
こんにちは、薬剤師のしぐです。
OTC類似薬について、数年かけて完全保険外にしていくべきだという健保連・幸野氏の考えと、セルフメディケーションの普及に向けた薬剤師への期待が話題になっています。
「いよいよ、いつもの薬が全部自費になるの?」
この見出しを見て、そんなふうに感じた方もいるかもしれません。薬局でも、患者さんから聞かれそうなテーマですよね。
まず押さえたいのは、将来の給付見直しを求める発言と、すでに開始日が示されている制度は、分けて考える必要があることです。2027年3月1日から始まるのは、対象となるOTC類似薬の薬剤費の4分の1について別途負担を求める「一部保険外療養」です。すべてのOTC類似薬を一律に完全保険外にする制度が、数年後の実施まで決まったわけではありません。
そして、もう一つ気になるのが「薬剤師に期待」という部分です。これは薬局が市販薬を並べれば済む話でしょうか。しぐとしては、地域の方が安心して相談でき、必要なときには医療につながれる体制まで含めて考えたいニュースです。
※2026年11月2日時点の情報です。幸野氏の発言は、今回提示された報道見出しの範囲で紹介しています。講演全文・質疑は未確認のため、発言の細かな条件や具体的な移行年限は補っていません。制度の説明は厚生労働省の公表情報を確認して整理しています。
今回のニュースは何がポイント?
今回の見出しには、大きく二つの論点があります。一つは、OTC類似薬の保険給付を将来的にどうするか。もう一つは、その過程で薬局・薬剤師に何を期待するかです。
「数年かけて」という言葉からは段階的な見直しを求める方向性が読み取れますが、それだけで毎年の負担割合や対象範囲まで決まったと受け取ることはできません。「来年は何割、その翌年は何割」といった工程表を、見出しから作ってしまわないことが大切です。
11月1日開催の薬局団体連絡協議会シンポジウムの案内には、健康保険組合連合会参与の幸野庄司氏による、保険者から見たOTC類似薬の給付見直しと地域薬局への期待をテーマとする講演が掲載されています。ただし、開催案内は当日の発言全文を示すものではありません。
保険の給付範囲は、保険料を負担する側、治療を受ける側、医療を提供する側で見え方が違います。同じ「公平性」という言葉でも、市販薬を自費で買っている人との公平性を重視するのか、病気のため継続的な治療が必要な人の負担を重視するのかで、議論の出発点が変わってきます。
だからこそ、発言への賛否と、現在の患者さんへの説明を混ぜないようにしたいところです。
OTC類似薬とは?市販薬と何が似ている?
OTC医薬品は、薬局やドラッグストアなどで処方箋なしに購入できる医薬品です。一方、OTC類似薬という言葉は、市販薬との代替性がある医療用医薬品をめぐる議論で使われています。
今回の制度では、OTCと成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品が対象選定の基本になっています。ただし、薬の名前や成分だけを見て、誰でもそのまま市販薬へ置き換えられると判断することはできません。
同じ成分でも、医療用とOTCで使用目的、対象年齢、使用方法、使用期間などが異なる場合があります。医師の診察で病気を確認したうえで使っているのか、短期間の症状緩和として使うのかも、相談の内容を左右します。
患者さんが「成分が同じなら同じ薬ですよね」と話されたときには、まず何のために使っているかを確認する。そのうえで、候補となるOTC製品の表示と照らし合わせる。この順番を大切にしたいですね。
制度の基本と対象外条件は、コチラもあわせてご覧ください。過去記事の作成後に公表された通知があるため、具体的な運用では最新情報の確認が必要です。


決まっているのは2027年3月からの「一部保険外療養」
2027年3月1日から、対象医薬品を使用する際、原則として薬剤費の4分の1を別途負担する仕組みが始まります。薬剤費全体が保険から外れるという説明とは区別が必要です。
| 確認したいこと | 現時点での整理 |
| 2027年3月の制度 | 対象薬の薬剤費の4分の1を別途負担する一部保険外療養 |
| 数年後の完全保険外化 | 今回の発言で示された将来の方向性。実施決定とは扱わない |
| 誰でも負担が発生するか | 年齢や治療内容などにより対象外となる場合がある |
| OTCへ変更する義務 | 制度開始を理由に一律変更するものではない |
| 対象品目の確認 | 厚生労働省の最新の対象医薬品リストで確認 |
ここで注意したいのが、「薬代に25%上乗せ」という表現です。実際には特別の料金と、保険対象部分に対する通常の自己負担を組み合わせます。
仕組みだけを単純化し、対象薬の薬剤費を1,000円、通常の自己負担率を3割とすると、別途負担250円と、残る750円の3割である225円を合わせ、475円という考え方になります。従来の300円に250円をそのまま足す計算ではありません。
これは端数処理や調剤に係る費用などを省いた説明用の概算で、実際の窓口額を保証する例ではありません。また、9月30日付の費用計算の事務連絡では、特別の料金に対する消費税の扱いは年末を目途に改めて示すとされています。現時点で消費税10%を確定事項として加算した説明は避けたいところです。
処方箋や会計の準備は、コチラで整理しています。実装時には9月30日付通知などと照合してください。

