お腹の痛み、胃腸のけいれん、胆石・尿路結石まわりの痛みなどで、昔からよく使われてきたブスコパン錠10mg。
薬局でも、
「お腹がキューっと痛くなるときに使う薬」
「昔から出ている、いわゆる“定番薬”」
という印象を持っている方も多いのではないでしょうか。
そんなブスコパン錠10mgですが、2022年6月から限定出荷が続いていました。
そして今回、ようやく2026年4月20日メーカー出荷分から限定出荷解除となりました。
……が。
同時に、在庫消尽次第、販売中止となることも発表されました。
最終出荷時期は、現時点では2026年12月予定。経過措置満了は2027年3月末予定とされています。
「やっと通常出荷に戻るのか!」
と思ったタイミングで、
「でも、そのまま販売中止です」
という、なんとも複雑な案内です。
ブスコパン錠10mgとは?
ブスコパン錠10mgの一般名は、ブチルスコポラミン臭化物。
薬効分類としては鎮痙剤です。
ざっくり言うと、胃腸や胆道、尿路などの“けいれんっぽい動き”をやわらげる薬です。
添付文書上の効能・効果には、胃・十二指腸潰瘍、胃炎、腸炎、腸疝痛、胆石症、胆道ジスキネジー、尿路結石症、膀胱炎、月経困難症などが記載されています。
作用としては、副交感神経支配の腹部中空臓器の壁内神経節に作用し、神経刺激伝達を抑えることで、胃腸管・胆道・泌尿器・女性生殖器のけいれんをやわらげるとされています。
いわゆる、
「お腹がギューっと痛い」
「差し込むような痛みがある」
そんな場面で処方されてきた薬ですね。
1956年販売開始。約70年使われた薬がなくなる
ブスコパン錠10mgの添付文書には、販売開始:1956年2月と記載されています。
1956年。
昭和31年です。
そこから2026年まで使われてきたと考えると、実に約70年。
もちろん、医療はどんどん変わっていきます。
新しい薬が出る。
治療方針が変わる。
処方頻度が変わる。
メーカーの製造体制や採算の問題もある。
それはわかるんです。
でも、薬局で働いていると、こういう薬にはちょっとした“思い出”があります。
新薬のような華やかさはない。
劇的に話題になる薬でもない。
でも、ずっとそこにあって、必要なときに処方されて、患者さんの症状を支えてきた薬。
そういう薬がなくなるのは、やっぱり少しさみしいです。
限定出荷解除なのに、販売中止
今回の案内で、個人的にいちばん印象的だったのはここです。
限定出荷解除ならびに販売中止のお知らせ
この並び、現場目線ではなかなか強いです。
限定出荷が続いている薬は、薬局としても在庫管理が難しくなります。
入ってくるのか。
何錠確保できるのか。
次回入荷はいつなのか。
患者さんに継続してお渡しできるのか。
代替薬に切り替えるべきなのか。
そういうことを、毎回かなり気にします。
だから、限定出荷解除と聞くと、本来なら少しホッとするところです。
でも今回は、解除されたと思ったら、最終出荷は2026年12月予定。
つまり、**「通常出荷に戻るけど、ゴールは販売中止」**という流れです。
これは、薬局としては早めに対応を考えておきたい案件です。
代替薬は「ブチルスコポラミン臭化物錠10mg『ツルハラ』」
サノフィの案内では、代替薬として**ブチルスコポラミン臭化物錠10mg「ツルハラ」**が示されています。
ブスコパン錠10mgは1錠6.3円、代替薬として示されたツルハラは1錠6.6円と案内されています。包装はPTP100錠、PTP1000錠、バラ1200錠が掲載されています。
成分としては同じブチルスコポラミン臭化物10mg。
なので、今後は処方元でも薬局でも、徐々に
ブスコパン錠10mg → ブチルスコポラミン臭化物錠10mg「ツルハラ」
への切り替えを意識していく流れになりそうです。
ただし、ここで気になるのが、
代替薬側の供給は本当に大丈夫なのか?
