2026年度診療報酬改定で、じわじわと現場にインパクトを与えているテーマのひとつが、
**「医薬品経腸栄養剤の保険給付適正化」**です。
エンシュア、ラコール、イノラス、エネーボ…。
保険薬局では昔から当たり前のように扱ってきた製品ですが、今回あらためて、
「これは“食品”なのか、“医薬品”なのか」
という問いが、制度上かなり強く投げかけられています。
そして最近、現場でよく耳にするのが、
「食品類似医薬品」
という言葉。
でも、正直に言うと——
この表現、ちょっと違和感ありませんか?
今回は、添付資料の内容を踏まえながら、
保険薬局薬剤師の立場として、このテーマを自分なりに整理してみたいと思います。
そもそも「食品類似医薬品」って何?
まず最初に整理したいのが、
実は「食品類似医薬品」という言葉自体、正式な制度用語ではないということです。
今回の通知や学会指針で使われているのは、
- 「栄養保持を目的とした医薬品」
- 「医薬品経腸栄養剤」
という表現。
つまり行政としては、
「食品っぽいけど、あくまで“医薬品”として扱う」
という立場なんですよね。
ただ、現場感覚としては、
- 飲み物みたい
- 栄養補助食品と見た目が近い
- ドラッグストアにも似た製品がある
- “食事代わり”という認識が広がっている
という背景から、
「食品に近い医薬品」
というニュアンスで、「食品類似医薬品」という言葉が広がっているのだと思います。
でも、この表現が独り歩きすると、
- “ただの栄養ドリンク”
- “サプリメントの延長”
- “食品と同じ感覚”
として扱われかねない危うさもあります。
今回の改定で何が変わったの?
2026年度改定では、
外来患者に対する医薬品経腸栄養剤について、
「本当に医療上必要なケースか」
を、より明確に確認する流れになりました。
特に、
- 手術後患者
- 経管栄養患者
- 医師が医学的必要性を認めた患者
について、処方箋やレセプトへの記載が求められるようになっています。
さらに調剤側にも、
- 処方箋記載で確認したのか
- 疑義照会で確認したのか
を摘要欄に記載するルールが追加されました。
これ、地味に見えてかなり大きな変化です。
つまり薬局側も、
「なんとなく出てるから調剤する」
では済まなくなったんですよね。
食品類似医薬品|学会が急いで指針を出した理由
今回かなり印象的だったのが、
複数の関連学会が連名で「適正使用指針」を出したこと。
資料でも、
「現場で不要な混乱を起こさず、必要な患者に保険給付が継続されるように」
という表現が使われています。
ここ、すごく大事だと思っています。
というのも、もし単純に
「これ食品みたいなものだから保険厳しくします」
という方向に振れてしまうと、
本当に必要な患者さんまで困ってしまうからです。
“食事”では補えない患者さんがいる
指針では、具体的な患者像もかなり丁寧に示されています。
例えば、
- がん患者
- 摂食嚥下障害患者
- サルコペニア・フレイル患者
- 悪液質患者
- 炎症性腸疾患患者
- リフィーディングリスク患者
など。
これって、保険薬局でも日常的に出会う患者さんですよね。
特にがん領域では、
- 味覚異常
- 口内炎
- 嚥下低下
- 食欲低下
- 化学療法による倦怠感
などで、“普通に食べる”こと自体が難しくなるケースが本当に多いです。
そう考えると、
「経口栄養剤=食品」
ではなく、
「病態管理を含めた治療の一部」
として捉える視点が重要なんだと思います。

保険薬局薬剤師に求められること
今回の改定で、薬局側に求められる役割はかなり増えています。
特に大事なのは、
「適応を理解したうえで処方を受ける」
こと。
例えば、
- なぜこの患者さんに必要なのか
- 食事だけでは何が不足しているのか
- どの病態を背景にしているのか
- どんなリスク管理が必要なのか
を理解せずに調剤すると、
単なる“飲む栄養剤”として扱ってしまう危険があります。
実際、指針でも、
- 相互作用
- 副作用歴
- 病態別管理
への配慮が書かれています。
つまりこれはもう、
「栄養の形をした医療」
なんですよね。
“食品っぽい薬”ではなく、“医療に必要な栄養”
個人的には、「食品類似医薬品」という言葉には、
少し“軽く見えてしまう”危うさがあると思っています。
確かに見た目は食品に近い。
でも、
- 用法用量がある
- 病態ごとに選択が必要
- 相互作用がある
- 適応判断が必要
- 医学的管理が必要
という時点で、
やっぱりこれは“医療”なんですよね。
だからこそ今回の改定は、
「安易な使用を制限する」
だけではなく、
「本当に必要な患者へ、適切に届ける」
ための整理でもあるように感じています。
食品類似医薬品|現場で感じること
保険薬局にいると、
「これ、食品だから大丈夫ですよね?」
と言われることがあります。
でも実際には、
- 血糖
- 電解質
- 腎機能
- 消化吸収
- 疾患特性
- がん悪液質
- フレイル
など、かなり医学的な背景を持って使われています。
だからこそ薬剤師としては、
“食品みたいなもの”
ではなく、
“患者さんの治療を支える栄養療法”
として関わっていく必要があるんだろうな、と感じます。
今回の制度改定は、
単なるレセプトルール変更ではなく、
「栄養を医療としてどう支えるか」
を、改めて問われているのかもしれません
ちなみに、わたくししぐが働く薬局には「管理栄養士さん」が常勤しています。
すごく、心強い!!

コメント