
こんばんは、薬剤師のしぐです。
自己注射の薬は、患者さんが自宅で治療を続けるための大切な選択肢です。ただ、「注射できたら終わり」ではありません。使用後に安全に保管し、医療機関へ持参するところまでが、自己注射を支える薬局の仕事だと感じます。
2026年10月15日、シムジア皮下注200mgオートクリックスの対象9ロットについて、クラスⅡの自主回収が始まりました。注射後に針が完全に本体へ戻らず、露出した針でけがをするおそれがあるためです。
まず行いたいのは、在庫の現物確認。そして、既にお渡しした患者さんの手元に対象品が残っていないかの確認です。
今回の回収で押さえたいポイント
| 項目 | 内容 |
| 対象製品 | シムジア皮下注200mgオートクリックス |
| 製造販売元 | ユーシービージャパン |
| 回収開始 | 2026年10月15日 |
| 回収区分 | クラスⅡ |
| 対象 | 下記9ロット |
| 問題点 | 使用後の針の格納不良による針刺しのおそれ |
公表資料では、格納不良があっても薬液の全量投与は可能とされています。また、この不具合に起因する重篤な健康被害は報告されていないと説明されています。

ただし、「重篤な健康被害の報告がない」ことと、「露出した針に触れてよい」ことは別です。針が戻らない場合は、片づけ方まで具体的に伝える必要があります。
そもそもシムジアとは?
シムジアの一般名は、セルトリズマブ ペゴル(遺伝子組換え)です。TNFαを標的とする生物学的製剤で、関節リウマチや、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬・乾癬性関節炎・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症に使用されます。
オートクリックスは、自己注射に用いる注入器付きの製剤です。今回確認する製品名は「シムジア」だけでなく、「皮下注200mgオートクリックス」まで。公表された今回の回収対象は、この製剤の指定ロットです。
薬局で検索するときも、患者さんに確認するときも、製品名と剤形、ロット番号をセットで照合したいところです。

回収対象は9ロット|使用期限だけで判断しない
| ロット番号 | 使用期限(年・月) |
| 426473 | 2026年10月 |
| 427573 | 2026年10月 |
| 429193 | 2026年10月 |
| 430286 | 2027年3月 |
| 433700 | 2027年3月 |
| 434293 | 2027年5月 |
| 434294 | 2027年5月 |
| 436939 | 2027年5月 |
| 437429 | 2027年6月 |
確認するのは、上の9つのロット番号です。同じ使用期限でも対象判定はロット単位で行います。とくに「434293」と「434294」は番号が近いため、末尾まで確認しましょう。
薬局内に複数の保管場所がある場合は、冷蔵庫の通常在庫に加え、患者さん別の取り置き、調剤準備中の製品、返品・保留品も確認するのがおすすめです。
8月の注意喚起を見ていた薬局も、対応を更新したい
メーカーは2026年8月にも、この不具合について続報を出していました。当時は製造工程の是正措置と対策済み製品の出荷開始を案内する一方、安定供給の観点から対象ロットの返品を受け付けないとしていました。
今回は10月15日から自主回収が始まっています。以前のお知らせを覚えていると、「注意喚起だけでよい」「返品できない」と判断してしまうかもしれません。薬局内の申し送りや保管資料も、今回の回収情報に更新しておきたいですね。
なお、8月資料の対象一覧は11ロット、今回の回収一覧は9ロットです。対象範囲を混同せず、今回の一覧で照合してください。
薬局では「在庫確認→交付履歴→次回注射日」まで確認する
ここからは、公表内容を踏まえた薬局実務の提案です。
1.対象在庫を分け、交付を止める
現物の製品名・ロット・本数を記録し、該当品は通常在庫と区別します。保管条件を維持しながら、卸・メーカーの回収案内に沿って返却方法を確認します。
対象品を見つけた後に、別のスタッフが通常在庫として取り出さない仕組みまで必要です。口頭の申し送りに加え、保管場所にも分かる形で表示しておきたいところです。
2.既に交付した患者さんを確認する
交付履歴や仕入れ記録から、対象品が渡っている可能性のある患者さんを抽出します。ただし、処方・調剤履歴だけで個々のロットまで確定できない場合もあります。
ロットを追えない場合は、「対象ではないはず」と決めず、患者さんの手元の箱などで確認します。電話だけで読み取りにくければ、薬局の運用に沿った方法で写真等を確認するのも一案です。
3.次回注射日と残りの本数を聞く
連絡では「残っていますか?」だけでなく、「次はいつ注射する予定ですか?」「手元に何本ありますか?」まで確認します。
対象品が見つかった場合は、使用せずにいったん保管してもらい、処方元と連携して交換や次回投与の対応を調整します。治療スケジュールの変更や中断は、患者さんの自己判断に任せないことが大切です。
回収対応では、薬を戻してもらうことに意識が向きがちです。でも患者さんにとって気になるのは、「次の注射をどうすればいいのか」だと思います。その見通しまで伝えられて、ようやく安心につながるのではないでしょうか。

