
こんにちは、薬剤師のしぐです。
「学校の視力検査で、眼科を受診するように言われた」
「最近、子どもが画面に顔を近づけている」
そんなとき、「まだ困っていないから」と受診を先延ばしにしていませんか。
子どもの近視は、小学校に入ってから考えればよい問題ではなくなっています。就学前から近視になる子もいて、早い時期から目の使い方と見え方を確認することが大切です。
まず押さえたいのは、健診で視力低下を指摘されたら眼科を受診すること。そして、日中の屋外活動を増やし、近くを見る作業の距離と時間を見直すことです。
今回は、子どもの近視が早期の対策を必要とする理由と、家庭・学校・薬局でできることを整理します。
学校健診で視力低下を指摘されても、眼科受診は約半数
2026年10月の小児近視に関する講演報道では、学校健診で視力低下を指摘された後の眼科受診率は、約55%と紹介されました。
受診が必要とされた子どものうち、眼科につながったのは半数程度ということです。ただし、この数字は講演で紹介されたもので、確認できた報道の範囲では元調査の対象や調査年などの詳細は明らかではありません。全国の子ども全体の受診率と読み替えないようにしましょう。
子どもは見えにくさに慣れてしまったり、片方の目で補っていたりして、自分から困りごとを言わない場合があります。
「本人が見えると言っているから大丈夫」だけでは判断できません。受診を勧める通知は、目の状態を確かめるきっかけとして受け止めたいですね。
小学生の3割超、中学生の約6割が裸眼視力1.0未満
今回の話題で取り上げられた2024年度学校保健統計では、裸眼視力1.0未満の割合は次の水準でした。
| 学校段階 | 裸眼視力1.0未満の割合(概数) |
| 幼稚園 | 26.5% |
| 小学校 | 36.8% |
| 中学校 | 60.6% |
| 高等学校 | 71.1% |
これは「近視と診断された子どもの割合」ではありません。裸眼視力が低い原因には、近視以外の屈折異常や弱視なども含まれます。
また、2024年度の数字を最新統計と混同しないことも必要です。2025年度の学校保健統計もすでに公表されており、小学校で3割超、中学校で6割程度、高等学校で7割程度という状況が続いています。
大事なのは数字の大きさだけでなく、見えにくさを見つけた後に必要な検査へつなげることです。
なぜ低年齢で始まる近視に注意が必要なの?
近視は、遠くのものにピントが合いにくくなる状態です。子どもの近視では、眼球の前後の長さである「眼軸長」が伸びる軸性近視が中心になります。
眼鏡で見え方を補えても、伸びた眼軸長を元に戻せるわけではありません。早く発症するほど成長期に進行する期間が長くなり、将来、強い近視に至る可能性が高くなるため、早期からの管理が大切です。
強い近視は、網膜剥離や緑内障、近視性黄斑症などのリスクとも関係します。ただし、近視の子どもが必ずこれらの病気になるという意味ではありません。
怖がらせるよりも、「今の見え方を整えること」と「将来を見据えて進み方を確認すること」を一緒に伝えたいところです。

予防の第一歩は、日中に屋外で過ごす時間を増やすこと
近視の発症予防では、屋外で過ごす時間を確保することが大切です。毎日合計2時間程度を目安に、通学や休み時間、放課後の活動などを組み合わせて考えてみましょう。
まとまった2時間を一度に確保する必要はありません。学校生活と家庭で過ごす時間を合わせて、無理なく屋外活動を増やす工夫ができます。
たとえば、休み時間に外へ出る、帰宅後に短い散歩をする、休日の遊びに公園で過ごす時間を取り入れる、といった方法です。
ここで区別したいのが、近視になることを防ぐ対策と、すでに近視がある子の進行を抑える治療は同じではないという点です。屋外活動の根拠は特に発症予防で重要で、すでに近視がある場合に屋外活動だけで進行を十分に抑えられるとは限りません。
眼鏡や定期検査、必要に応じた治療の代わりにはならないと考えましょう。
紫外線・熱中症対策も一緒に
目のために、強い直射日光を浴び続ける必要はありません。木陰を利用し、帽子や必要に応じた適切なサングラスで紫外線対策を行います。
暑い日は時間帯や気温に配慮し、水分補給と休憩を取りましょう。太陽を直接見る行為は避けてください。

スマホだけでなく、読書や勉強でも「距離」と「連続時間」を見直す
近くを見る作業は、スマホやゲームだけではありません。読書、宿題、タブレット学習なども含まれます。
「ゲームをやめて勉強すれば目は安心」と単純にはいえません。何を使うかに加えて、どれくらい近くで、どれくらい続けて見ているかを確認することが大切です。
| 確認すること | 家庭でできる工夫 |
| 目と本・画面の距離 | 30cm以上離すことを目安にする |
| 連続して見る時間 | 30分ごとに遠くを見て、20~30秒以上休む |
| 姿勢 | 寝転んだり顔を近づけたりせず、座り方を整える |
| 周囲の明るさ | 部屋を明るくし、画面との明暗差や反射を調整する |
| 画面の見やすさ | 文字を大きくする、端末をスタンドに置く |
文部科学省の啓発では、30分に1回、20秒以上目を休めることが示されています。家庭では「30分使ったら30秒、遠くを見る」と覚えやすくしてもよいでしょう。
ただし、これらの数字を守れば必ず近視を防げるという保証ではありません。休憩時に別のスマホを見るのではなく、近くを見る作業から離れることがポイントです。
学校健診の結果は、診断ではなく受診への入り口
学校の視力検査は、詳しい病名を決める検査ではありません。
眼科では、近視・遠視・乱視の程度や、左右の見え方、弱視や斜視などの可能性を確認します。子どもはピントを合わせる力が強いため、必要に応じて調節を一時的に休ませる点眼薬を使って検査する場合もあります。
「眼鏡を作れば終わり」と考えず、まず目の状態を調べることが大切です。受診時には健診結果を持参し、いつから見えにくそうか、目を細めることがあるか、読書や端末の使い方などを伝えると役立ちます。
家庭で気付きたい見え方の変化
- 遠くを見るときに目を細める
- 本や画面に顔を近づける
- 黒板が見えにくいと言う
- 片目を隠すと嫌がる、左右で反応が違う
- 顔を傾けたり、片目をつぶったりして見る
こうした変化があれば、健診の時期を待たずに眼科へ相談しましょう。急に見えにくくなった、強い目の痛みがあるなどの場合は、通常の近視と決めつけず速やかな受診が必要です。

