金融所得とは?75歳以上の窓口負担・保険料に反映へ|NISA・預貯金との違いも解説

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医療を表す白い十字と硬貨を載せた天秤

こんばんは、薬剤師のしぐです。

今回は、毛色の違う、また別の難しいお話。

「年金は変わっていないのに、病院や薬局で支払う割合が変わる?」

今後、そんな疑問につながりそうなのが、後期高齢者医療制度への「金融所得」の反映です。

現在、75歳以上の窓口負担は原則1割で、所得に応じて2割または3割となります。その判定や保険料の算定に、確定申告をしていない上場株式の配当なども反映する仕組みが導入されます。

2026年10月14日の報道では、厚生労働省は2029年8月の反映開始を目指しているとされています。制度改正の法律は成立していますが、開始時期については、現時点では「2029年8月を目指す」と受け止めておきたいところです。

ここで押さえたいのは、金融所得と金融資産は違うということ。「預金がある人は全員負担増」「NISAも対象」という理解ではありません。

この記事では、金融所得の意味から、対象となる収益、現在の仕組みとの違い、薬局で気にしておきたい点まで整理します。

※2026年10月15日時点の情報です。将来の判定方法・対象年・細部の取扱いは、今後の政省令や公的な案内で確認が必要です。

  1. まず結論:変わるのは「申告しなかった金融所得」の扱い
  2. そもそも「金融所得」とは?
    1. 配当金:株式を持つことで受け取る利益の分配
    2. 投資信託の分配金:受取額がすべて利益とは限らない
    3. 売却益:売却代金の全額ではなく、利益の部分
    4. 利子:預貯金と債券では扱いが異なる
  3. 対象になるもの・ならないものを整理
  4. なぜ今、金融所得を反映するのか
    1. 今後は金融機関からの情報を活用
  5. 2029年8月から、全員の窓口負担が上がる?
    1. 現在の1割・2割・3割の判定は?
  6. NISAは対象外。ただし「非課税となる所得」で確認を
  7. 損失がある年や、複数口座を使っている場合は?
  8. 薬局で大切なのは、制度の説明と治療継続の支援
    1. 負担割合は、推測せず資格情報で確認
    2. 「負担が2倍」と「毎月の支払いが必ず2倍」は分ける
    3. 費用のために薬を減らしていないか
  9. まとめ:まずは「残高」「利益」「非課税」を分けて考える
  10. よくある質問
    1. 金融所得とは、貯金のことですか?
    2. 預金を取り崩すと窓口負担が上がりますか?
    3. NISAの利益も対象ですか?
    4. 銀行預金の利息もすべて追加されますか?
    5. 確定申告をしなければ影響しませんか?
    6. 75歳以上は、2029年8月に全員2割になるのですか?
    7. 現役世代の健康保険料や介護保険も同時に変わりますか?
    8. 自分の負担割合は、どこで確認できますか?

まず結論:変わるのは「申告しなかった金融所得」の扱い

今回の見直しは、金融所得に新しい税金をかけるという話ではありません。医療保険の負担を決めるときに、把握する所得の範囲をそろえる見直しです。

確認したい点今回のポイント
主な対象制度後期高齢者医療制度
何に影響する?保険料の算定、窓口負担割合などの判定
見直しの中心確定申告せずに課税が完結する上場株式の配当・譲渡益など
預金や株の残高は?残高そのものに負担割合を掛ける制度ではない
NISAは?非課税となるNISAの所得は対象外
開始時期は?2029年8月の反映開始を目指すと報道

「金融所得があるか」だけで、直ちに2割・3割になるわけでもありません。他の所得や世帯の状況と合わせて、区分の判定に影響するかが決まります。

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そもそも「金融所得」とは?

金融所得とは、一般に、株式・投資信託・債券・預貯金などの金融商品から得られる収益を指す言葉です。代表例は、配当、分配金、売却益、利子です。

ただし、金融所得という一つの税目があるわけではありません。税法上は「配当所得」「利子所得」「株式等に係る譲渡所得等」などに分かれ、課税や申告の仕組みも異なります。

そのため、一般的な意味で金融所得に含まれるものが、今回の見直しですべて新たに反映されるわけではない点が大切です。

配当金:株式を持つことで受け取る利益の分配

会社が利益の一部を株主に分配するのが配当です。課税口座で保有する上場株式から受け取る配当などが、今回の見直しの中心になります。

たとえば、年間で20万円の配当を受け取れば、その収益が所得の判定に関係します。「株をいくら分持っているか」と「配当をいくら受け取ったか」は別の情報です。

投資信託の分配金:受取額がすべて利益とは限らない

投資信託には、運用に応じて分配金を支払う商品があります。課税対象となる普通分配金などは確認したい収益です。

一方、元本の払戻しに当たる元本払戻金(特別分配金)は、利益の分配とは異なります。「口座に入金された金額を、すべて金融所得として足す」と考えると誤ってしまいます。

売却益:売却代金の全額ではなく、利益の部分

株式などを売ったときには、原則として、売却代金から取得費や売却に要した手数料などを差し引いて利益を計算します。

たとえば、100万円で買った株式を120万円で売った場合、手数料を考慮しない単純な例では、利益は20万円です。120万円すべてが売却益になるわけではありません。

また、まだ売っていない株式が値上がりした「含み益」は、通常、その値上がりだけで実現した譲渡益にはなりません。

利子:預貯金と債券では扱いが異なる

預金の利息や債券の利子も、一般的には金融所得に含まれます。ただし、国内の預貯金利子などは、源泉徴収で課税が完結し、確定申告に含められない「源泉分離課税」です。

今回の見直しの中心である、申告するかどうかを選べる上場株式の配当などとは、仕組みが違います。国債などの特定公社債の利子もあるため、「利子は全部対象」「利子は全部対象外」と、ひとくくりにはできません。