針が戻らなかったら?触らず、キャップを戻さない
メーカーの取扱い案内では、注射後に針が完全に格納されなかった場合、針に触れたり、再度キャップをしたりせず、ふた付きの耐穿刺容器などに入れて医療機関へ持参するよう案内しています。
「危ないからキャップを戻そう」とする行動そのものが、針刺しにつながる可能性があります。針を押し込む、本体を分解するなど、患者さん自身で直そうとしないよう伝えたいところです。
安全に収納できる容器がない場合は、無理に袋や箱へ入れようとせず、医療機関や薬局へ連絡して対応を確認してください。
使用済みの不具合品を受け取る側も、通常の未使用返品と同じ感覚で扱わない配慮が必要です。来局前に針の露出の有無を聞き、安全な受け取り方法を相談しておくと対応しやすくなります。
「薬が入っていないかも」と自己判断で追加注射しない
今回の公表では、針の格納不良があっても全量投与は可能と説明されています。針が戻らないことだけを理由に、もう1本追加することは避けてください。
一方、途中で本体を離した、薬液が漏れたなど、別の問題があれば、実際の投与状況は個別に確認する必要があります。その場合も自分で追加せず、注射時の様子を処方元へ伝えて相談してください。
薬局では「針の格納」と「投与できたか」を分けて聞くと、状況を整理しやすいと思います。

患者さんへの説明は、危険性と次の行動をセットに
「お渡ししたシムジアの中に、注射後に針が本体へ完全に戻らない可能性がある製品が含まれているか確認しています。お手元の箱のロット番号と、残りの本数、次の注射予定日を教えていただけますか。対象品の場合は使わずに保管し、次回の注射について処方元と調整します。既に使用して針が出ているものは、触ったりキャップを戻したりせず、安全な保管方法を一緒に確認しましょう。」
回収の電話は、それだけで不安を感じさせます。何が起きているのかを説明し、「今、何をすればよいか」を続けて伝えたいですね。
まとめ|回収は、患者さんの手元と使用後まで確認したい
今回の回収では、対象9ロットの照合が最初の一歩です。そのうえで、既に交付した患者さんの残薬と次回注射日を確認し、治療を継続できるよう処方元と調整します。
自己注射は、自宅で使う医療です。薬局の外で起こることまで想像して、使用後の扱いも支える。今回の回収は、その大切さを改めて考える機会だと感じました。

FAQ
シムジアはすべて回収されるのですか?
今回の公表対象は、シムジア皮下注200mgオートクリックスの指定9ロットです。製品名とロット番号を照合してください。
既に注射してしまいました。追加注射は必要ですか?
針の格納不良だけを理由に追加しないでください。公表資料では全量投与は可能とされています。液漏れなど別の問題があった場合は、追加せず処方元へ相談してください。
対象品が手元にあれば、どうすればよいですか?
対象品は使用せず保管し、調剤した薬局または処方元へ連絡してください。残りの本数と次回注射日も伝えると、対応を調整しやすくなります。
使用後に針が出たままです。キャップを戻してよいですか?
キャップは戻さず、針にも触れないでください。ふた付きの耐穿刺容器などで安全に保管し、医療機関へ連絡してください。容器がない場合は無理に収納せず相談してください。
以前「返品できない」と言われましたが?
8月の案内時点と、10月15日からの自主回収では対応が変わっています。今回の対象ロットを確認し、薬局・卸・メーカーの最新案内に沿って対応してください。
※2026年10月15日確認。回収範囲や対応は、今後の追加・訂正情報も確認してください。


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