ADCの眼毒性管理とは?眼科医の役割と薬局で確認したい点眼・連携のポイント

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ADC治療中の目を守る連携を表した青い背景の抽象イラスト

こんにちは、薬剤師のしぐです。

「抗がん剤の治療中に、目がかすむようになった」「目薬は使っているけれど、最近はスマートフォンの文字が読みにくい」。薬局でこうした相談を受けたとき、ドライアイや疲れ目だけを考えていないでしょうか。

抗体薬物複合体、いわゆるADCが使われる治療では、眼の症状を治療薬と結びつけて確認することが大切です。薬局では点滴の処方が見えなくても、副作用対策の点眼薬や併用薬を通して患者さんと関わることがあります。その接点を、早めの相談と受診につなげたいところです。

今回は、米国白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)の角膜委員会によるレビューをきっかけに、ADCの眼毒性管理を整理します。眼科医の役割に加え、日本の薬局で何を聞き、どこへつなぐかまで考えてみます。

ADC眼毒性管理で、まず押さえたいこと

  • ADCの眼障害は、薬剤ごとに注意点や管理方法が異なります。
  • 自覚症状の確認と、眼科での客観的な評価は両方が必要です。
  • 点眼薬の種類だけでなく、開始日・終了日・継続状況も確認します。
  • がん治療を続けられるかどうかは、眼科所見と薬剤別の基準を踏まえて治療担当医が判断します。
  • 眼科・治療担当科・薬局の間で、薬剤名、投与日、症状、対応を共有することが実務の土台になります。

「眼障害が起きたら治療はすべて中止」「目薬を使っていれば問題ない」といった一律の理解では、患者さんを支えきれません。必要な評価と対応を、次の投与判断に間に合う形で届けることが重要です。

抗体をイメージした形と透明な曲面で表したADCと眼表面の抽象イラスト

今回のASCRSレビューは、どんな内容?

対象論文は、Chamberlain氏らの「Ocular Surface Toxicity of Antibody–Drug Conjugates: Pathogenesis, Diagnosis, Grading, and Treatment of Ocular Adverse Effects」です。掲載誌はCornea、2026年45巻11号、1339–1350頁。オンライン公開は2026年6月26日です。

ASCRSの角膜委員会が文献と専門家の経験をまとめ、ADCに伴う眼表面障害の病態、診断、重症度評価、管理を整理しています。新しい予防法の効果を直接比較した臨床試験ではありません。日本で実際に対応するときは、各製品の最新の電子添文・適正使用ガイドを優先して確認します。

レビューでは、標的分子を介する作用と、標的に依存しない取り込みなどによる作用が論じられています。また、症状と角膜所見が一致しない場合があること、角膜所見と視力を評価するKVAスケール、CTCAE v6.0なども取り上げられています。眼科で見つかる変化を、治療担当科に伝わる形にすることが大きな課題です。

薬局で「眼の症状」を具体的に聞きたい理由

患者さんに「副作用はありませんか」と尋ねるだけでは、目の変化が話題に上がらないことがあります。抗がん剤と目の症状が関係すると知らなければ、「年齢のせいかな」「眼鏡が合わなくなったのかな」と受け止めてしまうかもしれません。

そこで、普段の生活に置き換えて確認する方法を提案します。「新聞やスマートフォンの文字は、前と同じように見えますか」「まぶしさ、ゴロゴロ感、涙が出る感じはありませんか」「両目のうち、片方だけ見えにくくなっていませんか」といった聞き方です。

ここで集めたいのは診断名ではなく、変化の経過です。いつから、どちらの目に、どんな変化があり、何がしづらくなったか。前回投与日や点眼状況と合わせて整理すれば、病院側が状況を把握しやすくなります。

逆に、患者さんが「何ともない」と答えたことだけを理由に、予定されている眼科検査を省いてよいとは判断できません。薬局での聞き取りは、眼科検査につながる情報収集として位置づけたいですね。

国内で特に確認したいADCと眼障害対策

まずは、国内で眼障害に関する管理事項が明示されている薬剤を具体的に押さえておきましょう。下表は眼科連携と点眼確認の入口をまとめたもので、休薬・減量の判断表ではありません。

薬剤眼科・治療担当科での確認薬局での確認の入口
テブダック/チソツマブ ベドチン開始前の眼科診察、投与中の定期的な異常確認投与日に合わせた点眼計画、実施状況、見え方の変化
ブーレンレップ/ベランタマブ マホドチン初回から4回目の各投与前は必ず眼科検査。その後も必要に応じて実施受診予定、防腐剤なしの人工涙液、コンタクトレンズの使用
ダトロウェイ/ダトポタマブ デルクステカン投与中は定期的に眼の異常を確認。症状出現時は速やかな眼科受診人工涙液の使用、他の点眼薬の併用、眼の異常の有無

