
こんにちは、薬剤師のしぐです。
医薬品からニトロソアミン類が検出されたというニュースを、繰り返し目にするようになりました。薬局では、回収対象の確認だけでなく、「いつも使っている薬は大丈夫?」「飲み続けてよい?」という相談にも向き合います。
一方で、必要な薬が届かなくなれば、治療の継続にも影響します。品質の確保と安定供給を、どう両立させるか。そんな課題に対し、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会が「原薬のニトロソアミン類管理と運用の提言」をまとめています。
先に押さえたいのは、次の3点です。
- 提言は、安全な医薬品を継続して届けるため、科学的根拠に基づく管理・運用の見直しを求めるものです。
- 前駆体の評価範囲、リスク区分、保管中の生成、サプライチェーン、審査体制について5つの提言が示されました。
- 学会の提言だけで、国の管理基準や個別製品の回収判断が変わったわけではありません。
※情報確認日:2026年10月24日。提言書の日付は2026年9月20日です。10月23日の報道日とは区別して扱います。
ニトロソアミン類とは?医薬品の品質管理で問題になる理由
ニトロソアミン類は、アミン類と亜硝酸塩などが反応して生成する化合物の一群です。医薬品の管理では、発がんリスクが懸念される不純物として、混入や生成をできるだけ抑える対応が続いています。
代表例はNDMAやNDEAです。さらに、薬の有効成分に由来する構造を持つ「ニトロソアミン原薬関連不純物(NDSRIs)」も課題になっています。NDSRIsでは、物質ごとの分析法や毒性評価が必要となる場合があり、従来の一部の不純物を調べるだけでは対応が完結しません。
注意したいのは、「検出された」という情報だけでは、患者さんへの健康影響や回収の要否は決められないことです。物質の種類、含有量、薬の使用量や使用期間、当局の評価、メーカーの対応まで確認する必要があります。

なぜ今、管理と運用の見直しが提言されたのか
学会が問題としているのは、高感度分析や追加試験、製造方法変更、薬事手続などの負担が積み重なり、供給にも影響するおそれがある点です。
微量の不純物を測定するには、分析機器だけでなく、標準品、測定条件、熟練した人材も必要です。また、原薬の段階で問題がなくても、製剤化の工程や保存中にニトロソアミン類が生成・増加する可能性があります。
そのため、原薬だけを調べて管理を終えることも、すべての物質・工程を一律に扱うことも、課題を残します。生成しやすさと実測データを踏まえ、重点的に管理すべきところに資源を配分する考え方が求められています。
学会が示した5つの提言
以下は、提言の内容を実務向けに要約したものです。
| 提言 | 求めていること | 押さえたい意味 |
|---|---|---|
| 1.評価対象となる前駆体範囲の明確化 | 化学構造や反応性を踏まえ、評価すべき物質の範囲を整理する | ニトロソアミンのもとになり得る物質を、科学的に見極める |
| 2.リスク区分と段階的な管理レベルの設定 | 構造、反応性、生成実績、使用量などから管理の強度を設定する | 高リスクには重点管理、低リスクには合理的な管理を行う |
| 3.製剤工程や保管中の生成リスクに応じた合理的管理 | 許容限度値や長期安定性試験の結果などを踏まえ、変動許容量を設定する | 保存中に増える可能性まで見込んだ管理を考える |
| 4.サプライチェーン全体での管理体制の構築 | 原薬・製剤に加え、溶媒、試薬、中間体、包装資材などの関係者が連携する | 原薬メーカーだけに閉じない対策を進める |
| 5.審査体制の強化による安定供給の確保 | 専門審査官の増員、審査期間の標準化、判断基準の明確化を進める | 品質改善や供給確保のための変更を円滑にする |
特に3つ目は、出荷時点の測定だけでなく、製剤工程や保存期間中の変化まで考慮する提案です。「少し増えても一律に問題ない」と読み替えることはできません。許容限度値や安定性のデータを踏まえた管理の設計が前提です。
4つ目では、生成要因や分析ノウハウを共有する全国的なデータベース、いわゆるナレッジバンクの整備も提案されています。同じ課題に各社が個別に対応し続ける負担を減らし、再発防止へつなげる方向です。

