セルトラリンからニトロソアミン検出|自主回収なし、服用中止は必要?薬剤師が押さえたいポイント

こんにちは、薬剤師のしぐです。
2026年10月5日、PMDAにセルトラリン錠・OD錠「アメル」の「ニトロソアミン化合物検出のお知らせ」が掲載されました。
「いつも飲んでいる薬から、発がん性が心配される物質が見つかった」
こう聞くと、不安になりますよね。「今ある薬は飲んでいいの?」「回収されないの?」「別のメーカーに変えた方がいい?」と感じるのも自然なことです。
まず、今回の案内では、メーカーは自主回収や処方停止を行わないとしています。患者さんが自己判断で服用を中止することも避けるよう求めています。
ただし、「回収されないから、何も確認しなくてよい」という話でもありません。通常錠とOD錠では検出結果が異なり、今後の品質管理と低減対策も示されています。
今回は、何が分かったのか、なぜ回収されないのか、そして薬局でどう説明するかまで整理します。
最初に押さえたい今回のポイント
| 確認すること | 今回の案内 |
|---|---|
| 対象 | セルトラリン錠25mg・50mg・100mg「アメル」、OD錠25mg・50mg「アメル」 |
| 検出物質 | N-ニトロソセルトラリン |
| 通常錠の結果 | 1日許容摂取量100ng/日の最大約1.8倍に相当する量を確認 |
| OD錠の結果 | 1日許容摂取量を超えて検出されたロットは認められず |
| 暫定管理 | 暫定摂取量670ng/日、暫定管理値6.7ppmを設定。検出値は暫定管理値を下回る |
| 回収・処方 | 現時点で自主回収、処方停止やその他の措置は行わない |
| 今後 | 暫定管理値以下を確認した製品を出荷し、2029年10月を目途に恒久的なリスク低減措置を検討 |
| 患者さんの対応 | 自己判断で服用を中止せず、不安があれば医師・薬剤師へ相談 |
「通常錠では許容摂取量を超えた」「暫定管理値は下回った」。この2つを合わせて理解することが、今回の情報を読み解く出発点です。
セルトラリンはどんな薬?
セルトラリンは、**SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)**に分類される薬です。脳内の情報伝達に関わるセロトニンの再取り込みを抑え、神経伝達を調整することで効果を発揮します。
国内での効能・効果は、うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害(PTSD)です。先発品としてジェイゾロフトがあり、複数の後発品も使用されています。
そのため、薬剤名だけを見て「うつ病の患者さん」と決めつけることは避けたいところです。服薬指導では、患者さんがどの症状に対して治療を受けているか、これまでどう説明されているかも確認します。
今回のニュースで薬への不安が強くなると、「飲むのが怖い」という気持ちが治療そのものへの不信につながることもあります。薬の品質情報を説明するときにも、今の治療をどう支えるかという視点が必要です。
今回のお知らせは「アメル」の5製品が対象
共和薬品工業の2026年10月の文書に記載されている対象は、次の5製品です。
| 剤形 | 製品名 | 文書に記載された包装 |
|---|---|---|
| 通常錠 | セルトラリン錠25mg「アメル」 | PTP100錠・PTP500錠・バラ500錠 |
| 通常錠 | セルトラリン錠50mg「アメル」 | PTP100錠・PTP500錠・バラ500錠 |
| 通常錠 | セルトラリン錠100mg「アメル」 | PTP100錠 |
| OD錠 | セルトラリンOD錠25mg「アメル」 | PTP100錠 |
| OD錠 | セルトラリンOD錠50mg「アメル」 | PTP100錠 |
今回の案内を、すべてのメーカーのセルトラリンにそのまま当てはめることはできません。
患者さんから問い合わせがあったら、お薬手帳や薬袋などで「セルトラリン」という成分名に加えて、メーカー名、通常錠かOD錠か、規格まで確認します。一包化されていて製品名が分からない場合は、調剤した薬局の記録で確認できます。
また、今回の文書は回収対象ロットを示す案内ではありません。対象製品として掲載された包装を、そのまま「返品すべき包装」と読み替えないことも大切です。
ニトロソアミンとは?検出された物質と薬の成分を分けて考える
ニトロソアミン類は、ニトロソ基がアミンに結合した構造を持つ化合物の総称です。一部は発がん性が懸念され、医薬品でも混入・生成リスクの点検が進められています。
今回確認されたのは、**N-ニトロソセルトラリン(N-Nitroso-sertraline)**です。治療に用いるセルトラリンそのものと、不純物として管理されるN-ニトロソセルトラリンは、分けて理解します。
共和薬品工業は、N-ニトロソセルトラリンについて、現時点では発がん性試験データが得られていないと説明しています。これは「発がん性がないと確認された」という意味ではありません。データの限界も踏まえて、基準に基づく管理と低減対策が行われます。
医薬品の不純物を考えるときは、「検出されたかどうか」に加え、物質の種類、摂取量、服用期間、製品ごとの評価を確認します。「発がん性」という言葉だけで、服用した人にがんが発生することが確定したように受け取られない説明が必要です。
ニトロソアミンについての基本的な考え方は、コチラでも整理しています。

