
こんにちは、薬剤師のしぐです。
眼科で使われる注射薬「アイリーア」のバイオシミラーについて、国内販売に向けた動きがありました。第一三共エスファが、韓国のサムチュンダン製薬とアフリベルセプトBS「SCD」の日本における独占販売・供給契約を締結しています。
眼科の注射薬というと、保険薬局では直接扱う機会が少ないかもしれません。それでも、眼科で注射治療を受けている患者さんが、普段の飲み薬や点眼薬を受け取りに来局することはあります。「薬の名前が変わると聞いた」「安くなるのかな」「今までの治療と違うの?」と相談される可能性もありますよね。
今回押さえたいのは、販売体制の整備、バイオシミラーとしての位置づけ、そして製剤や適応の確認です。この記事では、2026年11月4日時点の発表内容と、薬局での相談対応を整理します。
今回のニュースは国内の独占販売・供給契約
第一三共エスファとサムチュンダン製薬の役割
2026年11月2日に発表された契約の対象は、「アフリベルセプトBS硝子体内注射液40mg/mL『SCD』」と「アフリベルセプトBS硝子体内注射用キット40mg/mL『SCD』」です。
サムチュンダン製薬が日本の製造販売承認を自社名義で保有し、第一三共エスファが選任外国製造医薬品等製造販売業者として、国内販売と承認維持に関する業務を担います。会社の発表では、円滑な上市に向けた準備を進めるとしています。
発売日や薬価は発表内容を分けて確認する
今回の発表から確認できるのは、国内販売に向けた契約と役割分担です。このリリースには、具体的な発売日や薬価の記載はありません。「国内販売へ」という見出しを、そのまま「すでに発売された」と受け取らないようにしたいところです。
医薬品のニュースでは、開発、申請、承認、薬価収載、発売が別々のタイミングで伝えられます。薬局内で共有する場合も、「何が決まったニュースなのか」を最初に書いておくと、問い合わせ対応で話がずれにくくなります。
たとえば今回なら、「承認を保有する韓国企業と国内販売を担う会社の契約が発表された。発売日と薬価は別途確認する」という整理です。今すぐ卸に発注できるかどうかまで、契約締結の情報だけで判断することはできません。

アイリーアBSはどのような薬?
アフリベルセプトのバイオシミラー
今回の製品は、アイリーアを先行バイオ医薬品とするアフリベルセプトのバイオシミラーです。一般名には「アフリベルセプト後続3」という表記が付きます。
バイオシミラーは、先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性、有効性を持つものとして開発される医薬品です。細胞などを利用して作られるバイオ医薬品の特性に合わせて評価され、通常のジェネリック医薬品とは承認上の区分も異なります。
患者さんへの説明では、専門用語を並べるより、「これまで使われてきたバイオ医薬品と、品質や効果、安全性が同等と評価された薬です」と伝えるほうが理解につながりやすいと思います。
「安いから効果が弱い」とは説明しない
バイオシミラーを案内するときに避けたいのが、価格の話だけで説明を終えることです。費用が変わる可能性に関心があっても、患者さんが本当に確かめたいのは「自分の目の治療を安心して続けられるか」かもしれません。
まず薬の位置づけを説明し、そのうえで、使用する製品や治療方針は眼科で相談する流れを共有します。「同じだから何も確認しなくてよい」という言い方も、「後から出た薬だから心配」という言い方も避け、患者さんが疑問を言葉にできる余地を残したいですね。
海外企業の製品であることだけを理由に、安全性を高く見積もったり低く見積もったりするのも適切ではありません。判断の出発点は、国内での承認内容と製品ごとの情報です。
対象は40mg/mL製剤|アイリーア8mgと混同しない
今回の販売契約の対象は40mg/mL製剤です。高濃度のアイリーア8mg製剤と同じものとして扱わないことが重要です。
| 比較項目 | 今回のアフリベルセプトBS「SCD」 | アイリーア8mg製剤 |
| 製剤濃度 | 40mg/mL | 114.3mg/mL |
| 1回投与量の位置づけ | 2mg/0.05mLの製剤 | 8mg/0.07mLの製剤 |
| 確認する情報 | 「SCD」の承認内容・製品情報 | 8mg製剤の電子添文 |
| 投与間隔 | 疾患・治療方針ごとに確認 | 疾患・治療方針ごとに確認 |
濃度と1回の投与量は、意味が違います。「40mg/mL」と書かれていても、1回に40mgを投与するという意味ではありません。同じ成分名が含まれていても、製剤濃度や投与液量を飛ばして理解すると、取り違えにつながります。
