ノボラピッド注フレックスタッチ販売中止へ|2028年3月目途、切り替えの注意点

薬剤師のしぐです。
医薬品の販売中止や供給停止のお知らせが続いていますが、今回はインスリン製剤。ノボラピッド注フレックスタッチを含む7製品について、2028年3月を目途に販売を中止する予定が案内されました。
ついにインスリン製剤まで……という気持ちになりますよね。
ノボラピッドを使用していた患者さんの中には、「フレックスタッチのほうが押しやすかった」「こっちのほうが使いやすかった」と感じていた方もいると思います。
インスリンは毎日使う薬です。注入器の違いは、単なる見た目の変更ではありません。毎回の注射のしやすさや、治療を続ける負担にも関わります。
今回はノボラピッドを中心に、販売中止の対象、これまでの供給問題、フレックスペンとの違い、薬局で確認したいポイントを整理します。
※2026年10月6日時点で確認できた情報です。
まず結論:販売中止になるのは「ノボラピッド全製剤」ではない
今回の対象は、ノボラピッド注フレックスタッチです。
「ノボラピッド」という名前だけで販売中止を伝えると、フレックスペンやペンフィルを使用している患者さんまで不安になる可能性があります。
押さえておきたいのは次の点です。
- 販売中止予定は2028年3月を目途。
- ノボラピッド注フレックスタッチは、すでに出荷停止・供給停止の状態。
- ノボラピッド注フレックスペンは、今回の販売中止対象に含まれていない。
- 販売中止予定日と、患者さんが実際に入手できる時期は別に考える。
- インスリンを自己判断で中止したり、単位数を変更したりしない。
「2028年まであるから、まだ同じ製品が手に入る」と受け取られないようにすることも大切です。
今回、販売中止が予定されている7製品
メーカーの2026年10月付案内に掲載されている製品は以下のとおりです。包装はいずれも2本(3.0mL)です。
| 販売中止予定製品 | 案内に記載された出荷状況 |
|---|---|
| ノボラピッド注 フレックスタッチ | 出荷停止・供給停止 |
| ノボラピッド50ミックス注 フレックスペン | 通常出荷 |
| ノボリンR注 フレックスペン | 通常出荷 |
| ノボリンN注 フレックスペン | 通常出荷 |
| ノボリン30R注 フレックスペン | 通常出荷 |
| レベミル注 フレックスペン | 通常出荷 |
| レベミル注 ペンフィル | 通常出荷 |
通常出荷の記載は、この案内に掲載された時点のものです。実際の手配時には、メーカーや卸の最新情報を確認します。
また、ノボラピッド50ミックス注フレックスペンと、ノボラピッド注フレックスペンは別製品です。販売名を最後まで確認したいですね。
なぜ販売中止?過去の供給問題と今回の案内を分けて考える
ここは少し丁寧に整理したいところです。
今回の販売中止案内は「諸般の事情」
2026年10月付の販売中止案内では、理由は「諸般の事情」とされています。詳細な理由は、この案内だけでは確認できません。
そのため、「今回の7製品はすべて同じ生産上の理由で終了する」とまでは言い切れません。
以前のノボラピッド注フレックスタッチの供給問題は、注入器の生産が背景
一方、以前の供給制限については、メーカーが具体的な背景を説明しています。
2023年11月の案内では、糖尿病関連製品の予測を上回る世界的な需要増と、一部の製造拠点の生産能力の限界が示されていました。この時点の供給問題は、安全性や品質を理由とするものではないと説明されています。
さらに2024年1月の患者さん向け案内では、ノボラピッドのインスリン製剤は通常どおり生産されている一方、注入器であるフレックスタッチの生産が追いつかないことが説明されました。
つまり、当時は「インスリンの成分そのものが作れない」という話ではなく、薬液を患者さんが使える形で届けるための注入器も、供給の重要な部分だったわけです。
事情を知ると、供給の難しさは理解できます。ただ、使い慣れた患者さんにとっては、やはり残念な変更ですよね。理由に納得することと、使いやすかった道具を手放す負担がなくなることは、別の話だと思います。
ノボラピッド注フレックスタッチは、すでに出荷停止となっていた
今回、突然すべてが止まるわけではありません。
| 時期 | これまでの経緯 |
|---|---|
| 2023年11月 | 限定出荷の案内。翌年の大幅な出荷量減少を予告 |
| 2024年1月 | 出荷量が大幅に減少。代替製品への変更を案内 |
| 2024年2月の第3報 | 2024年3月末のメーカーから特約店への出荷停止、4月以降は流通在庫のみとなる見込みを案内 |
| 2026年10月の案内 | 現在も出荷停止・供給停止。2028年3月を目途とした販売中止予定を掲載 |
すでにフレックスペンなどへ変更されている患者さんもいると思います。
その方に今回のお知らせを説明するときは、「今使っているフレックスペンまで販売中止になる」という誤解を防ぐことが先ですね。

