
こんばんは、薬剤師のしぐです。
「イラクナが第1類から指定第2類になった」。売場で見ると、棚の位置や説明の仕方が変わるニュースです。でも、しぐ的にはもっと大きい変化だと思います。医療用の胃腸薬から生まれたスイッチOTCを、登録販売者も販売できるようになったからです。
胃もたれで困る人が、自分で対処する選択肢は広がります。一方で「胃薬を買って様子を見てよい人」と「胃薬を選ぶ前に受診したい人」を見分ける仕事は、ますます大切になります。今回は区分変更だけで終わらず、薬局の売場で何を聞くかまで整理します。

イラクナはいつから指定第2類?
小林製薬の製品情報では、2026年9月28日から第1類医薬品から指定第2類医薬品に変更されています。2022年9月の発売時は要指導医薬品、2025年9月28日に第1類、そして今回の指定第2類という流れです。製品が別の成分に変わったという話ではなく、一般用医薬品としての販売区分が変わった話です。
厚生労働省の審議では、製造販売後の特別調査3,056例で副作用が63例111件報告され、重篤と判断された症例はありませんでした。ただし、審議で当初の第2類案から「指定第2類」が提案された背景には、妊娠中など特に注意したい購入者への確認があります。「指定」にはその意味があります。安全性がゼロリスクと認定されたわけではありません。
そもそもイラクナはどんな胃腸薬?
有効成分はイトプリド塩酸塩。医療用のガナトン錠50mgに使われる成分を一般用に転用したスイッチOTCです。低下した胃の運動を活発にし、少し食べただけで胃がいっぱいになる、食べた物がいつまでも胃に残るような胃もたれなどに対応します。単なる「胃酸を抑える薬」や「消化酵素を補う薬」と一緒くたにしない方が、選びやすいですね。
効能・効果は胃もたれ、胃部・腹部膨満感、食欲不振、胸やけ、はきけ、嘔吐。15歳以上は1回1錠、1日3回食前に服用し、15歳未満は服用できません。1日3錠中のイトプリド塩酸塩は150mg。10錠入りでメーカー希望小売価格は税抜1,000円です。食前3回という点は案外見落としやすく、10錠入りなら用法どおりで約3日分。実売価格は店舗で確認してください。
薬剤師と登録販売者、何が変わる?
| 区分 | 薬剤師 | 登録販売者 | 販売時の情報提供 |
|---|---|---|---|
| 要指導医薬品 | 販売できる | 販売できない | 薬剤師による対面での情報提供・指導が必要 |
| 第1類医薬品 | 販売できる | 販売できない | 原則、薬剤師による書面等を用いた情報提供が義務 |
| 指定第2類医薬品 | 販売できる | 販売できる | 情報提供は努力義務。禁忌確認と専門家への相談を促す表示・陳列上の措置がある |
| 第2類医薬品 | 販売できる | 販売できる | 情報提供は努力義務 |
| 第3類医薬品 | 販売できる | 販売できる | 情報提供の法的義務はない。相談への対応は必要 |

今回のポイントは、「薬剤師にしか販売できなかった薬を、登録販売者も扱えるようになった」こと。指定第2類は普通の第2類と販売できる専門家の範囲は同じですが、特に注意を要するものとして扱われます。パッケージの「第②類」の丸囲みを見て、禁忌を確認する意味を売場で伝えたいところです。
登録販売者が扱えるようになっても、複雑な併用薬や病歴の確認を一人で抱え込む必要はありません。処方薬を複数飲んでいる、胃がんや潰瘍の既往がある、症状が長引く。そんなときは薬剤師と連携して受診の要否も含めて判断する。売れる人が増えることと、相談の出口が増えることはセットだと思います。

セルフメディケーションで大切なのは、薬を選ぶ前の一問
「胃が重いからイラクナをください」と言われたら、いつから、どんな時に、どの程度困っているかを聞きたいところ。食べ過ぎた翌日なのか、少量の食事でも毎回苦しいのかで、話は変わります。
添付文書では、原因不明の体重減少、繰り返す嘔吐、血便・黒色便、発熱のある人は服用してはいけないとされています。こうした症状では胃薬で経過を見る前に医療機関へ。激しい痛み、水分も取れない、急速に悪化する場合も受診を急ぐ判断が必要です。胃もたれの背後にある病気を、薬で一時的に見えにくくしてしまうのは避けたいですね。
また、妊婦または妊娠していると思われる人、授乳中の人、15歳未満は服用できません。医師の治療中、高齢、腎臓病・肝臓病、胃がん・胃十二指腸潰瘍の既往がある人は、服用前に専門家へ相談する対象です。

併用薬は「胃薬どうし」だけを見ればよいわけではない
イラクナ服用中は、モサプリドやアコチアミドなどの消化管運動機能改善薬、胃腸鎮痛鎮痙薬、ロートエキスやベタネコールを含む胃腸薬、乗り物酔い薬、鼻炎用内服薬、かぜ薬を服用しないこととされています。受診中の人ならお薬手帳を確認し、「いつもの胃薬」に加えて、花粉症や風邪の市販薬まで聞いておきたいところです。
処方箋を持参したついでに「胃もたれもあるから市販薬を」と言われる場面は、保険薬局でもあります。そこで処方歴や残薬を確認できるのは、薬局の強み。販売区分が変わっても、薬剤師が関わる余地は小さくなりません。
飲み始めた後のフォローも忘れずに
服用後に発疹、下痢・便秘、腹痛、動悸などが出た場合は使用を中止して相談します。アナフィラキシーや肝機能障害を疑う症状は直ちに医療機関へ。錠剤は割らずに服用し、長期連用はしません。添付文書には「2週間服用してもよくならない場合は中止して相談」とありますが、黒色便や反復する嘔吐を2週間待つ意味ではありません。相談のタイミングは症状で前倒しです。
セルフメディケーションは「病院へ行かずに薬を買うこと」だけではなく、自分の症状と薬を理解し、必要なときに医療へつながること。今回の変更で購入の入口は広がりました。だからこそ、売場の最後に「改善しなければどうするか」を一緒に決める価値があります。

イラクナ|結論
イラクナは2026年9月28日から指定第2類となり、薬剤師に加えて登録販売者も販売できるようになりました。ただ、妊娠・授乳、併用薬、体重減少や黒色便などの確認は欠かせません。**選びやすくなった胃薬を、安心して使える相談につなげる。**今回の区分変更を、そんな売場づくりのきっかけにしたいですね。

FAQ
Q. 指定第2類になったら、薬剤師がいなくても購入できますか?
登録販売者が販売できる店舗では購入できます。禁忌や併用薬など気になる点は、薬剤師または登録販売者に相談してください。
Q. 第2類と指定第2類の違いは?
販売できる専門家と情報提供の基本的な扱いは同じです。指定第2類は特別な注意を要し、禁忌確認と相談を促す表示・陳列上の措置が求められます。
Q. 食後に飲んでもよいですか?
製品の用法は15歳以上1回1錠、1日3回食前です。自己判断で変えず、飲み忘れなどは購入先の専門家に相談してください。
Q. 胃の症状が続けば2週間飲み続けてよい?
2週間は受診を先延ばしにしてよい期間ではありません。黒色便、原因不明の体重減少、繰り返す嘔吐、発熱などがあれば服用せず受診を検討してください。


コメント