市販薬オーバードーズ対策|JACDSが「ゲートキーパー支援研修」を実施

こんにちは、薬剤師のしぐです。
市販薬のオーバードーズ対策というと、購入数量の確認や販売制限を思い浮かべる方も多いと思います。
もちろん、適正な販売は大切です。そのうえで、店頭で出会った人が困りごとを抱えていたとき、どう声をかけて、どこへつなぐか。そこまで考えることも、薬剤師や登録販売者に求められる役割です。
2026年10月6日、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が、市販薬オーバードーズ対策とゲートキーパー支援研修の実施状況を報告したと報じられました。
今回は、この取り組みと、薬局・学校の現場で考えておきたい対応をまとめます。
今回のポイントは、適正販売を徹底しながら、困っている人を地域の支援につなぐこと。学校薬剤師が研修に関わっている点も、注目したいところです。
JACDSが市販薬オーバードーズ対策の研修を実施
報道によると、JACDSは各地域で研修を進めており、青森県では2026年9月に、学校・販売現場・地域の連携を扱う研修が実施されました。青森県学校薬剤師会、青森県医師会、養護教諭も講師として関わっています。
救急搬送の現状、生徒の心理的な背景、改正薬機法を踏まえた実践が取り上げられたとされています。
薬の知識に加えて、子どもの日常や救急の現実を共有する。販売現場が地域の支援機関と接点を持つ機会として、意義のある取り組みだと思います。
※研修の実施情報は2026年10月6日付の報道に基づきます。この記事後半の声かけ・店舗運用は、厚生労働省の資料を参考にした実務上の提案であり、今回の研修内容を再現したものではありません。
ゲートキーパーとは?薬局でできる役割を考える
ゲートキーパーは、悩んでいる人の変化に気づき、声をかけ、話を聴き、必要な支援へつなぐ存在です。特別な資格がなければ関われない、というものではありません。
厚生労働省は、気づき・傾聴・支援へのつなぎ・見守りという役割を示しています。すべてを一人で担う必要はなく、できる関わりから始めることが大切です。
| 役割 | 店頭で考えたい行動例 |
|---|---|
| 気づく | 購入の間隔や相談内容、いつもと違う様子を確認する |
| 話を聴く | 周囲に聞かれにくい場所で、困りごとを尋ねる |
| つなぐ | 本人の意向を確認し、地域の相談窓口や医療機関を紹介する |
| 見守る | 再来店時に無理のない声かけをし、相談しやすい関係を保つ |
薬剤師が、その場で依存症や精神疾患を診断する必要はありません。相談につながる入口をつくることが、現場でできる支援です。
オーバードーズの背景には、さまざまな困りごとがある
オーバードーズは、薬を決められた量を超えて服用することです。市販薬であっても、過量服薬によって重い健康被害が起こることがあります。
一方で、過量服薬に至る理由は人によって異なります。苦痛を和らげたい気持ちや、家庭・学校などでの困りごと、孤独や孤立が関わる場合もあります。
「若いから」「この薬を買うから」といった情報だけで、乱用や依存を決めつけることはできません。安全に使える状況かを確認しつつ、本人が話したいことを聴く姿勢が大切です。
市販薬のオーバードーズと自殺目的の過量服薬も、同じ意味ではありません。ただし、本人の安全に関わる発言や過量服薬があれば、速やかな対応が必要です。

販売時の確認と、困りごとへの声かけを組み合わせる
指定濫用防止医薬品に関する販売制度は、2026年5月1日に施行されています。対象製品の販売では、現在の法令と店舗の手順書に沿った確認・情報提供が必要です。
「気持ちを聴けたから販売してよい」という判断にはなりません。販売の可否は、法令と確認結果に基づいて判断します。そのうえで、必要な支援への案内を組み合わせます。
厚生労働省が公表するJACDS版ガイドラインでも、販売を断った場合などに、相談窓口の紹介やリーフレットの提供を検討することが示されています。
ここからは、店頭での対応を考えるための声かけ例です。店舗の手順や、本人の状況に合わせて使ってください。
| 場面 | 声かけの例 |
|---|---|
| 使用状況を確認する | 「安全に使っていただくため、今使っている薬と症状を確認させてください」 |
| 短い間隔で来店している | 「前回のあと、症状はどうですか。薬が足りなくなる理由を一緒に確認してもいいですか」 |
| 困りごとがありそう | 「体調のことや、ほかに困っていることはありますか。こちらでお話しできます」 |
| 販売できない | 「確認した状況では、今回は販売できません。体調や困りごとについて、相談できる先をご案内できます」 |
| 相談先を紹介する | 「相談できる窓口があります。連絡先をお渡ししてもいいですか」 |
質問を重ねすぎたり、人前で詳しい事情を尋ねたりすると、話しにくくなることもあります。まずは安全に使うための確認だと伝え、相談するかどうかを本人が選べる余地を持つ。そんな対応を考えたいですね。
すでに多く飲んだと話したときは、身体の安全を優先する
過量服薬が疑われる場合は、通常の販売相談を続ける前に、安全を確認します。
意識がおかしい、呼吸がおかしい、けいれんしているなどの場合は、119番へ連絡してください。
症状が目立たなくても、薬によってはあとから健康被害が現れることがあります。「今は元気そうだから大丈夫」と判断せず、速やかに医療機関や中毒110番へ相談してください。
相談時には、分かる範囲で薬の名前、飲んだ量、時刻、現在の症状を整理します。包装や残っている薬も情報になります。情報を集めるために救急要請を遅らせないことが大切です。
自分で吐かせたり、自己判断で飲食物を与えたりせず、救急・医療の指示に従ってください。
今にも自分を傷つけそうな様子や発言がある場合も、その場の安全を優先し、一人で対応を抱え込まないようにします。
「どこへつなぐか」を、店舗で準備しておく
相談先を案内しようと思っても、連絡先がすぐ分からないと、声かけの先で止まってしまいます。地域で利用できる窓口を、あらかじめ確認しておくと実務につながります。
| 相談の内容 | つなぎ先の例 |
|---|---|
| 薬物使用や依存について相談したい | 精神保健福祉センター、依存症相談拠点、依存症の専門医療機関 |
| 心身の不調や生活上の困りごと | かかりつけ医、保健所、自治体の相談窓口 |
| 学校生活の悩みや子どもの支援 | 養護教諭、スクールカウンセラーなど、本人が相談できる学校の窓口 |
| 家族が対応に困っている | 精神保健福祉センター、家族向けの相談・支援機関 |
受付時間、対象年齢、予約の要否を確認し、連絡先を渡せるようにしておくと、案内しやすくなります。
関係機関への情報共有は、本人の意向を確認し、必要な範囲で行うことが基本です。生命の危険など緊急性がある場合は、法令と現場の手順に従って安全確保を優先します。
相談を希望しない場合でも、持ち帰れる連絡先を渡す選択肢があります。「今すぐ相談しなければ」と迫らず、必要になったときに使える情報を残すことも支援です。