「市販薬がある」だけでは見えない患者さんの事情
薬局でこの問題を考えるとき、どうしても浮かぶのが、長く治療を続けている患者さんの顔です。
短期間だけ使う人と、症状を抑えるために繰り返し使う人では、同じ1回の負担増でも生活への影響が違います。また、家族の分を含めて複数の医薬品が必要な場合、薬ごとの小さな増額が積み重なることも考えられます。
現在の制度には、子ども、がんや指定難病等に関連する使用、医学的に必要な長期使用などについて、別途負担の対象外とする仕組みがあります。ただし、病名があるだけであらゆる使用が対象外になるとは限りません。何の症状に対し、どの治療の一環として使っているかが重要です。
また、追加負担が心配だからと、患者さんが自己判断で服用回数を減らしたり、受診そのものを控えたりすることは避けたいところ。「困ったら相談してください」と伝えるだけでなく、金額、購入場所、通院の負担など、何が困りごとなのかを具体的に聞く必要があります。
制度への意見はさまざまでも、目の前の治療が途切れないようにすることは、薬局で共有できる目標だと思います。

セルフメディケーションの普及で薬剤師に求められること
セルフメディケーションは、自分の健康に関心を持ち、軽い不調への対処を自分でも行う考え方です。その中で薬剤師が支援できる場面は、市販薬の購入時だけに限りません。
最初に「今回の相談で何を確認するか」をそろえる
薬の指定があっても、商品名の確認だけで相談を終えないようにしたいですね。誰が使うのか、いつからどのような症状があるのか、これまでの経過はどうか、すでに試した薬はあるか。短い会話でも、相談の背景が分かることがあります。
とくに「いつもと同じ」という表現には注意したいところです。患者さんにとっては同じような症状でも、頻度や強さ、生活への影響が変化しているかもしれません。前回買えたから今回も同じ対応でよい、と機械的に進めないことが大切です。
これは薬剤師が診断を行うという意味ではありません。市販薬の使用で対応できる範囲か、医療機関での確認が必要かを考えるための情報収集です。
処方薬・OTC・サプリを一緒に確認する
普段の処方薬を確認できても、他店で購入したOTCやサプリメントが見えていないことがあります。本人は別の目的で飲んでいるつもりでも、成分が重なっている可能性もあります。
お薬手帳に市販薬の名前を書いてもらう、箱や成分表示の写真を見せてもらうなど、確認しやすい方法を提案したいですね。「市販薬は書かなくてよい」と思っている方にも、購入した薬を共有してもらう意味を説明する機会になります。
薬局側も、情報を聞いた事実だけを残すのではなく、その情報から何を確認し、どんな説明をしたかが次の相談につながる記録を意識したいところです。
使用後の相談先と見直す時期を伝える
購入時に適切な製品を選べても、その後の経過が分からなければ支援は途切れてしまいます。製品の表示に沿って使用方法や期間を伝え、改善しない場合や症状が変化した場合の相談・受診についても確認しておきたいところです。
「効かなかったら別の商品を買ってください」では、同じ症状に対して買い足しが続いてしまうかもしれません。次に来店したとき、前回の相談からどう変わったかを確認できることにも、地域薬局の価値があると思います。
なお、これらは今回の発言を逐語的に説明したものではなく、ニュースを受けてしぐが考える薬局実務の視点です。
調剤薬局が今から準備したいこと
薬局でできる準備は、大きな改装や大量の仕入れから始める必要はないと思います。まず、自店でどのような健康相談が多く、現在はどこまで対応できているのかを振り返ってみることが出発点です。
品ぞろえと相談体制を一緒に考える
OTCが棚にあっても、スタッフによって案内が大きく違えば、利用する方は迷ってしまいます。取り扱う製品について、どんな相談で候補になるか、何を確認するか、製品表示のどこを説明するかを共有しておくと、相談を始めやすくなります。
また、必要な製品がない場合も、相談を受けた内容を整理し、その方が次にどう行動すればよいかを一緒に考えたいですね。品ぞろえの制約があっても、情報を整理して医療機関や他店につなぐことはできます。
この点は、日薬会長が求めたOTCの取り扱いと薬局の相談体制ともつながるテーマです。
会計だけで解決できない質問の対応を決める
「同じ薬なのに家族と負担が違う」「前回と金額が違う」といった質問では、計算が合っているかに加え、対象・対象外の判断がどう伝わっているかを確認する必要があります。
