こんにちは、薬剤師のしぐです。2026年11月6日、PICCに関連する医療機器「ARROW PICカテーテルキット HP」の一部対象ロットについて、クラスⅠの自主回収が公表されました。クラスⅠは医療機器の回収区分のなかでも重い区分で、採用医療機関では対象製品を確実に特定する必要があります。
回収理由はキット内の親水性コーティング付きガイドワイヤです。海外製造元の報告で、生理食塩液などに触れた際にコーティングが不均一に膨潤し、凝集や剥離を起こす可能性が示されました。東京都の公表資料によると、対象数量は2万4300本。2026年11月6日時点では、国内の重篤な健康被害は報告されていません。
PICCは薬物療法、輸液、栄養管理などに関係するため、病院薬剤部や感染制御、化学療法センターでもニュースを把握しておきたいところ。この記事では、対象の見分け方、回収区分の意味、医療機関での初動、薬剤師が担える情報連携を整理します。
2026年11月6日に発表された回収の概要
製造販売業者はテレフレックスメディカルジャパン株式会社、販売名は「ARROW PICカテーテルキット HP」です。一般的名称は末梢静脈挿入式中心静脈用カテーテルイントロデューサキットで、医薬品ではなく医療機器に分類されます。
東京都の発表では対象数量2万4300本、メーカーからの出荷時期は2025年5月13日から2026年10月6日までとされています。ただし、出荷期間に入る製品がすべて回収対象という意味ではありません。最終的には対象製造記号やロットで照合する必要があります。
厚労省とPMDAは11月6日付でクラスⅠ回収として公表しました。報道資料の見出しだけで判断せず、正式な販売名と回収番号、対象ロット、販売元の回収指示を合わせて確認することが大切です。
原因はガイドワイヤの親水性コーティング
ガイドワイヤはカテーテルを留置する際に進路を確保するために使用される器具です。今回問題になったのは、その表面にある親水性コーティングの挙動で、湿潤時に不均一に膨潤して凝集・剥離するおそれがあると説明されています。
問題が「カテーテルに流す抗がん薬が変質した」という意味ではない点は重要です。回収対象はガイドワイヤを含む特定のキットであり、使用中のすべてのPICCや輸液製剤を一律に回収するという発表ではありません。
コーティングが剥離した場合に起こり得るリスクについては医療機器の専門部門が正式資料を基に評価します。薬剤師が独自に患者のリスクを断定するのではなく、臨床工学部門や医療安全管理部門、メーカー情報を共有する対応が適切です。
「クラスⅠ」回収とは何を意味するのか
医薬品・医療機器の回収は、健康への危険性の程度に応じてクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲに分類されます。一般にクラスⅠは、使用などによって重篤な健康被害または死亡の原因となり得る状況を想定する区分です。
一方、クラスⅠに分類されたことと、すでに国内で重篤な被害が発生したことは同じではありません。東京都の11月6日発表では、国内で重篤な健康被害が発生したとの報告はないとされています。
患者や家族には、回収の深刻さを過小評価せず、しかし実際に起きていない事故を起きたかのように説明しないことが重要です。回収区分は予防的な安全措置として理解すると、落ち着いた対応につながります。

対象ロットの確認方法
採用施設は、まず物品管理システムで正式な製品名を検索し、対象となる製造記号を照合します。類似した名称のカテーテルや付属品がある場合、ブランド名だけの検索では見落としが生じる可能性があります。
保管場所は中央材料室、病棟の処置棚、化学療法センター、手術・処置室、予備物品保管庫など複数に分かれます。払い出し済みの製品も含めて確認し、対象品は院内の回収手順に沿って使用を止め、隔離します。
対象番号の一覧は随時修正される可能性があるため、本記事にロットを不完全な形で転載するより、PMDAの回収情報・メーカーの正式案内で最新の一覧を確認することを推奨します。
病院の初動:使用停止・隔離・代替品の手配
回収を知った部門が最初に行うのは、対象品が実際に院内にあるかの確認です。対象品がある場合は施設の指示に従い使用しない状態にして、混在を防ぐ表示と保管場所の分離を行います。
次に、処置予定を確認し、代替となる医療機器を医師、看護師、医療安全部門、材料部門、メーカーと調整します。類似製品への変更では、適合する器具、サイズ、操作手順、使用可能な環境を必ず確認します。
回収品の返品・交換や納品記録の保存は購買部門の業務と重なることが多いですが、薬剤師も投与予定の薬物療法やルート確保への影響を把握しておくと、診療を中断させない調整に貢献できます。
すでに使用した患者がいる場合の考え方
回収情報を見て「以前PICCを入れた患者は全員検査が必要」と一般化するのは避けましょう。対象ロットの使用有無、使用時点、使用状況、患者の状態は医療機関で個別に評価する必要があります。
患者から相談された薬局薬剤師は、製品名だけでは対象の判断ができないことを説明し、PICC留置を行った医療機関の担当部署に連絡を促すのが基本です。症状がある場合は内容と緊急性に応じて速やかな受診を勧めます。
過度な不安を招かないためには「回収対象製品の確認が必要」「国内での重篤な被害報告は現時点でない」「使用歴がある場合の判断は医療機関が行う」という3点を分けて伝えるとよいでしょう。

