ナウゼリン・プリンペランに「重篤な不整脈」追加|2026年8月添付文書改訂を薬剤師が解説
こんにちは、薬剤師のしぐです。
2026年8月25日。
厚生労働省から、薬局薬剤師としてかなり気になる**「使用上の注意」の改訂指示**が出ました。
今回取り上げたいのは、
ドンペリドン
と、
メトクロプラミド。
商品名でいうと、
ナウゼリンとプリンペラン
ですね。
どちらも、
「吐き気止めとして昔からある薬」
という印象が強いのではないでしょうか。
ところが今回、この2成分の重大な副作用に、
「重篤な不整脈」
が新たに追加されました。
しかも改訂内容を見ると、
致死性不整脈・心突然死
という、なかなか強い言葉まで入っています。
そして薬局として特に重要なのが、
「必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しないこと」
という注意喚起。
今回は、なぜ今この改訂が入ったのか、ナウゼリンとプリンペランで何が変わったのか、薬局でどこを確認したいのかを整理します。
2026年8月25日、厚労省が添付文書改訂を指示
厚生労働省は2026年8月25日、最新の安全性情報などを踏まえ、複数の医薬品について「使用上の注意」を速やかに改訂するよう指示しました。
その中に含まれたのが、
ドンペリドン
メトクロプラミド/塩酸メトクロプラミド
です。
ドンペリドンでは、国内外の疫学調査で致死性不整脈および心突然死のリスク増加が示唆されています。
メトクロプラミドについても、国内疫学調査で致死性不整脈、国内外の疫学調査で心突然死のリスク増加が示唆されています。

重大な副作用に「重篤な不整脈」が追加
今回、両剤の「重大な副作用」に新設されたのが、
重篤な不整脈。
具体的には、
心室頻拍、心室細動等
が記載されています。
これはかなり重要な変更。
ナウゼリンについては以前からQT延長との関連を意識していた薬剤師さんも多いと思います。
実際、PMDAの副作用報告にもドンペリドン使用例におけるQT延長や不整脈が掲載されています。
でも今回、
「重大な副作用:重篤な不整脈」
として正式に明記された。
ここは押さえておきたいところです。
「長期にわたり漫然と投与しない」が明記
今回、個人的に薬局で一番重要だと思うのはここ。
改訂後の「重要な基本的注意」では、
必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しないこと
と明記されています。
これ。
薬局では結構考えさせられますよね。
ナウゼリンやプリンペランって、
数日間だけ処方されることもあれば、
胃腸症状などに対して、
「ずっとDo処方」
になっている患者さんも見かけます。
もちろん、長期処方=即問題というわけではありません。
でも今回の改訂を受けると、
「この患者さん、ナウゼリンずっと飲んでるな」
という処方を見たとき、
本当に今も必要なのか?
という視点はこれまで以上に重要になりそうです。
患者さんへの服薬指導も変わる
厚労省の改訂指示では、
関連する症状が認められた場合、
速やかに受診するよう患者に指導すること
も追加されています。
つまり今回の改訂は、
医師が添付文書を読むだけの話ではありません。
薬剤師の服薬指導にも直接関係します。
患者さんには必要に応じて、
- 動悸
- 脈の乱れ
- めまい
- 失神・意識が遠のく感じ
など、不整脈を疑う症状があれば受診するよう説明しておきたいところ。
もちろん、
「この薬を飲んだら危険ですよ」
と過度に不安をあおる必要はありません。
今回のポイントは、
必要性を確認しながら適切に使用すること。
そして、
異常があれば見逃さないこと。
だと思います。

ナウゼリンとプリンペランは作用機序も似ている
ここで少しおさらい。
ドンペリドンもメトクロプラミドも、
ドパミンD2受容体遮断作用
によって制吐作用を示します。
嘔吐中枢へつながる化学受容器引金帯(CTZ)などでドパミンの作用を抑えることで、悪心・嘔吐を改善します。
ただし両剤はまったく同じではありません。
メトクロプラミドは血液脳関門を通過しやすいため、錐体外路症状など中枢性の副作用にも注意が必要。
一方、ドンペリドンは血液脳関門を比較的通過しにくいという特徴があります。
「吐き気止め」という同じカテゴリーでも、
副作用の出方まで同じではない
というところは覚えておきたいですね。
がん治療の制吐薬とは使い方が違う
「吐き気止め」と一言で言っても、現在はさまざまな作用機序の薬があります。
特に抗がん剤治療では、
5-HT3受容体拮抗薬やNK1受容体拮抗薬などを組み合わせて使用します。
しぐブログでは以前、


