乳がん一次治療が同時に2つ変わる!エンハーツ+ペルツズマブ/ダトロウェイ承認【2026年】

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乳がん一次治療が同時に2つ変わる!エンハーツ+ペルツズマブ/ダトロウェイ承認【2026年】

乳がん一次治療で2つの新たなADC治療が承認されたイメージ

こんばんは。

薬剤師のしぐです。

2026年9月16日、転移・再発乳がんの一次治療に関わる、大きな承認が同時に2つ発表されました。

今回変わったのは、次の2領域です。

  • HER2陽性乳がん
    エンハーツ+ペルツズマブ
  • ホルモン受容体陰性かつHER2陰性、いわゆるトリプルネガティブ乳がん
    ダトロウェイ単剤

どちらも抗体薬物複合体、ADCを一次治療から使用する承認です。

ただし、すべての乳がん患者さんが対象になるわけではありません。

特にダトロウェイについては、

免疫チェックポイント阻害薬による治療の対象とならない患者

という重要な条件があります。

今回は、

  • これまでの一次治療から何が変わるのか
  • エンハーツ+ペルツズマブの対象患者
  • ダトロウェイの対象患者
  • 承認の根拠となった臨床試験
  • 保険薬局で確認したい副作用とフォローアップ

について整理します。


2026年9月、乳がん一次治療で2つの承認

今回の変更を簡単に比較すると、次のようになります。

項目エンハーツ+ペルツズマブダトロウェイ
薬剤T-DXd+ペルツズマブDato-DXd単剤
標的HER2TROP2
対象HER2陽性の手術不能または再発乳がんホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん
治療ライン一次治療一次治療
重要な条件HER2陽性免疫療法の対象とならない患者
主な根拠試験DESTINY-Breast09TROPION-Breast02
特に注意する副作用間質性肺疾患、悪心、骨髄抑制、心機能低下口内炎、眼障害、間質性肺疾患、悪心、骨髄抑制

どちらも「これまで後方の治療で使用されていたADCが、一次治療まで前倒しされた」という点が大きなポイントです。


①HER2陽性乳がんにエンハーツ+ペルツズマブ

エンハーツとペルツズマブがHER2を標的とする一次治療のイメージ

エンハーツは、一般名を、

トラスツズマブ デルクステカン:T-DXd

といいます。

HER2を認識する抗体に、トポイソメラーゼⅠ阻害作用を持つDXdを結合させたADCです。

HER2を目印としてがん細胞に結合し、細胞内へ取り込まれたあとにDXdを放出します。

エンハーツの作用機序やほかのがん種における位置づけは、こちらの記事でも詳しくまとめています。

エンハーツが肺がん一次治療へ?HER2遺伝子変異陽性NSCLCの最新結果と制吐療法を解説
エンハーツが肺がん一次治療へ?制吐療法とがん種別の使うタイミングを解説こんばんは。薬剤師のしぐです。エンハーツ。一般名は…

これまでの一次治療はTHP療法が中心だった

HER2陽性の転移・再発乳がんでは、これまで、

  • トラスツズマブ
  • ペルツズマブ
  • タキサン系抗がん薬

を組み合わせるTHP療法が一次治療の中心でした。

そして、病勢が進行したあとにエンハーツを使用する流れが一般的でした。

今回の承認によって、

エンハーツ+ペルツズマブ

を、HER2陽性転移・再発乳がんの一次治療から使用できるようになります。

つまり、

エンハーツは二次治療から使う薬

という従来の位置づけが、大きく変わる可能性があります。


DESTINY-Breast09試験とは?

