指定濫用防止医薬品の陳列場所は?要指導・第1類との違いと7m・1.2mの要件

こんにちは、薬剤師のしぐです。
市販薬のオーバードーズ対策というと、「販売するときに年齢や購入理由を確認すること」を思い浮かべる方が多いと思います。
もちろん、それは大切です。でも今回、もうひとつ見直しておきたい話題がありました。
2026年9月29日配信の報道によると、東京都薬務課は定例会見で、指定濫用防止医薬品の薬事監視について、陳列場所も確認していると説明しています。
つまり、声かけや販売時の対応と一緒に、**「そもそも、その薬をどこに置いているか」**も確認が必要ということです。
「レジの近くに置いているから大丈夫」
「7m以内に入っているはず」
その感覚だけで運用していると、見落としがあるかもしれません。
今回は、指定濫用防止医薬品の具体的な陳列要件を、要指導医薬品・第1類医薬品、さらに混同しやすい指定第2類医薬品と比較しながら整理します。
※2026年9月30日時点の制度に基づく内容です。東京都の会見に関する記述は報道によるもので、監視件数・違反件数などの詳細は本稿では扱いません。
今回の話題は「東京都だけの新しい陳列ルール」ではない
まず、ここは整理しておきたいところ。
今回の報道を受けて、9月29日から東京都独自の新しい陳列ルールが始まった、という意味ではありません。
指定濫用防止医薬品に関する制度は、2026年5月1日に施行されています。今回の話題は、その制度に基づく薬事監視で、陳列場所も確認されているというものです。
東京都以外の薬局・ドラッグストアでも、同じく国の法令に沿った確認が必要です。
薬事監視というと、許可証、勤務表、販売記録、手順書などの書類に意識が向きがちです。でもOTC販売では、売場そのものが業務の一部なんですよね。
書類上の手順と、実際の棚の位置やスタッフの配置が一致しているか。ここまで見直したい話題です。
報道では、都心部の店舗は面積が狭く、棚が裏側に入ってしまう場合があることや、どこまで見える範囲と考えるかについて、保健所設置市区町村と話し合っていることも紹介されています。
単に距離を測るだけでは判断しきれない、売場の見通しや構造が実務上の論点になっているわけですね。
「濫用等のおそれのある医薬品」と「指定濫用防止医薬品」
従来、濫用等のおそれのある医薬品として販売時の確認などが求められていた医薬品について、改正後は「指定濫用防止医薬品」という制度が設けられました。
現場では以前の呼び方を使うこともありますが、手順書やスタッフへの説明では、現在の制度名も押さえておきたいところです。
対象を確認するときは、商品名や「せき止め」「かぜ薬」といった分類だけで判断しないことが大切です。指定成分を含むかどうかを、個々の製品で確認します。
2026年5月1日施行の指定では、次の8成分、その水和物・塩類を有効成分として含む製剤が対象とされ、外用剤は除かれます。
| 指定成分 | 指定成分 |
|---|---|
| エフェドリン | コデイン |
| ジヒドロコデイン | ジフェンヒドラミン |
| デキストロメトルファン | プソイドエフェドリン |
| ブロモバレリル尿素 | メチルエフェドリン |
同じ成分名を見つけても、内服剤か外用剤かまで確認します。以前の対象リストをそのまま使っている場合も、現行の指定と照合しておきましょう。
たとえば、同じシリーズの商品でも成分が違うことがあります。「このブランドは全部対象」「この薬効群は全部対象」と一括りにせず、製品単位で対象リストを作ると、棚替えや新商品の導入時にも確認しやすくなります。
そして、もうひとつ大事なのが、指定濫用防止医薬品という指定は、第1類・第2類・第3類という分類とは別の軸だということです。
濫用防止の指定と、その製品の医薬品区分。両方を確認して、陳列方法を決める必要があります。
指定濫用防止医薬品の陳列は、具体的にどうする?