通常錠とOD錠では検出結果が違う

今回、通常錠では、1日許容摂取量100ng/日の最大約1.8倍に相当するN-ニトロソセルトラリンが確認されました。
一方、OD錠では、1日許容摂取量を超えて検出されたロットは認められませんでした。
| 剤形 | 今回確認されたこと | 説明で注意すること |
|---|---|---|
| 通常錠「アメル」 | 許容摂取量の最大約1.8倍に相当する量を確認 | 「許容摂取量以下だった」と説明しない |
| OD錠「アメル」 | 許容摂取量を超えて検出されたロットは認められず | 「不純物が全く検出されなかった」と説明しない |
「最大約1.8倍」という情報は、すべての規格・すべてのロットで同じ量が検出されたという意味ではありません。また、患者さん個人のがん発症リスクが1.8倍になったことを示す数字でもありません。
ここは、薬局内で説明を揃えておきたいポイントです。数字が独り歩きすると、必要以上に大きな不安につながります。
なぜ許容摂取量を超えていても自主回収しないの?
今回の判断を理解するには、1日許容摂取量と、低減措置期間中の暫定管理値を区別する必要があります。
メーカーは、2025年6月の厚生労働省のQ&A改正に基づき、低減措置期間中に限って暫定管理値を設定できることを説明しています。そのうえで、今回の製品では暫定摂取量670ng/日、暫定管理値6.7ppmを設定しました。
| 項目 | 文書中の数値・位置付け |
|---|---|
| 1日許容摂取量 | 100ng/日 |
| 通常錠で確認した最大量 | 上記の約1.8倍に相当 |
| 低減措置期間中の暫定摂取量 | 670ng/日 |
| 暫定管理値 | 6.7ppm。文書では1日最大服用量100mgを前提に記載 |
ng/日は1日に摂取する不純物の量、ppmは濃度を示す単位です。錠剤の重さや服用量を無視して、患者さんが手元の薬から独自に換算するための数字ではありません。
メーカーは、検出値が暫定管理値を下回ることから、患者さんの生涯発がんリスクを著しく高める可能性は極めて低いと評価し、現時点で自主回収や処方停止を行わないとしています。
ここでの薬局の役割は、メーカーの評価を正確に伝えることです。「リスクがゼロ」と言い切る必要はありませんし、反対に、許容摂取量を超えたという一文だけで中止を勧めることも適切ではありません。
暫定管理値は、今後ずっと同じ状態でよいという意味ではない
今回の案内では、当面は暫定管理値以下であることを確認した製品を出荷するとしています。
それと並行して、2029年10月を目途に、許容摂取量以下の製品を安定供給するための恒久的なリスク低減措置対策を検討する方針が示されています。
「2029年まで品質を確認しない」ということでも、「2029年10月までに必ず切り替わると保証された」ということでもありません。現時点の出荷管理と、将来の低減対策の目標を分けて押さえます。
薬局では、今後の案内で管理方法や供給状況が変わったときに、採用品や患者説明を更新できるよう、文書の日付と確認した内容を残しておくと役立ちます。

