インスリン注射器・注射針の交付で薬局の許可は必要?高度管理医療機器等販売業の取扱いを整理【2026年通知】

こんばんは。
薬剤師のしぐです。
『インスリン注射器等を交付する薬局に係る取扱いについて』改訂がありました。
今回は、薬局でインスリンと一緒に交付する注射器や注射針について。
「処方箋に基づく交付なら、高度管理医療機器等販売業の許可はいらない」
なんとなく、そう理解している方も多いかもしれません。
ただし!
今回の通知を改めて読むと、決して「処方箋があれば何でも許可不要」という話ではありません。
- 対象となる医療機器
- 医師の処方箋に基づくこと
- 社会保険各法において支給すること
- 薬剤師による使用状況・使用履歴の確認と指導
- 調剤録・薬剤服用歴への記載
- 適切な保管・取扱い
- 研修体制
こうした条件を満たした場合に限って、販売業許可が不要と整理されています。
さらに、一体型のインスリン注入器と、カートリッジを交換して再利用する分離型のインスリン注入器では、取扱いが異なります。
薬局実務で迷わないように、今回の通知を整理してみます。
まず結論|インスリン関連機器の許可の考え方
| 交付するもの | 高度管理医療機器等販売業の許可 | ポイント |
|---|---|---|
| インスリン自己注射用ディスポーザブル注射器・注射針 | 一定の条件をすべて満たせば不要 | 処方箋に基づき、社会保険各法で支給する場合に限る。指導・記録・保管・研修が必要 |
| 一体型インスリン注入器 | 不要 | 薬液と注入器が一体で、使い切り。全体として医薬品扱い |
| 分離型インスリン注入器 | 必要 | カートリッジ交換後も注入器を再利用できるタイプ |
| 医薬品・ワクチン注入用針 | 不要 | 管理医療機器であり、高度管理医療機器等販売業の許可対象ではない |
| 通知別紙に掲げる特定保険医療材料等 | 一定の条件をすべて満たせば不要 | 処方箋に基づき、社会保険各法で支給する場合。今回、デンプン由来吸収性局所止血材が追加 |
| 上記の例外に当てはまらない高度管理医療機器 | 必要 | 販売・授与する薬局は原則どおり許可が必要 |
大切なのは、
許可が不要になることと、薬局側の管理が不要になることは、まったく別
という点です。
むしろ許可免除の対象となる交付だからこそ、通知で示された要件を薬局内で確実に運用する必要があります。
今回の通知は何が改正された?
通知は2026年9月1日付けで発出され、同日から適用されています。
今回の直接の改正点は、「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)」の改正を受け、通知の別紙1に、
デンプン由来吸収性局所止血材
が追加されたことです。
そのため今回、インスリン注射器の取扱い自体が突然、大きく変わったわけではありません。
ただ、通知全体が改めて示されたことで、インスリン自己注射用の注射器・注射針、一体型・分離型注入器、特定保険医療材料等について、薬局がどこまで許可なしで取り扱えるのかを再確認できる内容になっています。
ここはニュースの見出しだけだと、
「インスリンの注射針は全部、許可不要になったの?」
と誤解されやすいところ。
今回の通知は、対象と要件をセットで読むことが重要です。
インスリン自己注射用注射器・注射針|許可不要となる条件

インスリン皮下注射用注射筒は、針なし・針付きのいずれも高度管理医療機器に分類されます。
ただし、インスリン製剤の自己注射に用いるディスポーザブル注射器(針を含む)を、インスリンと合わせて交付する場合、次の前提と3要件をすべて満たす薬局は、高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要がないとされています。
大前提
- 医師の処方箋に基づくこと
- 社会保険各法において支給すること
- インスリンと合わせて、インスリン製剤の自己注射のために用いるものを支給すること
単に患者さんから希望されたから販売する、といったケースまで一律に免除されるわけではありません。
要件1|使用状況・使用履歴を確認し、適切に指導・記録する
患者さんに支給する際は、薬剤師が次の対応を行います。
- 医療機器の使用状況を確認する
- 使用履歴を確認する
- 電子添文などに基づき、使用方法を適切に指導する
- 管理方法を適切に指導する
- 調剤録に必要事項を記載する
- 支給時点で薬剤服用歴に必要事項を記載する
通知が薬剤服用歴への記載事項として挙げているのは、次の内容です。
- 患者の氏名
- 住所
- 支給日
- 処方内容等
- 使用状況
- 使用履歴
- 指導内容等
「針を何箱渡したか」だけでは足りません。
使用状況や使用履歴を確認し、何を指導したのかまで記録する。ここが今回、薬局として改めて確認しておきたいポイントです。
要件2|添付文書等に基づき、適切に保管・取り扱う
薬局内での保管や取扱いも、添付文書等に基づいて適切に行う必要があります。
納品後に所定の場所へ置くだけではなく、
- 製品ごとの保管条件
- 包装の破損や汚損
- 使用期限
- 取り違え防止
- 対象製品の在庫管理
などを、薬局の手順として確認できる状態にしておきたいところです。
要件3|研修実施計画を作成し、研修を行う
通知では、在宅業務従事者等の資質向上を図るために、
- 研修実施計画を作成する
- 計画に基づく研修を実施する
- 在宅業務等に関する学術研修を定期的に受けさせる
ことが求められています。
地域薬剤師会等が行う研修も含まれます。
また、薬剤師を医療機器に関する講習等へ定期的に参加させることが望ましいとされています。
つまり、個々の薬剤師が注射針の使い方を知っているだけではなく、薬局として研修計画と実施体制を持っていることが必要です。
一体型インスリン注入器はなぜ許可不要?
一体型インスリン注入器は、薬液であるインスリンと注入器が一体になっており、インスリンを使い切ったあとに注入器を再使用できないタイプです。
いわゆる使い切りのプレフィルド製剤・キット製剤をイメージするとわかりやすいですね。
このタイプは全体として医薬品として取り扱われています。
そのため、医師の処方箋に基づいて薬局で交付する場合、高度管理医療機器等販売業の許可は必要ありません。
患者さんへは、注射手技だけでなく、製品ごとの保管方法も確認しておきたいところです。
インスリンの保管については、こちらの記事でも詳しくまとめています。

