
薬剤師のしぐです。
「ネキシウムの顆粒って、水に混ぜずにそのまま飲んでもいいですか?」
以前、薬局でお子さんの保護者から聞かれた質問です。味や飲み心地が苦手で、粉薬のように口に入れて水で流し込む方が飲めそう、というお話でした。
これ、気持ちはすごくわかるんですよね。毎日飲ませる側としては、少しでもスムーズに飲める方法を探したくなります。
ただ、エソメプラゾール〈ネキシウム〉の懸濁用顆粒は、一般的な粉薬と同じ感覚で飲み方を変えないことが大切です。
結論からいうと、水に混ぜず、そのまま飲む方法はおすすめできません。処方された分量を服用直前に水に懸濁し、薬局でもらった説明書に沿って飲みます。
基本は、1包を約15mLの水に混ぜ、2〜3分置いて粘り気が出てから、もう一度かき混ぜて服用。混ぜてから30分以内を目安に飲み、コップに残った顆粒も追加の水で飲み切ります。
今回は、この「ちょっと特殊な飲み方」を中心に、小児での使い方や最近の安全性情報までまとめます。
ネキシウムはどんな薬?「懸濁用顆粒」は子ども専用ではない
エソメプラゾール〈ネキシウム〉は、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬、いわゆるPPIです。胃の壁細胞にあるプロトンポンプに作用し、胃酸が分泌される最終段階を抑えます。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの治療に使われるほか、NSAIDsや低用量アスピリンを使用する患者さんの潰瘍再発抑制、ピロリ菌除菌の補助にも使われます。ただし、適応や用量には規格・年齢・病気による違いがあります。
ここで整理しておきたいのが、正式な剤形名です。ネキシウムは「懸濁性顆粒」ではなく、ネキシウム懸濁用顆粒分包10mg・20mg。「水に混ぜて服用するための顆粒」という名前なんですね。
カプセルが苦手なお子さんだけでなく、成人でも使える剤形です。ただし、水に混ぜればどんな嚥下状態でも安全に飲めるわけではありません。むせや飲み込みに不安がある方は、服用方法を個別に確認してください。
エソメプラゾールとオメプラゾールの関係
エソメプラゾールは、オメプラゾールのS体です。「エス・オメプラゾール」と考えると、名前も少し覚えやすいですよね。
ただし、「S体だからCYP2C19の影響を受けない」「誰でも同じ血中濃度になる」と説明するのは正確ではありません。エソメプラゾールもCYP2C19やCYP3A4で代謝され、体質や併用薬による影響を受けます。
名前の由来は覚えやすくても、薬の性質まで単純化しすぎない。ここは薬剤師として押さえておきたいところです。
ネキシウム懸濁用顆粒は、そのまま飲める?
水に混ぜて飲むのが、承認された用法です。水に混ぜない服用方法を、同じように使える方法として案内することはできません。
以前メーカーに確認した際も、懸濁せずに服用する方法は試験していない、という回答でした。現在の電子添文でも、服用するときに水で懸濁する用法が示されています。
ここで大切なのは、「そのまま飲むと必ず効かない」とまで断定することでもありません。確認されている飲み方に沿って使うこと、飲めないときは方法や剤形を相談することです。
懸濁用顆粒には、胃酸から薬を守るための腸溶性の顆粒が含まれています。水に混ぜるのは、顆粒をすべて溶かして透明な液にするためではありません。
細かな粒が残っていても、それだけで混ぜ方の失敗ではないんですね。
粒をなくそうとして潰したり、噛み砕いたりする飲み方は避けましょう。見た目が粉薬に近くても、製剤としての工夫があります。
「飲ませるために工夫すること」は大切。でも、その工夫で薬の特徴を損なわないようにしたいところです。
正しい飲み方|水は約15mL、2〜3分待って服用

