
こんにちは、薬剤師のしぐです。
「最近、歩くのが遅くなった」「食事量が減った」。病院に行くほどではないと思っていても、こうした変化は薬局で相談できるようになります。
さいたま市は、さいたま市薬剤師会との協定に基づき、2026年10月1日から薬局を活用した健康づくりの取り組みを始めます。柱は、薬局でのフレイルチェック、地域の「通いの場」への薬剤師派遣、認知機能のセルフチェックと受診案内です。フレイルチェックは市内31店舗で2027年1月31日までモデル事業として行い、2027年度からの本実施を予定しています。認知機能のセルフチェックは市内10区に各1店舗です。さいたま市発表
この記事では、利用者が何を受けられるのかと、薬剤師が結果をどう次の支援につなげるのかを整理します。
さいたま市の薬局連携、3つの取り組み
| 取り組み | 対象・場所 | 内容・期間 |
|---|---|---|
| 薬局でのフレイルチェック | 原則、希望する65歳以上のさいたま市民/市が認証した31薬局 | イレブンチェック、指輪っかテスト、薬剤師の助言。2026年10月1日~2027年1月31日はモデル事業 |
| 通いの場への薬剤師派遣 | 地域の高齢者の集まり | 健康教育や保健指導。同期間はモデル事業 |
| 認知機能セルフチェック | 市内10区の各1薬局 | VR機器で脳の健康度を確認し、必要に応じてもの忘れ検診を案内。2026年10月1日から |
「フレイルチェック認定薬局」31店舗と、VR機器を設置する10店舗は対象店舗数が異なります。利用前に、それぞれの市の実施薬局一覧と認知機能セルフチェッカー設置薬局一覧を確認してください。さいたま市発表
フレイルとは?「まだ病気ではない」段階の変化にも目を向ける
フレイルは、加齢に伴って体力や心身の活力が落ち、要介護状態に進みやすくなった状態を指します。筋力や食事だけではなく、気力や人との交流の減少も関係します。早く気づき、生活や支援を見直すことが大切です。健康長寿ネット
フレイルは単に「足腰が弱くなった」ことだけではありません。体重や食事量の変化、疲れやすさ、外出や人付き合いの減少など、身体・心理・社会面が重なります。「年齢のせい」と片づけず、変化がいつから続いているかを確かめることが第一歩です。
薬局には、定期的に処方薬を受け取りに来る方がいます。前回より歩く速度が遅い、薬を受け取りに来ることが負担になっている、食欲が落ちている。こうした日常の変化を、処方内容の確認とあわせて相談できるのが薬局の強みです。これは今回の事業の具体的な評価結果を示すものではなく、薬局実務上の視点です。

薬局のフレイルチェックでは何をする?
市の案内によると、チェックは無料で約5~10分。健康に関する簡単な質問票「イレブンチェック」と、両手の親指・人差し指でふくらはぎを囲む「指輪っかテスト」を行います。その後、薬剤師が結果を踏まえて健康上の助言をし、必要に応じて市の介護予防事業を紹介します。指輪っかテストは筋肉量に関する簡易的な目安であり、これだけで病気やフレイルを確定する検査ではありません。さいたま市・利用案内
参加すると、さいたま市在住の65歳以上の方には長寿応援ポイントが1回につき1ポイント、1年度に最大2ポイント付与されます。市の案内ではポイントの対象条件が明記されています。開催日時は店舗により異なるため、来局前に実施薬局へ確認してください。さいたま市・利用案内
2つのチェックは何を見る?
イレブンチェックは食事や活動、社会との関わりなどを振り返る質問票です。回答に正解・不正解はありません。前と比べて変わった項目があれば、何に困っているかを薬剤師に伝える材料になります。指輪っかテストはふくらはぎを指で囲む簡便な方法です。体格やむくみなどでも受け止め方は変わるため、結果だけで筋肉量を数値化したり、治療の要否を決めたりはできません。
薬局で受ける流れ
- 市の一覧からフレイルチェック認定薬局を探し、実施日時を確認する。
- 来局して質問票と指輪っかテストを受ける。
- 薬剤師と結果を振り返り、食事・運動・外出など、できることを相談する。
- 必要に応じて市の介護予防事業などにつながる。
薬剤師の役割は「チェックしたあと」にある