テブダック:点眼の「いつから、いつまで」が大切

テブダックでは、視力低下を伴う眼障害が生じ、失明に至る可能性があることが警告されています。眼科医と連携し、投与開始前に診察を行うことが求められます。

眼障害軽減のための点眼には、それぞれ異なるタイミングがあります。厚生労働省の使用上の留意事項では、副腎皮質ステロイド点眼剤は投与24時間前から4日間、血管収縮点眼剤は投与前に1回、ドライアイ治療用点眼剤は投与開始日から投与終了後30日目までとされています。血管収縮点眼剤の指定もあるため、一般的な充血用目薬で代用する扱いにはできません。

薬局では、病院の指示書と実際の投与予定日を照合したいところです。投与が延期されたとき、点眼も元の予定のままでよいのかを確認する。複数の目薬があるとき、患者さんがそれぞれの役割を区別できているかを確認する。処方されたことと、予定どおり使えていることを分けて見るのがポイントです。

ブーレンレップ:眼科検査の予定まで確認する

ブーレンレップでは、初回から4回目までの各投与前は必ず、その後は必要に応じて、視力検査と細隙灯顕微鏡検査を含む眼科検査を実施します。電子添文では、防腐剤を含まない人工涙液を1日4回以上使用すること、投与中はコンタクトレンズの装着を避けることも示されています。

薬局での確認は、「目薬は足りていますか」から一歩進めて、「次の点滴までに眼科の予約は入っていますか」「検査結果を病院に伝える書類はありますか」といった受診・情報共有の状況まで広げられます。

眼科へ行ったという事実だけで、投与可否まで確認できたとは限りません。病院の運用に応じて、結果の返却方法や持参物を患者さんと確かめておくとよさそうです。薬局が検査値を独自に読み替えて投与可能と判断することは避け、疑問があれば治療担当科へ照会します。

ダトロウェイ:「保湿力の高い目薬ならよい」とは限らない

ダトロウェイでは、角膜障害に注意し、投与中は眼の異常を定期的に確認します。適正使用ガイドには、人工涙液の複数回使用とコンタクトレンズを避けることが記載されています。また、ヒアルロン酸ナトリウムなど粘稠性の高い点眼薬は、抗がん剤を含む涙液の滞留を助長するおそれがあるため、使用を避けるよう注意されています。

そのため、患者さんが「乾くから、手元にあった目薬を足した」と話した場合は、具体的な製品名を確認する必要があります。一般的なドライアイ治療の知識だけで目薬を選ばず、ダトロウェイの管理方法と照合することが大切です。

すでに別の眼疾患で点眼治療を受けている場合も、薬局から一律に中止を勧めるのではなく、眼科医と治療担当科に確認して調整します。治療目的の異なる点眼薬が混在していないか、お薬手帳だけで分からないものは現物や写真で確かめると整理しやすいですね。

眼科と治療担当科と薬局の連携を表した三つのアーチとリボン

日本角膜学会の共通連絡票も活用したい

日本角膜学会は、抗腫瘍薬関連オキュラーサーフェス合併症について、全薬剤共通の「眼科トリアージ連絡票」を公開しています。OS-Gradeに基づいて評価を処方医へ伝え、眼科と主科の連携を円滑にするためのツールです。薬剤別の資料や、所見の取り方も掲載されています。

ただし、「共通の連絡票がある」ことと「すべての薬剤で休薬・減量基準が同じ」ことは別です。共通の形式で状態を伝えたうえで、薬剤ごとの電子添文や適正使用ガイドと照らし合わせて対応します。

また、KVA、CTCAE、OS-Gradeを、数字が同じだから同じ状態だと扱うこともできません。薬局が受け取った書類に評価が記載されていれば、尺度の名称や検査日も含め、そのまま治療担当科に確認するのが基本です。

薬局での聞き取りを、実際の連携につなげる

ここからは、薬局で使うための実務上の提案です。学会が定めた専用の問診票ではなく、日常業務で情報をそろえるための例として考えてください。

治療薬と投与日を確認する

まず、点滴の薬剤名、直近の投与日、次回の予定日を確認します。「乳がんの点滴」「骨髄腫の治療」という情報だけでは、必要な眼障害対策を特定できません。患者さんが名前を覚えていない場合は、治療手帳や病院の説明書を見せてもらいましょう。

薬局の薬歴にも、確認できた範囲と確認先を残します。点滴名が未確認なら、そのことを明記する。分からない部分を推測で埋めないことが、その後のスタッフの判断を助けます。

症状の変化と生活への影響を聞く

かすみ、目の痛み、まぶしさ、異物感、充血、涙の増加などについて、発現日と経過を聞き取ります。「昨日から急に」「投与後に少しずつ」「一度よくなったが再び悪化」といった時間の情報も重要です。

加えて、読書、仕事、運転、階段の移動、薬の識別などへの影響を確認します。単に症状の有無を記録するよりも、「薬袋の文字が読みづらくなった」と残すほうが、患者さんの困りごとが伝わります。