眼鏡と近視進行抑制治療は、目的が違う
通常の眼鏡は、見え方を補うための大切な道具です。「かけると近視が進みそうだから」と、必要な眼鏡を避けたり、自己判断で弱い度数にしたりするのはやめましょう。
一方、近視の進行を緩やかにすることを目的とした治療もあります。
| 方法 | 主な目的・確認したい点 |
| 通常の眼鏡 | 見え方を矯正する。必要な度数と使用場面を眼科で確認 |
| 低濃度アトロピン点眼 | 近視の進行抑制を目指す。対象や副作用、通院、費用を確認 |
| オルソケラトロジー | 就寝中の特殊レンズで角膜形状を変え、日中の裸眼視力を補う。眼軸伸長を抑える効果も報告されているが、感染症予防と定期検査が必要 |
国内では、近視の進行抑制を目的とする「リジュセアミニ点眼液0.025%」が承認され、2025年4月に発売されています。公的医療保険の給付対象外です。
治療は近視を元に戻すものではなく、進行を緩やかにすることを目指します。どの方法が適するかは、年齢、近視の程度や進み方、生活環境などを踏まえて眼科で判断します。
ブルーライトカット眼鏡を買えば予防できる?
子どもの近視予防を目的に、ブルーライトカット眼鏡を積極的に勧める根拠はありません。眼科関連6団体も、小児への装用に慎重な意見を示しています。
画面の青い光だけに注目するより、画面との距離、連続使用時間、屋外で過ごす時間を見直す方が大切です。
また、屋外で紫外線から目を守るサングラスと、室内で使うブルーライトカット眼鏡は目的が異なります。ひとまとめに考えないようにしましょう。
しぐの学校薬剤師メモ|「気を付けて」から、続けられる仕組みへ
子どもに「スマホを近づけないで」「目を大事にして」と伝えるだけでは、毎日の行動は変わりにくいものです。
端末をスタンドに置く。文字サイズを大きくする。休憩のタイマーを使う。外で過ごす予定を家族で決める。大人も同じタイミングで画面を置く。
こうした具体的な環境づくりなら、子どもだけに我慢を求めずに取り組めます。
学校薬剤師の立場では、教室の明るさやまぶしさ、黒板の見やすさなどを確認し、学習環境の改善につなげることもできます。明るさを整えるだけで近視を防げるわけではありませんが、見えにくさを放置しない環境づくりは大切です。


薬局で「子どもの目が悪くなったので、何か目薬を」と相談されたときも、市販の目薬だけで様子を見る方向には進めたくありません。健診結果や眼科受診の状況を確認し、必要な診察につなげることが優先です。
よくある質問
子どもが困っていなければ、健診後の受診は不要ですか?
いいえ。子どもは見えにくさを自覚しにくいことがあります。受診勧奨があれば、本人の訴えがなくても早めに眼科で確認しましょう。
親が近視なら、予防しても意味がありませんか?
遺伝的な要因は関係しますが、必ず同じ程度の近視になるわけではありません。屋外活動や近業の習慣を整え、見え方を確認することには意味があります。
外遊びを増やすと、今ある近視は治りますか?
伸びた眼軸長を元に戻す方法ではありません。屋外活動は特に発症予防で重要ですが、近視がある場合は眼科で進み方を確認し、必要な治療を相談します。
眼鏡をかけると近視が進みますか?
適切な眼鏡を避ける必要はありません。見えにくいまま我慢したり、自己判断で度数を弱くしたりせず、眼科で処方された眼鏡を指示に沿って使いましょう。
近視予防のためにサプリメントは必要ですか?
子どもの近視予防や進行抑制のために、特定のサプリメントを一律に勧める十分な根拠はありません。食事のバランスを整え、受診や生活習慣の改善を優先しましょう。
視力が下がったら、市販の目薬で様子を見てもよいですか?
目薬だけで原因は判断できません。近視以外の原因が隠れている場合もあるため、特に子どもの視力低下は眼科へ相談してください。
今日から確認したい3つのこと
健診で視力低下を指摘されたら眼科を受診する。日中に屋外で過ごす時間を増やす。近くを見るときは距離と休憩を意識する。
子どもの目を守る取り組みは、「視力が大きく下がってから」より、変化が小さいうちに始めたいものです。
受診勧奨のお知らせが机の中に残っていないか。画面を見る姿勢が前かがみになっていないか。まずはそこから、家庭と学校で確認していきましょう。
※2026年10月22日時点の情報で作成。健診後の受診率約55%は今回の講演報道に基づく概数です。


コメント