以下は、1包を服用する場合の基本的な手順です。1回に複数包を使う処方では、水の量を含めて薬局で具体的な方法を確認してください。
| 手順 | やること | 押さえたいポイント |
|---|---|---|
| 1 | コップに約15mLの水を用意する | 10mg・20mgとも、1包の基本は約15mL |
| 2 | 処方された1包の中身を入れ、かき混ぜる | 顆粒を潰さずに混ぜる |
| 3 | 2〜3分ほど置く | 粘り気が増すのを待つ |
| 4 | もう一度かき混ぜて飲む | 懸濁してから30分以内を目安に服用する |
| 5 | コップに顆粒が残ったら、水を追加して飲む | 残った薬も飲み切る |
約15mLは、計量スプーンの大さじ1杯に相当します。ただし、食事用のスプーンは大きさが一定ではありません。「このくらいかな?」となりやすい方は、薬局で計量できる道具を相談すると安心です。
20mgだから水も2倍、ではありません
10mgと20mgで有効成分の量は違いますが、1包を懸濁する基本の水量はどちらも約15mLです。
「20mgだから30mL」と覚えないようにしたいところ。一方で、10mgを2包使う処方は「20mgを1包」と包数が異なります。規格と包数をセットで確認してください。
飲んだあとのコップも、ひと手間が大切
コップの底や側面に顆粒が残ったら、少量の水を加え、かき混ぜて飲みます。
毎回そこに薬が残っているのに、本人や家族は「全部飲めている」と思っている。そんなすれ違いを防ぐためにも、薬局では「飲んだあと、コップに粒は残っていませんか?」まで聞きたいですね。
朝まとめて作っておくのは避ける
服用直前に作り、開封後や懸濁後の薬は保管しません。残りを次回に回すことも避けます。
電子添文では、懸濁後に顆粒が沈殿する可能性があるため、30分以内の服用が望ましいとされています。「30分を1秒でも過ぎたら毒になる」という意味ではありませんが、作り置きしてよい薬ではありません。