抗がん薬治療や中心静脈栄養への影響
PICCは末梢から挿入して先端を中心静脈に留置するカテーテルで、薬液や栄養剤の投与などに用いられます。抗がん薬の長期投与や中心静脈栄養を行う場面でも利用されるため、処置器具の確保は治療計画の一部です。
ただし、今回の回収は特定キットの問題です。既に留置されているすべてのカテーテルが直ちに使用できなくなるという意味ではありません。患者の治療を継続するかどうかは、使用された機器や臨床状況を踏まえて医療チームが判断します。
薬剤師は投与ルートに制約が生じる場合、薬剤の投与条件、輸液の組成、静脈炎のリスク、代替投与経路などの検討に参加できます。ルート変更が薬剤投与の安全性に与える影響を確認したいところです。
医薬品回収と医療機器回収の違い
薬局では錠剤や注射薬の自主回収に慣れていても、カテーテル関連器具の回収は普段の在庫業務と関係が薄い場合があります。しかし「販売名とロットを照合し、対象品を隔離し、正式な回収指示に沿って処理する」という基本は共通しています。
一方で、医療機器は材質や操作性、付属部品の構成、接続規格などが重要で、単に別メーカーの同種品に置き換えればよいとは限りません。使用部門の専門職と連携しながら代替を評価する必要があります。
関連する回収事例として、アイリーアBS「NIT」の注射補助具不具合による自主回収もあります。薬液の品質問題と器具の構造・操作上の問題を分けて理解する参考になります。

薬局薬剤師が押さえたい情報連携
保険薬局がこのキットを直接仕入れることは一般的ではありませんが、訪問診療や在宅中心静脈栄養を支える患者、PICCを用いた治療を受ける患者との接点はあります。医療機関の回収対応に関する問い合わせが来た場合、正確な製品特定が第一です。
お薬手帳や処方歴から使用したキットのロットを推測することは通常できません。病院の材料管理情報に基づいた確認が必要であり、薬局が不確かな情報で「対象ではない」と保証しないように注意しましょう。
説明では、何が回収対象か、どこに確認するか、患者自身が何をしてはいけないかを簡潔に伝えます。留置中のカテーテルを自己判断で操作したり、必要な投与を勝手に中止したりしないよう促すことも重要です。

院内で再発を防ぐための記録と共有
今回のような安全情報は、一度の掲示だけで終わらせず、対象品を取り扱う部門へ実際に届いたことを確認したいところです。メール、院内ポータル、物品管理システムの警告など複数の伝達経路を用いると、休日や夜勤のスタッフにも共有しやすくなります。
回収対象品を何本確認し、何本隔離し、どこへ返却したかを記録することで、棚卸しや監査にも対応できます。処置予定の変更が生じた場合は、患者への説明内容や代替品の調達状況も記録します。
メーカーと行政から続報が出る可能性があるため、対象ロットの追加、回収終了、代替品の供給などを定期的に見直します。情報の発表日を記載し、古い院内通知だけが残らないようにすることも大切です。
部署間連絡の具体例と確認の順序
休日中に回収情報が届いた場合、薬剤部だけで情報を保持していても処置室の物品棚に通知が伝わらなければ意味がありません。医療安全担当者、看護管理者、材料部門、購入部門が同じ対象製品名と対象ロットを確認できるよう、問い合わせ先を一本化する方法が考えられます。特に夜間・休日に予定されている処置を確認し、代替製品を準備できるかを事前に整理すると、患者の治療を遅らせずに済みます。
一方、報道された「2万4300本」を自施設の対象数量と取り違えないことも重要です。これは公表資料上の回収対象数量であり、施設ごとの購入本数や未使用在庫数ではありません。納品書、製造番号、払い出し履歴を使って自施設の数量を数え、返却方法はメーカーと調整してください。
今回の発表について、薬局での患者相談では製造番号を直接確認できないことが少なくありません。そのときは病院側へ確認してもらうことを明確に伝え、患者本人に医療機器を分解・調整させないことが大切です。情報提供は安全のための連携であり、治療の継続・中止を薬局だけで判断するものではありません。
よくある質問(FAQ)
今回回収されたのはどの製品ですか?
テレフレックスメディカルジャパンの「ARROW PICカテーテルキット HP」の対象ロットです。すべてのPICC製品やすべての同社製品が対象ということではありません。
回収はクラスⅠですか?
はい。厚労省とPMDAは2026年11月6日付で医療機器クラスⅠ回収として公表しています。回収区分と実際の国内健康被害報告は区別してください。
対象数量は何本ですか?
東京都の公表資料では2万4300本です。対象製造記号はメーカーやPMDAの正式な一覧で照合してください。
原因は薬液に異物が入ったことですか?
いいえ。今回問題になったのはキットに含まれる親水性コーティングガイドワイヤの湿潤時の膨潤、凝集、剥離の可能性です。
国内で重篤な健康被害は報告されていますか?
東京都の2026年11月6日時点の公表では、国内における重篤な健康被害の報告はないとされています。最新情報は行政・メーカー資料で確認してください。
在宅患者のPICCはすべて抜去する必要がありますか?
今回の回収情報だけで一律の抜去を判断するものではありません。使用機器・ロット・患者状況に基づき、担当医療機関が評価します。
薬局に患者から質問が来たら?
対象ロットは病院の物品管理記録で確認する必要があることを伝え、留置や処置を行った医療機関に相談するよう案内してください。
まとめ|薬局で確認したいこと
今回の回収はガイドワイヤの親水性コーティングに関するもので、対象品は「ARROW PICカテーテルキット HP」の特定ロットです。クラスⅠ回収であるため対象品の特定は重要ですが、国内で重篤な健康被害が報告されたという意味ではありません。
採用病院ではロット照合、使用停止・隔離、代替品の検討、関係部署への周知を優先します。薬剤師は治療ルートや薬物療法への影響を確認し、患者説明と医療機関の情報連携を支える役割を意識したいところです。


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