今回の承認根拠となったのが、国際共同第Ⅲ相試験の、

DESTINY-Breast09試験

です。

HER2陽性の進行または転移性乳がん患者を対象として、

  • エンハーツ+ペルツズマブ
  • THP療法

が比較されました。

無増悪生存期間は40.7か月対26.9か月

盲検下独立中央審査による無増悪生存期間中央値は、次のとおりでした。

評価項目エンハーツ+ペルツズマブTHP療法
PFS中央値40.7か月26.9か月
奏効率85.1%78.6%
奏効期間中央値39.2か月26.4か月

エンハーツ+ペルツズマブは、THP療法と比較して病勢進行または死亡リスクを44%低下させました。

一次治療におけるPFS中央値が40か月を超えたことは、非常にインパクトの大きい結果です。DESTINY-Breast09試験結果

タキサンを使用しない一次治療へ

もうひとつ注目したいのが、エンハーツ+ペルツズマブ群では、従来のTHP療法に含まれるタキサン系抗がん薬を使用しない点です。

ただし、

タキサンを使わないから副作用が軽い

と単純に考えることはできません。

脱毛、末梢神経障害などのタキサン関連副作用が減る可能性がある一方、エンハーツでは、

  • 間質性肺疾患
  • 悪心・嘔吐
  • 骨髄抑制
  • 心機能低下

などに注意が必要です。

副作用の「量」だけでなく、注意すべき副作用の「種類」が変わると考える必要があります。


②トリプルネガティブ乳がんにダトロウェイ

ダトロウェイがTROP2を標的としてがん細胞へ作用するイメージ

ダトロウェイは、一般名を、

ダトポタマブ デルクステカン:Dato-DXd

といいます。

TROP2を標的とする抗体に、エンハーツと同じDXd系の薬物を結合させたADCです。

TROP2は、乳がんを含むさまざまながん細胞で発現する膜タンパクです。

ダトロウェイはTROP2へ結合し、細胞内に取り込まれたあとにDXdを放出することで、抗腫瘍効果を示します。


対象は「免疫療法が適応とならない患者」

ここは非常に重要です。

今回、ダトロウェイの一次治療対象となったのは、

ホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん

のうち、

免疫チェックポイント阻害薬による治療の対象とならない患者

です。

一般的にトリプルネガティブ乳がんでは、PD-L1発現などの条件を満たす場合、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療が検討されます。

一方で、

  • PD-L1の条件を満たさない
  • 自己免疫疾患などの背景がある
  • 免疫関連有害事象のリスクが高い
  • その他の理由で免疫療法が適さない

といった患者さんでは、一次治療の選択肢が限られていました。

ダトロウェイは、こうした患者さんに対する新たな一次治療となります。

したがって、

トリプルネガティブ乳がんなら、一次治療で全員ダトロウェイ

という承認ではありません。


TROPION-Breast02試験とは?

今回の承認根拠となったのが、国際共同第Ⅲ相試験の、

TROPION-Breast02試験

です。

免疫チェックポイント阻害薬による治療の対象とならない、未治療の局所再発・手術不能または転移性トリプルネガティブ乳がん患者を対象として、

  • ダトロウェイ
  • 医師選択化学療法

が比較されました。

PFSは10.8か月対5.6か月

主要な結果は次のとおりです。

評価項目ダトロウェイ化学療法
PFS中央値10.8か月5.6か月
OS中央値23.7か月18.7か月
奏効率62.5%29.3%

ダトロウェイは化学療法と比較して、病勢進行または死亡リスクを43%低下させました。

さらにOS中央値も約5か月延長しています。

免疫療法を使用できないトリプルネガティブ乳がんの一次治療で、PFSだけでなくOSの改善まで示した点は大きな意味があります。TROPION-Breast02試験結果


保険薬局で必要なフォローアップ

どちらも点滴薬なので、保険薬局で直接調剤する薬ではありません。

しかし、治療の副作用に対して、

  • 制吐薬
  • 口腔ケア用品
  • 下痢止め
  • 人工涙液
  • 鎮痛薬
  • 感染症治療薬

などが処方される可能性があります。

その処方を「単なる支持療法」として見るのではなく、

どの抗がん薬を使っていて、何の副作用に対する処方なのか

まで把握することが重要です。


①間質性肺疾患は両剤で確認する

エンハーツ、ダトロウェイともにDXdを搭載したADCであり、間質性肺疾患に注意が必要です。

薬局では毎回、次の症状を確認します。

  • 新しく出てきた空咳
  • 階段や歩行時の息切れ
  • 安静時の息苦しさ
  • 発熱
  • 胸部の違和感
  • 酸素飽和度の低下
  • 「風邪が長引いている」という訴え

