マンジャロ違法販売疑いで逮捕報道|保険薬局として考える法令遵守と患者さんの安全

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明るいピンクの背景に薬局と処方箋、注射ペン、天秤を配置した法令遵守のイメージ

こんにちは、薬剤師のしぐです。

2026年10月22日、糖尿病治療薬「マンジャロ」などを処方箋なしで販売した疑いで、東京・新宿区の薬局の責任者ら2人が逮捕されたと報じられました。

このニュースで改めて考えたいのは、薬局にとって法令遵守は、日々の業務すべての根本にあるということです。

需要があり、売上につながる。薬局の経営を考えるうえで、その視点は欠かせません。しかし、需要の大きさや利益の見込みが、法律を越えて薬を販売する理由になることはありません。

薬局が扱っているのは、人の体に作用する医薬品です。販売した後の健康まで見据える責任があります。

今回の要点は、①処方箋医薬品の販売ルールを守ること、②適応外処方と違法販売を混同しないこと、③正しく治療を受けている患者さんを不安にさせないことです。

今回の逮捕報道で、何が問題になっている?

TBSの10月22日の報道では、新宿区の「First Beauty薬局」の責任者ら2人が、処方箋がない客にマンジャロを販売した疑いなどで逮捕されたとされています。警視庁は、約2年間で約6,500万円を売り上げたとみて調べていると伝えられています。

現時点では捜査段階の報道です。個別の行為や責任を、有罪が確定した事実として断定することはできません。

また、約6,500万円という数字は、報じられた売上の規模です。利益額ではなく、マンジャロだけの売上と断定できる数字でもありません。

一方、今回の報道とは別に、6月5日のnews23では、SNSを通じたマンジャロの個人間転売や、美容・痩身目的での使用が取り上げられていました。6月の書類送検の事案と、10月の薬局関係者の逮捕報道は、分けて受け止める必要があります。

共通して考えたいのは、医薬品が診療と薬学的管理から離れ、「欲しい人に売ればよい商品」として流通してしまう問題です。

処方箋と注射ペン、書籍と天秤で薬局の販売ルールを表したイラスト

法令遵守は、薬局業務の土台にある

マンジャロは処方箋医薬品です。薬機法第49条では、正当な理由なく、医師などから処方箋の交付を受けた人以外に処方箋医薬品を販売・授与することを禁じています。

災害時などには所定の例外がありますが、「お客さんが希望している」「自己責任と言っている」「自費で支払う」という事情だけで、処方箋なしの販売が認められるわけではありません。

薬局として許可を受けていることも、あらゆる薬を自由に販売できることを意味しません。薬剤師が説明すれば、処方箋がなくてもよいということでもありません。

薬を扱う資格や許可は、ルールを守って患者さんの健康を支えるためのものです。専門性があるからこそ、守るべき線を明確にする必要があります。

「需要がある」「利益が出る」と、販売してよいかは別の判断

薬局も、経営を続けなければ患者さんを支えられません。人件費や設備費、医薬品の仕入れなどを賄い、適正な利益を確保することは必要です。

ただし、その利益は、法令と患者さんの安全を守る業務の中で生まれるものであるべきです。

「今、売れているから」「他でもやっているから」「本人が納得しているから」。こうした説明が重なると、確認すべきことを省略してしまいやすくなります。

薬局では、目の前の依頼に応える前に、販売できる薬なのか、処方箋や治療内容に問題はないか、安全に継続できるかを確認します。その確認の結果、販売を断り、受診につなぐことも専門職の仕事です。

売らない判断ができることも、薬局の信頼を支える力だと思います。

適応外処方・処方箋なしの販売・個人転売を整理する

今回のニュースでは、いくつかの問題が一緒に語られがちです。しかし、それぞれで確認するルールは異なります。

場面確認したいこと
承認された適応での治療診断、処方、用量、併用薬、治療中の安全性を確認する
美容・痩身目的などの適応外処方承認範囲外であること、医学的な必要性、説明、安全管理などを慎重に評価する
薬局による処方箋なしの販売処方箋医薬品の販売規制に関わる。自費というだけでは販売できない
SNSなどでの個人転売医薬品販売の許可や販売規制などに関わる。余った薬でも自由に販売できない

適応外処方であるという一点だけで、直ちに犯罪と断定することはできません。一方で、「医師が処方した」「自由診療だった」というだけで、その使用の適切さや安全性が保証されるわけでもありません。

保険診療か自由診療か、承認された適応の範囲内か、販売方法が法令に沿っているか。それぞれを分けて確認することが大切です。

マンジャロは、2型糖尿病の治療薬

マンジャロの一般名はチルゼパチド。GIPとGLP-1の受容体に作用する、週1回の注射薬です。国内での承認された効能・効果は「2型糖尿病」です。

食欲や体重に変化がみられる薬ですが、そのことと、誰でも美容目的で使ってよいことは同じではありません。

同じチルゼパチドを含むゼップバウンドには、肥満症に対する適応があります。ただし、肥満症に用いる場合も所定の要件があり、体重を減らしたい人が誰でも対象になるわけではありません。同じ成分でも、製品ごとの承認内容と使用条件を確認します。