対象になるもの・ならないものを整理

お金・収益の種類今回の見直しとの関係
課税口座の上場株式の配当申告の有無にかかわらず反映する見直しの中心
源泉徴収ありの特定口座の売却益申告不要としている所得も反映する見直しの中心
課税対象となる公募投資信託の分配金・売却益商品や課税区分に応じて対象となる
特定公社債の利子など申告不要を選択できる課税所得として確認が必要
NISAで非課税となる配当・売却益対象外
国内預貯金の利子などの源泉分離課税所得今回の中心となる追加反映の対象とは異なり、対象外の整理
預貯金残高、株式の保有残高残高そのものを今回の金融所得として加算しない
預金から生活費を引き出したお金引き出しただけでは所得にならない
売っていない株式の含み益通常、未実現の値上がりだけでは譲渡益にならない
元本払戻金(特別分配金)通常の課税対象の分配金と区別する

商品名だけで判断せず、口座の種類や収益の税務上の区分まで確認するのがポイントです。FXや暗号資産なども、一般的な投資収益という理由だけで、今回新たに追加される上場株式の配当等と同じ扱いにはできません。

なぜ今、金融所得を反映するのか

現在でも、金融所得がまったく考慮されていないわけではありません。

上場株式の配当や、源泉徴収ありの特定口座の所得などは、確定申告をしない選択ができます。申告した場合は自治体が所得を把握でき、保険料や窓口負担の判定に反映されます。一方、申告しない場合には、その判定に反映されないことがあります。

つまり、同じ収益があっても、申告したかどうかで医療保険の負担に差が生じる仕組みでした。

もちろん、申告不要を選ぶこと自体は認められた税の手続です。今回の改正は、その選択をした人に問題があったという話ではなく、医療保険制度側の所得把握の仕組みを変えるものです。

税金の還付だけを見て申告すると、保険料や窓口負担まで変わることがある。この分かりにくさは、患者さんにとっても悩ましいところだったと思います。

今後は金融機関からの情報を活用

2026年5月29日に成立した改正法では、金融機関等が作成する「法定調書」を、後期高齢者医療広域連合へオンラインで提出する義務などが設けられました。

法定調書は、配当の支払いなどを税務署に報告するための書類です。こうした情報を活用し、本人が確定申告をしたかどうかに左右されずに金融所得を把握する仕組みを整えます。

今回の仕組みのために、対象者全員に新しく確定申告を義務付けるという説明ではありません。ただし、税務上もともと必要な申告まで不要になるわけではありません。

2029年8月から、全員の窓口負担が上がる?

金融所得が反映されても、判定区分をまたがなければ、窓口負担割合が変わらない場合があります。また、すでに申告して所得が反映されている人と、申告不要としてきた人では、影響の出方も異なります。

保険料と窓口負担割合は別の仕組みです。窓口負担が1割のままでも、保険料に影響する可能性があります。

現在の1割・2割・3割の判定は?

現行制度の大枠は次のとおりです。以下は2026年時点の説明であり、2029年の基準を保証するものではありません。

区分現行の判定の大枠
3割同一世帯の後期高齢者に住民税課税所得145万円以上の人がいる現役並み所得者。ただし収入等による例外あり
2割3割に該当せず、同一世帯の後期高齢者に住民税課税所得28万円以上の人がおり、年金収入+その他の合計所得金額が所定の基準以上
1割3割・2割に該当しない人

2割の収入・所得基準は、世帯内の後期高齢者が1人なら200万円以上、2人以上なら合計320万円以上です。住民税課税所得28万円以上という条件などもあるため、「年金が200万円を超えたら必ず2割」という単純な判定ではありません。

後期高齢者医療制度には、75歳以上に加え、一定の障害があり認定を受けた65〜74歳の人も加入します。実際の負担割合は、広域連合等の判定と資格情報で確認します。

高齢者の窓口負担をめぐる他の議論は、コチラでも整理しています。今回の金融所得の反映と、一律3割化などの議論は分けて捉えておきたいところです。

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NISAは対象外。ただし「非課税となる所得」で確認を

厚生労働省は、非課税のNISAを今回の対象外と説明しています。

ただし、「NISAで買った株なら、受け取る配当はどんな方法でも非課税」というわけではありません。上場株式の配当は受取方法によって課税される場合があります。非課税扱いにするための受取方法も、証券会社で確認しておきましょう。

ここからすぐに「NISAへ移せばよい」と結論づけるのも早計です。投資には値下がりの可能性があり、保有商品の売却や口座変更は、医療費だけで判断するものではありません。

まずは、自分の収益が課税口座のものか、非課税となるものかを整理する。その順番が大切だと感じます。

損失がある年や、複数口座を使っている場合は?