薬局で患者さんから「アイリーアを使っています」と聞いた場合は、名前だけで規格や投与間隔まで決めつけないことが大切です。確認できる範囲で、診療明細、治療説明書、お薬手帳の記載などを手がかりにします。
ここで示した数値は製剤を区別するための整理です。実際の投与は最新の電子添文と眼科医の判断に基づきます。8mg製剤の投与スケジュールを、そのまま今回のBSに当てはめることはできません。

発表された適応は3つ|先行品の適応をそのまま移さない
今回の第一三共エスファの発表には、次の効能・効果が記載されています。
- 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
- 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
- 病的近視における脈絡膜新生血管
ここで注意したいのが、先行品であるアイリーアの適応を、そのままBSにも当てはめないことです。今回のリリースの一覧には、糖尿病黄斑浮腫は含まれていません。
また、開発段階や申請時の資料と、販売時点の承認内容は分けて扱います。審査報告書に書かれた申請効能の一覧だけを見て、現在販売される製品の適応を断定しないようにしましょう。
糖尿病の薬を飲んでいることだけで眼科の病名を推定しない
薬局では、糖尿病治療薬が処方されている患者さんから、眼科の注射について相談を受けることがあります。そのとき、「糖尿病の薬を飲んでいるから、注射の対象も糖尿病黄斑浮腫だろう」と結びつけないことが大切です。
患者さんの背景と、眼科で治療している疾患は、別々に確認します。「何の病気で注射をしていますか」「説明書はありますか」と、本人が答えられる範囲で伺えば十分です。分からない情報は分からないまま記録し、必要な場面で医療機関に確認します。
製品名、規格、対象疾患。この3つを並べて確認する習慣が、同じ成分名を持つ製品の情報整理に役立ちます。
薬剤費と患者負担はどう変わる?
具体的な負担額は現時点で断定しない
バイオシミラーと聞くと、治療費がどのくらい下がるかが気になると思います。ただし、今回のリリースには本製品の薬価が掲載されていないため、この情報だけで差額を計算することはできません。
患者さんへの案内では、「薬価などが確認できた段階で、医療機関の窓口と具体的な負担額を確認しましょう」と伝えるのが現実的です。先行品の薬価に一定割合を掛けて、本製品の正式な価格のように示すことは避けます。
1回の薬剤費だけで通院全体を比較しない
費用の相談で整理したいのは、薬剤費、診察や検査を含む窓口負担、通院回数、交通費などです。これらを一緒にして「この薬のほうが必ずお得」と結論づけると、患者さんの実情から離れてしまいます。
仮に1回の薬剤費が下がっても、治療計画全体の負担を評価するには、投与回数や診療内容の確認が必要です。高額療養費などの制度について相談された場合も、加入する保険や所得区分などを踏まえ、医療機関の相談窓口や保険者につなぎます。
ここは本製品に特有の制度変更を示すものではなく、費用相談の進め方としての提案です。薬局で分かることと、窓口で試算が必要なことを整理しておくと、患者さんも次の行動を取りやすくなります。

保険薬局で確認したいこと
眼科で受ける注射も薬歴の聞き取りに含める
飲み薬と点眼薬だけを確認していると、医療機関で受けている注射の情報が抜けることがあります。「他院で注射や点滴を受けていますか」と、普段の聞き取りに加えてみるのも一つです。
眼科の注射治療が分かったら、薬の名前、最後に注射を受けた日、次の受診予定、最近気になる症状などを、必要に応じて確認します。すべてを一度に埋めるより、患者さんの相談に必要な情報から整理するほうが、負担を増やさず続けられます。
症状の相談では製品の説明より受診判断を優先する
硝子体内注射では、眼内炎などの重い眼障害への注意が必要です。先行品の電子添文では、眼痛、充血、羞明、霧視など、眼内炎を示唆する症状があれば直ちに連絡するよう指導することが求められています。
薬局で「注射のあとから目が痛い」「見え方が悪くなった」と相談された場合は、注射日や症状を確認し、治療を受けた眼科へ速やかに連絡するよう案内します。症状の原因を薬局で決めつけず、連絡先や診療時間も含めて行動につなげることが大切です。
患者さんが注射後の説明書を持っていれば、一緒に連絡方法を確認できます。目の症状について、薬局での気づきと眼科への連携を整理する視点は、ADCの眼毒性管理と薬局での確認点でも取り上げています。薬剤や副作用の機序は異なりますが、症状を拾い上げて必要な診療につなぐ姿勢は共通します。

点眼薬の使い方も本人の困りごとから確認する
眼科で処方された点眼薬がある場合は、用法や投与期間を確認します。「目薬は使えていますか」だけで終えるより、「どの目薬を、いつまで使う説明でしたか」と聞くと、認識のずれに気づけるかもしれません。
