フィブラストスプレーを美容目的で使わないで|適応外使用で健康被害、科研製薬が注意喚起【2026年】

こんにちは、薬剤師のしぐです。
これは少し気になるニュースです。
2026年9月11日、褥瘡・皮膚潰瘍治療薬の
「フィブラストスプレー250/500」
について、美容目的での適応外使用が繰り返され、健康被害も発生しているとして、製造販売元の科研製薬が注意喚起していることが報じられました。
フィブラストといえば、褥瘡などの治療で使われるスプレー剤。
それがなぜ「美容目的」で使われているのでしょうか。
今回は、
- フィブラストスプレーとはどんな薬なのか
- 本来どんな患者さんに使う薬なのか
- なぜ美容目的で使用されているのか
- なぜ安易に使用してはいけないのか
- 薬局薬剤師として何を確認したいのか
このあたりを整理します。
まず最初に、大切なことを。
フィブラストスプレーには、美容を目的とした効能・効果は承認されていません。
「傷を治す薬だから肌にもよさそう」
というイメージだけで使用する薬ではありません。
フィブラストスプレーとは?
フィブラストスプレー250/500の一般名は、
トラフェルミン(遺伝子組換え)
です。
遺伝子組換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子、いわゆる
bFGF(basic Fibroblast Growth Factor)
の製剤です。
細胞の増殖などに関わる成長因子を利用することで、創傷治癒を促します。
フィブラストという商品名を知らなくても、
「褥瘡にシュッとするスプレー」
と言えば、薬剤師ならピンとくる方も多いのではないでしょうか。
フィブラストの正式な効能・効果

PMDAの電子添文で確認できる効能・効果は、
褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)
です。
つまり、
シミを薄くする
肌をきれいにする
若返り
美容目的の皮膚治療
などは、承認された効能・効果ではありません。
また用法・用量もきちんと決められています。
潰瘍面を清拭したあと、専用の噴霧器を使用して原則1日1回噴霧します。
「スプレーだから気軽に使える外用薬」
という位置づけではないんですね。
なぜ美容目的で使われるの?
ここで疑問なのが、
なぜ褥瘡治療薬が美容目的で使われるのか?
というところ。
背景として考えられるのが、フィブラストの作用です。
トラフェルミンは線維芽細胞などに作用する成長因子です。
創傷治癒に関わる薬であることから、美容医療の領域で創傷治癒などを期待して適応外で使用されるケースがあります。
ただし、
「創傷治癒を促す作用がある」=「美容目的に有効性・安全性が確認されている」
ではありません。
ここは、かなり大切です。
医薬品には、
「何に使うのか」
「どのくらい使うのか」
「どのように使うのか」
が承認されています。
本来とは異なる目的・方法で使用した場合、承認時に確認された有効性・安全性をそのまま当てはめることはできません。
美容目的の適応外使用で「健康被害」
そして今回、特に注目したいのがここ。
2026年9月11日の報道では、
フィブラストスプレーの美容目的での適応外使用が後を絶たず、健康被害も発生している
として、科研製薬が注意喚起したとされています。
単に、
「適応外使用が確認された」
というだけではないんですね。
実際に健康被害が発生している。
ここは重く受け止める必要があります。
一方、現時点で確認できる公表情報からは、その健康被害の具体的な症状や件数などを十分に確認できません。
そのため、
「○○という重大な副作用が起きた」
などと推測して広げないことも重要です。
今後、科研製薬やPMDAなどから追加情報が公表された場合には、この記事でも追記していきます。
フィブラストは「成長因子」の薬

