こんにちは、薬剤師のしぐです。
がん治療を支える薬は、抗がん薬だけではありません。骨転移による骨折や脊髄の圧迫を防ぎ、患者さんが日常生活を続けるために使う薬も、とても大切です。その一つが、デノスマブ、商品名「ランマーク」です。
ところが、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの患者さんを対象にした研究で、投与期間が長いほど顎骨壊死が増え、13カ月以上の投与では7〜12カ月の投与と比べて骨関連イベントの追加のリスク低下が確認されなかった、という結果が報告されました。「骨を守る薬で、あごの骨に問題が起こるの?」
そう感じる方もいると思います。薬剤師としても、長く使っている薬ほど「いつもどおり」で流してはいけない、と考えさせられる内容です。
ただし、今回の結果から「ランマークは1年で中止する」「長く使っても意味がない」と結論づけることはできません。この記事では、研究の数字と限界、薬の働き、薬局で確認したいポイントを整理します。まず押さえたいのは、治療開始から約1年を、骨と口の状態を個別に見直す節目として考えることです。

今回の研究でわかったことを先に整理
対象は、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの男性3,307人です。韓国の保険請求データを使い、デノスマブの投与期間と、顎骨壊死・骨関連イベントの発生との関連を検討しました。重要なのは、全員がデノスマブを開始しており、「使う人」と「使わない人」を比較した研究ではないことです。投与期間の異なる戦略を比較しています。
| 投与期間 | 顎骨壊死の3年間の調整後累積発生率 | 骨関連イベントの3年間の調整後累積発生率 |
|---|---|---|
| 6カ月以下 | 1.47% | 5.76% |
| 7〜12カ月 | 3.28% | 3.82% |
| 13カ月以上 | 12.20% | 3.99% |
表は投与間隔を限定しない戦略の推定値です。「13カ月目になった時点で12.20%が発症した」という意味ではありません。投与期間別の戦略について、3年間でどれくらい発生すると推定されたかを示しています。
7〜12カ月群と比べた13カ月以上群では、顎骨壊死のリスク比は3.73、骨関連イベントのリスク比は1.04でした。追加の骨関連イベント抑制は確認されず、顎骨壊死の増加が目立つ結果です。
ここで「効果の上乗せなし」は、「継続中の薬効が消える」という意味ではありません。比較した集団と評価項目の範囲で、さらに投与期間を延ばす利益が示されなかった、という読み方が必要です。
デノスマブは、骨転移にどう働く薬?
骨は一度できたらそのままの組織ではなく、古い骨を壊す働きと、新しい骨をつくる働きによって入れ替わっています。このうち骨を壊す役割を担うのが破骨細胞です。
デノスマブは、破骨細胞の形成や働きに関わるRANKLに結合する抗体薬です。RANKLの作用を抑えることで骨吸収を抑制します。骨転移がある患者さんでは、がんに対する治療と並行して、骨の合併症を防ぐ視点が必要になります。画像で骨の変化を追うことに加え、痛みがあるか、歩けるか、日常生活に支障がないかという確認も大切です。
しぐとしては、骨を守る治療の目的を「検査値や画像をよくすること」だけで説明しないようにしたいと思っています。「歩いて通院する」「家で食事をする」「自分の生活を続ける」。その土台を支える治療として伝えると、患者さんも薬の役割を理解しやすいのではないでしょうか。
一方で、骨吸収を強く抑える薬には、口腔内の管理も欠かせません。骨の合併症予防と顎骨壊死対策は、同じ治療の中で両方を考える必要があります。

