
こんばんは。薬剤師のしぐです。
薬局でよく見かける、
エンシュアH
エンシュア・リキッド
ラコールNF
イノラス
エネーボ
などの経腸栄養剤。
どれも、
「食事だけでは十分な栄養を取れない患者さんに使う栄養剤」
という点では似ています。
でも実際には、
カロリー濃度も違う。
1本の容量も違う。
含まれている栄養素も違う。
味の選択肢も違う。
なので、
「結局どれをどう使い分けるの?」
と思ったことがある薬剤師さんも多いのではないでしょうか。
僕も薬局で処方箋を見ながら、
「今回はイノラスなんだ」
「前はエンシュアHだったけど、どうして変わったんだろう?」
と考えることがあります。
今回は、
- エンシュアH
- エンシュア・リキッド
- ラコールNF
- イノラス
- エネーボ
について、
カロリー・容量・栄養組成・水分・味・使いやすさ
という視点から整理してみます。
なお、これは単純な「薬剤Aは患者A」という使い分けではありません。
実際には、
患者さんの必要エネルギー量、飲める量、経口か経管か、消化管機能、嗜好、病態
などを総合して選ばれます。
その前提で、
「それぞれどんな特徴があるのか」
を見ていきましょう!
- まずは5剤をざっくり比較!
- 飲める量が少ないなら「高濃度」が候補になりやすい
- イノラスは「少量・高カロリー」が最大の特徴
- エンシュアHは「昔から使われる高カロリータイプ」
- エンシュア・リキッドは1.0kcal/mL
- ラコールNFは1.0kcal/mL+フレーバー豊富
- エネーボは1.2kcal/mL+栄養組成が特徴的
- 「1.0kcal」と「高濃度」、どちらが良い?
- 水分量にもかなり差がある
- 「味」は意外と最重要かもしれない
- 経口と経管でも考え方は変わる
- 牛乳たん白アレルギーにも注意
- がん患者さんでは何を重視する?
- 栄養剤の使い分けを超ざっくり整理すると
- 2026年からは「なぜ栄養剤が必要か」も重要
- 薬局で栄養剤を見るときのチェックポイント
- まとめ
- Q1.一番カロリーが高い経腸栄養剤は?
- Q2.イノラスとエンシュアHはどう違う?
- Q3.ラコールNFとエンシュア・リキッドのカロリーは?
- Q4.栄養剤は高カロリーなほど良い?
- Q5.エネーボの特徴は?
- Q6.乳糖不耐症ならラコールNFは使える?
- Q7.がん患者ではどの栄養剤が良い?
まずは5剤をざっくり比較!

最初に、いちばん分かりやすいところから。
エネルギー密度で比較
| 製剤 | エネルギー密度 | 主な1容器 |
|---|---|---|
| エンシュア・リキッド | 1.0kcal/mL | 250mL=250kcal |
| ラコールNF | 1.0kcal/mL | 200mL=200kcal |
| エネーボ | 1.2kcal/mL | 250mL=300kcal |
| エンシュアH | 1.5kcal/mL | 250mL=375kcal |
| イノラス | 1.6kcal/mL | 125mL=200kcal / 187.5mL=300kcal |
この表だけでも、かなり違います。
一番大きなポイントは、
同じカロリーを摂るのに必要な「量」が違う
こと。
たとえば300kcal摂ろうとすると、
- 1.0kcal/mLなら約300mL
- エネーボなら250mL
- イノラスなら187.5mL
になります。
イノラスは1.6kcal/mLと高濃度で、少量で効率的に栄養を補給できるよう設計されています。
ここが栄養剤を考えるうえで、まず大きな使い分けポイントですね。
飲める量が少ないなら「高濃度」が候補になりやすい
患者さんによっては、
「栄養剤を250mLも飲めない」
ということがあります。
特に、
- 食欲がかなり低下している
- がん悪液質がある
- すぐお腹がいっぱいになる
- 一度にたくさん飲むのがつらい
- 水分摂取量を考慮する必要がある
といった患者さん。
こういうとき、
1mLあたりのカロリーが高い製剤
は選択肢になりやすいです。
代表的なのが、
エンシュアH:1.5kcal/mL
そして、
イノラス:1.6kcal/mL
です。
特にイノラスは、
125mLで200kcal。
187.5mLで300kcal。
かなりコンパクトですよね。