「提言」と「現在のルール」は分けて確認する
今回の提言は、学会から制度運用の検討を求めるものです。薬局が独自に限度値を変更したり、回収対象品を使用したりする根拠にはなりません。
厚生労働省は2025年7月24日の通知で、自主点検の期限にかかわらず、ニトロソアミン類の混入リスクを引き続き適切に管理するよう求めています。新規承認、混入に影響すると考えられる製造方法・処方・一次包装の変更、新たな知見が得られた場合などには、その都度評価し、必要なリスク低減措置や薬事手続を検討する必要があります。
つまり、点検の期限が過ぎたから対応が終わるわけではありません。継続的な品質管理の中で、新しい知見に応じて更新していく課題です。
薬局では「検出」「回収」「供給」を別々に確かめる
実務で大切なのは、ニュースの見出しから自局の対応へ落とし込むことです。
| 確認する情報 | 薬局での具体的な確認 |
|---|---|
| 対象製品 | 販売名、メーカー、規格、剤形、包装、対象ロット |
| 品質・健康影響 | 検出物質、測定結果、限度値・暫定管理値の位置づけ、当局やメーカーの評価 |
| 回収の有無 | 回収通知、対象範囲、返品方法、患者さんへの案内方法 |
| 供給状況 | 出荷制限、在庫、卸の納期、代替品の入手見込み |
| 患者さんへの対応 | 手元の薬、自己中断や飲み控えの有無、処方医への相談、説明内容の記録 |
「検出のお知らせ」と「自主回収のお知らせ」は同じ意味ではありません。また、回収がなくても、供給制限や品質改善に関する追加案内が出る場合があります。それぞれの正式な案内を確認したいところです。
個別事例は、コチラでも整理しています。製品ごとに対応が異なることを理解する入口になります。



患者さんへの説明は、確認できた対応まで伝える
「発がん性が心配される物質」という言葉だけでは、不安が強くなるのも自然です。そこで説明を止めず、その方の薬が対象なのか、回収があるのか、次に何をするのかまで伝えることが大切です。
例えば、相談を受けた最初の説明は次のようにできます。
「薬の品質に関わるお知らせなので、お使いの製品名と製造番号を確認します。検出された量や回収の有無によって対応が変わります。自己判断で中止・廃棄せず、まず手元のお薬を確認させてください。必要な交換や処方医への相談も一緒に進めます。」
健康影響を一律に断定せず、個別製品の公式な評価と指示に合わせて説明します。回収品であれば回収対応を進め、治療が途切れないよう代替品や処方について調整します。
薬局の視点:品質管理の先にある「治療を続けられること」
供給不足が起きると、薬局では代替品の確保、処方医への照会、剤形変更の説明などが必要になります。患者さんにとっては、慣れた薬の変更や、必要な薬を受け取れない不安につながります。
だからこそ、今回の提言は製造現場だけの話ではありません。品質のリスクを適切に管理し、必要な薬を届け続ける仕組みは、薬局での治療支援にもつながります。
実務では、品質上の評価、回収への対応、供給見通し、治療継続の支援を、それぞれ具体的に確認することが重要です。患者さんの不安を受け止めながら、確認した事実と次の行動をつなげていきたいですね。
よくある質問
Q.今回の提言で、国の管理基準は変わったのですか?
学会の提言が公表されたことだけで、国の管理基準が改正されたとはいえません。個別製品への対応は、現行の通知や当局・メーカーの正式な案内に基づいて判断します。
Q.ニトロソアミン類が検出された薬は、すべて回収されますか?
検出の有無だけでは決まりません。含有量や健康影響の評価などを踏まえ、製品ごとの回収・継続供給の対応を確認します。
Q.飲んでいる薬を、念のため中止した方がよいですか?
自己判断で中止せず、薬局や処方医へ相談してください。対象製品かどうかを確認し、個別の正式な指示に沿って、交換や治療継続の方法を調整します。
Q.ジェネリック医薬品だけの問題ですか?
ニトロソアミン類の管理は、ジェネリック医薬品だけに限られる課題ではありません。先発・後発という区分だけで安全性を判断せず、製品ごとの品質情報を確認する必要があります。
Q.薬局でニトロソアミンを測定する必要がありますか?
今回の提言が、薬局に一律の分析試験を新たに求めたものではありません。薬局では、製品・ロット確認、正式な回収対応、保管条件の遵守、患者さんへの説明などが実務の中心になります。


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