という点です。
ブスコパン錠10mgが販売中止となれば、一定数の需要がツルハラへ流れます。
このとき、代替薬が十分に供給されるなら問題は少ないですが、もし需要集中が起これば、また別の出荷調整につながる可能性もあります。
最近の医薬品供給問題では、この
「ひとつの薬が止まる → 代替薬に需要集中 → 代替薬も限定出荷」
という流れを、何度も見てきました。
まさに、以前まとめたラベプラゾールの出荷調整でも似たような構図がありました。
▼関連記事はこちら
ラベプラゾールの出荷調整についての記事はこちら

ブスコパンは“なんとなく出る薬”ではあるけれど、注意点もある
ブスコパンは昔からある薬なので、つい「よくある薬」として見てしまいがちです。
でも、抗コリン作用を持つ薬なので、注意点はしっかりあります。
添付文書では、閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害、重篤な心疾患、麻痺性イレウスなどの患者さんには禁忌とされています。
また、眼の調節障害などを起こすことがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械操作に従事しないよう注意することも記載されています。
副作用としては、口渇、便秘、腹部膨満感、排尿障害、心悸亢進、発疹などが挙げられています。重大な副作用としてショック、アナフィラキシーも記載されています。
特に高齢の患者さんでは、
- 前立腺肥大がないか
- 排尿しづらさがないか
- 緑内障の治療中ではないか
- 抗コリン作用を持つ薬が重なっていないか
- 便秘が悪化していないか
このあたりは、薬局でも確認しておきたいところです。
「古い薬が消える」ということは、現場の記憶も変わっていく
ブスコパン錠10mgの販売中止は、単なる1製品の販売終了ではあります。
でも、薬局で働いていると、こういうニュースを見るたびに思います。
薬の供給って、本当に当たり前じゃない。
長く使われていた薬でも、ある日突然、限定出荷になる。
限定出荷が続いたと思ったら、販売中止になる。
代替薬があるから大丈夫と思っていたら、その代替薬も不安定になる。
最近は、こういうことが本当に増えました。
そして、薬局の現場ではそのたびに、
「この患者さんは次回も同じ薬で出せるかな」
「処方医に情報提供した方がいいかな」
「今のうちに採用品を切り替えた方がいいかな」
「患者さんにはどう説明しようかな」
と、地味だけど大事な判断が積み重なっていきます。
ブスコパン錠10mgは、1956年から使われてきた薬です。
約70年もの間、いろいろな患者さんの症状を支えてきた薬が、いよいよ市場から姿を消していく。
そう考えると、少し感慨深いものがあります。
薬局として今から考えておきたいこと
今回の販売中止について、薬局としては早めに準備しておきたいです。
まずは、ブスコパン錠10mgを定期的に処方されている患者さんがどのくらいいるか。
頓服でたまに出る患者さんも含めて、処方状況を確認しておくとよさそうです。
次に、代替薬であるブチルスコポラミン臭化物錠10mg「ツルハラ」への切り替えについて、処方元と情報共有しておくこと。
特に、一般名処方ではなく「ブスコパン錠10mg」と銘柄指定で出ている場合は、今後の変更対応が必要になる可能性があります。
また、患者さんへの説明も大切です。
「ブスコパンがなくなります」だけだと、不安に感じる方もいると思います。
なので、説明するときは、
「同じ成分のお薬に切り替わる予定です」
「効果や注意点は大きく変わりませんが、見た目や名前が変わることがあります」
「今後、供給状況によっては変更になる可能性があります」
このあたりを丁寧に伝えたいところです。
まとめ:ブスコパン錠10mg、長い間おつかれさまでした
ブスコパン錠10mgは、2022年6月から続いていた限定出荷が、2026年4月20日メーカー出荷分から解除となりました。
しかし同時に、在庫消尽次第販売中止となることも発表され、最終出荷時期は2026年12月予定とされています。
販売開始は1956年2月。
約70年にわたり使われてきた薬が、いよいよ姿を消すことになります。
代替薬としては、ブチルスコポラミン臭化物錠10mg「ツルハラ」が示されています。
ただ、最近の医薬品供給状況を考えると、代替薬があるから安心、とは言い切れません。
需要集中による供給不安定化にも注意が必要です。
ブスコパンは、決して派手な薬ではありません。
でも、長く現場にあり続けた薬です。
こういう薬がなくなるニュースを見ると、
「医薬品の安定供給って、本当に医療の土台なんだな」
と、あらためて感じます。
ブスコパン錠10mg、長い間おつかれさまでした。


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