特に、

熱はないけれど、最近少し息切れする

という軽い訴えを見逃さないことが大切です。

市販の鎮咳薬や風邪薬で様子を見るよう案内するのではなく、治療医療機関へ速やかに相談するよう促します。

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②エンハーツでは悪心・嘔吐を確認

エンハーツでは悪心・嘔吐が比較的多く、予防的な制吐療法が重要です。

確認したいポイントは、

  • 吐き気の発現日
  • 食事・水分摂取量
  • 嘔吐回数
  • 制吐薬の服用状況
  • 便秘の有無
  • 次回投与への不安
  • 体重減少

です。

「吐いてはいない」だけで判断せず、

  • 食事量が半分以下になった
  • 水分が取りにくい
  • においで気持ち悪くなる
  • 数日間ほとんど動けない

といった生活への影響まで確認します。


③ペルツズマブでは下痢にも注意

ペルツズマブの併用では、下痢にも注意が必要です。

薬局では、

  • 1日の排便回数
  • 水様便かどうか
  • 夜間の下痢
  • 発熱や腹痛
  • 水分摂取量
  • 止瀉薬の使用方法
  • めまい、口渇、尿量減少

を確認します。

骨髄抑制中の下痢や発熱は感染症の可能性もあるため、自己判断で止瀉薬だけを継続しないよう伝える必要があります。


④ダトロウェイでは口内炎を「出る前」から対策

ダトロウェイで特に重要なのが口内炎です。

確認したい症状は、

  • 口の中のヒリヒリ感
  • 舌や頬粘膜の赤み
  • 小さな潰瘍
  • 味覚の変化
  • 熱い物や辛い物がしみる
  • 食事量の低下
  • 歯磨き時の痛み

です。

口内炎は、強くなってから対応すると食事や水分摂取に影響し、治療継続が難しくなる場合があります。

病院から指示された、

  • 口腔内の保湿
  • 刺激の少ない歯磨き
  • 含嗽
  • ステロイド含有洗口液
  • 投与時の口腔内冷却

などの予防策を継続できているか確認します。

院内の指示と異なる独自のケアを勧めず、使用している洗口液の成分・回数も確認したいところです。


⑤ダトロウェイでは眼障害も確認

ダトロウェイでは、角膜炎などの眼表面障害にも注意が必要です。

薬局で確認したい症状は、

  • 目の乾燥
  • 異物感
  • 目の痛み
  • 充血
  • 涙が増えた
  • かすみ目
  • まぶしさ
  • 視力の変化

です。

眼障害の予防として人工涙液が処方されることがあります。

その場合は、

  • 予防目的であること
  • 症状がなくても指示どおり使用すること
  • コンタクトレンズの使用可否
  • 複数の点眼薬を使用する場合の間隔

を確認します。

「目薬を使っているから大丈夫」ではなく、見え方の変化や痛みがある場合は、速やかに治療医療機関へ連絡する必要があります。

ADC治療で注意したい間質性肺疾患・口内炎・眼障害のイメージ

⑥骨髄抑制と感染症

両剤とも骨髄抑制に注意します。

薬局では、

  • 38℃前後の発熱
  • 悪寒
  • 強いだるさ
  • 咽頭痛
  • 排尿時痛
  • 鼻血
  • 歯肉出血
  • あざが増えた
  • 息切れや動悸

