緩和ケアに薬剤師はどう関わるのか|保険薬局薬剤師に求められるもの

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こんばんは。薬剤師のしぐです。

がん治療というと、どうしても

「抗がん剤」

「副作用」

「レジメン」

「支持療法」

みたいな言葉が先に浮かびます。

もちろん、それは薬剤師としてめちゃくちゃ大事です。

でも、今回改めて感じたのは、がん治療に関わる薬剤師に求められているのは、薬の説明だけではなく、患者さんの生活、苦痛、不安、そして“その人らしさ”にどう寄り添うか。

ここなんですよね。

特に保険薬局の薬剤師は、病院の中ではなく、患者さんの生活のすぐ近くにいます。

だからこそ、緩和ケアにおいても、薬局薬剤師の役割はこれからますます大きくなっていくと思います。


緩和ケアは「終末期だけのもの」ではない

まず大前提として、緩和ケアは

「もう治療ができなくなった人だけが受けるもの」

ではありません。

WHOの定義でもあるように、緩和ケアはがんと診断された時点から始まるものとして説明されています。

ここ、すごく大事です。

昔は、緩和ケアというと

「最期の医療」

「痛みを取る医療」

というイメージが強かったと思います。

でも今は違います。

がん治療と並行して、早い段階から緩和ケアを入れることで、患者さんのQOLを保ち、治療継続にもつながる。

早期から緩和ケアを併用する意義として、症状緩和だけでなく、患者さん・家族とのラポール形成、病気への理解、心理社会的支援などが挙げられています。

つまり緩和ケアは、

「治療をあきらめる医療」ではなく、治療を続けるためにも必要な医療

なんですよね。

ここは、薬局薬剤師としても患者さんに伝えていきたいポイントです。

緩和ケアをイメージした画像

がん治療の目的を理解しないと、服薬指導はズレる

特に重要なのが、がん化学療法の目的の話です。

がん治療には、ステージや状況によって目的が変わります。

たとえば、術後補助化学療法では、目的は再発予防です。

一方で、切除不能・再発がんの治療では、根治ではなく、症状緩和や生存期間の延長、QOLの維持が主な目的になります。

ここを理解していないと、服薬指導がかなりズレます。

同じ抗がん薬でも、患者さんによって意味が違う。

「副作用があっても、ここは乗り越えて治療完遂を目指す」場面もあれば、

「副作用で生活が大きく崩れるなら、減量や休薬を考えた方がいい」場面もある。

だから薬剤師は、薬だけを見るのではなく、

この患者さんは何のためにこの治療をしているのかを確認する必要があります。これができると、服薬指導の言葉が変わります。

「飲み忘れないでくださいね」だけではなく、

「この治療は再発を防ぐ目的なので、予定通り続けることが大切です」

「今回は生活の質を保ちながら続ける治療なので、つらさは我慢しすぎないでください」

こういう説明ができるようになります。


副作用対応は「説明」ではなく「評価」が大事

がん薬物療法に関わる薬剤師の役割として、副作用対応はもちろん重要です。抗がん薬の副作用は投与後の時期によって出やすい症状が違うことが一般的です。

投与後1週間以内は、吐き気、食欲不振、倦怠感。

その後は、口内炎、下痢、脱毛など。

さらに薬剤によって、皮膚障害、末梢神経障害、血液毒性、間質性肺炎なども問題になります。

ここで大事なのは、

「副作用はありませんか?」だけでは足りない

ということです。

患者さんは、けっこう我慢します。

「このくらい普通かな」

「病院に言うほどじゃないかな」

「抗がん剤だから仕方ないよね」

そう思って、つらさを抱え込んでしまうことがあります。

だから薬剤師側から具体的に聞く必要があります。

たとえば、

「下痢は1日何回くらいありますか?」

「食事はいつもの半分くらいは取れていますか?」

「息切れや空咳は増えていませんか?」

「皮膚の赤みや痛みで、日常生活に困ることはありますか?」

「手足のしびれで、ボタンを留めにくい、歩きにくいなどはありませんか?」

こういう聞き方です。

CTCAEを用いた副作用評価が周知されてきて、Grade1、2、3といった重症度の考え方を、病院と薬局が共通言語として使うことが重要だと感じます。

薬局でCTCAEを完璧に使いこなす必要はないかもしれませんが、

「日常生活にどれくらい影響しているか」

「受診勧奨が必要なレベルか」

を判断する視点は、保険薬局でも必須になっていくと思います。


免疫チェックポイント阻害薬は、薬局でも注意が必要

これまで、何度も記載してきましたが、どのがん種でも用いられることが多くなってきている「免疫チェックポイント阻害薬」。

ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブなど、今では多くのがん種で使われるようになっています。これらの薬は、従来の細胞障害性抗がん薬とは副作用の出方が違います。