分離型インスリン注入器は引き続き許可が必要

一方、分離型インスリン注入器は取扱いが異なります。
分離型は、インスリンのカートリッジと注入器を分離でき、薬液を使い切ったあとも、新しいカートリッジへ交換して注入器本体を再利用するタイプです。
通知では、分離型インスリン注入器は医師の処方箋に基づいて交付するものではないため、これを取り扱う薬局は、高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要があると明記されています。
ここは、
インスリンに使う器具だから、すべて許可不要
ではありません。
「薬液と一体で使い切りか」「カートリッジ交換後も本体を再利用できるか」を確認することが、判断の分かれ目になります。
医薬品・ワクチン注入用針は管理医療機器
通知では、医薬品・ワクチン注入用針は「管理医療機器」であるため、薬局が取り扱う場合でも高度管理医療機器等販売業の許可を取得する必要はない、とされています。
ここでは、医療機器の分類そのものによって許可不要となる点と、高度管理医療機器について一定要件のもとで許可不要となる例外を、混同しないようにしたいですね。
製品の一般的名称や医療機器分類が不明なときは、外箱の表示、電子添文、承認・認証情報などを確認したうえで判断するのが安全です。
特定保険医療材料等も一定条件で許可不要
通知の別紙1に掲げる「特定保険医療材料に該当する高度管理医療機器」と、別紙2に掲げる「薬価基準に収載された高度管理医療機器」についても、一定の条件を満たせば許可は不要です。
条件は、インスリン自己注射用ディスポーザブル注射器・注射針と同様です。
- 医師の処方箋に基づく
- 社会保険各法において支給する
- 使用状況・使用履歴の確認、適切な指導と記録を行う
- 適切に保管・取り扱う
- 研修実施計画を作成し、計画に基づく研修等を行う
別紙1に掲げられた高度管理医療機器
- 腹膜透析液交換セット
- 在宅寝たきり患者処置用栄養用ディスポーザブルカテーテル
- 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ
- 在宅寝たきり患者処置用膀胱留置用ディスポーザブルカテーテル
- 在宅血液透析用特定保険医療材料(回路を含む)
- 皮膚欠損用創傷被覆材
- 水循環回路セット
- デンプン由来吸収性局所止血材
最後の「デンプン由来吸収性局所止血材」が、今回追加された項目です。
別紙2に掲げられた高度管理医療機器
- 一般名:外科用接着剤
- 品名:アロンアルフアA「三共」
これらも、処方箋に基づけば自動的に許可不要になるわけではありません。
インスリン注射器等と同様の要件を満たす必要があります。
薬局で今すぐ確認したい実務チェックリスト