「前立腺がんの患者さん全員」の結果ではない
今回の対象は、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がん、いわゆる骨転移のあるCRPCです。
去勢抵抗性とは、男性ホルモンを抑える治療によって去勢レベルの状態にしても、病気の進行が認められる状態を指します。前立腺がんと診断された直後の人、骨転移がない人、骨粗鬆症の治療を受ける人まで、同じ条件として扱うことはできません。
また、デノスマブは同じ成分でも、骨病変に使うランマークと、骨粗鬆症などに使うプラリアでは使用目的や投与方法が異なります。ランマークの固形がん骨転移による骨病変に対する国内の承認用法は、通常、成人に120mgを4週間に1回皮下投与です。患者さんから「デノスマブは危ないと聞いた」と相談されたときは、まず商品名、使っている目的、投与間隔を確認したいところです。ニュースの薬剤名と自分の薬が同じでも、今回の数字がそのまま自分の発症確率になるわけではありません。
薬局では内服薬の処方箋だけを見ていると、病院で投与される注射薬が見えない場合があります。がん治療中の患者さんには、飲み薬に加えて注射の治療も確認する習慣を持ちたいですね。
研究の方法と、数字を読むときの注意点
今回の解析では、投与期間を6カ月以下、7〜12カ月、13カ月以上に分けました。それぞれについて、投与間隔を限定しない戦略と、12週以内の間隔を保つ戦略を設定しています。
観察データから臨床試験に近い比較を行う「target trial emulation」という方法を用い、クローン・打ち切り・重み付けによって比較の偏りを減らしています。死亡を競合イベントとして扱ったことも特徴です。難しい用語が並びますが、押さえたいのは「単純に、長く生きて長く治療できた人と、早く治療を終えた人を比べただけではない」という点です。それでも、ランダム化比較試験と同じ確実性が得られるわけではありません。
病期、全身状態、投与を続けた理由、歯科の状態など、請求データだけでは十分に捉えられない違いが残る可能性があります。特に短期間で終了した人には、把握できない背景があるかもしれません。
顎骨壊死や骨関連イベントも診療コードを用いて把握しています。患者さん一人ひとりを同じ診察基準で直接評価した研究とは異なり、絶対的な発生率の解釈には注意が必要です。
今回の結果は「治療期間を見直すきっかけ」になりますが、「この月数なら安全」「この月数から危険」という境界線を決めるものではありません。
骨関連イベントには、何が含まれていた?
今回の主要評価の骨関連イベントには、病的骨折、脊髄圧迫、骨に対する手術が含まれ、骨への放射線治療は除外されていました。この違いは、実務上とても大切です。別の研究で「骨関連イベント」と書かれていても、含まれる出来事が同じとは限りません。言葉だけをそろえて発生率を比べると、誤った受け取り方につながります。
なお、原著では放射線治療を含めた従来型の複合評価も副次的に検討され、その解析では投与期間別の差が小さくなっています。そのため「骨転移に関係するあらゆる困りごとに対し、1年を超える治療は無意味」と広げることもできません。
患者さんに説明するときは、「この研究では、骨折などの特定の合併症について、さらに長く続ける利益が確認されなかった」と、評価された範囲を添えるのがよいと思います。
顎骨壊死とは?気づきたい口の変化
顎骨壊死は、あごの骨に壊死が生じる病態です。薬との関連があるものは薬剤関連顎骨壊死、MRONJと呼ばれます。デノスマブに加え、ビスホスホネート製剤などでも注意が必要です。ただし、口が痛い、歯ぐきが腫れたという症状だけで、顎骨壊死と決めつけることはできません。薬局で行うのは診断ではなく、いつもと違う症状を拾い、歯科や治療担当医につなぐことです。
相談のきっかけとして知っておきたい変化には、口の痛みや腫れ、歯のぐらつき、あごのしびれや重たい感じ、治りにくい傷などがあります。患者さんの言葉は、「歯が浮く感じがする」「入れ歯が当たって痛い」「抜いたところが気になる」など、必ずしも副作用らしい表現ではありません。聞き方を具体的にすることで、気になる変化を話してもらいやすくなります。
「歯医者には行っていますか?」だけで終えず、「最近、歯ぐきの腫れや痛みはありませんか」「歯を抜く予定はありませんか」と、一歩踏み込んで確認したいですね。

抜歯が怖いから、歯科に行かない?
ランマークの投与では、治療前の口腔状態の確認、必要な歯科検査、治療中の口腔清潔と定期的な歯科受診が大切です。歯科医師には使用中であることを伝える必要があります。ここで避けたいのが、「抜歯が危険なら、歯科に行かないほうがいい」という受け取り方です。歯や歯ぐきに問題があるときに、受診そのものを先延ばしにしてしまうのは困ります。
薬局からは、歯科治療を自己判断で断るよう勧めるのではなく、ランマークを使っていることを伝えたうえで、担当医と歯科医師に相談してもらう流れを案内したいと思います。
患者さんがお薬手帳を歯科に持参していても、病院の注射が記載されていなければ情報は伝わりません。注射名、最終投与日、次回の予定がわかるものを持っていくと、連携の助けになります。
また、抜歯歴がある人に「だから危ない」と責任を感じさせる言い方は避けたいところです。過去の処置を変えることはできません。今の口の状態を把握し、これからの治療を安全に進めるための情報として共有しましょう。

