
こんばんは、薬剤師のしぐです。
2026年10月7日の中医協総会では、ヒブサーゴ皮下注150mgシリンジを「保険医が処方箋を交付できる注射薬」と「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤」に追加する案が示されました。
これは、B型肝炎の治療を日々の生活の中で続けるうえで、注目したい変化です。新しい薬の登場だけでなく、どう使い、どう支えるかという治療の仕組みも動いてきましたね。
ただし、在宅自己注射の対象へ進むことと、誰でもすぐに自宅で注射できることは別です。医師による導入判断と十分な指導、そして治療中の検査が前提になります。
今回は、ヒブサーゴの特徴と、自己注射を支える薬局で押さえておきたいポイントを整理します。
ヒブサーゴが在宅自己注射の対象へ|何が変わる?
今回の中医協資料で示された追加案には、次の2つの意味があります。
| 追加の対象 | 実務での意味 |
|---|---|
| 保険医が処方箋を交付できる注射薬 | 院外処方を含め、患者さんへの交付につながる制度上の位置付け |
| 在宅自己注射指導管理料の対象薬剤 | 医療機関が自己注射の指導・管理を行う際の対象薬剤としての位置付け |
「在宅自己注射指導管理料」は、医療機関側の診療報酬です。薬局でヒブサーゴを調剤したら、この管理料を算定するという話ではありません。
また、中医協の追加案と実際の適用開始を定める告示・通知は分けて確認する必要があります。本記事は2026年10月14日時点で確認できた中医協資料をもとに整理しており、具体的な適用開始日は断定していません。
制度の対象になっても、患者さんごとの自己注射の適否は主治医が判断します。注射の手技だけでなく、保管、投与日、異常時の連絡、使用済みシリンジの処理まで含めて準備することが大切です。
ベピロビルセンナトリウム〈ヒブサーゴ〉はどんな薬?
ヒブサーゴは、B型肝炎治療用のアンチセンス核酸医薬です。2026年8月24日に「B型肝炎ウイルス持続感染における機能的治癒」を効能・効果として承認されました。
B型肝炎ウイルスが作るRNAを標的にすることで、ウイルス関連のタンパク質などの産生を減らし、HBs抗原の低下を目指します。
ここで注目したいのは、治療の目標に「機能的治癒」が掲げられていることです。
「機能的治癒」は、ウイルスを完全に消すことと同じ?
機能的治癒は、すべての治療を中止した後も、一定期間にわたり血中のHBV DNAとHBs抗原が検出されない状態を維持する、という考え方です。GSKの承認発表では、その期間を少なくとも24週間としています。
体内のウイルス由来のものを完全に排除したと断定する意味ではありません。また、治療によって他の人への感染を防げることが証明されたわけでもないため、感染予防の対応を自己判断でやめることはできません。
「治癒」という言葉は、患者さんにとって大きな希望になると思います。その分、薬局では、期待を大切にしながら言葉の意味を丁寧に伝えたいですね。

治療成績は、全員が治るという意味ではない
GSKが公表した第III相試験の統合解析では、対象となった患者集団における機能的治癒の達成割合は、ベピロビルセン群で19%、プラセボ群で0%でした。
この結果は新しい治療への期待を持てるものですが、全員が機能的治癒に到達するという意味ではありません。検査値などの条件を満たす患者さんを対象とした臨床試験の結果であり、そのままB型肝炎の患者さん全体に当てはめることもできません。
薬の説明では、「治ります」と言い切るよりも、「条件を確認しながら、機能的治癒を目指す治療です」と伝える方が、実際の治療に沿った説明になります。