株式投資には、利益が出る年も損失が出る年もあります。税制には、一定の条件で利益と損失を差し引く「損益通算」や、損失を翌年以降に繰り越す制度があります。

ただし、税金の計算に使う所得と、医療保険の各判定で使う所得は、控除や定義が完全に同じとは限りません。複数の金融機関の情報の合算や、損失の取扱いも含め、今後の具体的な実施案内の確認が必要です。

「売却益がいくらあれば必ず2割になる」「過去の損失を引けば影響しない」と、現段階で一律に判断することは避けたいところです。

また、初回に何年分の金融所得を反映するかについても、開始時期から逆算して決めつけず、正式な対象年の案内を確認する必要があります。

ノートと電卓、水を置いた薬局の相談テーブル

薬局で大切なのは、制度の説明と治療継続の支援

制度を公平にするという方向性には、理解できる部分があります。一方で、患者さんにとっては「税金を払った利益が、医療費にも関係するの?」と戸惑いやすい変更だと思います。

特に、通院と服薬を続けている人は、毎月の支払いの変化を身近に感じます。制度の説明だけで終わらず、その変化が受診や服薬に影響していないかまで気にしておきたいところです。

負担割合は、推測せず資格情報で確認

薬局が年金額や配当額を聞いて、独自に1割・2割・3割を決めるわけではありません。オンライン資格確認や資格確認書などで、適用される負担割合を確認します。

患者さんの金融資産を必要以上に聞き取ることよりも、「いつから、どの割合が適用されるか」を正確に確認し、必要な相談先につなぐことが実務上の基本です。

「負担が2倍」と「毎月の支払いが必ず2倍」は分ける

同じ保険診療の総額なら、上限などを考えない単純計算で、1割から2割になると自己負担は2倍になります。ただし、実際の支払いには高額療養費の上限や公費負担なども関係します。

上限そのものが所得区分で変わる場合もあります。「負担割合」だけを切り取らず、その人に適用される制度を確認することが大切です。

費用のために薬を減らしていないか

「次の受診を延ばしたい」「薬を少しずつ飲めば長持ちするかな」。こうした言葉の背景に、費用への不安があるかもしれません。

自己判断で服用量を減らす前に相談してもらえるよう、残薬の確認、後発医薬品の選択、処方内容の相談、利用できる制度の案内などにつなげたいところです。税や所得判定の個別相談は市区町村・広域連合・税務の専門家へ、服薬と治療継続の相談は薬局でも受け止める。その役割を大切にしたいと思います。

まとめ:まずは「残高」「利益」「非課税」を分けて考える

今回の見直しでは、申告の有無によって医療保険の負担に差が生じていた上場株式の配当などを、より公平に反映する仕組みが整えられます。2029年8月の反映開始を目指すと報じられています。

金融所得を理解する第一歩は、持っている資産の額と、そこから得た利益を分けることです。そのうえで、課税口座かNISAか、配当か売却益か、どのような課税方式かを確認します。

制度の見出しだけを見ると、不安が先に立ちやすい話題です。だからこそ、対象となる所得と対象外のものを丁寧に分けながら、必要な医療を安心して続けられる説明につなげていきたいと思います。

よくある質問

金融所得とは、貯金のことですか?

貯金の残高そのものではなく、金融商品から得る配当・売却益・利子などの収益を指します。ただし、今回反映する対象は課税区分によって異なります。

預金を取り崩すと窓口負担が上がりますか?

預金からお金を引き出しただけでは所得は発生しません。株式などを売却して取り崩す場合は、売却益の有無を別に考えます。

NISAの利益も対象ですか?

NISAで非課税となる所得は対象外です。上場株式の配当などは受取方法によって課税されることがあるため、口座名だけで判断しないようにしましょう。

銀行預金の利息もすべて追加されますか?

国内預貯金の利子など、源泉分離課税で課税が完結する所得は、今回の中心となる追加反映の対象外と整理されています。債券の種類や国外の利子などは扱いが異なるため、「利子」という名前だけでは判断できません。

確定申告をしなければ影響しませんか?

今回の改正は、その申告の有無による差を解消するためのものです。金融機関等の法定調書を活用して把握する仕組みが設けられます。

75歳以上は、2029年8月に全員2割になるのですか?

全員が2割になる制度ではありません。所得や世帯の状況などにより判定されます。また、2029年8月は反映開始を目指すと報じられている時期です。

現役世代の健康保険料や介護保険も同時に変わりますか?

今回説明した改正は、後期高齢者医療制度の金融所得反映です。他の医療保険や介護保険に、同じ仕組みが同じ時期に一律適用されると理解するものではありません。

自分の負担割合は、どこで確認できますか?

資格確認書などの負担割合の表示や、市区町村・後期高齢者医療広域連合の案内で確認します。個別の所得判定については、加入先の窓口へ相談してください。

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