服用中止は必要?自己判断で急にやめないでください
今回のニトロソアミン検出情報を理由に、患者さんが自己判断でセルトラリンを中止することは避けてください。
セルトラリンの電子添文には、突然の中止により、不安、焦燥、興奮、浮動性めまい、錯感覚、頭痛、悪心などが現れることが報告されており、中止する場合は患者さんの状態を観察しながら徐々に減量することが記載されています。
不安だから飲まない、量を半分にする、1日おきに飲むといった変更も、自己判断では行わないことが大切です。
もしニュースを見て既に中断してしまった場合は、「何日飲んでいないか」「最後に飲んだ量」「現在の体調」を医師や薬剤師へ伝えて相談してください。飲み忘れた分をまとめて飲むことも避けます。
なお、これは今回の品質情報を理由とした中止についての説明です。強い体調変化などがある場合には、その症状に応じた診療が必要です。何でも「継続して大丈夫」と一律に扱わないようにします。
薬局で聞かれたときの説明例
「この薬、発がん性の物質が入っていたんですか?」と聞かれたときは、まず患者さんの製品を確認したうえで、例えば次のように伝えます。
今回、セルトラリン「アメル」から、ニトロソアミンという種類の不純物が確認されたお知らせが出ています。通常錠では従来の許容摂取量を超えたものがありますが、低減対策の期間中に設定された暫定管理値は下回り、メーカーは今のところ回収や処方停止を行わないとしています。急にやめるとめまいや不安などが出ることがあるため、ご自身の判断で中止しないでください。気になる点を一緒に確認しましょう。
短く伝える場合は、次の3点を優先します。
- お手元の製品が今回の対象か確認する。
- 今回はメーカーから回収や処方停止を求める案内は出ていない。
- 自己判断で中止せず、不安があれば相談する。
患者さんが知りたいのは、細かな単位の説明より「今日の薬をどうしたらいいか」であることも多いですよね。最初に行動を伝えてから、必要に応じて数値や判断の理由を説明すると、話が伝わりやすくなります。

薬局で確認したい5つのこと
1.採用品と患者さんの製品を確認する
一般名だけで判断せず、メーカー、剤形、規格を確認します。在庫ロットも記録しておくと、追加情報が出た際の照合に役立ちます。これは今回、全在庫を回収するという意味ではありません。
2.「回収」「出荷」「処方継続」を別々に確認する
安全性情報を読むときは、回収の有無だけでなく、出荷の方針と患者さんの治療継続に関する記載も確認します。回収されない製品でも、供給について別の案内が出ることがあります。
今回の「アメル」は暫定管理値以下を確認して出荷する方針です。実際の納入状況は、メーカーの最新供給情報や卸への確認で把握します。
3.不安による飲み控えを聞き取る
「最近、薬のニュースを見て心配になっていませんか」「飲む量を減らしたり、飲まない日を作ったりしていませんか」と確認することも、実務上の対応として考えられます。
残薬が増えている場合も、不純物の話がきっかけなのか、飲み忘れなのか、副作用がつらいのかで支援が変わります。回収情報を説明して終わりにせず、服薬状況まで確認したいところです。
4.切り替え希望は、理由を聞いて処方医と相談する
「別の薬にしてほしい」と言われた場合は、不安の内容を具体的に聞き取ります。今回の情報を理由に一律に他製品へ変更する方針は示されていませんが、不安が強く服薬継続が難しい場合は、処方医と相談することが考えられます。
メーカーや剤形の変更を検討する際は、変更先の最新情報、供給状況、飲みやすさ、調剤上の変更可否も確認します。「別メーカーなら必ず不純物がない」「OD錠ならすべて同じ結果」とは判断できません。
5.説明と相談内容を薬歴に残す
例えば「対象製品を確認」「メーカー文書の回収・処方停止なしを説明」「自己中止を避けるよう案内」「服薬中断の有無」「処方医へ相談する事項」を記録します。
薬局内でも、確認した文書と説明の要点を共有すると、担当者による説明の違いを減らせます。
ジェイゾロフトOD錠の過去の案内と混同しない
セルトラリン関連では、2026年6月にジェイゾロフトOD錠についてもニトロソアミン検出の情報提供が行われています。
その6月の文書では、OD錠の出荷停止を継続する一方、市場流通品は暫定管理値を下回るため処方停止などは不要としています。また、通常錠のジェイゾロフト錠は許容摂取量以下を確認したと説明しています。
今回の「アメル」の文書では、OD錠は許容摂取量を超えたロットが認められず、通常錠で超過が確認されています。同じ成分でも、メーカーと剤形によって検査結果・供給方針が異なることが分かります。
ジェイゾロフトの記載は6月時点の文書の比較であり、10月時点の最新供給状況を示すものではありません。代替を検討する場合は、その時点の情報を改めて確認します。
類似の情報を整理するときには、コチラも参考になります。薬剤ごとに管理値と対応は異なるため、数値をそのまま流用しないことが大切です。