「約1年で再評価」と「1年で中止」は違う
今回の結果を読んで、しぐが一番大切だと思うのはここです。
約1年という節目に、現在の骨転移の状態、骨の合併症リスク、口腔内の状態、歯科治療の予定、患者さんが大切にしている生活を確認する。それが再評価です。
一方、「1年たったから次の注射は受けない」と患者さん自身で決めてしまうことは、今回の研究が勧めている対応ではありません。
デノスマブは中止後の骨代謝のリバウンドにも注意が必要です。とくに骨粗鬆症の用量では中止後の問題が知られており、がんの用量でも慎重な対応が必要とされています。継続・投与間隔の変更・中止のいずれも、担当医が全体の治療計画として検討する必要があります。
研究中の「12週以内」という分類も、「日本で12週ごとの投与が標準になった」という意味ではありません。研究の解析条件と、国内の承認用法を分けて理解しましょう。
薬剤師としては、治療をやめる方向に誘導するより、「そろそろ継続期間も含めて、先生と確認するタイミングかもしれません」と橋渡しするほうが、今回の知見を現場で生かせると思います。

薬局では、注射の情報をどう集める?
ここからは、今回の研究を踏まえたしぐの実務上の提案です。研究で検証された介入ではありませんが、普段の服薬確認に組み込みやすい形を考えました。
最初は、薬の名前と開始時期です。「骨の注射をしている」と聞いたら、商品名がわかる書類やお薬手帳を確認します。開始時期が曖昧な場合は、無理に推測して記録せず、「本人の記憶では昨年ごろ」など情報の確かさも残します。
次は、直近の投与と今後の予定です。歯科治療で延期することになったのか、体調不良で受診できなかったのか、医師が方針を変更したのかでは意味が異なります。予定どおり投与されていないことだけで、患者さんの自己中断と判断しないようにしたいですね。
さらに、誰に相談しているかを確認します。泌尿器科、腫瘍内科、歯科、かかりつけ薬局で同じ情報を持てているとは限りません。患者さんが説明を何度も繰り返す負担も考え、必要に応じて情報提供の形を整えます。
注射の名前を聞くことは、副作用確認だけでなく、患者さんの治療全体を理解する入口になります。処方箋に載っている薬だけで完結しない、という姿勢を持ちたいと思います。
顎骨壊死だけに目を向けず、低カルシウム血症も確認
今回の話題は顎骨壊死ですが、ランマークでは重篤な低カルシウム血症にも注意が必要です。補正カルシウム値などの確認と、必要なカルシウム・ビタミンD補充を含めた管理が求められます。薬局でできることの一つは、補充のための薬が「何のために出ているか」を患者さんが理解しているか確認することです。がんの薬に比べて軽く見られたり、錠数が多いからと飲めていなかったりする可能性も考えて、服用状況を聞きます。
手足や口の周りのしびれ、筋肉のけいれんなどがある場合は、低カルシウム血症も念頭に医療機関への相談が必要です。顎のしびれを含め、症状だけで薬局が原因を断定せず、発症時期や持続時間を確認して伝えます。
腎機能の問題がある人では補充の考え方も個別に異なります。市販のカルシウムやビタミンDを自己判断で追加するよう勧めず、処方内容と検査結果を踏まえた確認につなげたいところです。
病院に伝えるなら、相談内容を具体的に
「長期投与なので中止を検討してください」とだけ伝えると、患者さんの状態や相談の背景が見えにくくなります。情報提供では、何を確認できて、何が不明なのかを分けると役立ちます。
たとえば、継続期間、患者さんが訴えた口の症状、歯科受診の有無、抜歯の予定、最終投与日についての情報をまとめ、「歯科との情報共有状況と、継続方針をご確認いただきたい」と相談する形です。
確認していないことを「問題なし」と書かないことも大切です。歯科受診歴を聞けていないなら未確認、注射日が本人の記憶ならその旨を添える。情報の精度がわかることで、受け取る側も次の対応を考えやすくなります。
口の症状があるときは、定期的な情報提供の機会まで待つのではなく、症状に応じた速やかな相談につなげます。研究の説明に時間をかけるより、今起きている困りごとを解決することが優先です。
病院での注射治療と薬局での確認をつなぐ考え方は、こちらの記事でも整理しています。
※関連記事は過去の制度解説です。現行の算定要件は最新通知で確認してください。