ここで説明する選択肢は、第2類医薬品・第3類医薬品である指定濫用防止医薬品についてのものです。指定第2類医薬品も、第2類に含まれます。
実務上は、次の3つに分けると整理しやすいです。
| 陳列方法 | 満たす条件 | 現場で確認したいこと |
|---|---|---|
| ①購入者が入れない陳列区画に置く | 陳列設備から1.2m以内の範囲に購入者等が進入できない措置を採る | カウンターや仕切りの配置で、実際に進入できないか |
| ②購入者が直接手を触れられない設備に置く | 鍵をかけた陳列設備など、購入者等が直接手を触れられない設備を使う | 鍵が開いたままになっていないか。別の側面から手が届かないか |
| ③情報提供設備から7m以内に置く | 7m以内への陳列に加え、当該設備に薬剤師または登録販売者を継続的に配置する | 専門家が配置されているか。柱・壁・高い棚で商品が完全に隠れていないか |
法令上は、陳列区画内への陳列(直接手を触れられない設備の例外を含む)と、7m以内+専門家の継続的配置という2つの方式で規定されています。上の表は、売場で確認しやすいように前者を分けたものです。
1.2mは「購入者が近づいてよい距離」ではない
1.2mという数字を見て、「棚から1.2m離せばよい」とだけ覚えると、少し危険です。
これは、陳列設備から1.2m以内の範囲を陳列区画とし、その範囲に購入者等が進入できないようにする考え方です。
床に線を引いたり、「入らないでください」と書いたりすれば、どんな売場でも足りるとまでは言えません。購入者の動線を見て、進入できない措置として成立しているかを確認します。
「カウンターの後ろだから大丈夫」という場合も、脇から入れたり、横側から商品に手が届いたりしないかを見たいですね。
具体的な仕切りやレイアウトの判断に迷う場合は、図面や写真を用意して、管轄の薬務担当に確認すると話が進めやすいと思います。
鍵付きなら、距離だけで判断しなくてよい場合がある

鍵をかけた設備など、購入者が直接手を触れられない陳列方法は、1.2mの進入制限方式とは別に選べます。
ただし、設備に鍵が「付いている」ことと、鍵を「かけている」ことは違います。
補充後に開けたまま。
忙しい時間帯は扉を開放したまま。
これでは、選んだ陳列方法の前提が崩れてしまいます。開閉や鍵の管理まで、日常の業務に落とし込みたいところです。
7m以内でも、見えなければ問題になる

この方式では、情報提供設備から7m以内に置くだけでなく、その設備に薬剤師または登録販売者を継続的に配置する必要があります。
しかも、7mは専門家の目が届く距離として設けられています。柱や壁、高い陳列棚などで完全に隠れ、視認性に問題がある裏側への陳列は避ける必要があります。
つまり、「距離」「専門家の配置」「視認性」をセットで確認するということですね。
一般の会計レジの近くにあるだけでは、条件を満たすとは限りません。基準上の情報提供設備はどこか、そこで誰が業務をしているかまで確認します。
売場の図面では見えていても、実際には季節商品の大型POPや積み上げた商品で見えなくなることがあります。図面だけで終わらせず、普段スタッフが立つ位置から棚を見ることも大切です。
「継続的に配置」は、勤務表に名前があればよいわけではない
薬剤師や登録販売者が店舗内にいることと、情報提供設備に継続的に配置されていることは同じではありません。
厚生労働省の通知では、原則として情報提供設備のある場所で業務を行う考え方が示されています。一時的に離れて販売時の情報提供などを行う場合は、具体的な業務や手順、業務完了後に戻ることなどを手順書に定めます。
ずっと一歩も動いてはいけない、という意味ではありません。でも、普段からバックヤード作業が中心で、呼ばれたら戻ってくるだけという運用を、そのまま継続的配置と考えるのも難しいところです。
たとえば、次のような場面を確認しておきます。
- 休憩・交代時に、誰が情報提供設備を担当するか
