危険ドラッグ3物質を指定薬物に追加|11月6日施行、学校薬剤師が伝えたいこと

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こんにちは、薬剤師のしぐです。

「危険ドラッグの成分が、新たに指定薬物になりました」

こうしたニュースを見ると、また知らない名前の物質が出てきたな、と感じるかもしれません。薬局で日常的に扱う医薬品とは違い、名前を見てもすぐにはイメージしにくいですよね。

でも、学校薬剤師として薬物乱用防止教育に関わる立場からは、このニュースには子どもたちと一緒に考えたいポイントがあります。

それは、「規制されているかどうか」と「身体にとって安全かどうか」は、同じ話ではないということです。

2026年10月27日、厚生労働省は危険ドラッグの成分3物質を新たに指定薬物に指定する省令を公布しました。国の規制の施行日は、2026年11月6日です。施行後は、対象物質とそれらを含む製品について、医療等の用途以外の目的での製造、輸入、販売、所持、使用等が禁止されます。

今回は、この変更の内容と、学校でどう伝えたらよいかを整理します。長い化学名を覚えるための記事ではなく、自分や周りの人を守る判断につなげるための記事です。

深い紫の背景に白い盾と三つの抽象的な石を配した薬物乱用防止のイメージ

今回の指定で何が変わる?

まず、今回の変更を確認しておきましょう。

確認項目内容
公布日2026年10月27日
国の規制の施行日2026年11月6日
追加された物質危険ドラッグの成分3物質
対象指定された物質と、それらを含む製品
禁止される行為医療等の用途以外の目的での製造、輸入、販売、所持、使用等
根拠となる省令令和8年厚生労働省令第150号

今回の3物質は、10月26日の薬事審議会指定薬物部会で、指定薬物とすることが適当とされた物質です。

ここで気をつけたいのは、「売る側だけの規制」ではないこと。医療等の用途以外では、所持や使用も禁止の対象になります。「自分で使うだけだから関係ない」という理解にはできません。

一方、「医療等の用途」という例外を、自分の判断で「気分が落ち着くから医療目的」「体調を整えるためだから大丈夫」と読み替えることもできません。法令で認められる用途に関する話であり、一般の人が自己判断で使用してよいという意味ではありません。

新たに指定された3物質は?

厚生労働省の別紙に掲載された名称と通称は、次のとおりです。

通称等省令名
N-Desethyl Protonitazene1-(エチルアミノ)エチル-5-ニトロ-2-(4-プロポキシベンジル)ベンズイミダゾール
5-MeO-METN-エチル-5-メトキシ-N-メチルトリプタミン
2-F-tropacaine8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル=2-フルオロベンゾアート

正直、名前だけ並べられても、なかなか頭には入りませんよね。しぐとしても、学校の授業でこの表を丸暗記してもらう必要はないと思っています。

この表は、薬剤師や教職員が通知の対象を照合するためのものです。相談された製品について、名前が少し似ているだけで同じ物質と判断したり、表にない名前だから安全と判断したりしないことが大切です。法令上の対象範囲を確認するときは、通称だけでなく省令の記載まで確認します。

子どもたちに持ち帰ってほしいのは、「知らない名前が書いてある物を、自分だけで安全と判断しない」という姿勢です。物質名の知識が増えても、相手の説明やパッケージだけで中身を判断してしまえば、自分を守ることにはつながりません。

白い本と虫眼鏡で危険ドラッグの規制と安全性を確認するイメージ

指定薬物とは?危険ドラッグとどう違う?

指定薬物は、医薬品医療機器等法に基づく規制上の区分です。中枢神経系に作用する可能性が高く、人の身体に使われたときに保健衛生上の危害が生じるおそれのある物質が指定されます。

「危険ドラッグ」は危険な製品や薬物を指して使われる呼び方で、「指定薬物」は法律上の区分。そのため、両者を完全に同じ意味として扱うと、説明が分かりにくくなります。

たとえば、「指定薬物に追加された」というニュースは、危険性を踏まえて規制対象を追加したという話です。その日に突然、物質の性質が変わったわけではありません。

学校で説明するときは、「名前が変わったから危険になったのではなく、健康を守るために規制が追加される」と伝えると、法律と健康の関係を考えやすくなると思います。

また、治療に必要な医薬品を適切に使うことまで、ひとまとめに否定してはいけません。子どもたちの中には、毎日薬を使っている人もいます。薬は目的や使い方によって利益と危険性が変わること、治療中の薬を不安から勝手に中止しないことも、一緒に確認したいですね。

11月6日までは問題ない?地域の条例にも注意

今回、特に補足しておきたいのが施行日です。

国の規制の施行日は11月6日ですが、自治体の条例による規制が先に始まる地域があります。大阪府と千葉県では、今回の3物質を知事指定薬物に指定し、10月28日から製造、販売、所持等を禁止すると発表しています。禁止行為の細かな範囲や罰則は、それぞれの条例で確認する必要があります。