水以外で混ぜてもいい?飲みにくいときの相談ポイント
味やとろみが苦手だと、牛乳、ジュース、ヨーグルト、服薬ゼリーなどを使いたくなることもあると思います。
ただ、標準の服用方法で使うのは水です。水以外の飲料や食品への変更を、自己判断で行うのは避けてください。
他の粉薬でうまくいった方法が、この薬にもそのまま使えるとは限りません。お湯で混ぜる、別の薬と一緒のコップに入れる、といった変更も、先に薬局で確認しましょう。
相談するときは、単に「飲めません」と伝えるより、どこで困っているかを分けると解決につながりやすくなります。
・味が苦手なのか、粘り気や粒の感触が苦手なのか
・水の量が負担なのか、むせてしまうのか
・口には入れられるが、途中で吐き出してしまうのか
・コップの底に顆粒が残るのか
・調製の手間が、毎日の生活の中で負担になっているのか
「決められた飲み方なので、その通りにしてください」で話が終わると、困りごとは残ったままです。
薬局としては、実際の手順を一緒に確認し、それでも難しければ処方医に剤形や治療の選択肢を相談する。そこまでつなげたいですね。
飲み残しや嘔吐があったときも、自己判断で追加の1包を飲ませないでください。どれくらい飲めたか、服用からどれくらい経ったかを伝え、追加服用の要否を確認します。
小児での使い方|「1歳以上」だけで判断しない
エソメプラゾール〈ネキシウム〉には、1歳以上の幼児・小児に対する用法・用量があります。ただし、年齢だけで用量が決まるわけではありません。
例えば、胃潰瘍や逆流性食道炎の初期治療では、10mg製剤の電子添文に、体重20kg未満は1回10mg、20kg以上は症状に応じて1回10〜20mgを1日1回と示されています。
一方、非びらん性胃食道逆流症は10mg製剤の適応であり、同じ成分でも20mg製剤と適応が完全に一致するわけではありません。
これは家庭で用量を決めるための情報ではなく、薬局で年齢・体重・病名・規格・包数の整合性を確認するための情報です。処方された量を自己判断で増減したり、20mgの袋を半分に分けて10mgとして使ったりしないようにしましょう。
2024年には、小児の維持療法などの用法・用量が追加
2018年の小児用法追加と懸濁用顆粒の登場だけで、情報が止まっている方もいるかもしれません。
2024年6月24日には、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法について、小児の用法・用量が追加されました。また、10mg製剤では、NSAIDsや低用量アスピリン使用時の胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制についても、小児の用法・用量が追加されています。
「お子さんにPPIがずっと出ているけれど、大丈夫?」と感じたときも、まずは治療の目的を確認したいところです。初期治療なのか、再発を繰り返すための維持療法なのかで、見方が変わります。
もちろん、追加承認されたからといって、すべてのお子さんに長期投与が必要という意味ではありません。飲めているか、症状はどうか、治療の必要性は見直されているかを、継続して確認します。
低用量アスピリンと胃酸を抑える薬の組み合わせを整理したい方は、タケルダ配合錠の成分・特徴・注意点もあわせてどうぞ。こちらは別の配合剤の記事で、ネキシウムの代わりに自己判断で使えるという意味ではありません。
2026年7月の改訂|長期服用では低マグネシウム血症にも注意
今回の更新で押さえておきたいのが、2026年7月の電子添文改訂です。
エソメプラゾール〈ネキシウム〉の「重大な副作用」に、頻度不明の低マグネシウム血症が追加されました。長期投与では、定期的に血中マグネシウム濃度を測定する注意も加わっています。
低マグネシウム血症では、しびれ、痙攣、QT延長などがみられることがあり、低カルシウム血症や低カリウム血症を伴う場合もあります。
「胃薬だから、長く飲んでいても特に確認することはない」と考えないことが大切です。しびれなど気になる症状が続く場合は医師・薬剤師に相談し、痙攣や失神などがある場合は速やかに医療機関へ連絡してください。
ただし、この情報だけを見て、必要な治療を自己判断で中止するのも避けたいところ。潰瘍の再発抑制や逆流性食道炎の維持療法など、続ける理由がある患者さんもいます。
薬局では、服用期間、治療目的、気になる症状、検査の状況を確認し、必要に応じて処方医と共有します。「必要な薬を、必要な期間、安全に使えているか」まで見るのが、胃薬のフォローなんですね。
最近のフォーミュラリの話題|飲める剤形を選ぶ意味
日本フォーミュラリ学会のモデルフォーミュラリNo.7「消化性潰瘍治療薬」第3.2版では、エソメプラゾールの後発品カプセルを推奨薬、懸濁用顆粒をオプションとして整理しています。
ここでいうオプションは、特定の状況で使う選択肢という位置づけです。「懸濁用顆粒は使うべきではない」「カプセルより治療効果が劣る」という意味ではありません。
カプセルを服用できないお子さんなどには、剤形そのものが重要な意味を持ちます。費用や標準化を考えるときも、実際に飲めるかを切り離してはいけないんですよね。
なお、これはモデルフォーミュラリの位置づけであり、全国一律の処方ルールではありません。
薬局で確認したいのは「水に混ぜていますか?」の、その先

