パドセブ+キイトルーダが欧州で適応拡大|膀胱がんの術前・術後治療、何が変わる?

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オレンジの背景に膀胱と抗体を表現したパドセブ併用療法のイメージ

こんばんは、薬剤師のしぐです。

膀胱がん治療で使われるパドセブとキイトルーダの併用療法について、欧州で治療対象が広がりました。

今回の注目点は、切除可能な筋層浸潤性膀胱がんに対する術前・術後治療が、シスプラチンを使える患者さんにも広がったことです。「進行がんの治療」と「手術を組み合わせて根治を目指す治療」を分けて押さえると、ニュースの意味が見えてきます。

※2026年10月23日時点の公開情報で整理しています。

先に結論|シスプラチン適応の有無を問わない周術期治療へ

  • 欧州で、切除可能な筋層浸潤性膀胱がんの成人患者に対する適応が拡大しました。
  • パドセブ+キイトルーダを術前に投与し、根治的膀胱全摘除術後にも補助療法を続ける治療です。
  • すでに対象となっていたシスプラチン不適応患者に加え、シスプラチン適応患者にも対象が広がりました。
  • 欧州での承認であり、日本の承認適応が同時に変わるわけではありません。

筋層浸潤性膀胱がんとは?手術を省く治療ではない

筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)は、がんが膀胱の筋層まで入り込んだ状態です。切除可能な場合には、手術を中心に薬物療法を組み合わせて根治を目指します。

今回の治療は、術前の薬物療法、根治的膀胱全摘除術、術後の薬物療法を組み合わせる「周術期治療」です。薬が効けば手術が不要になる、と受け取らないことが大切です。

抗体に結合した薬物が細胞に近づくADCの概念イメージ

パドセブはどんな薬?ADCと免疫療法の組み合わせ

パドセブの一般名はエンホルツマブ ベドチン。ネクチン-4を標的とする抗体に、細胞障害性の薬物MMAEを結び付けた抗体薬物複合体(ADC)です。

がん細胞に結合して取り込まれた後、MMAEが放出され、微小管の働きを妨げて抗腫瘍作用を発揮します。

一方、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)は抗PD-1抗体です。免疫にかかるブレーキを解除し、T細胞の抗腫瘍作用を回復させます。異なる作用を持つ注射薬を組み合わせる治療です。

EV-304試験で何が示された?

今回の適応拡大を支えたのが、第Ⅲ相EV-304/KEYNOTE-B15試験です。対象はシスプラチンを使用できる筋層浸潤性膀胱がんの患者さんでした。

項目試験の内容
パドセブ併用群術前・術後のパドセブ+キイトルーダと手術
比較群術前のゲムシタビン+シスプラチンと手術
主要評価項目無イベント生存期間(EFS)
主な副次評価項目全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(pCR)率
評価項目結果
EFSHR 0.53(95%信頼区間0.41~0.70)
OSHR 0.65(95%信頼区間0.48~0.89)
pCR率55.8% 対 32.5%
全原因のGrade 3以上の有害事象75.7% 対 67.2%

EFS、OSともに統計学的に有意な改善が示されました。ただし、HR 0.53を「47%の患者さんが治った」と読み替えることはできません。死亡リスクの35%低下も、生存率が35ポイント上がったという意味ではありません。

pCRは、手術で取り出した組織を調べてがんが認められなかった状態を示す評価です。将来の再発が絶対にないことを保証する指標ではありません。

また、比較は術前・術後を含む治療戦略全体で行われています。この結果だけで、術前投与と術後投与それぞれの効果を切り分けることはできません。

手術の前後に行う薬物療法を表す病院と点滴のイラスト

日本でも同じ治療に使える?

欧州の承認内容を、そのまま日本の診療に当てはめることはできません。

今回確認した国内電子添文の効能・効果は「根治切除不能な尿路上皮癌」です。また、手術の補助療法としての有効性・安全性は確立していないと記載されています。

国内では2026年1月、シスプラチン不適応の筋層浸潤性膀胱がんを対象とした術前・術後補助療法について承認申請が発表されています。申請と承認は別の段階であり、今回の欧州での拡大対象とも区別が必要です。

薬局で確認したい副作用|皮膚・しびれ・血糖・呼吸

注射薬を薬局で調剤していなくても、支持療法薬や普段の薬を通じて患者さんを支える機会があります。以下は、パドセブ治療中に確認したい主な症状です。

確認すること具体的な聞き方・対応
皮膚・粘膜赤み、痛み、水ぶくれ、口や目のただれはないか。特に治療開始早期から確認する
末梢神経障害ボタンを留めにくい、箸を使いにくい、つまずくなど、生活への影響まで聞く
高血糖強い口渇、尿量増加、強いだるさの有無を確認する
呼吸器症状新しい咳、息切れ、発熱があれば、早めに治療施設へ連絡する
眼症状乾燥だけでなく、痛みやかすみ、見え方の変化を確認する

発熱を伴う広範囲の発疹、水疱、粘膜のただれは、重い皮膚障害を疑うサインです。市販薬で様子を見るよう勧めず、速やかな医療機関への連絡・受診につなげます。急な呼吸困難や意識の変化がある場合は、救急対応が必要です。

「新たな安全性シグナルがなかった」ことは、副作用が少ないという意味ではありません。試験では全原因のGrade 3以上の有害事象も多く、安全性への継続した配慮が欠かせません。

保湿剤と記録ノートを並べた副作用フォローのイメージ

しぐ目線|お薬手帳に「点滴の名前と日付」を残したい

薬局で提案したいのは、内服薬だけでなく、点滴薬の名前と最終投与日も共有することです。

例えば「パドセブ+キイトルーダ、最終投与○月○日、次回○月○日」と分かれば、新しい発疹やしびれがいつ出たのか、治療施設に具体的に伝えやすくなります。

併用薬の確認も必要です。パドセブでは、クラリスロマイシンやイトラコナゾールなどの強力なCYP3A阻害剤との併用に注意が必要です。別の医療機関から薬が追加されたときにも、がん治療の情報が役立ちます。

薬局での実務提案として、症状、出現日、生活への影響、投与日との前後関係をまとめて伝える形がおすすめです。患者さん自身が原因薬を判断する必要はありません。

免疫療法を含む治療のフォローは、コチラでも整理しています。

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よくある質問

Q. 今回、パドセブ単剤の適応が広がったのですか?

キイトルーダとの併用療法について、切除可能な筋層浸潤性膀胱がんの術前・術後治療の対象が広がりました。

Q. シスプラチンを使える患者も対象ですか?

今回の欧州承認では対象です。シスプラチン不適応患者への既存適応から広がった点がポイントです。

Q. 膀胱全摘をしなくてよくなるのでしょうか?

今回の治療は根治的膀胱全摘除術を組み合わせる周術期治療です。膀胱温存を示した承認ではありません。

Q. 日本でも周術期治療として承認されていますか?

今回確認した国内電子添文では、効能・効果は根治切除不能な尿路上皮癌です。欧州の承認と日本の適応は分けて確認する必要があります。

Q. 点滴薬でも薬局で相互作用を確認する必要がありますか?

必要です。普段の薬や他院で追加された薬も含め、治療施設と情報を共有することが大切です。

まとめ

パドセブ+キイトルーダの欧州での適応拡大は、切除可能な筋層浸潤性膀胱がんの周術期治療が、シスプラチンを使える患者さんにも広がったニュースです。

治療選択肢の広がりを押さえるとともに、日本の承認状況、皮膚症状やしびれ、血糖、呼吸器症状、併用薬まで確認し、日常の薬局フォローにつなげていきたいですね。

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