つまり、「国の施行日までなら自由に使える」と説明するのは適切ではありません。地域の条例による規制に加え、無承認無許可医薬品としての規制にも注意が必要です。

厚生労働省は、今回の発表で輸入時の対策や、インターネット販売を含む指導取締りを強化する方針も示しています。

そして、法律上の扱いとは別に、健康への危険性は施行日を待って発生するものではありません。授業では日付を伝えつつ、「何日までなら使ってよい」という受け取り方にならないよう、説明を添えたいところです。

学校への配布資料には、作成日と確認した自治体を残しておくと、更新時にも役立ちます。以前作ったスライドを使うときも、日付だけ差し替えず、地域の最新情報まで見直したいですね。

「合法」「天然」「海外で人気」は安全の証明にならない

薬物乱用防止教育では、知らない物質の名前をたくさん紹介するより、判断を迷わせる言葉について考えてもらう方が、生活に結びつきやすいと思っています。

たとえば、「合法だから大丈夫」「天然由来だから安心」「海外では普通に使われている」といった説明です。

その言葉だけで、成分や量、身体への影響が確認できるでしょうか。売る人が安全だと言っていても、それが安全性を保証するわけではありません。友人が勧めてきたとしても、その友人自身が中身を正確に知っているとは限りません。

危険ドラッグは、「ハーブ」「お香」「アロマ」などの呼び方で販売されている製品でも、有害な作用を及ぼす物質を含むおそれがあります。見た目や商品説明から危険性を判断することはできません。

しぐが子どもたちと確認したいのは、「説明が上手かどうか」より、「安全性を確かめられるかどうか」です。分からないものを分からないまま身体に入れない。判断に迷ったら、いったん離れて大人に相談する。その行動を、授業の中心に置きたいと思います。

健康被害は、依存の問題だけではない

薬物の話というと、「やめられなくなる」という依存の問題を思い浮かべやすいかもしれません。

しかし、危険ドラッグでは、意識障害や呼吸困難など、急な健康被害も問題になります。異常行動や、死亡を含む深刻な被害が起こることもあります。継続して使った場合の危険性だけを説明していると、「一度だけなら大丈夫」と誤解されかねません。

ただし、今回追加された3物質の作用や症状が、すべて同じという意味ではありません。物質ごとの知見を確認せずに「必ずこの症状が出る」「この量なら安全」と断定することは避けます。

学校で必要なのは、細かな作用の比較から「より安全そうなもの」を選ばせる説明ではなく、正体や影響を十分に確かめられないものを使わない判断を支えることだと思います。

また、実際に具合が悪くなった人がいた場合は、叱ることより安全の確保が先です。反応がおかしい、呼吸が苦しそう、けいれんしているといったときは、すぐに119番へ連絡してください。周囲の人だけで様子を見続けず、何を使った可能性があるかを救急隊や医療者に伝えます。

無理に吐かせたり、自己判断で飲食物を与えたりしないことも大切です。救急隊の指示に従い、手元にある包装などの情報は、無理のない範囲で医療者に伝えられるようにします。

透明なアーチに守られた学校と本で表した薬物乱用防止教育のイメージ

学校薬剤師の授業では、どこまで伝える?

今回のニュースを授業に取り入れるなら、しぐは次の3つを到達目標にします。

  • 新しい物質への規制が追加されることを知る。
  • 「規制前」「合法という宣伝」を安全の根拠にしない。
  • 誘われたときや困ったときの行動を考えられる。

長い化学名より、場面を考える

たとえば、「友人から、中身をよく知らない物を『大丈夫』と言って渡されたら、どうする?」という場面です。

「断る」と答えられるだけでも大切ですが、実際には、その後どうするかで困るかもしれません。相手が親しい友人なら、断りにくいこともあります。

「いらない」「使わない」と短く伝える。その場を離れる。一人では難しければ、信頼できる大人に連絡する。説明を聞き続けなくてもよいことまで含めて、行動を練習できるとよいと思います。

本人の意思の強さだけに頼る授業にはしたくありません。困った場面から離れやすくすること、誰かに助けを求めることも、自分を守る力の一部です。

学年に合わせて情報量を調整する

小学生なら、「よく分からない物を口に入れない」「人からもらった薬を使わない」「大人に確認する」といった身近な行動を中心にできます。

中学生・高校生なら、SNS上の情報の確かめ方や、周囲の誘いへの対応、相談先の選び方まで広げられます。これは授業づくりの提案であり、学年だけで一律に決めるものではありません。学校の状況を先生方と共有して調整します。