今回の通知を受け、薬局内では次の項目を確認しておくと安心です。
対象製品の確認
- 薬局で取り扱う注射器・注射針の医療機器分類を把握している
- 一体型と分離型のインスリン注入器を区別できる
- 高度管理医療機器等販売業の許可が必要な製品を把握している
- 特定保険医療材料等の対象リストを最新化している
交付時の確認・指導
- 医師の処方箋に基づく支給であることを確認する
- 社会保険各法に基づく支給であることを確認する
- 患者の使用状況・使用履歴を確認する
- 電子添文等に基づき、使用方法・管理方法を説明する
- 使用済み針の廃棄方法や回収方法を、地域・医療機関・薬局の運用に沿って案内する
記録・管理
- 調剤録に必要事項を記載する
- 支給時点で薬剤服用歴に必要事項を記載する
- 支給した製品・数量を追跡できる
- 保管条件、期限、包装状態を確認できる
研修体制
- 在宅業務従事者等を対象とした研修実施計画がある
- 計画に基づく研修記録が残っている
- 在宅業務等に関する学術研修を定期的に受講している
- 医療機器に関する講習等への参加機会を設けている
特に、薬歴テンプレートに「使用状況」「使用履歴」「指導内容」の欄がない薬局は、今回を機に見直してもよさそうです。
薬歴記載例|何を残せばよい?
通知に沿った記録を意識すると、たとえば次のような内容が考えられます。
インスリン自己注射用注射針を処方箋に基づき支給。1回ごとに新品へ交換していること、再使用なし、残数・使用履歴を確認。装着方法、使用後の取り外し、保管方法、使用済み針の廃棄方法を説明。手技上の問題なし。
もちろん、患者さんの状況に応じて記録内容は変わります。
大切なのは、定型文を貼ることではなく、
- 実際に何を確認したか
- どのような使用状況だったか
- 何を指導したか
が、あとから読んでもわかることです。
住所や処方内容など、通知で求められる事項が薬局システム内の別項目に保存されている場合も含め、自局の記録方法で漏れなく確認できるようにしておきましょう。

よくある質問【FAQ】
Q1.処方箋に注射針が記載されていれば、必ず許可不要ですか?
いいえ。処方箋に基づくことに加え、社会保険各法における支給であること、通知に示された指導・記録、保管・取扱い、研修体制の要件をすべて満たす必要があります。また、対象となる医療機器かどうかの確認も必要です。
Q2.一体型インスリン注入器の交付に許可は必要ですか?
医師の処方箋に基づいて薬局から交付する場合、高度管理医療機器等販売業の許可は不要です。薬液と注入器が一体であり、使い切ったあとに注入器を再使用できないものは、全体として医薬品として扱われます。
Q3.分離型インスリン注入器は処方箋があっても許可不要ですか?
通知では、分離型インスリン注入器は医師の処方箋に基づいて交付するものではないと整理されています。これを取り扱う薬局には、高度管理医療機器等販売業の許可が必要です。
Q4.注射針を交付したとき、薬歴には数量だけ記載すればよいですか?
数量だけでは十分とはいえません。通知では、氏名、住所、支給日、処方内容等に加え、使用状況、使用履歴、指導内容等の必要事項を薬剤服用歴へ記載するよう求めています。調剤録にも必要事項の記載が必要です。
Q5.今回、インスリン注射器のルールそのものが変更されたのですか?
今回の直接の改正点は、通知別紙1への「デンプン由来吸収性局所止血材」の追加です。インスリン注射器等の取扱いは、改正通知の中で従来の考え方が改めて示されています。
Q6.許可不要なら、研修までは必要ないですか?
必要です。許可不要となる要件のひとつとして、研修実施計画の作成、計画に基づく研修、在宅業務等に関する定期的な学術研修が示されています。医療機器に関する講習等への定期的な参加も望ましいとされています。
Q7.通知にない高度管理医療機器も、処方箋があれば許可不要ですか?
いいえ。通知の1または2に該当しない高度管理医療機器を薬局で販売・授与する場合は、原則どおり高度管理医療機器等販売業の許可が必要です。
まとめ|「何を渡すか」と「3要件」を薬局全体で確認しよう
今回の通知で押さえておきたいポイントをまとめます。
- インスリン自己注射用ディスポーザブル注射器・注射針は、一定条件をすべて満たす場合に限り、販売業許可が不要
- 必須要件は、確認・指導・記録、適切な保管・取扱い、研修体制の3本柱
- 一体型インスリン注入器は全体として医薬品扱いで、処方箋に基づく交付なら許可不要
- カートリッジ交換後も再利用する分離型インスリン注入器の取扱いには、引き続き許可が必要
- 今回の直接の改正点は、特定保険医療材料の対象に「デンプン由来吸収性局所止血材」が追加されたこと
- 通知の例外に該当しない高度管理医療機器の販売・授与には、原則どおり許可が必要
「処方箋に基づくから大丈夫」だけで終わらせず、対象製品、支給の条件、薬歴記載、研修計画まで含めて、自局の運用を確認しておきたいですね。
参考資料
- 厚生労働省「『インスリン注射器等を交付する薬局に係る取扱いについて』の一部改正について」(医薬機審発0901第1号、2026年9月1日)
※本記事は通知内容を薬局実務の観点から整理したものです。個別製品の分類や自局の許可・届出の判断については、製品情報を確認し、必要に応じて所管の自治体・保健所等へご確認ください。


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