患者さんへの説明は、不安と利益をセットに
説明するときには、「顎骨壊死が増えるそうです」だけを切り取らないようにしたいと思います。骨の合併症を防ぐために使っている薬であることと、長期継続では口の状態も見直す必要があることを、セットで伝えます。
たとえば、「骨を守るための注射ですが、長く続ける中でお口の状態も確認したい薬です。歯ぐきの痛みや歯科治療の予定があれば教えてください。注射を続けるかどうかは、先生と相談して決めていきましょう」という伝え方です。
患者さんによって、骨折への不安、歯の症状、通院の負担、注射に対する気持ちは違います。同じ数字を説明しても、気になる点は同じではありません。「何が一番心配ですか」と聞くことも、治療を支える一歩になります。
しぐとしては、薬の利益を守りながら困りごとを早めに拾うことを大切にしたいです。副作用の名前を覚えてもらうだけでなく、相談してよいタイミングを具体的に伝えたいですね。
よくある質問
ランマークを1年以上使っていたら、やめたほうがよいですか?
自己判断で中止しないでください。今回の研究は、約1年で個別に治療を再評価する必要性を示すもので、全員に中止を勧める結果ではありません。骨転移や口の状態を踏まえ、担当医と相談します。
13カ月以上で12.20%という数字は、私の発症確率ですか?
そのまま個人に当てはめることはできません。特定の患者集団と解析条件で推定された3年間の累積発生率です。歯科の状態や治療背景も異なり、13カ月目の時点の発症率でもありません。
歯が痛くなったら、次の注射まで様子を見てよいですか?
次回投与まで待たず、歯科と治療担当医に相談してください。歯痛だけで顎骨壊死とはいえませんが、原因の確認が必要です。受診時にはランマークを使っていることを伝えましょう。
抜歯は絶対にできないのでしょうか?
薬局で一律に可否を決めることはできません。必要な歯科治療を放置せず、歯科医師と治療担当医に連携して判断してもらいます。自分で注射を休んだり、受診を取りやめたりしないことが大切です。
12週ごとにすれば安全ですか?
今回の研究だけで、安全性や最適な投与間隔を保証することはできません。国内の固形がん骨転移による骨病変への承認用法は通常4週間に1回です。変更は医師の判断で行います。
プラリアを使っている人も、今回の表と同じリスクですか?
同じではありません。成分は同じですが、今回の対象は骨転移を有するCRPCで、がんの骨病変に対する用量のデノスマブを開始した人です。骨粗鬆症の治療に数字をそのまま当てはめないようにしましょう。
しぐのひとこと
今回の研究で考えたいのは、骨を守る薬を「いつまで、どのように使うか」です。始めるときに説明したから終わりではなく、続ける中でも、患者さんの状態や生活に合わせて確認を重ねる必要があります。
薬局では、飲み薬の副作用には気を配れていても、病院で投与される注射の期間や歯科の状況までは把握しきれていないこともあると思います。だからこそ、「骨の注射はいつからですか」「最近、歯医者には行けていますか」という声かけを大切にしたいですね。
骨折を防ぐことも、口から食べ続けられることも、患者さんの生活を守るために大切です。約1年という節目を一つのきっかけに、骨と口の両方を確認し、病院・歯科・薬局で支えられるようにしていきたいと思います。
※2026年10月27日時点。一般的な医薬品情報と研究の解説です。治療の継続・変更・中止は個別に担当医と相談してください。
参考文献・確認先
Kim S, et al. Denosumab Therapy Duration and Osteonecrosis of the Jaw and Skeletal Events in Bone-Metastatic Prostate Cancer. JAMA Network Open. 2026;9(10):e2639765. 2026年10月21日公開。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2855573
DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2026.39765
PMDA:ランマーク皮下注120mg 電子添文。
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/430574_3999435A1020_1_15
顎骨壊死検討委員会:薬剤関連顎骨壊死の病態と管理 ポジションペーパー2023。
https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf
PMDA:ランマーク皮下注120mg 患者向医薬品ガイド。
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/430574_3999435A1020_1_00G.pdf


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