製品名や使い方を詳しく並べるほど、よい授業になるわけではありません。具体的な入手方法や使用量の紹介ではなく、判断と行動の練習に時間を使いたいですね。

授業全体の組み立ては、コチラでも整理しています。

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市販薬のオーバードーズとは、共通点と違いを伝える

学校では、危険ドラッグだけでなく、市販薬のオーバードーズについて扱う機会もあります。

両者は、法的な扱いや製品の性質が同じではありません。今回の3物質の指定が、そのまま市販薬の規制変更を意味するわけでもありません。

一方で、「手に入るから安全」「誰かが使っているから自分も大丈夫」と判断しないことや、薬を本来の目的から外れて使わないことは、共通して伝えたい点です。

薬局で販売される医薬品も、決められた使い方を守ることが必要です。薬剤師への相談や、保護者・医療者への確認を、身近な行動として紹介できます。

ここでも、薬そのものへの恐怖を広げる説明にならないようにしたいですね。必要な治療を受けることと、乱用を防ぐことは、両方とも健康を守るために大切です。

「使わないで」と一緒に、「相談していい」を伝えたい

しぐとしては、薬物乱用防止教育で一番置き去りにしたくないのが、すでに困っている子へのメッセージです。

授業を聞いている子の中に、自分のことかもしれないと感じている人がいるかもしれません。友人や家族のことで心配している人もいるでしょう。

そこで、危険性や罰則だけを強く伝えると、「話したら怒られる」「もう相談できない」と受け止められる可能性があります。

使わないことを伝えるのと同時に、使ってしまった人や、やめられず困っている人にも助けが必要だと伝えたいです。相談は、問題が大きくなる前にも、起きてしまった後にもできます。

相談先としては、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、保護者、学校薬剤師などが考えられます。身近な人に話しにくい場合は、地域の精神保健福祉センターなどの専門窓口につなぐ方法もあります。

ただ、窓口名を最後に並べるだけでは、実際に動きにくいですよね。「学校薬剤師に相談したいときは、保健室の先生に伝えてね」など、最初の一歩を具体的にしておきたいところです。

学校薬剤師は常に学校にいるわけではありません。質問をどう受け取るか、緊急の相談は誰が対応するかを、事前に学校と決めておくことも授業準備の一部だと思います。

二つの椅子と電話、明るい扉で表した相談と支援につながるイメージ

薬局・学校で相談されたときに確認したいこと

もし「こういう物を持っている」「友人が使ったかもしれない」と相談されたら、最初に現在の体調と安全を確認します。緊急性があるときは、成分の検索や法的な説明を先に進める場面ではありません。

緊急性がない相談でも、見た目だけで中身を断定しないことが大切です。薬局で成分不明の製品の安全性を保証することはできません。

持っている物が危険ドラッグかもしれない場合は、使用せず、都道府県の薬務担当部署などへ相談して指示を受けます。自己判断で他人に譲ったり、運んだり、処分方法を決めたりせず、具体的な対応を確認しましょう。

相談を受けた側も、一人で抱え込まないこと。学校なら校内の対応体制に沿って関係者と連携し、必要な医療や専門相談へつなぎます。「誰にも言わない」と約束するより、本人の安全のために誰と情報を共有する必要があるかを丁寧に説明したいですね。

しぐの学校薬剤師メモ|ニュースを、生活を守る知識へ

今回のニュースは、「3物質が追加された」という短い見出しで終わらせることもできます。

でも、学校薬剤師としては、その先を子どもたちに伝えたいと思います。

法律はどうして追加されるのか。売られている物を、どうして安全だと思ってはいけないのか。友人の言葉を信じたい気持ちがあっても、身体に使う前に立ち止まれるか。そして、困ったときに誰へ話せるか。

こうした問いは、危険ドラッグだけでなく、健康情報全般との付き合い方にもつながります。

薬局でも学校でも、薬剤師ができるのは、難しい名前を説明することだけではありません。分からないことを一緒に整理し、必要な確認先や相談先につなぐことも、大切な役割です。

薬物乱用を防ぐ知識と、困った人を支える行動。その両方を持ち帰れる授業にしていきたいですね。

学校薬剤師の仕事全体は、コチラでも紹介しています。

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よくある質問

今回の3物質は、いつから国の指定薬物として規制されますか?

2026年11月6日からです。省令は10月27日に公布されました。地域によっては条例による規制が先行しているため、国の施行日だけで判断しないでください。

使用しなくても、持っているだけで規制の対象ですか?

施行後は、医療等の用途以外の目的での所持も禁止されます。販売や製造をする人だけの規制ではありません。

「指定薬物ではない」と書かれた製品なら安全ですか?

その表示だけでは安全性も適法性も確認できません。中身や身体への影響を確かめられないものを使用せず、判断に迷ったら専門家へ相談してください。

学校の授業で3物質の名前を覚えさせる必要はありますか?

このニュースを授業に使う場合は、名前の暗記より、宣伝文句を安全の根拠にしないこと、誘いへの対応、相談する行動を中心にするのがよいと考えます。これは、しぐからの授業づくりの提案です。

すでに使用した可能性がある人には、どう対応しますか?

体調と安全を確認し、意識や呼吸の異常、けいれんなどがある場合は119番へ連絡します。緊急性がない場合も責めずに話を聴き、医療機関や地域の専門窓口へつないでください。

※2026年10月28日時点の情報です。国の指定内容と地域の条例は、最新の公表情報で確認してください。

参考・確認先

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