相談してください。
処方薬に市販の風邪薬を足す場合は、成分の重複や年齢制限に注意が必要です。乳幼児への使用は、先に医師や薬剤師に確認しましょう。
抗菌薬はRSウイルスには効きません
抗菌薬は細菌に対する薬で、RSウイルスそのものには効きません。細菌感染の合併などを医師が考えた場合に使用されます。
「抗菌薬が出なかったから治療が足りない」「手元の残りを飲ませよう」と考えず、処方された目的を確認することが大切です。
家でできるケア
鼻づまりで飲みにくい場合は、授乳前などに、無理のない範囲で鼻水を除くことが役立つ場合があります。一度に飲めないときは、少量ずつこまめに試し、飲めた量と尿の様子を確認しましょう。
家庭でのケアを続けても飲めない、呼吸が苦しい場合は、家庭で対処し続けるより受診が必要です。
2026年度から妊婦へのRSウイルスワクチンが定期接種に

2026年度から、妊婦さんへのRSウイルスワクチンが定期接種の対象になりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる妊娠週数 | 接種時点で妊娠28週0日〜36週6日 |
| 回数 | この期間に1回 |
| 使用するワクチン | アブリスボ |
| 仕組み | 母体で作られた抗体が胎盤を通って赤ちゃんへ移行する |
赤ちゃんに直接接種するのではなく、妊婦さんの接種によって、生まれてくる赤ちゃんのRSウイルスによる下気道感染症を予防する仕組みです。
接種しても、感染や重症化を完全に防げるわけではありません。接種後も、赤ちゃんの呼吸や哺乳の変化には注意しましょう。
接種後14日以内に出生した乳児での有効性は確立していないため、出産予定や接種時期について産科で相談することが大切です。費用、接種できる医療機関、里帰り先での扱いなどは、住民票のある自治体で確認してください。
主な副反応には、接種した部位の痛み・腫れ、頭痛、筋肉痛などがあります。妊娠高血圧症候群の既往やリスクなど、気になる点がある方は、接種前に主治医に相談しましょう。
薬局としても「産科で聞いてください」で終わらず、接種できる期間が決まっていることをお伝えし、相談につなげたいところです。
シナジスとベイフォータス|治療薬ではなく予防の抗体製剤
乳児のRSウイルス対策には、抗体製剤もあります。ワクチンとは仕組みが異なり、ウイルスに対する抗体を直接投与する方法です。
| 製品名 | 一般名 | 主な位置づけ |
|---|---|---|
| シナジス | パリビズマブ | 対象となる重症化リスクの高い小児に、流行期に原則月1回投与する予防薬 |
| ベイフォータス | ニルセビマブ | 長時間作用する抗体製剤。対象に応じて原則、流行期ごとの単回投与で予防する |
ベイフォータスには、重症化リスクのある小児だけでなく、生後初回の流行期を迎える、それ以外の新生児・乳児に対する予防の適応もあります。
ただし、**承認された適応の範囲と、保険適用・費用負担の条件は同じ意味ではありません。**また、乳児への抗体製剤は、妊婦へのワクチン定期接種とは別の制度です。
対象となるか、どの方法を選ぶかは、月齢や基礎疾患、母体のワクチン接種歴なども踏まえて小児科で相談します。
「RSにかかったから予防の注射を打てば治る」という薬ではありません。ベイフォータスの、すでに発症したRSウイルス感染症に対する治療効果は確立していません。
大人・高齢者の予防も考える時代へ
成人・高齢者向けのRSウイルスワクチンもあります。製品ごとに対象年齢や条件が異なるため、自分が接種対象になるか、費用負担はどうなるかを医療機関で確認してください。
とくに慢性呼吸器疾患などのある高齢者では、咳や息切れを「いつものこと」と判断しないことが大切です。症状が普段より強い、食事や水分が取れない場合は、早めに相談しましょう。
薬局でも、小児の処方箋だけを見てRSウイルスを意識するのではなく、家族や高齢の患者さんへの感染予防まで視野に入れたいですね。
登園はいつから?日数だけで決めない
RSウイルス感染症には、インフルエンザのように一律の「発症後○日」という登園基準はありません。
保育所の感染症対策ガイドラインでの登園の目安は、呼吸器症状が消失し、全身状態がよいことです。熱だけでなく、咳や呼吸、食事・水分、園で普段の生活ができそうかを確認し、医師や園と相談してください。
解熱薬で一時的に熱が下がった状態を、回復した状態と考えないことも大切です。園で必要となる書類や運用も確認しましょう。

家庭での感染予防|赤ちゃんの周りの大人も一緒に
手洗い、咳エチケット、よく触る物の清掃・適切な消毒が基本です。鼻水を拭いた後、食事や授乳の前には、特に手指衛生を意識しましょう。
咳や鼻水のある大人や、マスクを安全に着用できる年齢の子どもは、赤ちゃんに近づく場面でマスクを活用してください。乳児に無理にマスクを着ける対応は避けます。
消毒剤は、製品の使用方法と対象物に合わせて使います。塩素系の消毒剤を手指に使ったり、別の洗剤と混ぜたりしないようにしましょう。
「いずれ多くの子どもがかかるから、予防しなくてよい」ということではありません。重症化しやすい月齢の時期に、感染を防ぐ意味は大きいと考えています。
しぐのまとめ|薬を渡すときに、帰宅後の判断材料も伝える
RSウイルスは身近な感染症です。でも、乳児では「よくある風邪」で済まない場合があります。
薬局で薬の飲み方を伝えるときには、「熱は何度ですか?」に加えて、「ミルクは飲めていますか?」「おむつは濡れていますか?」「呼吸は普段と違いませんか?」まで確認したいところです。
そして、保護者の方が帰宅してから迷わないように、薬を飲ませていても、呼吸が苦しい・飲めない・尿が少ないときは相談することをお伝えする。ここが、薬局でできる大切な支援だと思います。
予防の選択肢が増えた今こそ、対象やタイミングを正しく理解し、必要な相談につなげていきたいですね。
ではでは、しぐでした。
よくある質問
RSウイルスは大人にも感染しますか?
感染します。健康な大人では風邪症状で済むことが多いですが、高齢者や基礎疾患のある方では重症化する場合があります。
一度かかれば、もうかかりませんか?
何度も感染します。以前に感染したことがあっても、手洗いや咳エチケットを続けましょう。
熱がなければ安心ですか?
熱だけでは判断できません。とくに月齢の低い乳児では、呼吸、哺乳量、尿、反応の様子を確認してください。
RSウイルスに抗菌薬は効きますか?
RSウイルスそのものには効きません。細菌感染の合併などがある場合に医師が必要性を判断します。
ワクチンとベイフォータスは同じものですか?
異なります。母子免疫ワクチンは母体に抗体を作ってもらい、胎盤を通して赤ちゃんへ届ける方法です。ベイフォータスは赤ちゃんに抗体を直接投与する製剤です。
2026年の冬は大流行しますか?
現時点で全国の流行規模やピーク時期は断定できません。秋冬も地域の発生状況を確認し、季節にかかわらず対策を続けましょう。


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