糖尿病や肥満症の治療を受けること自体を、否定的に捉える必要はありません。今回問われている販売方法の問題と、必要な治療を受けている患者さんのことは分けて考えたいところです。

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SNSで買う薬は、「手に入った後」の安全が見えにくい

医療機関での診察と薬局での確認には、薬を渡す前後の安全を支える役割があります。

持病や併用薬、過去の副作用、現在の食事量、体調の変化。こうした情報を踏まえて初めて、その人への使用を検討できます。

SNSなどの個人間取引では、これらの確認に加え、正規品かどうか、保管温度や配送中の状態、使用期限なども十分に確認できないおそれがあります。「未開封」「正規品と書いてある」という説明だけでは、品質は保証されません。

薬が余ったときは、売ったり他の人に譲ったりせず、処方元や薬局に相談してください。余った理由が打ち忘れや副作用であれば、治療の見直しにつながる大切な情報です。

副作用を「痩せるための我慢」にしない

マンジャロでは、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などがみられることがあります。急性膵炎や胆道系の障害、イレウスなど、速やかな対応が必要な副作用にも注意が必要です。

低血糖にも注意します。特にインスリン製剤やスルホニルウレア剤などとの併用時には、リスクが高まるおそれがあります。

症状・状態対応の目安
嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛急性膵炎などの可能性があり、使用を中止して直ちに受診する
食べられない、飲めない、嘔吐・下痢が続く脱水などを防ぐため、早めに処方元へ連絡する
強い腹部の張り、腹痛、嘔吐、便やガスが出ないイレウスなどの可能性を考え、速やかに受診する
意識の変化、けいれん、飲み込めない状態救急要請する。無理に飲食させない

食欲が落ちているときに、さらに極端な食事制限を重ねることも避けたい行動です。体重が減っていても、栄養や水分が不足し、日常生活に支障が出ていれば、順調とはいえません。

適切に処方されている方は、報道を見て一律に自己中止せず、心配な点を医師・薬剤師に相談してください。ただし、上のような緊急性のある症状は、そのまま様子を見ず対応が必要です。

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保険薬局として、日々の確認を仕組みにしたい

法令遵守を「気をつけましょう」で終わらせず、実際の業務で迷わない形にすることも大切です。例えば、次のような運用が考えられます。

業務薬局で取り組みたいこと
受付・問い合わせ処方箋なしで販売できない薬について、職員間で対応を統一する
処方監査用量・投与間隔・重複・併用薬を確認し、不明点は処方医へ照会する
服薬指導注射手技だけでなく、食事・水分・副作用と異常時の連絡先を確認する
在庫管理仕入れ、調剤・販売、返品・廃棄の記録を残し、不明な出庫を放置しない
販売を断る場面理由を説明し、受診先や相談先につなぐ

「前にも渡してもらえた」「急いでいる」と言われたときほど、個人の判断で例外を広げない体制が必要です。

一方、既にSNSで購入して使ってしまった人から相談されたら、責める言葉から入るべきではありません。使用した製品、量、日時、体調を確認し、必要な医療につなぎます。

法令を守る姿勢と、困っている人が相談しやすい姿勢。その両方を持つ薬局でありたいと思います。

しぐの+α|薬を渡した後まで考えるのが、薬局の仕事

薬局の仕事は、薬を手に入れたいという希望に応えるだけでは終わりません。その薬を使って生活する患者さんの、その後まで考える仕事です。

処方内容を確認し、気になる点があれば立ち止まり、副作用の兆候を拾い、必要なときには医師につなぐ。こうした一つひとつが、薬を安全に使うための支えになります。

需要が大きい薬ほど、利益になる薬ほど、その基本が問われるのだと思います。

法令遵守は、薬局として信頼を預かるための土台です。売上を考えるときにも、その土台を動かしてはいけない。今回の報道を、日々の業務を見直すきっかけにしたいですね。

よくある質問

マンジャロは薬局で処方箋なしに買えますか?

処方箋医薬品のため、原則として医師などの処方箋が必要です。災害時などの所定の例外を除き、自費で支払うことや本人が希望することだけで販売できる薬ではありません。

ダイエット目的の処方は、すべて違法ですか?

適応外処方であることだけで、直ちに犯罪とは断定できません。ただし、美容・痩身目的の使用はマンジャロの国内承認の範囲外です。医学的な必要性、説明、安全管理、広告や販売方法などを別々に確認する必要があります。

余った注射をSNSで売ったり、友人に譲ったりできますか?

自己判断で売ったり譲ったりしないでください。余った場合は処方元や薬局に相談します。他人に処方された薬を使うことも避けてください。

自由診療なら、希望すれば誰でも使えますか?

自由診療は費用負担の区分であり、薬の適応や医学的な必要性、安全確認が不要になる仕組みではありません。

治療中ですが、ニュースを見て心配になりました。

適切な糖尿病治療まで否定する報道ではありません。自己判断で一律に中止せず、医師・薬剤師に相談してください。激しい腹痛や意識の変化などがある場合は、速やかな受診・救急対応が必要です。


作成基準日:2026年10月22日。事件に関する記述は当日時点の容疑・捜査報道に基づきます。

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