こんばんは、しぐです。
医療用麻薬の紛失。薬を扱う立場として、見過ごせないニュースです。
2026年10月28日、水戸済生会総合病院で、緊急手術に使う医療用麻薬の紛失が明らかになったと報じられました。
ただ、ここで大切なのは、重大な出来事として受け止めながら、確認されていない原因を決めつけないこと。そして、自分たちの現場でも同じことが起こらないか、具体的に点検することだと思います。
報道された経過を振り返りながら、麻薬が見当たらないときの対応と、薬局・病院で見直したい管理のポイントを考えます。
※2026年10月28日時点の情報です。

何が起きた?報道で確認できる経過
共同通信の配信記事によると、紛失したのは緊急手術に使用する5種類の麻薬です。手術室などに計5組を保管しており、10月18日の手術で1組を使い、翌19日に担当者が補充しようとした際、数が足りないことに気づいたとされています。
| 日付 | 報道された内容 |
|---|---|
| 10月18日 | 手術で1組を使用 |
| 10月19日 | 補充時の数量確認で不足が判明 |
| 10月22日 | 保健所に麻薬事故届を提出 |
| 10月23日 | 茨城県が立入検査を実施 |
| 10月26日 | 茨城県警水戸署に相談 |
| 10月28日 | 病院による発表が報じられる |
医療廃棄物を回収するなどの捜索も行われていますが、配信時点では発見に至っていないと報じられています。
ここで、5種類という情報から「5本なくなった」とは読み替えられません。確認した報道には、各薬剤の名称・規格・正確な本数や総量の詳細は示されていません。
また、紛失が分かった日と、実際に所在が分からなくなった日は同じとは限りません。警察に相談したという事実だけで、盗難が確定したと解釈することもできません。原因、第三者への流出、患者への影響についても、本記事で確認した情報からは断定できません。
今回の経過は、共同通信の報道に基づいています。

医療用麻薬の紛失を重く受け止める理由
医療用麻薬には、がんの痛みなどを和らげるために欠かせない薬があります。一方、オピオイド鎮痛薬では呼吸抑制などの重い副作用に注意が必要です。適切な処方と観察、保管を含めて安全に使う必要があります。
管理中の薬の所在が分からなければ、誤使用や不適切な持ち出しの可能性、必要な治療への影響などを確認する必要があります。今回の報道だけでは、こうした被害の有無は分かりません。
私が特に気になるのは、「どこで、何が、どれだけ動いたか」を説明できなくなることです。金庫の中だけ正しくても、払い出し、使用、返却、補充の途中がつながっていなければ、管理の全体像は見えません。
医療用麻薬への不安が、必要な治療を避ける理由になってしまうことも避けたいところです。薬を適切に使う価値と、その薬を確実に管理する責任は、どちらも伝える必要があります。
麻薬が見当たらないときの初動
病院・診療所における麻薬管理マニュアルでは、管理する麻薬に滅失、盗取、所在不明などの事故が生じたときは、麻薬管理者等が、品名・数量・状況を明らかにして速やかに都道府県知事へ届け出るとされています。盗取された場合には、警察への届出も必要です。
薬局についても、麻薬小売業者が所有する麻薬の所在不明等には、速やかな事故届が求められます。
「もう少し探したら出てくるかもしれない」。現場では、そう考えることもあると思います。ただ、原因が全部分かるまで相談を待つ運用は、見直す必要があります。茨城県の事故防止資料も、事故発生時には速やかに管轄保健所へ相談するよう案内しています。
以下は、これらの制度を踏まえた現場向けの対応案です。各施設の手順と管轄行政の指示に沿って実施してください。
まず数量と記録を照合する
実物を数え直し、薬剤名、規格、剤形、数量、保管場所を整理します。帳簿、処方・施用記録、払出・返却記録などを照合し、単なる記録の遅れなのか、実物の所在が分からないのかを確認します。
その際は、推測で帳簿を書き換えて残数を合わせないこと。発見した時刻、最後に一致を確認した時点、誰が何を確認したかを記録します。記録の訂正が必要な場合も、元の内容と訂正理由を追える形にします。
責任者への報告と行政への相談を進める
病院では麻薬管理者等、薬局では管理薬剤師・開設者など、施設の責任体制に沿って速やかに共有します。麻薬管理者と管理薬剤師は制度上の役割が異なります。自施設で誰が届出や相談を担うのか、普段から確認しておきましょう。
不足している薬の情報、発覚日時、最終確認時点、すでに行った確認をまとめ、管轄保健所等へ相談します。盗難が疑われる事情がある場合は、その情報も伝え、警察への連絡を含めて対応します。法令上の届出と、施設内のインシデント報告は別に必要となり得ます。
記録を保全し、安全に確認する
払出記録や入退室記録などは、後から確認できるよう保全します。盗難が疑われる場合は、現場保存にも配慮します。
廃棄物の確認が必要でも、針刺しや感染の危険があるため、個人でごみ袋を開けて探す対応は避けます。管理責任者、感染対策・廃棄物担当者などと連携し、安全な手順を決めます。