点眼の実施状況と困りごとを聞く

点眼回数だけでなく、「昼間は仕事で使えない」「容器が押しにくい」「どの目薬を使う日なのか分からない」といった背景も確認したいところです。できていない理由が分かれば、病院と相談する内容も具体的になります。

点眼カレンダーを作る場合は、実際の指示と投与日を確認してから記入します。処方内容が変わった際は古い表との混同を防ぐため、更新日を付け、患者さんが使う表をそろえる運用を提案します。

受診につなぐべき変化を、次回来局まで待たせない

新たなかすみや痛みなどがあれば、治療を受けている医療機関へ速やかに連絡し、眼科評価につなげます。特に急な視力低下や強い眼痛があるときは、次の定期受診や次回来局まで様子を見る案内にしないことが大切です。緊急の眼疾患も含めて評価が必要になります。

薬局ではADCが原因だと断定せず、症状と経過を伝えます。見え方に異常がある患者さんには、自分で運転して受診することを勧めず、家族の付き添いなど移動方法も確認したいですね。

点眼薬の確認と見え方の聞き取りを表した目薬と透明なレンズ

病院へ伝えるときの文例

以下は架空の連絡例です。患者さんごとの事実に置き換え、緊急性が高い場合は書面送付に先立って電話で連絡します。

ダトロウェイ治療中の患者さんより、昨日から両眼のかすみとまぶしさがあるとの相談を受けました。直近の投与日は○月○日です。スマートフォンの文字が以前より読みにくいとのことです。人工涙液は指示どおり使用していると話されていますが、追加で使用した市販点眼薬の製品名は未確認です。患者さんには治療担当医療機関へ速やかに相談するよう案内しました。眼科評価と点眼薬の確認について、ご対応をお願いいたします。

「角膜炎が出ています」と薬局で診断を付ける必要はありません。症状、時間経過、生活への影響、使用薬、すでに行った案内、返答をお願いしたい事項をそろえることが大切です。

連絡した後も、受診できたか、点眼が変更されたか、次回投与の予定が変わったかを確認できるよう、薬局内で引き継ぎます。連絡票を送った時点で終わらず、その後の処方や患者さんの理解まで確かめる流れを作りたいですね。

よくある質問

目が乾くだけでも、病院に伝えたほうがいい?

治療中に新しく出た症状や悪化した症状は伝えてください。乾燥だけに感じても、薬局で原因や重症度を確定することはできません。かすみ、痛み、まぶしさなどが重なっていないかも確認し、薬剤別の指示に沿って相談につなげます。

人工涙液を使っていれば、眼科受診はいらない?

点眼と眼科評価は役割が異なります。目薬を使えていても、予定された検査や、症状が出たときの受診は必要です。特にブーレンレップのように投与前の眼科検査が定められた薬剤では、受診予定も含めて確認します。

ADCでは、すべてステロイド点眼薬を使う?

一律には扱いません。テブダックのように予防的な点眼スケジュールが示された薬剤もありますが、それを別のADCにそのまま当てはめることはできません。手元に残っている目薬を自己判断で追加せず、治療担当医や眼科医の指示を確認してください。

眼障害が出たら、抗がん剤をやめるしかない?

必要な対応は薬剤と状態によって異なります。継続、休薬、減量、中止などの判断は、眼科評価と薬剤別の基準を踏まえて治療担当医が行います。患者さんには、異常を我慢して投与日を迎えず、早めに相談することを伝えたいですね。

薬局には点滴の処方が来ないけれど、関われる?

関われます。併用薬の調剤、点眼薬の相談、服薬フォローの場面で、治療薬と見え方を確認することが入口になります。治療担当病院と眼科の情報を、患者さんの生活の中でつなぐ役割を担えます。

しぐの考え:目を守る連携を、治療の予定に組み込みたい

今回の話題で考えたいのは、眼科への紹介を「症状が強くなってからの追加対応」にしないことです。治療開始前から受診予定と連絡先を確認し、点眼の使い方や、見え方が変わったときの相談方法まで共有しておく。その準備に、薬局も参加できると思います。

眼科では角膜や視力の変化を評価し、治療担当科では抗がん剤の有効性と安全性を踏まえて投与を判断する。薬局では、患者さんが日常で感じた変化や、点眼を続けるうえでの困りごとを拾う。それぞれの情報がそろってこそ、患者さんに合った対応を考えやすくなります。

「最近、見え方に変化はありませんか」。短い問いかけですが、その先に受診と情報共有の流れがあれば、意味のある確認になります。ADCを使う患者さんの目と生活を守るために、薬局でもこの視点を持っておきたいですね。

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本記事は2026年11月1日時点の公開情報をもとに、薬剤師の実務向けに整理しています。実際の検査・点眼・休薬・減量は、最新の電子添文、適正使用ガイド、担当医の指示に従ってください。

参考文献・確認先

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