学校薬剤師が伝えたい「困ったときに相談する力」
今回、学校薬剤師会が講師として関わっている点は、学校での予防教育と販売現場での支援をつなぐきっかけとして注目したいところです。
薬物乱用防止教室では、薬の正しい使い方や過量服薬の危険性を伝えることが欠かせません。そこに、困ったときの相談先や、友達から打ち明けられたときの対応を加えると、子どもたちが行動を選ぶ助けになります。
例えば、こんなメッセージです。
- つらさや悩みを、一人で抱えなくてよい。
- 薬のことは、薬剤師や登録販売者に相談できる。
- 友達の過量服薬を知ったら、友達だけで解決しようとせず、信頼できる大人へ知らせる。
- 意識や呼吸がおかしいときは、すぐに救急の助けを求める。
授業では、具体的な乱用方法を詳しく示すよりも、安全な薬の使い方と相談行動に重点を置きたいですね。授業後に個別相談が出る可能性も考え、養護教諭などと対応を共有しておくと安心です。
学校薬剤師の仕事内容や健康教育への関わりは、こちらの記事でもまとめています。


しぐの実務メモ|研修を、店舗で使える対応にする
研修を受けたあとに考えたいのは、「明日、店頭で同じ場面に出会ったらどうするか」です。
最初の一言を決めておく。相談できる場所を確認する。地域の連絡先を用意する。迷ったときに誰へ相談するかを共有する。この準備があると、個人の経験だけに頼らず対応しやすくなります。
店舗で試すなら、短い事例を使った練習もよさそうです。頻回購入、販売できない場面、過量服薬の申告という3つの場面で、声かけと引き継ぎを確認する。それだけでも、手順書を現場の行動につなげやすくなります。
記録は、日時、確認できた事実、販売判断、案内した支援先などを必要な範囲で整理します。憶測や人格評価を記載せず、個人情報は店舗の規程に沿って管理します。
そして、対応するスタッフの安全も大切です。強い威圧や暴力の危険があれば、距離を取り、責任者や必要な機関へ助けを求めます。ゲートキーパーの役割を、一人のスタッフに背負わせない体制が必要です。
よくある質問
ゲートキーパーになるには、特別な資格が必要ですか?
特別な資格は必要ありません。悩んでいる人に気づいて声をかけ、必要な支援へつなぐ関わりが基本です。薬局では研修や事例検討を通して、対応を具体化しておくことが役立ちます。
薬剤師だけが対象ですか?
登録販売者も重要な役割を担います。厚生労働省の対応マニュアルは、市販薬販売に携わる薬剤師・登録販売者と学校薬剤師を対象にしています。
販売を断った場合も、相談先を案内した方がよいですか?
状況に応じて、相談窓口の紹介やリーフレットの提供を検討します。販売できない理由を説明したうえで、体調や困りごとについて相談できる先を案内する対応が考えられます。
本人が相談を希望しない場合は?
無理に話をさせず、必要になったときに使える連絡先を渡す方法があります。ただし、過量服薬や差し迫った危険がある場合は、安全確保を優先します。
すでに過量服薬したと言われたら?
意識障害、呼吸の異常、けいれんなどがあれば119番へ連絡します。症状が目立たなくても自己判断で様子見せず、速やかに医療機関や中毒110番へ相談してください。
JACDSの研修は、すべての薬剤師に受講義務がありますか?
今回の報道から、すべての薬剤師にこの研修の受講義務があるとは確認できません。研修の参加条件は主催者の案内を確認してください。法令・店舗手順に基づく適正販売や従業員教育とは、分けて確認する必要があります。
まとめ|薬局と学校が、地域の相談の入口になる
JACDSの市販薬オーバードーズ対策研修は、学校・医療・販売現場の連携を考える取り組みです。
薬剤師や登録販売者が現場でできるのは、適正販売を徹底し、困りごとに気づき、必要な支援へつなぐこと。学校薬剤師には、子どもたちへ正しい薬の使い方と相談する力を伝える役割があります。
販売手順、声かけ、地域の連絡先をセットで準備する。今回のニュースを、日々の対応を見直すきっかけにしたいですね。


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