ネキシウム懸濁用顆粒の服薬指導では、説明書を渡して使用方法を説明することが電子添文にも示されています。
そのうえで、次の来局時にもう一歩確認したいところです。
| 確認すること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 水の量と包数 | 「1回に何包を、どれくらいの水に混ぜていますか?」 |
| 待ち時間 | 「混ぜてから少し置いて、もう一度かき混ぜていますか?」 |
| 飲み残し | 「コップに残った粒は、どうしていますか?」 |
| 飲みにくさ | 「味、とろみ、粒の感じで困ることはありますか?」 |
| 継続状況 | 「飲ませるのが大変で、抜けてしまう日はありませんか?」 |
| 長期服用の確認 | 「症状や検査について、診察で確認されていますか?」 |
懸濁する方法を知っていることと、毎日その通りに続けられることは、少し違います。
この薬の飲み方をきっかけに、家庭での負担まで聞けるといいですよね。保護者の「実は飲ませにくくて……」という言葉は、治療を続けるための大切な情報です。
まとめ|水に混ぜる手順と、飲めない理由をセットで確認
ネキシウム懸濁用顆粒は、そのまま飲む粉薬として扱わず、服用直前に水に懸濁して使います。
1包の基本は、約15mLの水、2〜3分待つ、もう一度混ぜて30分以内に飲む。コップに残った顆粒も追加の水で飲み切り、作り置きや残りの保管はしません。
そして、うまく飲めないときは無理に飲み方を変える前に、何が負担かを薬局に伝えてください。
小さな飲み方の違いが、毎日の治療の続けやすさにつながる。だからこそ、薬の説明だけで終わらず、「家ではどうですか?」まで聞きたいお薬です。
ではではー、しぐでしたっ。
よくある質問
Q. ネキシウム懸濁用顆粒は、水に混ぜずそのまま飲めますか?
承認された用法は、服用直前に水で懸濁する方法です。そのまま飲む方法を自己判断で選ばず、飲みにくい場合は薬剤師に相談してください。
Q. 10mgと20mgで、水の量は変わりますか?
1包の基本の水量は、どちらも約15mLです。1回に複数包を服用する処方では、水の量と手順を薬局で確認してください。
Q. 水に混ぜても粒が残るのですが、大丈夫ですか?
懸濁は、粒を水に分散させることです。透明に溶けきらないことだけで、失敗とはいえません。粒を潰さず、服用前にもう一度かき混ぜて飲みます。
Q. ジュースや牛乳、服薬ゼリーを使ってもいいですか?
標準の服用方法は水での懸濁です。食品や別の飲料を使いたい場合は、自己判断で変更せず、製品ごとの情報を薬局で確認してください。
Q. 作っておいて、あとから飲めますか?
服用直前に調製し、懸濁後は30分以内の服用が望ましいとされています。開封後・懸濁後の薬は保管せず、次回分への取り置きもしません。
Q. 飲み残したり吐いたりしたら、もう1包飲ませますか?
自己判断で追加しないでください。服用した量や時間、吐いたタイミングを伝え、医師・薬剤師に追加服用の要否を確認してください。
Q. 胃ろうや経管投与にも、そのまま同じ手順で使えますか?
この記事の手順は経口服用の説明です。経管投与は、チューブの条件や投与方法を含めて個別の確認が必要です。海外資料の手順を家庭でそのまま使わず、医師・薬剤師に相談してください。
Q. 子どもが長く飲んでいても大丈夫ですか?
小児の逆流性食道炎の維持療法など、継続が必要な場合があります。一方、2026年7月には長期投与時の低マグネシウム血症への注意が追加されました。治療目的、症状、検査の状況を確認しながら使用し、自己判断で中止しないでください。

みなさんお気付きの通り、成分名は
「S体のオメプラゾール」→「エス・オメプラゾール」→「エソメプラゾール」。
ちなみに、S体とR体が混在するものを「ラセミ体」と呼びますね。
オメプラゾールで見ると、R体はCYP2C19により速やかに代謝されるのに対し、S体はその影響を受けません。なのでS体は患者さん個々での代謝の影響を受けにくいため、血中濃度にバラツキがなくどの患者さんでも安定した薬効が期待されるんですねーーー。
S体とR体で胃酸分泌抑制作用は同等みたいですね。

名称の由来は、Next Millennium !ネクストミレニアムの始まりと終わりから。

カプセルなのに、すごい。やっぱりカプセルって苦手な方多いんですけどね、、、。
しっかり効果があるんでしょうねーーーー。
ちなみに、今後錠剤だったりOD錠発売の予定はないんだとか。


コメント
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