- 別の売場で相談対応をするとき、どのように対応するか
- 調剤業務を兼務する薬剤師が離れる場合、配置条件をどう確保するか
- 必要な専門家の配置を確保できないとき、陳列方法や販売をどう扱うか
「スタッフが気をつける」で終わらせると、忙しい日に運用が揺れやすいです。誰が勤務しても同じ対応になるよう、手順書と人員配置を整えることが大切だと思います。
要指導医薬品・第1類医薬品との違いを一覧で確認
ここが今回、一緒に整理しておきたいポイントです。
| 医薬品区分・指定 | 主な陳列場所の要件 | 7m以内の方式を使える? |
|---|---|---|
| 要指導医薬品 | 陳列設備から1.2m以内の陳列区画に購入者等が進入できない措置。鍵付きなど直接手を触れられない設備に陳列する場合は例外 | 7m以内という理由だけで、自由に手に取れる棚に置くことはできない |
| 第1類医薬品 | 陳列設備から1.2m以内の陳列区画に購入者等が進入できない措置。鍵付きなど直接手を触れられない設備に陳列する場合は例外 | 同上 |
| 指定濫用防止医薬品(第2類・第3類) | 進入制限のある陳列区画、直接手を触れられない設備、または7m以内+専門家の継続的配置 | 使える。ただし配置と視認性も確認する |
| 指定第2類医薬品 | 原則として情報提供設備から7m以内。鍵をかけた設備、または陳列設備から1.2m以内への進入制限措置がある場合は例外 | 使える。ただし指定濫用防止医薬品にも該当するなら、その追加要件も満たす |
| 通常の第2類・第3類医薬品(上記指定に該当しないもの) | リスク区分が混在しない陳列など、一般用医薬品としての基本要件を守る | 上記指定に基づく7m・1.2mの特別要件はない |
**要指導・第1類に、指定濫用防止医薬品の7m方式をそのまま当てはめない。**ここは特に注意したいところです。
指定濫用防止医薬品でも、要指導や第1類に該当する製品は、その区分に基づく陳列規定に従います。
また、要指導医薬品と一般用医薬品、一般用医薬品の第1類・第2類・第3類は、混在させないように陳列します。「指定濫用防止医薬品をまとめた棚」を作る場合も、異なるリスク区分を無造作に混ぜないよう注意が必要です。
要指導・第1類を陳列する場合は、情報提供設備を、それぞれの陳列区画の内部または近接する場所に設ける要件も確認します。商品の置き方だけでなく、専門家が説明する場所まで含めた売場づくりが必要です。
指定第2類と指定濫用防止は、名前が似ていても別の制度
ここも、うっかり混同しやすいところです。
指定第2類医薬品だから、必ず指定濫用防止医薬品になるわけではありません。逆に、指定濫用防止医薬品がすべて指定第2類というわけでもありません。
指定第2類の7mルールだけを守っていても、濫用防止の指定が重なる製品では、専門家の継続的配置などの要件まで確認する必要があります。
「どちらも指定と付いているから同じ扱いでよい」ではなく、製品ごとに両方の該当性を見る。少し手間ですが、ここを整理しておくと売場の管理が楽になります。
薬剤師がいない時間帯と、陳列区画の閉鎖も確認
要指導医薬品・第1類医薬品の販売は、薬剤師が対応する区分です。登録販売者がいるから、そのまま販売できるというものではありません。
店舗の開店時間中にこれらを販売しない時間がある場合は、陳列区画を閉鎖できる構造が必要です。指定濫用防止医薬品についても、販売しない時間がある場合の陳列区画の閉鎖に関する構造要件があります。
閉鎖というと大がかりに聞こえますが、実際には設備に応じた対応を検討することになります。掲示だけで十分かどうかを自己判断せず、店舗の構造と運用を合わせて確認したいところです。
ドラッグストアでは、「店舗は営業しているけれど、一部の医薬品は販売できない時間」があり得ます。消費者にもスタッフにもわかるよう、販売できる時間帯と売場の扱いを整理しておきましょう。
棚替え・季節の売場づくりで、要件が崩れていない?