投与スケジュールに注意|1回はシリンジ2本
ヒブサーゴの通常の成人用量は、1回300mgの皮下注射です。製品は150mgシリンジなので、通常は1回の投与に2本を使用します。
| 治療の時期 | 通常の投与頻度 | 1回の通常投与量 |
|---|---|---|
| 1~2週目 | 3~4日ごとに週2回 | 300mg=150mgシリンジ2本 |
| 3~24週目 | 週1回 | 300mg=150mgシリンジ2本 |
同じ曜日に投与することが望ましいとされています。副作用などにより休薬や用量調節が行われる場合は、処方された内容を優先します。
薬局で特に気を付けたいのは、「1回2本」と「3週目から週1回」の2点です。
「週1回の注射」とだけ覚えてしまうと、最初の2週間の投与を誤る可能性があります。逆に、開始時の週2回をそのまま続けてしまうことも防ぎたいところです。
投与日をカレンダーに書き込むときは、注射をする日だけでなく、週1回に切り替わる日も一緒に確認すると分かりやすくなります。これは薬局でできる、地味ですが大切な支援だと感じます。
投与を忘れたときは?
添付文書では、忘れたことに気付いたら可能な限り速やかに投与し、次の予定日まで3日間未満の場合は、その回は投与せず次回を予定どおり行うとされています。
患者さんには、あらかじめ医療機関から示された対応を確認してもらい、日程が分からなくなった場合や投与間違いがあった場合は、追加で注射する前に処方元へ相談してもらいます。
内服薬は必ず併用|注射が終わっても自己判断で中止しない
ヒブサーゴは、核酸アナログと必ず併用する薬です。「注射を始めたので、今までの飲み薬は不要になる」という治療ではありません。
添付文書では、ヒブサーゴの24週間の投与が終わった後も、核酸アナログをさらに24週間継続するとされています。その後、検査値などの条件を満たした患者さんでは、医師が核酸アナログの中止を検討できます。
つまり、注射の終了日と内服薬の終了日は同じとは限りません。
自己注射の説明に時間がかかると、今までの内服薬の確認が後回しになりがちです。しかし、この薬では併用する内服薬も治療の重要な一部です。
「注射は予定どおりできていますか?」に加えて、「飲み薬も続けられていますか?」まで確認したいですね。注射が終了した後の薬歴にも、核酸アナログの継続状況と医師の方針を残しておくと、次の対応につながります。

自宅で注射しても、検査と通院は必要
在宅自己注射という言葉から、「病院へ行かなくても治療できる」と受け取られることがあります。しかし、ヒブサーゴでは、治療の反応と安全性を確認するための定期的な検査が欠かせません。
| 確認する項目 | 主な目的 |
|---|---|
| HBs抗原量 | 治療の反応を確認する |
| ALT・総ビリルビン | 肝機能の変化を確認する |
| 血小板数 | 血小板減少を確認する |
| eGFR・尿検査 | 腎機能や尿の異常を確認する |
例えば、ALT・総ビリルビンは、投与開始後12週間までは毎週、その後24週間までは2週間に1回の検査が添付文書に示されています。異常があれば、検査頻度の変更や休薬などが必要になることもあります。
自宅で注射できるようになっても、検査を受けるための通院が続く可能性があります。通院負担がどこまで減るかは、診療体制と患者さんの状態によって異なります。
薬局では、注射を実施できたかだけでなく、次の受診日や検査予定も確認しておくとよさそうです。
使用できる患者さんにも条件がある
ヒブサーゴの使用には、開始前の核酸アナログ治療歴やHBs抗原量、HBV DNA量などの条件があります。また、肝硬変のある患者さんや、投与開始前の血小板数が10万/μL未満の患者さんなどには禁忌です。
新薬のニュースを見て「自分も使いたい」と思った場合も、適応は専門的な評価が必要です。薬局からは、現在の治療を継続したうえで、主治医へ相談するよう案内するのが基本になります。