ここは薬剤師として押さえておきたいポイントです。
トラフェルミンは、
細胞増殖に関係する成長因子を利用した医薬品
です。
承認時のPMDA審査資料でも、血管内皮細胞や線維芽細胞に対する増殖因子であることから、安全性について慎重な検討が行われています。
現在の電子添文でも、
投与部位に悪性腫瘍がある患者、またはその既往歴がある患者への使用について注意が必要
とされています。
「外用薬だから大きな問題にはならない」
と考えるのではなく、
薬理作用を理解したうえで、承認された方法に沿って適正に使用することが重要な医薬品
だと思います。
「傷を治す薬だから美容にも」は危険
医薬品の適応外使用を考えるとき、
「作用として効きそう」
と
「有効性と安全性が確認されている」
は別の話です。
例えば、
「組織を修復する」
「細胞増殖に関わる」
「創傷治癒を促進する」
と聞くと、
美容医療と相性がよさそうに感じるかもしれません。
でも、
薬理作用だけを切り取って使用目的を広げることはできません。
今回の注意喚起は、この点を改めて考えるきっかけになりそうです。
薬局でフィブラストの処方を受けたら?
では、保険薬局ではどう考えればよいでしょうか。
フィブラストスプレーが処方されているからといって、
すぐに「美容目的では?」と疑う必要はありません。
褥瘡や皮膚潰瘍に対して適切に処方されている患者さんも当然います。
ただ今回の注意喚起を踏まえると、
処方背景が分かりにくい場合や、患者さんとの会話の中で美容目的であることが判明した場合には、
使用目的を確認する視点
は持っておきたいところです。
また患者さんから、
「顔にも使えますか?」
「傷跡をきれいにするために使えますか?」
「美容にいいと聞いたんですけど」
と相談されることも考えられます。
その場合、
フィブラストは美容目的で承認された医薬品ではない
ことをきちんと伝えることが大切です。
残薬の自己判断使用にも注意
個人的に薬局で注意したいのが、
以前処方されたフィブラストの残薬。
褥瘡や皮膚潰瘍の治療が終わったあと、
「まだ残っているから別の傷に使おう」
「肌にもよさそうだから使ってみよう」
という自己判断につながる可能性があります。
フィブラストは処方箋医薬品です。
残った医薬品を本来とは異なる目的で使用するのではなく、使用について迷った場合には医師・薬剤師へ相談するよう説明しておきたいですね。
適応外使用と副作用被害救済制度
もうひとつ知っておきたいのが、
医薬品副作用被害救済制度との関係。
一般論として、医薬品副作用被害救済制度は、医薬品を適正な使用目的に従って適正に使用したにもかかわらず、重篤な健康被害が生じた場合などを対象とする制度です。
そのため、
適応外使用では、使用状況によって救済給付の対象とならない可能性があります。
オゼンピック(セマグルチド)の本来の適応・用法はこちらで解説しています

「医療機関で使った薬だから、何かあっても必ず救済制度の対象になる」
とは限りません。
美容医療で医薬品を使用するときには、こうした点も含めて十分な説明が必要だと思います。
薬局薬剤師が確認したいポイント

今回のニュースを受けて、薬局で意識しておきたいのは、
①本来の適応を知っておく
フィブラストの承認された効能・効果は、褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)。
②使用目的を確認する
処方背景が不明瞭な場合には、患者さんとの会話から使用目的を確認。
③美容目的の使用を安易に勧めない
「傷を治す薬だから美容にもよい」という説明は避ける。
④残薬の転用にも注意
過去に処方されたフィブラストを自己判断で美容目的などに使わないよう説明。
⑤健康被害が疑われたら確認・報告につなげる
適応外使用が疑われ、なおかつ健康被害が生じている場合には、医療機関や製造販売業者への情報提供など、必要な対応につなげる。
この5点でしょうか。
美容医療×医療用医薬品は今後も要注意
GLP-1受容体作動薬については、トルリシティの記事でも詳しく解説しています

今回のフィブラストだけの話ではありません。
近年は、
医療用医薬品が本来の承認目的とは異なる美容・痩身目的で使用されるケース
が大きな問題になっています。
GLP-1受容体作動薬なども、その代表例ですね。
そもそもGLP-1やインクレチンとは?という方はこちら

SNSで、
「この薬が美容にいい」
「この薬なら簡単に○○できる」
といった情報を見かける機会も増えました。
だからこそ薬剤師には、
「その薬は何のために承認された薬なのか」
を患者さんに伝える役割が、これまで以上に重要になっていると思います。
まとめ|フィブラストは美容目的で承認された薬ではない
今回のポイントです。
- フィブラストスプレー250/500はトラフェルミン製剤
- 本来の適応は褥瘡、皮膚潰瘍
- bFGFという成長因子を利用した医薬品
- 美容目的の効能・効果は承認されていない
- 美容目的の適応外使用が続き、健康被害も発生しているとして注意喚起
- 健康被害の詳細は確認できる公表情報以上に推測しない
- 薬局では使用目的や残薬の自己判断使用にも注意
「美容に使えるらしい」
医薬品についてSNSでそんな情報を目にすることも珍しくなくなりました。
でも、
医薬品は「作用がありそう」だけで使うものではありません。
フィブラストは、褥瘡や皮膚潰瘍の治療に大切な医薬品です。
今回の注意喚起をきっかけに、
本来必要としている患者さんへ適正に使用されること
を、改めて確認しておきたいですね。
今後、科研製薬やPMDAから健康被害の詳細など新たな情報が公表された場合には、この記事も更新していきます。
FAQ
Q. フィブラストスプレーは美容目的で使えますか?
美容目的の効能・効果は承認されていません。2026年9月には、美容目的の適応外使用と健康被害について注意喚起が報じられています。
Q. フィブラストは何の薬ですか?
トラフェルミン(遺伝子組換え)を有効成分とする褥瘡・皮膚潰瘍治療薬です。bFGFの作用を利用して創傷治癒を促します。
Q. 傷跡をきれいにするために使えますか?
承認された効能・効果は褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)です。自己判断で別の目的に使用せず、医師・薬剤師へ相談してください。
Q. 昔処方されたフィブラストが残っています。別の傷に使ってもいい?
自己判断で転用するのは避け、現在の傷の状態を含め医師・薬剤師へ相談してください。


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