フレックスタッチのほうが使いやすかった?注入器の違いを比較
「絶対に全員がフレックスタッチのほうが使いやすい」とまでは言えません。手の大きさ、指の動かしやすさ、視力、慣れなどによって感じ方は変わります。
ただ、フレックスタッチには、注射の負担を考えるうえで大切な特徴がありました。
| 比較項目 | ノボラピッド注 フレックスタッチ | ノボラピッド注 フレックスペン |
|---|---|---|
| 単位設定時の注入ボタン | 伸びない | 設定に伴って伸びる |
| 注入操作 | ボタンを押して注入する方式 | 伸びたボタンを最後まで押し込む必要がある |
| 設定できる最大量 | 1回80単位 | 1回60単位 |
| 単位設定の刻み | 1単位 | 1単位 |
| 単位表示 | 白地に黒文字 | 黒地に白文字 |
| 本体の太さ | フレックスペンより太い | フレックスタッチより細い |
| 空打ちの薬液の出方 | フレックスペンとは勢いが異なる | フレックスタッチより勢いが弱く見えることがある |
これはノボラピッドの両製品の比較です。「フレックスタッチ」という名称の別の薬へ、そのまま当てはめることはできません。
特に、ボタンが伸びないという点。
単位数が多いときでもボタンまでの距離が変わらないので、指を届かせる負担が少ないと感じる方には、使いやすさにつながっていたはずです。
切り替え後に「押しにくい」と言われた場合も、単に慣れの問題として片づけず、実際に操作を見て確認したいですね。

フレックスペンへ変更するとき、薬局で確認したい5つのポイント
ここからは、薬局での実務です。以下は製品の操作上の違いを踏まえた確認の提案です。
1.伸びた注入ボタンを、最後まで押し込めるか
フレックスペンでは、単位設定に伴って注入ボタンが伸びます。
「前と同じ感じで押せば大丈夫」と思っていると、持ち方によっては押し切りにくいことがあります。
可能であれば練習用の注入器で、普段の持ち方を見せてもらいます。親指が届くか、本体が滑らないか、ダイアル表示が0になるまで押せるかを確認します。
患者さんの実際の薬で不要な注入をさせるのではなく、デモ器などを活用したいですね。
2.1回の注射量が60単位を超えていないか
フレックスタッチの最大設定量は80単位、フレックスペンは60単位です。
この違いが影響する患者さんでは、処方量と注入器の仕様が合っているかを事前に確認する必要があります。
薬局で独自に分割方法を決めるのではなく、処方医に確認し、注射回数も含めた具体的な指示を患者さんと共有します。
3.空打ちの勢いが違っても、自己判断で故障と決めつけない
メーカー作成の比較資材では、フレックスペンはフレックスタッチより空打ちの薬液の勢いが弱いことが示されています。
使い慣れている方ほど、「いつもと違う」「ちゃんと出ていないのでは」と感じるかもしれません。
勢いだけで判断せず、取扱説明書に従って針先から薬液が出ることを確認する。出ない場合は、針の交換など、その製品で案内された手順で対応することを説明します。
4.表示が0に戻ったことと、針を抜くまでの待ち時間
ボタンを押し始めたら終わり、ではありません。
フレックスペンでは表示が0になるまで押し込み、注射後は針を刺したまま6秒以上待つことが、比較資材に記載されています。具体的な操作は、手元の製品の取扱説明書に従います。
「押し切れたか」「すぐに針を抜いていないか」は、切り替え時に改めて確認したいポイントです。
5.説明したあと、患者さん自身に操作を再現してもらう
説明を聞いて「わかりました」と言えても、自宅で同じように使えるとは限りません。
注射針の取り付け、空打ち、単位設定、注入、終了確認まで、練習用器具で一連の流れを再現してもらうと、困るところが見えやすくなります。
視力や手指の動きに不安がある方、家族が注射を手伝っている方では、支援する方にも変更点を共有しておきたいですね。
代替候補はフレックスペン。でも「同じ名前なら同じ使い方」とは限らない
今回のメーカー資料では、ノボラピッド注フレックスタッチの代替薬候補として、ノボラピッド注フレックスペンが掲載されています。
また、過去の出荷停止案内では、ノボラピッド注ペンフィルやインスリン アスパルトBS製剤も候補として案内されていました。ただし、過去の候補一覧から、現在の供給や個々の患者さんへの適否まで判断することはできません。
実務上は、次のように整理するとわかりやすいと思います。
| 変更の種類 | 確認したいこと |
|---|---|
| 同じノボラピッドの別注入器へ | 処方内容、注入器の操作、最大設定量、患者さんの扱いやすさ |
| カートリッジ製剤へ | 対応する専用注入器の用意、装着方法、操作習得 |
| 他のインスリン製剤へ | 成分・作用特性、注射時刻、単位数、回数、血糖確認の指示 |
注入器が同じフレックスタッチだからといって、他の薬へそのまま置き換えられるわけではありません。
「使いやすい注入器を選ぶこと」と「必要なインスリン治療を選ぶこと」の両方を、処方医と相談する必要があります。
切り替え後の血糖変化は、薬だけでなく手技も確認する
切り替え後に「血糖がいつもより高い」と相談されたとき、薬の変更だけに目を向けると、操作上の困りごとを見落とすことがあります。
薬局では、処方変更の有無に加えて、押し切れているか、薬液漏れがないか、空打ちができているか、注射時刻や打ち忘れに変化がないかなどを聞き取るのも一案です。
ここは、この記事で提案する実務上の確認です。血糖が変わった原因を注入器だけに決めつけるものではありません。
薬局で独自に増量を勧めず、血糖の記録や症状、変更後の操作状況を整理して、必要に応じて医療機関と共有します。
インスリンが足りなくなりそう、手元の薬がなくなった、注入器が使えない、といった場合は、次回受診まで待たずに医療機関や薬局へ相談してもらいます。自己判断で中断しないことを、説明の最後に確認したいですね。
保管方法も、切り替え時に確認しておきたい
切り替え時は操作説明に意識が向きますが、保管条件や使用開始後の期限も確認します。
インスリンは製品によって保管条件が異なります。「前の薬と全部同じ」と思い込まず、変更後の製品の説明書に沿って確認することが大切です。
保管方法はこちらに詳しくまとめています。