薬局で確認したい、在宅自己注射の5つのポイント
1.投与日と必要本数を一緒に確認する
開始から何週目か、1回何本使うか、次にいつ投与するかを確認します。残薬があれば、処方された本数と実際の使用状況が合っているかも見ておきます。
「残っている本数」だけでは、予定どおり使えているかは分かりません。投与日とセットで確認することが大切です。
2.冷蔵保管を、生活の中でできる形にする
貯法は2~8℃です。薬局内の冷蔵管理に加えて、持ち帰り方と帰宅後の保管場所を確認します。
「冷蔵庫に入れてください」だけで終わらせず、帰宅までの時間や、その後の外出予定も聞いておくと、説明が具体的になります。凍結や温度逸脱が疑われる場合は、自己判断で使用せず、薬局や医療機関に相談してもらいます。
3.自己注射の手技は、製品ごとの資材で確認する
自己注射の経験があっても、別の薬で使い慣れた操作をそのまま当てはめることはできません。製品の説明資材と医療機関で受けた指導に沿って確認します。
薬局では「説明は受けましたか?」だけでなく、「実際に自分で操作して、できることを確認しましたか?」「不安が残っているところはありますか?」と聞くと、困りごとを拾いやすくなります。
注射器・注射針の交付に関する制度の整理は、インスリン注射器・注射針の交付で薬局の許可は必要?でもまとめています。こちらはインスリン用製品の条件を扱った記事なので、その例外を他の自己注射製品に一律に当てはめない点にも注意が必要です。
4.異常時の連絡先を決めておく
注射部位の変化に加えて、出血しやすさ、強い体調変化などがあった場合に、どこへ連絡するかを共有しておきます。
異常な出血や脳出血を疑う症状では、速やかな受診が必要です。緊急性が高い症状は、薬局の営業時間を待ってもらう対応にはしません。
薬局でのフォローは、症状を聞くだけで終えるのではなく、必要なときに医療機関へつなぐところまで含めて考えたいですね。
5.使用済みシリンジの処理方法を共有する
使用済みのシリンジは、医療機関から指示された方法で処理します。回収先と容器を確認し、家庭ごみとして自己判断で捨てないよう説明します。
薬局で回収する運用にする場合も、処方元と回収方法を事前にすり合わせておくと、患者さんが迷わずに済みます。
まとめ|治療への希望を、自宅で続けられる支援につなげたい
ベピロビルセンナトリウム〈ヒブサーゴ〉は、B型肝炎ウイルス持続感染の機能的治癒を目指す新しい治療薬です。在宅自己注射の対象へ進む動きは、治療の選択肢を日常生活につなげるうえでも注目したいニュースです。
一方で、実際の治療では、1回2本の注射、途中で変わる投与頻度、核酸アナログの継続、冷蔵保管、定期検査と、確認することが少なくありません。
新しい薬が登場すると、作用機序や治療成績に目が向きます。でも、患者さんが治療を続ける場面では、「次はいつ注射するんだっけ」「飲み薬はまだ必要?」「この症状は相談していい?」という疑問も、とても大きいはずです。
こうした疑問を一つずつ整理できることが、身近な薬局の強みだと思います。治療への期待を、実際に続けられる安心につなげる。今回のニュースは、薬局が関わる意味も改めて考えさせてくれますね。

よくある質問
Q.ヒブサーゴは飲み薬ですか?
皮下注射の薬です。通常は1回300mgなので、150mgシリンジを2本使用します。核酸アナログの内服治療と併用します。
Q.最初から週1回の注射ですか?
最初の1~2週目は3~4日ごとに週2回、3週目以降は24週目まで週1回です。医師が用量などを変更した場合は、その指示に従います。
Q.ヒブサーゴを使えば、B型肝炎は必ず治りますか?
必ず機能的治癒に到達するわけではありません。適応条件と治療への反応を、検査で確認しながら使う薬です。
Q.24週間の注射が終われば、飲み薬もやめられますか?
自己判断では中止できません。添付文書では、注射終了後も核酸アナログをさらに24週間継続し、その後に条件を満たす患者さんで中止を検討できるとされています。
Q.在宅自己注射なら、通院は不要ですか?
定期的な診察・検査は必要です。自己注射の導入にも、医師による判断と十分な指導が必要になります。
Q.薬局でも在宅自己注射指導管理料を算定できますか?
在宅自己注射指導管理料は医療機関側の診療報酬です。薬局の調剤報酬とは分けて考えます。


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