などを確認します。

発熱時の対応方法や、病院から渡されている緊急連絡先についても確認しておきたいところです。


⑦エンハーツでは心機能低下も意識する

エンハーツとペルツズマブはいずれもHER2を標的とする薬剤です。

薬局では、

  • 労作時の息切れ
  • 横になると苦しい
  • 下肢のむくみ
  • 急な体重増加
  • 動悸
  • 強い疲労感

を確認します。

息切れについては、

  • 間質性肺疾患
  • 貧血
  • 心機能低下
  • 感染症

など複数の可能性があります。

薬局だけで原因を決めつけず、症状の発現時期と程度を整理して病院へつなぐことが重要です。


薬局フォローアップのチェックリスト

エンハーツ+ペルツズマブ

  • 空咳・息切れ・発熱はないか
  • 悪心・嘔吐を制吐薬で抑えられているか
  • 食事・水分摂取量は保てているか
  • 下痢の回数と程度
  • 発熱や感染症状
  • 出血しやすくなっていないか
  • むくみ・動悸・体重増加はないか
  • 次回投与日と受診予定を把握しているか

ダトロウェイ

  • 口の中の痛みや違和感はないか
  • 口腔ケアを継続できているか
  • 目の乾燥・痛み・かすみはないか
  • 人工涙液を指示どおり使用できているか
  • 空咳・息切れ・発熱はないか
  • 悪心・食欲低下はないか
  • 発熱や感染症状はないか
  • 食事・水分摂取量が低下していないか

これからの乳がん治療はどう変わる?

今回の承認は、単に使用できる薬が2つ増えたという話ではありません。

HER2陽性乳がんでは、

THP療法から開始し、二次治療でエンハーツ

という治療順序そのものが変わる可能性があります。

一方、トリプルネガティブ乳がんでは、

免疫療法が使えない場合は従来型の化学療法

という状況に、ダトロウェイというADCが加わりました。

ただし、一次治療でADCを使うことで、

  • 増悪後にどの薬を選択するのか
  • ADCから別のADCへ切り替えるのか
  • DXd系薬剤をどのような順序で使用するのか
  • 長期治療に伴う毒性をどう管理するのか

という新しい課題も出てきます。

「どの薬を使えるか」だけでなく、

どの順番で使い、副作用をどのように管理するか

が、これまで以上に重要になりそうです。


まとめ

2026年9月16日、転移・再発乳がんの一次治療に関わる2つの適応変更が承認されました。

  • HER2陽性乳がん
    エンハーツ+ペルツズマブ
  • 免疫療法の対象とならないトリプルネガティブ乳がん
    ダトロウェイ

HER2陽性乳がんでは、長年の標準治療であるTHP療法に代わる可能性のある一次治療が登場しました。

トリプルネガティブ乳がんでは、免疫チェックポイント阻害薬を使用できない患者さんに、ADCによる新たな一次治療が加わります。

そして、保険薬局では、

  • 間質性肺疾患
  • 悪心・嘔吐
  • 下痢
  • 口内炎
  • 眼障害
  • 骨髄抑制
  • 心機能低下

を、薬剤ごとに整理して確認する必要があります。

点滴治療だから薬局には関係がない、ではありません。

支持療法薬の処方と患者さんの何気ない訴えから、副作用の初期サインを拾い上げ、病院へつなぐ。

ここが、保険薬局の大切な役割になりそうです。


FAQ

Q1.エンハーツはHER2陽性乳がんの一次治療で使用できますか?

2026年9月の承認により、HER2陽性の手術不能または再発乳がんに対し、ペルツズマブとの併用で一次治療から使用できるようになりました。

Q2.従来のTHP療法は使用されなくなりますか?

直ちにすべて置き換わるとは限りません。患者背景、既往歴、副作用リスク、周術期治療歴などを考慮して治療が選択されます。

Q3.ダトロウェイはすべてのトリプルネガティブ乳がんに使用できますか?

今回の一次治療承認は、免疫チェックポイント阻害薬による治療の対象とならない患者が中心です。すべての患者へ一律に使用する承認ではありません。

Q4.ダトロウェイで特に注意する副作用は何ですか?

口内炎、角膜炎などの眼障害、間質性肺疾患、悪心・嘔吐、骨髄抑制などです。口腔ケアと眼障害の予防・早期発見が重要です。

Q5.保険薬局から病院へ連絡したい症状は?

新しい空咳、息切れ、発熱、強い口内炎、食事や水分が取れない状態、目の痛み・かすみ・視力変化、持続する下痢などがあれば、速やかな連携を検討します。

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