薬局内では、受付で分かること、薬剤師が確認すること、医療機関への確認が必要なことを整理しておきたいところです。誰か一人だけが詳しい状態では、混雑時や不在時に説明が止まってしまいます。
実際の対応手順は通知に沿う必要がありますが、日頃から質問の窓口を決め、同じ内容を何度も聞き直さない工夫をすることはできそうです。
負担の説明と治療の相談を同じ場で受け止める
患者さんにとっては、制度の分類よりも「今までの治療を続けられるか」が気になることも多いはずです。説明する側が会計の話だけに集中すると、その不安を取りこぼしてしまうかもしれません。
「薬が保険から全部外れたということではありません」「今回の処方について確認しますね」と、分かっていることを順番に伝える。今すぐ分からないことは確認してから案内する。こうした基本が、制度が変わる時期ほど大切になると感じます。
完全保険外化を議論するなら、何を確かめたい?
将来、給付範囲をさらに見直す議論が進むなら、保険財政への影響と合わせて、患者さんの行動がどう変わるかを見ていく必要があると思います。
市販薬への移行が進んだのか。必要な受診を控える人が増えていないか。薬の重複や不適切な長期使用は起きていないか。慢性的な症状のある方や、医薬品を購入しに行きにくい地域で困りごとが生じていないか。こうした点も検証したいところです。
薬局の側でも「OTCの販売数が増えた」だけでは成果を説明しきれません。相談を受けて受診につながった事例や、飲み合わせの確認で使用方法を見直せた事例など、支援した内容を適切に残すことが役立つと思います。
もちろん、相談や連携には時間がかかります。薬剤師への期待を実際の機能に変えていくためには、教育、情報共有、相談を受ける場所、人員配置など、現場が継続できる条件も一緒に考えていきたいですね。
よくある質問
OTC類似薬は数年後に全部保険外になるのですか?
今回の見出しは幸野氏の将来的な見直しに関する考えを示すものです。すべてのOTC類似薬を数年後に完全保険外にする日程が決定した、という意味ではありません。
2027年3月から、これまでの処方薬は買えなくなりますか?
制度が始まっても、必要な受診や処方が一律になくなるわけではありません。対象品目や使用目的などに応じて、別途負担の有無が変わります。自己判断で治療を中止せず、気になる場合は医療機関や薬局へ相談してください。
市販薬を買うほうが必ず安くなりますか?
必ず安くなるとはいえません。OTCの販売価格、必要な量、使用期間、保険診療での自己負担などで変わります。価格を比較するときも、その製品を症状や年齢に合った方法で使えることが前提です。
同じ成分の市販薬へ、自分で切り替えてもよいですか?
処方薬を使っている理由やOTC製品の承認内容によって判断が変わります。成分名だけで切り替えず、服薬中の薬とあわせて薬剤師や処方医に確認してください。
薬局に相談するとき、何を持っていけばよいですか?
お薬手帳に加え、使っている市販薬やサプリメントが分かるものがあると確認しやすくなります。症状が始まった時期、これまで試した対処、変化した点なども伝えていただけると、相談を進めやすくなります。

しぐの視点|期待を「相談できる薬局」という実感につなげたい
OTC類似薬をめぐるニュースは、患者さんの負担と薬局の仕事の両方に関わります。だからこそ、将来への提案を決定事項のように伝えず、今の制度を正確に説明することから始めたいと思います。
そのうえで、薬剤師への期待には応えていきたいですよね。症状や服薬状況を聞く。市販薬を適切に使えるか確認する。必要な受診につなぐ。治療中の不安を受け止める。その積み重ねが、「処方箋がなくても相談してよかった」という実感につながるのだと思います。
保険給付の見直しがどこまで進むとしても、薬局が地域の方の健康を支える役割は続きます。制度の変化を追いながら、相談を受けたその場で何ができるかを、少しずつ整えていきたいですね。
参考・確認先
- 厚生労働省:OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し
- 厚生労働省:一部保険外療養に関する2026年9月30日付通知
- 厚生労働省:費用の計算方法に関する事務連絡
- MILオンライン:第8回薬局団体連絡協議会シンポジウム開催案内
- 発言の紹介範囲:依頼時に提示された報道見出し。元記事全文・講演記録は未確認。


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