吐き気や脱毛が少ない一方で、免疫が関係する副作用、いわゆるirAEが問題になります。

しかもこのirAEは、いつ出るか読みにくい。いろいろな臓器に出る。一見、普通の体調不良に見える。

ここが難しいところです。

下痢なら、感染性胃腸炎かもしれない。

倦怠感なら、ただの疲れかもしれない。

咳なら、風邪かもしれない。

でも、免疫チェックポイント阻害薬を使っている患者さんでは、

大腸炎、肝障害、内分泌障害、間質性肺炎などを考えなければいけません。

薬局でできることは、診断ではありません。

でも、

「これは病院に早めに相談した方がいいかもしれない」

と拾い上げることはできます。

特に、

「空咳が続く」

「息切れが増えた」

「下痢が続く」

「強いだるさがある」

「食欲が極端に落ちた」

「いつもと違う症状が続いている」

こういう訴えを、薬局で見逃さないこと。

これが保険薬局薬剤師に求められている大事な役割だと思います。


薬薬連携は、もう“あると良い”ではなく“必要な仕組み”

外来がん化学療法の質を高めるために、病院薬剤師と保険薬局薬剤師の連携が重要であることが示されています。

特に、2020年の診療報酬改定で、

外来がん化学療法の質向上に関する評価や、保険薬局側の特定薬剤管理指導加算2が新設されたことも重要です。

これは、かなり大きな流れです。

つまり国としても、

がん薬物療法は病院だけで完結するものではないと見ているわけです。

外来治療が増え、経口抗がん薬も増え、患者さんは治療を受けながら自宅で生活する時代になりました。そうなると、副作用が出るのは病院の中ではなく、家です。

患者さんがつらくなるのは、診察室ではなく、日常生活の中です。

だからこそ、生活圏にある薬局が関わる意味があります。

病院からレジメン情報や治療方針が共有され、薬局では次回受診までの間に副作用や服薬状況を確認する。

必要があれば、病院へトレーシングレポートで情報提供する。

この流れができると、患者さんはかなり安心できます。

薬局が単に薬を渡す場所ではなく、

治療と生活の間にある相談窓口

になるわけです。


保険薬局薬剤師に求められること①:レジメンを読む力

これからの保険薬局薬剤師に求められることの1つ目は、

レジメンを読む力

だと思います。

もちろん、病院薬剤師のようにすべてのレジメンを細かく管理する必要はありません。

でも、最低限、

この治療は何コース目なのか。

どの薬剤が使われているのか。

副作用はいつごろ出やすいのか。

支持療法は適切に使えているのか。

休薬・減量につながる症状は何か。

このあたりは把握したいところです。

特に経口抗がん薬では、薬局が最後の砦になることもあります。

患者さんが家で飲む薬だからこそ、

飲み方、休薬期間、相互作用、副作用チェックを薬局で確認する意味は大きいです。

「この薬は食後です」だけで終わらせない。

「この薬を続けるうえで、どんな症状が出たら病院に連絡すべきか」まで伝える。

ここが重要です。


保険薬局薬剤師に求められること②:副作用を“生活の言葉”に翻訳する力

CTCAEやirAEという言葉は、医療者にとっては便利です。

でも患者さんにとっては、よくわからない言葉です。

だから薬剤師は、医療者の言葉を生活の言葉に翻訳する必要があります。

たとえば、

「Grade2の下痢が出たら連絡してください」

ではなく、

「いつもより明らかに回数が増えた、1日4回以上の下痢がある、水っぽい便が続くときは連絡してください」

「間質性肺炎に注意してください」

ではなく、

「熱がないのに空咳が続く、階段で息切れしやすい、息苦しさが増えたときは早めに相談してください」

こういう言い換えです。

患者さんが自分で気づける言葉にして渡す。

これができるのは、保険薬局薬剤師の大きな強みです。


保険薬局薬剤師に求められること③:痛みだけでなく“全人的苦痛”を見る力

全人的苦痛、トータルペインの考え方が重要です。痛みには、身体的な痛みだけでなく、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛があります。

身体的苦痛は、痛み、倦怠感、吐き気、息苦しさなど。

精神的苦痛は、不安、恐怖、怒り、孤独感など。

社会的苦痛は、仕事、お金、家庭、人間関係の問題など。

スピリチュアルペインは、「なぜ自分が」「これからどうなるのか」「自分の人生は何だったのか」といった深い苦しみです。

薬剤師は、どうしても薬で解決できる症状に目が向きがちです。でも、患者さんが抱えているつらさは、薬だけでは解決できないことも多い。

たとえば、

痛み止めは効いている。

吐き気も落ち着いている。

でも、患者さんの表情が暗い。

そんなとき、「薬は問題なさそうですね」で終わっていいのか。たぶん、そこに薬剤師としての関わり方が問われるんだと思います。

「最近、眠れていますか?」

「治療のことで不安に思っていることはありますか?」

「ご家族には相談できていますか?」

「生活の中で困っていることはありますか?」

こういう一言が、患者さんの安心につながることがあります。薬剤師がすべてを解決する必要はありません。でも、困りごとを拾って、必要な職種につなぐことはできます。


緩和ケアについて考える

医療者は、つい何かをしなきゃと思います。

薬を提案しなきゃ。

副作用を評価しなきゃ。

指導しなきゃ。

何か役に立たなきゃ。

もちろん、それも大事です。

でも、患者さんが本当に苦しいとき、

必ずしも正解の言葉や完璧な提案が必要とは限りません。

ただ話を聞いてくれる人がいる。

つらいと言っても否定されない。

不安をこぼしても受け止めてもらえる。

薬局に行けば、少し安心できる。

それだけで救われることがあります。

薬剤師としての専門性はもちろん大事。

でも、緩和ケアに関わる薬剤師には、

専門職である前に、人としてそばにいる姿勢も求められているのだと思います。


保険薬局では何から始めればいいのか

ここまで書くと、

「いやいや、薬局でそこまでやるのは大変だよ」

と思うかもしれません。

正直、現場は忙しいです。

外来がん治療の患者さんだけをじっくり見る余裕がある薬局ばかりではありません。

でも、できることはあります。

まずは、がん薬物療法中の患者さんに対して、毎回この3つを確認するだけでも違います。

緩和ケアのポイント① 治療の目的を確認すること。

「再発予防なのか」「病気を抑える治療なのか」「症状緩和が主目的なのか」で、声かけが変わります。

緩和ケアのポイント② 副作用を具体的に聞くこと。

「副作用ありますか?」ではなく、下痢、口内炎、食欲、倦怠感、しびれ、息切れ、皮疹など、具体的に聞く。

緩和ケアのポイント③ 患者さんの生活を聞くこと。

食べられているか、眠れているか、家で困っていないか、不安が強くないか。

この3つだけでも、薬局の関わり方はかなり変わります。

そして、必要があれば病院へ情報提供する。

全部を薬局で抱え込まない。

でも、見逃さない。

このバランスが大事です。


薬局薬剤師は「治療の外側」にいるからこそ見えるものがある

病院では、検査値や画像、診察所見をもとに治療が進みます。

一方で薬局では、患者さんの生活の言葉が聞こえます。

「実はご飯があまり食べられていない」

「先生には言えなかったけど、薬を飲むのがつらい」

「家族に迷惑をかけている気がする」

「もう治療を続けるのが怖い」

こういう言葉は、診察室では出ないことがあります。

薬局だから話せることがある。

薬剤師だから拾える声がある。

だから保険薬局薬剤師は、単に処方箋通りに薬を渡す人ではなく、

患者さんの生活の中で、がん治療を支える人

になっていく必要があると思います。


まとめ:緩和ケアに関わる薬剤師に必要なのは、薬の知識と“そばにいる力”

がん治療はどんどん外来化しています。

経口抗がん薬も増え、免疫チェックポイント阻害薬も広がり、副作用の出方も複雑になっています。

その中で、保険薬局薬剤師に求められる役割は確実に大きくなっています。

レジメンを理解する。

副作用を評価する。

支持療法を確認する。

病院へ情報提供する。

患者さんの生活を支える。

不安や苦痛に気づく。

必要な支援につなげる。

そして何より、

患者さんが安心して話せる存在になること。

緩和ケアは、何か特別な場所だけで行われるものではありません。

患者さんが薬局のカウンターで、

「ちょっと相談してもいいですか」

と言えたその瞬間から、緩和ケアは始まっているのかもしれません。

薬剤師ができることは、薬を渡すことだけじゃない。

薬を通して、患者さんの生活に関わること。

そして、必要なときには、ただそばにいること。

これからの保険薬局薬剤師には、そんな関わり方が求められているのだと思います。

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