僕自身、がん患者さんの処方を見ていると、
「これくらいの量なら何とか飲めそう」
ということは結構重要だと思います。
栄養剤は、
処方されても飲めなければ意味がない
ですからね。
イノラスは「少量・高カロリー」が最大の特徴
イノラスについてもう少し詳しく。
イノラスは、
1.6kcal/mL
と今回比較する中では最も高濃度。
現在は、
125mL
- 200kcal
- コーヒーフレーバー
- 紅茶フレーバー
187.5mL
- 300kcal
- ヨーグルトフレーバー
- りんごフレーバー
- コーヒーフレーバー
- いちごフレーバー
があります。
つまり、
「できるだけ少ない量でカロリーを取りたい」
という場面では非常に分かりやすい特徴があります。
また900kcal投与時に、日本人の食事摂取基準におけるビタミン・微量元素の推奨量または目安量をおおむね充足する設計で、カルニチンやコリンも配合されています。
イノラスについては、

でも詳しくまとめています。
エンシュアHは「昔から使われる高カロリータイプ」
エンシュアHは、
1.5kcal/mL
です。
250mLで、
375kcal。
イノラスほどではありませんが、こちらも高カロリータイプ。
そしてエンシュアHの強みのひとつが、
フレーバーの多さ。
2026年現在、メーカーサイトでは、
- バニラ
- コーヒー
- バナナ
- 黒糖
- メロン
- ストロベリー
- 抹茶
の7種類が確認できます。
栄養剤は長期間飲むケースも多いので、
味を変えながら継続できる
というのは実はかなり大事です。
「バニラはもう飽きた」
「甘い味ばかりはきつい」
なんて患者さん、いますよね。
栄養学的な数字だけでなく、
続けられる味があるか
も立派な使い分けポイントだと思います。
エンシュア・リキッドは1.0kcal/mL
エンシュア・リキッドは、
1.0kcal/mL。
250mLで250kcalです。
エンシュアHよりエネルギー密度は低いので、
同じカロリーを摂るには、より多くの容量が必要になります。
一方で、
高濃度製剤ほど少量になるため、
「水分をある程度一緒に取りたい」
という考え方では1.0kcal/mL製剤が選ばれることもあります。
ただし栄養剤だけで水分必要量を満たせるとは限らないので、
別途水分管理は必要
です。
ちなみにここは2026年版で大事な更新。
エンシュア・リキッドはかつて、
- バニラ
- コーヒー
- ストロベリー
がありましたが、
コーヒー味は販売中止、
バニラ味も販売中止となっています。
現在メーカーサイトにはこれらの販売中止情報が掲載されており、従来よりフレーバー選択肢が少なくなっています。
ここは古い比較記事だと情報が古いことがあるので注意ですね。
ラコールNFは1.0kcal/mL+フレーバー豊富
ラコールNFも、
1.0kcal/mL。
200mLで200kcalです。
現在は200mLパウチで、
- ミルク
- バナナ
- コーヒー
- コーン
- 抹茶
の5フレーバーがあります。
さらに経管投与向けとして400mLバッグもあります。
このため、
経口でも経管でも使いやすい
というのが特徴のひとつ。
またラコールNFは、
乳糖を含みません。
大塚製薬工場のQ&Aでも、
ラコールNF配合経腸用液には乳糖が含まれていないため、乳糖不耐症患者にも投与可能とされています。
一方で、
牛乳たん白アレルギーは禁忌
なので、
「乳糖不耐症」と「牛乳アレルギー」は分けて考える必要があります。
ここ、意外と混同しやすいですね。
エネーボは1.2kcal/mL+栄養組成が特徴的

エネーボは、
1.2kcal/mL。
1缶250mLで、
300kcal
です。
カロリー密度だけで見ると、
1.0と1.5のちょうど中間くらい。
ただしエネーボの特徴は、
単なるカロリー濃度だけではありません。
添付文書を見ると、
- 難消化性デキストリン
- フラクトオリゴ糖
- 大豆多糖類
- 魚油
- カルニチン
- タウリン
- コリン
など、多様な成分が配合されています。
つまり、
長期的な経腸栄養管理を意識した栄養組成
が特徴。
単純に、
「300kcal取れるからエネーボ」
というより、
栄養組成まで考えて選択されるタイプ
と考えると分かりやすいと思います。
「1.0kcal」と「高濃度」、どちらが良い?