しぐの薬局実務メモ|「回収なし」の先まで支える
今回、薬剤師として大事にしたいのは、回収の有無を伝えたあとに、患者さんの服薬がどうなっているかを確認することです。
「回収されないそうですよ」と聞いても、患者さんの不安がすぐ消えるとは限りません。逆に、詳しい数値を並べるほど不安になる方もいます。
まず、どの情報を見て、何が一番心配なのかを聞く。対象製品を確認する。今の評価と今後の対策を説明する。そして、自己中止を避けながら、必要な相談につなぐ。
品質への疑問を質問できることも、薬を安全に使うための大切な一歩です。「気にしすぎ」と片づけずに、一緒に確認できる薬局でありたいですね。
まとめ
2026年10月の案内では、セルトラリン錠・OD錠「アメル」からN-ニトロソセルトラリンが確認されました。
通常錠では1日許容摂取量の最大約1.8倍に相当する量が確認された一方、OD錠では許容摂取量を超えたロットは認められていません。
検出値は暫定管理値を下回り、メーカーは現時点で自主回収や処方停止を行わないとしています。当面の出荷管理と並行して、2029年10月を目途に恒久的な低減措置が検討されます。
患者さんは自己判断で服用を中止せず、不安があれば医師・薬剤師へ相談してください。 薬局では、製品名と剤形を確認し、今回の案内を正確に伝えるとともに、不安による飲み控えが起きていないかも確認していきたいところです。
FAQ(本文末尾へ掲載)
Q.今回、セルトラリンは自主回収されるのですか?
A.2026年10月の共和薬品工業の案内では、対象のセルトラリン錠・OD錠「アメル」について、自主回収や処方停止は行わないとしています。他メーカーの製品や将来の対応は、それぞれの最新案内で確認してください。
Q.セルトラリンを飲むのをやめた方がいいですか?
A.今回の情報を理由に、自己判断で中止しないでください。突然の中止で不安やめまい、頭痛、吐き気などが出ることがあるため、不安な場合は医師・薬剤師に相談します。
Q.「許容摂取量の1.8倍」は、がんになる確率が1.8倍という意味ですか?
A.違います。検出された不純物の量と1日許容摂取量の比較であり、個人のがん発症確率が1.8倍になったことを示す数字ではありません。
Q.OD錠にはニトロソアミンが含まれていないのですか?
A.今回の「アメル」のOD錠では、許容摂取量を超えて検出されたロットが認められなかったとされています。「全く検出されなかった」という説明とは異なります。
Q.先発品や他メーカーに変えれば解決しますか?
A.一律には判断できません。製品ごとに検出結果や供給状況が異なります。変更を希望する場合は、不安の内容を薬剤師に伝え、処方医と相談しながら検討してください。
Q.既に何日か飲むのをやめてしまった場合は?
A.中断した日数、最後に服用した量、体調を医師・薬剤師に伝えて相談してください。飲まなかった分をまとめて飲むことは避けます。
Q.今回の情報を理由に、がんの検査が必要ですか?
A.今回のメーカー文書では、特別ながん検査を求める案内は示されていません。ただし、気になる症状や個別の不安がある場合は医師に相談してください。
Q.2029年10月まで対策されないのですか?
A.当面も暫定管理値以下であることを確認して出荷する方針です。2029年10月は、許容摂取量以下の製品を安定供給するための恒久的な対策を検討する目途として示されています。


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