について詳しくまとめています。
アプレピタントはNK1受容体を遮断して、サブスタンスPによる嘔吐反応を抑える薬。
今回のドンペリドン・メトクロプラミドとは作用機序が違います。
「吐き気止め」という括りだけで考えるのではなく、
なぜ吐き気が起きていて、どの受容体をターゲットにしているのか
まで理解すると、制吐薬の使い分けがかなり分かりやすくなります。
実は同じ日にオランザピンの制吐使用にも重要改訂
そして今回の改訂。
制吐薬関連でもう一つ注目したいものがあります。
オランザピン。
抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心・嘔吐に使用する場合、糖尿病または糖尿病既往のある患者への注意が強化されました。
血糖コントロールが良好な患者に限定して必要性を判断し、
投与量・投与期間を必要最小限にすること
さらに、
投与前・投与期間中の頻回な血糖モニタリング
などが求められます。
外来がん治療をフォローしている薬局では、こちらも一緒に覚えておきたい改訂です。
薬局で長期処方を見たら何を確認する?
ここから実務。
今回の改訂後、僕ならナウゼリン・プリンペランの長期処方を見たとき、少し立ち止まります。
まず、
何のために服用しているのか。
次に、
どのくらい継続しているのか。
そして、
今も症状があるのか。
さらに、
- 動悸はないか
- めまい・失神はないか
- 不整脈の既往はないか
- QT延長リスクのある薬剤が追加されていないか
なども、患者背景に応じて確認したいところです。
今回の改訂は、
「ナウゼリン・プリンペランを使ってはいけない」
という話ではありません。
むしろ、
必要な患者さんに、必要な期間、適切に使う。
ということを改めて求める改訂だと思います。

同日のアセトアミノフェン改訂もかなり重要
そしてもう一つ。
今回の8月25日改訂では、
アセトアミノフェン
にも重要な注意喚起が入りました。
重篤な腎障害・肝障害、敗血症、栄養障害などによってピログルタミン酸が蓄積しやすい患者では、
アセトアミノフェン投与によって、
アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシス
が発現するおそれがあることが追記されています。
アセトアミノフェンは、
カロナールだけではありません。
配合剤にも含まれています。
しぐブログでもアセトアミノフェンを使用する場面として、例えば、

などで触れています。
非常に身近な成分だけに、こちらは別記事として詳しく掘り下げる価値が十分ある改訂だと思います。
薬剤師として今回の改訂から感じること
ナウゼリン。
プリンペラン。
どちらも新しい薬ではありません。
むしろ、
「昔からある、よく知っている薬」
という感覚の方が強い薬です。
でも、
薬が昔からあることと、
安全性情報がもう更新されないことは別。
実際の使用患者が増え、
リアルワールドデータが蓄積し、
疫学研究が進むことで、
発売から何十年も経って新しいリスクが明確になることがあります。
今回の改訂は、
その典型的な例なのかもしれません。
「昔から使っている薬だから大丈夫」
ではなく、
昔からある薬だからこそ、
最新の添付文書を改めて確認する。
薬剤師として大事にしたいところですね。
まとめ|ナウゼリン・プリンペランの長期漫然投与に改めて注意
2026年8月25日、
ドンペリドンとメトクロプラミドについて使用上の注意の改訂が指示されました。
今回のポイントは、
- 重大な副作用に**「重篤な不整脈」**を追加
- 心室頻拍・心室細動などに注意
- 致死性不整脈・心突然死のリスク増加が示唆
- 必要最小限の使用
- 長期にわたり漫然と投与しない
- 関連症状があれば速やかな受診を患者へ指導
です。
薬局で、
「ずっとナウゼリンがDoで出ているな」
「プリンペラン、いつから飲んでいるんだろう?」
という患者さんを見かけたら、
今回の改訂を思い出したいところ。
昔から使われている薬ほど、
こういう改訂は見落としやすい。
僕自身も、
明日から処方箋を見る目が少し変わりそうです。
ではではー。
しぐでしたっ。
FAQ
Q1. ナウゼリンに新しく追加された重大な副作用は?
2026年8月25日の改訂指示で、ドンペリドンの重大な副作用に「重篤な不整脈」が追加されました。心室頻拍・心室細動などが挙げられています。
Q2. プリンペランも同じ改訂ですか?
メトクロプラミド/塩酸メトクロプラミドにも「重篤な不整脈」が重大な副作用として追加され、長期漫然投与を避けるよう注意喚起されています。
Q3. ナウゼリンを長く飲んでいたらすぐ中止すべき?
自己判断で中止する必要はありません。今回の改訂は「必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しない」という内容です。治療上必要な場合もあるため、継続の必要性は医師・薬剤師と確認します。
Q4. 患者さんには何を説明する?
患者背景に応じ、動悸、脈の乱れ、めまい、失神など不整脈を疑う症状が認められた場合には速やかに受診するよう説明することが重要です。
Q5. アセトアミノフェンも同日に改訂された?
はい。ピログルタミン酸蓄積の素因がある患者で、アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスが発現するおそれについて注意喚起が追加されています。


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