これは、
どちらが優れているという話ではありません。
たとえば、
高濃度が向きやすい状況
- 少量しか飲めない
- 高いエネルギー補給が必要
- 一度に大量摂取しにくい
- 栄養剤そのものの容量を減らしたい
こうした場合は、
イノラスやエンシュアHなどが候補になりやすい。
一方、
1.0kcal/mLが使いやすい状況
- 容量をある程度摂取できる
- 水分もある程度含めて補給したい
- 従来から問題なく継続できている
- 経管栄養で投与量を調整したい
といったケースでは、
ラコールNFやエンシュア・リキッドなども使いやすい。
ただし患者さんの水分出納、心不全、腎機能などによっても変わるため、
「高濃度=常に良い」ではありません。
水分量にもかなり差がある
ここも見逃されやすいポイント。
たとえばメーカー情報では、
ラコールNFの水分含量は約85%。
イノラスは約75%です。
具体的には、
ラコールNF 200mL
水分量:約170mL
イノラス125mL
水分量:約93mL
イノラス187.5mL
水分量:約140mL
です。
同じように栄養剤を飲んでいても、
実際に体へ入る水分量は違う
ということ。
高濃度栄養剤では特に、
栄養は取れていても、
水分不足にならないか
は別に考える必要があります。
反対に、
心不全などで水分量を意識する患者さんでは、
少量高濃度がメリットになることもあります。
「味」は意外と最重要かもしれない
薬局では、
数字を比較するとどうしても、
- カロリー
- たんぱく質
- 水分
- 微量元素
に目が行きます。
でも経口で飲んでいる患者さんにとって、
かなり重要なのが、
味。
たとえば、
エンシュアH
7フレーバーと選択肢が多い。
ラコールNF
ミルク・バナナ・コーヒー・コーン・抹茶の5種類。
イノラス
規格によってフレーバーが異なり、125mLはコーヒー・紅茶、187.5mLはヨーグルト・りんご・コーヒー・いちご。
毎日飲むものなので、
「好きな味」
より、
「嫌にならずに続けられる味」
を見つけることが大切。
味覚障害があるがん患者さんでは、
治療途中で好みが変わることもあります。
だから、
「前はコーヒー味が好きだったから」
で固定せず、
時々確認してあげるといいと思います。
経口と経管でも考え方は変わる
今回比較している栄養剤は、
基本的に経口または経管で使われる製剤ですが、
実際の選択では、
どう投与するか
も重要です。
経口なら、
- 味
- 容量
- 飲みやすさ
- 飽きにくさ
の比重が大きくなります。
一方、経管なら、
- 投与速度
- 容量
- 水分量
- 消化管への負担
- チューブ管理
などがより重要。
たとえばラコールNFの経管投与速度は、通常75~125mL/時間とメーカーから案内されています。
つまり同じ経腸栄養剤でも、
経口患者と経管患者では“使いやすさ”の意味が違う
ということですね。
牛乳たん白アレルギーにも注意
これは栄養剤全般で重要。
イノラスやラコールNFなどは、
牛乳たん白アレルギーの患者には禁忌
です。
またラコールNFには、
乳カゼインと分離大豆たん白質が含まれています。
メーカーQ&Aでは、牛乳アレルギーや大豆アレルギー患者への投与はできないとされています。
一方、
乳糖不耐症=牛乳アレルギーではありません。
ラコールNFには乳糖は含まれません。
イノラスには原料由来の乳糖が少量含まれます。
このあたりは、
「牛乳がダメ」
という患者さんが、
アレルギーなのか乳糖不耐症なのか
で意味がまったく違います。
服薬指導時に確認しておきたいですね。
がん患者さんでは何を重視する?
個人的に、がん治療中の患者さんでは、
「飲み切れるか」
をかなり重視したいと思っています。
抗がん剤治療中は、
- 食欲不振
- 悪心
- 口内炎
- 味覚障害
- 倦怠感
- 早期満腹感
- がん悪液質
などが起こることがあります。
この状態で、
「栄養のために250mL全部飲んでください」
と言われても、
かなり大変な患者さんもいます。
そこで、
少量高カロリーのイノラスやエンシュアH
が使いやすいこともある。
一方で、
患者さんがエンシュアHの味を嫌がってまったく飲めないなら、
いくら高カロリーでも意味がありません。
なので、
カロリー密度+嗜好性
の両方を見る必要があります。
薬局で、
「何本飲めています?」
だけでなく、
「味はまだ大丈夫ですか?」
と聞くのも結構大事だと思います。
栄養剤の使い分けを超ざっくり整理すると

あえてかなり簡単に整理するなら、
エンシュア・リキッド
1.0kcal/mLのベーシックタイプ。
容量をある程度摂取できる患者さんで使いやすい。
ラコールNF
1.0kcal/mL+フレーバーが豊富。
経口・経管の両方で使いやすく、200mLパウチも扱いやすい。
エネーボ
1.2kcal/mL+栄養組成に特徴。
食物繊維やカルニチン、タウリンなどを含み、長期栄養管理を意識した設計。
エンシュアH
1.5kcal/mL+7種類のフレーバー。
少ない量でより多くのカロリーを摂りつつ、味の選択肢も多い。
イノラス
1.6kcal/mLで最も高濃度。
特に「量をたくさん飲めない」という患者さんで大きなメリットになり得る。
こんなイメージ。
ただし繰り返しますが、
この表だけで患者さんの栄養剤を決めるわけではありません。
あくまで、
「各製剤の特徴を理解する入口」
です。
2026年からは「なぜ栄養剤が必要か」も重要
そして2026年。
栄養剤についてはもうひとつ重要なポイントがあります。
それが、
処方理由。
イノラス、エンシュア、ラコールなど一部の栄養保持目的医薬品では、外来処方時に、
「なぜ医薬品としてこの栄養剤が必要なのか」
という理由の記載が重要になりました。
実際の薬局現場では、
「食事困難による栄養補助」
「がん悪液質による栄養補助のため」
といった理由を見かけます。
一方で、
理由を記載して継続するのではなく、
これを機に栄養剤自体を処方から外す医療機関もある印象
です。
詳しくはこちらの記事でまとめています。

薬局で栄養剤を見るときのチェックポイント
最後に、実際の処方箋を見るときに僕が意識したいポイントをまとめます。
① 1日何kcal取れている?