インスリン製剤の切り替え時には、保管条件に加えて注入器の操作も確認したいところです。ノボラピッド注フレックスタッチの販売中止予定と、フレックスペンへの切り替え時の注意点はこちらにまとめました。
治療全体の考え方を整理したい方はこちらもどうぞ。

同じインスリンでも、注入器が変わると操作方法や最大設定量が異なる場合があります。ノボラピッド注フレックスタッチの販売中止予定を踏まえ、薬局で確認したいポイントを整理しました。
よくある質問【FAQ】
Q1.ノボラピッドは全部販売中止になりますか?
今回の対象にはノボラピッド注フレックスタッチとノボラピッド50ミックス注フレックスペンが含まれます。ノボラピッド注フレックスペンは、今回の販売中止対象に含まれていません。正式な販売名を確認してください。
Q2.2028年3月まではフレックスタッチを入手できますか?
販売中止の目途と、入手できる時期は別です。ノボラピッド注フレックスタッチは、今回の案内で現在の出荷停止・供給停止が記載されています。2028年まで供給されるという意味ではありません。
Q3.安全性や品質に問題があったのでしょうか?
2023年の供給制限では、安全性や品質が理由ではないとメーカーが説明しています。一方、今回の販売中止理由は「諸般の事情」とされており、過去の供給制限と同じ理由だと断定することはできません。
Q4.フレックスタッチからフレックスペンに変わると、薬の成分も変わりますか?
ノボラピッドの両製品では、インスリンの有効成分は同じです。ただし、注入器の操作や最大設定量などが異なります。処方された単位数や注射時刻を確認し、新しい注入器の説明を受けてください。
Q5.フレックスペンに変わって押しにくく感じます。
注入ボタンの伸び方や本体の太さなどに違いがあります。無理に自己流で使わず、医療機関や薬局で持ち方と操作を確認してもらってください。患者さんに合った注入器や支援方法を相談することが大切です。
Q6.同じフレックスタッチの別の薬へ変えればいいですか?
注入器の名称が同じでも、薬の作用や注射のタイミングが同じとは限りません。自己判断で変更せず、処方医に相談してください。
Q7.販売中止が心配なので、インスリンを減らして使ってもいいですか?
自己判断で減量・中断しないでください。手元の薬がなくなる前に医療機関や薬局へ相談し、治療を継続できるよう調整することが大切です。

しぐのひとこと:事情は理解できても、使いやすさは大切にしたい
供給の背景を知ると、「理由が理由なので、仕方ないのかな」と感じる部分はあります。
それでも、毎日使っていた患者さんの「前のほうが使いやすかった」は、大切な声です。
同じ成分の薬が残っているから、それで解決。薬局としては、そこだけで終わらせたくないですよね。
薬が手に入ることと、その薬を患者さんがきちんと使えること。どちらもそろって、治療の継続につながります。
今回の販売中止は、注入器まで含めた服薬支援を考えるきっかけになると思います。切り替え済みの患者さんにも、「今のペン、問題なく使えていますか?」と一言聞いてみる。そんなところから確認していきたいですね。
ではでは、しぐでしたっ。


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