制度対応のときには確認した。でも、その後の棚替えで位置が変わっていた。
こういうこと、現場では起こり得ますよね。
特に気をつけたいのは、通常棚以外の陳列です。
かぜ薬の特設コーナー、通路側のエンド棚、レジ前の小さな什器。商品を複数の場所に置く場合は、それぞれの陳列場所が要件を満たすかを確認します。
メインの棚が適切でも、別の場所に置いた実物の商品が条件を外れていれば、店舗全体として見直しが必要になります。

売場確認チェックリスト
- 対象製品を、名称だけでなく成分・製品単位で確認した
- 要指導・第1類・第2類・第3類の区分も確認した
- 各陳列場所で、採用している方式を説明できる
- 1.2m方式では、購入者等が進入できない措置を確認した
- 鍵付き設備は、実際に施錠して管理している
- 7m方式では、情報提供設備からの距離を確認した
- 専門家の位置から、柱・壁・商品・POPによる死角を確認した
- 専門家の継続的配置と、一時的に離れる場合の手順を確認した
- 特設棚・エンド棚など、二次陳列も確認した
- 販売しない時間帯の閉鎖対応を確認した
- 売場の運用と手順書の内容を合わせた
このチェックリストは、法定様式ではなく実務上の確認用です。棚替えのたびに全部を一から考えなくて済むよう、対象リストと一緒に使うとよさそうです。
棚を整えたら終わり?販売時の確認も、もちろん必要
陳列場所を適切にしたからといって、販売時の確認や情報提供が不要になるわけではありません。
指定濫用防止医薬品では、年齢、18歳未満の場合の氏名、他の薬の使用状況、購入状況、大容量製品・複数個を購入する理由など、必要な確認を行います。濫用による健康被害のおそれについての情報提供も必要です。
「1箱だから何も聞かなくてよい」という対応にはなりません。
18歳未満には、小容量製品を1包装に限って販売し、対面またはオンラインでの情報提供が必要です。18歳以上でも、大容量製品・複数個の販売には対面またはオンラインでの情報提供が必要になります。
小容量・大容量は、見た目の箱の大きさで判断するものではありません。定められた用法・用量に基づく数量で確認します。
陳列、販売前の確認、情報提供、販売可否の判断。この流れをつなげて考えることが大切です。
しぐのひとこと|薬を渡す前から、薬剤師の仕事は始まっている
市販薬のオーバードーズは、薬を正しく使うための説明だけでは届きにくい問題も含んでいます。
「用法・用量を守ってください」と言えば、それで全部解決するわけではないんですよね。
だからこそ、売場で専門家が関われるようにすること。気になる購入状況があれば、相手を決めつけずに話を聞くこと。必要に応じて相談先につなげること。
陳列場所のルールも、そのための土台として考えたいと思います。
学校で薬の正しい使い方を伝えることと、薬局・ドラッグストアで安全に販売すること。場所は違っても、子どもたちや地域の人の健康を守るという意味ではつながっています。
学校薬剤師の仕事や健康教育への関わりについては、コチラ

よくある質問
指定濫用防止医薬品は、全部鍵付きの棚に置かなければいけない?
いいえ。第2類・第3類では、購入者が進入できない陳列区画に置く方法や、情報提供設備から7m以内に陳列して薬剤師・登録販売者を継続的に配置する方法もあります。採用した方法の条件を満たすことが必要です。
レジから7m以内なら大丈夫?
レジとの距離だけでは判断できません。基準上の情報提供設備から7m以内であること、当該設備に薬剤師・登録販売者を継続的に配置すること、視認性を確保することを確認します。
要指導医薬品・第1類医薬品も、7m以内なら自由に手に取れる棚に置ける?
いいえ。陳列区画への進入制限、または鍵付きなど購入者等が直接手を触れられない設備への陳列が必要です。指定濫用防止医薬品の7m方式を、そのまま適用することはできません。
指定第2類医薬品と指定濫用防止医薬品は同じ?
別の制度です。両方に該当する製品もあります。指定第2類の陳列要件に加えて、濫用防止の指定に伴う要件も満たす必要があります。
一時的に情報提供設備を離れることも禁止?
一律に禁止されているわけではありません。通知では、一時的に離れる業務や手順、業務が終わり次第戻ることなどを手順書に定める考え方が示されています。勤務中の専門家が店内にいるだけで足りる、と考えないことが大切です。
東京都以外の店舗にも関係する?
はい。陳列要件は国の制度に基づきます。今回の東京都の報道をきっかけに、他の地域でも売場・人員配置・手順書を確認しておきたい内容です。
まとめ|確認したいのは「棚の位置+人の配置+販売の流れ」
今回の話題を受けて、まず確認したいのは、対象製品がどこに置かれているかです。
第2類・第3類の指定濫用防止医薬品では、進入制限のある陳列区画、直接手を触れられない設備、または7m以内+専門家の継続的配置という選択肢があります。
一方、要指導医薬品・第1類医薬品には、その区分の陳列要件があります。指定第2類とも、同じ「指定」という言葉だけで混同しないことが大切です。
棚の位置を確認し、人の配置を確認し、販売時の対応までつなげる。
そして、棚替えや休憩・交代の後も、その状態を維持する。
これが、今回のニュースを受けて薬局・ドラッグストアで取り組みたいことだと思います。
ではでは。
しぐでしたっ

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