まず処方本数だけでなく、
総カロリー
を見る。
② 本当に全部飲めている?
「1日3本処方」
と、
「実際に3本飲めている」
は別です。
③ 水分は足りている?
高濃度製剤ほど、同じカロリーでも水分量は少なくなります。
④ 味に飽きていない?
長期処方ではかなり重要。
⑤ 食事量は変化していない?
栄養剤だけでなく、
実際の食事摂取量も確認。
⑥ なぜこの製剤なのか?
少量高濃度?
味?
経管?
栄養組成?
処方背景を考えると、患者さんの状態が見えやすくなります。
⑦ 2026年以降は処方理由も確認
対象薬では、
処方理由の記載
も忘れず確認。
こう考えると、
栄養剤って単なる、
「食事の代わりの飲み物」
ではないんですよね。
かなり奥が深い医薬品です。
まとめ
今回は、
エンシュアH
エンシュア・リキッド
ラコールNF
イノラス
エネーボ
の使い分けについて整理しました。
ポイントは、
「どれが一番いい栄養剤か」ではない
ということ。
患者さんによって、
- 必要カロリー
- 飲める容量
- 水分量
- 味
- 経口・経管
- 栄養組成
- 病態
が違います。
だからこそ、それぞれの特徴を理解して、
「なぜこの患者さんにはこの栄養剤なのか?」
を考えるのが大切。
ざっくり整理すると、
少量・高カロリーならイノラスやエンシュアH。
1.0kcal/mLの標準的なタイプならラコールNFやエンシュア・リキッド。
栄養組成まで含めて特徴があるのがエネーボ。
そして経口で飲むなら、
味と継続できるか
もかなり大事です。
薬局では、
「栄養剤ですね」
で終わらせず、
「ちゃんと飲めています?」
「味、大丈夫です?」
「食事はどれくらい取れています?」
そんな一言から患者さんの栄養状態を確認していきたいですね。
ではではー。
しぐでしたっ。
FAQ
Q1.一番カロリーが高い経腸栄養剤は?
今回比較した5剤では、イノラスが1.6kcal/mLで最も高濃度です。エンシュアHは1.5kcal/mLです。
Q2.イノラスとエンシュアHはどう違う?
どちらも高カロリーですが、イノラスは1.6kcal/mL、エンシュアHは1.5kcal/mL。イノラスは125mL・187.5mLと小容量なのが特徴で、エンシュアHは7種類のフレーバーがある点が特徴です。
Q3.ラコールNFとエンシュア・リキッドのカロリーは?
どちらも1.0kcal/mLです。ラコールNFは200mLで200kcal、エンシュア・リキッドは250mLで250kcalです。
Q4.栄養剤は高カロリーなほど良い?
いいえ。必要なカロリー、水分量、消化管機能、摂取可能量などによって適した製剤は異なります。
Q5.エネーボの特徴は?
1.2kcal/mLで、食物繊維、フラクトオリゴ糖、魚油、カルニチン、タウリン、コリンなどを含む栄養組成が特徴です。
Q6.乳糖不耐症ならラコールNFは使える?
ラコールNFには乳糖は含まれていません。ただし牛乳たん白アレルギーは禁忌なので、乳糖不耐症と牛乳アレルギーは区別が必要です。
Q7.がん患者ではどの栄養剤が良い?
一律には決められません。食欲低下や早期満腹感が強い場合には少量高カロリー製剤が選択肢になりますが、味、飲みやすさ、病態や必要栄養量も含めて判断されます。


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