「セットで管理しているから安心」を点検する
今回の原因はまだ分かりませんが、報道をきっかけに、セット管理の仕組みも振り返っておきたいところです。
緊急時に使う薬をセット化することには、準備を速くし、取りそろえの漏れを減らす意味があります。しかし、「セットがある」という確認と、「中身が規定どおりそろっている」という確認は別です。
| 場面 | 点検したいこと |
|---|---|
| セット作成 | 薬剤名・規格・数量・使用期限を確認できるか |
| 払い出し | いつ、誰に、どのセットを渡したか残るか |
| 使用後 | 使用・未使用返却・残液等を区別して説明できるか |
| 補充 | 不足分の根拠と、補充後の構成を確認できるか |
| 引き継ぎ | 未処理の返却や数量不一致が伝わるか |
「ケースが戻ってきたから返却済み」「あとでまとめて記入する」。こうした運用が混じると、差が出た際の確認範囲が広がります。
提案したいのは、業務の区切りで実物と記録を結びつけることです。セットごとに識別できる運用、受け渡し時の数量確認、未使用返却と使用後の残液を分ける仕組みなどを、施設の体制に合わせて検討します。
一律に確認回数を増やすだけでは、忙しい時間帯に形骸化する心配もあります。「何を見て一致と判断するか」「不一致なら誰へ連絡するか」まで決めることが大切です。

薬局でも確認したい5つのポイント
病院の手術室のニュースですが、保険薬局にも関係があります。調剤、交付、患者さんからの返却、廃棄の流れのどこでも、実物と記録の対応が必要だからです。
次の項目は、日常業務を振り返るための点検案です。すべてを一律の法定義務として示すものではありません。
- 実在庫と帳簿を照合するタイミング、担当者が明確か。
- 箱の中の端数や、規格違いを見落とさない確認になっているか。
- 返却された薬の受け取りと記録、その後の管理がつながっているか。
- 廃棄の区分と手続きを、自己判断で済ませていないか。
- 夜間や責任者不在時も、不一致を報告できる連絡先があるか。
茨城県は、端数が残った箱を空箱として捨てた可能性が高い事例や、必要な手続きを経ずに廃棄した事例を紹介しています。返却時の在庫確認、箱の中身の確認、廃棄手順の再教育が対策として挙げられています。
特に廃棄は、「使わなかった薬だから全部同じ」とは扱えません。未調剤の在庫、患者さんから返却された調剤済みの薬、施用後の残りなどでは手続きが異なります。不明な場合は、捨てる前に管轄行政へ確認することが大切です。

患者さんから「薬がない」と相談されたら
施設が管理する麻薬の紛失と、交付後に患者さんが自分で管理していた麻薬の紛失は、同じ扱いとは限りません。病院の管理から完全に離れている場合について、国のマニュアルは施設側の事故届を要しない場合を示す一方、事情を確認し、盗難等の可能性が高い場合は行政・警察へ連絡するよう示しています。
相談を受けたら、「最後に使ったのはいつか」「どこに置いていたか」「いつから何回分が見当たらないか」などを、責めずに確認します。残数の不一致が、紛失なのか、飲み方の行き違いなのかも丁寧に整理します。
そのうえで、処方元と連携し、治療が途切れないための対応を検討します。「なくしたなら家族の薬を使う」「不足分を自己判断で増減する」といった対応は避けていただきます。
声をかけるなら、例えばこんな言い方がよいと思います。
「薬が見当たらないと不安ですよね。最後に確認した場所や、残っている量を一緒に整理しましょう。これからの治療についても、処方元と相談します」
管理の厳格さと、相談しやすさは両立させたいところです。
薬剤師として思うこと
今回の報道は、私も重く受け止めています。ただ、外から確認できる情報が限られる中で、特定の職種や担当者の不注意と決めつけることはできません。
再発防止で考えたいのは、「注意してください」で終わっていないかということです。どの受け渡しで確認するか。記録が遅れたとき、どう把握するか。数が合わなかったとき、忙しくても止まって報告できるか。
薬剤師が担えるのは、帳簿を整えることだけではありません。実際の仕事の流れを見て、無理なく続けられ、異常があれば早く分かる仕組みを一緒につくることだと思います。

よくある質問
Q1.警察に相談したということは、盗難ですか?
そうとは限りません。確認した報道は、紛失と警察への相談を伝えています。盗難が確定したという情報としては扱えません。
Q2.5種類とは5本という意味ですか?
種類と本数は別です。薬剤名・規格・本数の詳細は、今回確認した報道では分かりません。
Q3.原因が分かるまで、事故届を待ってよいですか?
所在不明等の事故は速やかな届出の対象です。捜索だけを続けず、施設の責任者への報告と管轄行政への相談を進めてください。
Q4.数が合わないので、帳簿の数字を直してよいですか?
実物との不一致を消すために数字を合わせる対応は避けます。記録漏れや誤記の有無を確認し、訂正が必要なら理由と経過が追えるようにします。
Q5.患者が自宅でなくした場合も、施設の紛失と同じですか?
管理主体や状況で扱いが異なります。自己判断で一律に処理せず、処方元・薬局で事情を確認し、必要に応じて行政へ相談します。
Q6.このニュースを見て、医療用麻薬をやめた方がよいですか?
紛失の報道は、適切な治療を受けている患者さんが薬を中止する理由にはなりません。自己判断で変更せず、不安は医師・薬剤師へ相談してください。
おわりに
医療用麻薬の紛失は、重く受け止めるべき出来事です。同時に、原因や責任については、確認された情報に沿って考える必要があります。
このニュースを、自分たちの現場の「実物」「記録」「受け渡し」「異常時の連絡」がつながっているかを確かめる機会にしたいと思います。必要な薬を、必要な患者さんに、安全に届け続けるために。


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