チェックで気になる点があっても、結果を伝えるだけでは生活は変わりません。たとえば食事量が減っている方なら、口の痛みや飲み込みにくさ、食欲低下、服用薬の影響などを一緒に確認できます。ふらつきがある方では転倒歴や眠気、血圧の変化、薬の飲み方を確認し、必要なら主治医に相談するきっかけをつくれます。
結果から相談につなぐ具体例
| 気づいた変化 | 薬局で確認したいこと | 次につなぐ例 |
|---|---|---|
| 食事が減った・体重が落ちた | いつからか、噛みにくさ・飲み込みにくさ、味覚の変化、薬による吐き気や口の乾き | 続く場合はかかりつけ医や歯科への相談、食事面の支援 |
| 歩く速度が落ちた・転びそう | 転倒の有無、立ちくらみや眠気、服薬時刻、血圧測定の状況 | 医師への情報提供、転倒予防や運動の相談 |
| 外出が減った・人と会わない | 出かけにくい理由、移動や買い物の困りごと、身近な相談相手 | 地域包括支援センターや通いの場の紹介 |
| 薬を飲み忘れるようになった | 飲み忘れの頻度、薬の種類と管理方法、生活リズムの変化 | 服薬支援の見直し、必要時に主治医へ相談 |
これらは薬局での対応を考えるための例です。さいたま市が個々の項目に対して一律の紹介基準を定めたという意味ではありません。急に強い症状が出た場合や転倒によるけががある場合は、通常の健康相談を待たずに医療機関へ相談します。
ここで薬剤師が独断で服薬を中止させたり、フレイルと診断したりするわけではありません。本人の希望を確認し、薬学的に気になる点を整理して、かかりつけ医や地域包括支援センター、市の介護予防事業へつなぐ。継続して来局する方なら、次回に「その後どうでしたか」と聞けることにも価値があります。薬局側では、本人の同意や店舗の運用に沿って気づいた変化と提案を記録し、再来局時に困りごとが改善したか確認すると、単発のチェックで終わりにくくなります。
薬の視点が加わる意味
ふらつきや眠気、食欲低下はフレイルだけで説明できません。病気の変化、脱水、薬の副作用、飲み合わせなど、別の理由も考えられます。薬剤師は処方薬・市販薬・サプリメントの利用状況や最近の変更を確認し、疑わしい点があれば処方医と共有できます。薬の数だけで問題を判断せず、本人が日常生活で何に困っているかを起点にすることが大切です。
「通いの場」にも薬剤師が出向く
今回の取り組みでは、地域の高齢者が集まり運動や交流を楽しむ「通いの場」等に、薬剤師を派遣して健康教育や保健指導を行います。モデル期間は2026年10月1日~2027年1月31日。派遣を希望するグループは、地域包括支援センターに問い合わせるよう市が案内しています。さいたま市発表
薬局で待っているだけでは相談が届きにくい人にも、地域の集まりを通じて薬や健康の話が届きます。講話の内容や派遣条件などの詳細は、実施窓口に確認してください。地域の集まりで相談のきっかけをつくり、個別の困りごとは薬局や医療機関につなぐ、という連続した支援が期待できます。ただし、派遣の具体的なテーマや成果は現時点で公表されていません。
認知機能のセルフチェックは「認知症の診断」ではない

別の柱として、さいたま市は10区の薬局に各1台ずつ認知機能セルフチェッカーを設置します。VR画面の課題に視線で答える方式で、測定時間は約5分、利用料は無料。利用後は薬剤師から「もの忘れ検診」の受診案内などを受けられます。さいたま市・認知機能チェック案内
市は、この機器が医療機器ではなく、認知症の診断や医学的判断を行うものではないと明記しています。また、重度の乱視や緑内障、白内障など、一部の眼疾患がある方は正常な測定が難しく、利用を控えるよう案内されています。結果が気になる場合も、結果だけで自己判断せず、薬剤師に相談して適切な検診や医療機関につなげてもらいましょう。本人の「最近もの忘れが増えた」という自覚や、家族が気づいた変化があるなら、機器の結果が気にならなくても相談して構いません。さいたま市・認知機能チェック案内
誰が、どこで利用できる?
フレイルチェックは、原則としてさいたま市在住で65歳以上の希望者が対象です。市が認証した31店舗で受けられます。薬局により実施日時が異なるため、最新の実施薬局一覧から近隣店舗を選んで確認するのが確実です。認知機能セルフチェッカーは別の設置薬局一覧で確認できます。いずれも処方箋が必要とは市の案内に書かれておらず、利用方法は来局して受ける形で示されています。混雑や実施日時は事前に店舗へご確認ください。
市民向け:相談するときに伝えると役立つこと
服用中の薬が分かるお薬手帳、最近の体重や食事量の変化、転倒や飲み忘れの有無、気になり始めた時期などを思い出しておくと、短い相談でも状況を伝えやすくなります。記録がなくても利用できます。本人だけで説明しづらい場合は、家族が気づいた変化も参考になります。薬局で受けたチェック結果は、次回の受診時に医師へ伝える材料にもなります。
まとめ|薬局が健康相談の入口になる
さいたま市の取り組みでは、薬剤師が薬の説明に加え、フレイルの兆候を一緒に振り返り、介護予防や医療への相談を支えます。フレイルチェック31薬局と認知機能セルフチェック10薬局は別の仕組みです。どちらも早めに気づくための入口として活用し、診断や治療が必要な心配は医療機関に相談しましょう。
確認資料(本文とは別掲)
FAQ
Q. 処方箋がなくても利用できますか?
市の利用案内は実施薬局に来局して受ける方法を示しており、処方箋の持参を条件としていません。実施日時や受付方法は各薬局へ確認してください。
Q. フレイルチェックに費用はかかりますか?
無料です。所要時間は約5~10分と案内されています。
Q. チェックを受けるとフレイルと診断されますか?
いいえ。質問票と指輪っかテストで健康状態を振り返り、薬剤師から助言を受ける取り組みです。病気やフレイルの診断を確定するものではありません。
Q. 認知機能セルフチェックで認知症かどうか分かりますか?
診断はできません。市はこの機器が医療機器ではなく、医学的判断を行うものではないと説明しています。気になる結果や症状は、もの忘れ検診や医療機関に相談してください。
Q. 31店舗すべてでVRチェックもできますか?
いいえ。フレイルチェック認定薬局は31店舗、VR機器の設置薬局は10店舗です。市の一覧をそれぞれ確認してください。
Q. 長寿応援ポイントは何ポイントですか?
さいたま市在住の65歳以上の方がフレイルチェックを受けると、1回につき1ポイント、年度内2ポイントが上限です。


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