ただし、注射後の点眼内容は医療機関の指示に従います。薬局側で一律の点眼スケジュールを作ったり、余っている点眼薬の追加を勧めたりせず、処方内容と本人の理解を照らし合わせることを基本にします。
国内販売に向けて今後追いたい情報
販売準備が進むなかで、実務上は発売日、薬価、流通体制、最新の電子添文、製品ごとの取り扱い情報を確認したいところです。今回の契約は、安定供給と市場へのアクセス拡大を目指すものですが、目標が示されたことと、実際の供給実績が確認できることは分けて考えます。
医療機関で採用を検討する場合には、バイアルとキットの選択、製品の保管や準備、問い合わせ先なども確認項目になります。保険薬局では、まず患者さんから相談を受けたときに、確認先へつなげられるよう情報を持っておくことが役立ちます。
薬局内で共有するなら確認日を付ける
発売前後の情報は更新されるため、共有メモには確認日と出典を付けておくことをおすすめします。「未発表だった情報」が後から決まることもあります。古いメモを読み返した人が、現在も未定だと受け取らないようにするためです。
共有項目は、製品名、ニュースの内容、発売・薬価の確認状況、相談時の注意点程度でも十分です。情報を増やすことよりも、どこまで確定していて、次に何を確認するかが分かる形を目指します。
よくある質問
Q. アイリーアBS「SCD」は、もう発売されたの?
2026年11月2日の発表は独占販売・供給契約に関するものです。この発表には具体的な発売日の記載がなく、発売開始を示すニュースとしては扱いません。
Q. 普通のジェネリック医薬品と同じ?
先行品を踏まえて開発される点は共通しますが、バイオシミラーはバイオ医薬品の特性に応じた比較評価を受ける別の区分です。説明では、品質・安全性・有効性の同等性/同質性が評価される点を押さえます。
Q. アイリーア8mgの代わりとして考えてよい?
今回の対象は40mg/mL製剤です。8mg製剤とは濃度や1回の投与量が異なるため、同じスケジュールのまま使う製品として理解しないでください。治療の選択は眼科で相談します。
Q. 糖尿病黄斑浮腫にも使える?
今回の企業発表に記載された適応には含まれていません。先行品の適応や申請時の資料から推定せず、使用時点の最新の承認内容を確認する必要があります。
Q. 薬局で相談できることはある?
薬の情報整理、処方された点眼薬の使い方、治療継続で困っていることの相談などです。注射後の痛みや見え方の変化など、診察が必要な可能性のある相談は、治療先の眼科につなぎます。
しぐの実務メモ|名前が変わるときこそ説明のすり合わせを
今回のニュースは、眼科のバイオシミラーが国内で使われる体制を考えるうえで注目したい動きです。普段、薬局で直接扱わない注射薬であっても、患者さんの治療の一部として知っておく意味があります。
一方で、販売契約の発表だけで、発売日、価格、治療変更の可否までまとめて判断することはできません。「何が決まったのか」「どの製剤なのか」「どの病気に使うのか」を分けて確認する。この基本が、患者さんへの説明にもつながります。
薬が変わるという話には、期待だけでなく不安も伴います。まずは何を心配しているかを伺い、必要な情報を一緒に整理する。保険薬局としても、眼科での治療を途切れさせないための相談先でありたいですね。
眼科領域の記事は、眼科の記事一覧からもご覧いただけます。
参考資料
- 第一三共エスファ「サムチュンダン製薬との日本におけるバイオシミラーの独占販売・供給契約締結のお知らせ」(2026年11月2日):https://www.daiichisankyo-ep.co.jp/news/post-67.html
- 国立医薬品食品衛生研究所「バイオ後続品」:https://www.nihs.go.jp/dbcb/biosimilar.html
- PMDA「アフリベルセプトBS『SCD』審査報告書」(国立医薬品食品衛生研究所掲載。申請時の内容と販売時点の適応は区別):https://www.nihs.go.jp/dbcb/biosimilar_shinsahoukokusyo/Aflibercept_BS3.pdf
- 厚生労働省・臨床研究情報ポータルサイト「アイリーア硝子体内注射用キット40mg/mL」:https://rctportal.mhlw.go.jp/drug?id=00068687&sub=001
- バイエル薬品「アイリーア8mg硝子体内注射液114.3mg/mL 電子添文」(2026年3月改訂):https://pharma-navi.bayer.jp/sites/g/files/vrxlpx9646/files/2026-03/EYL8_MPI_20260323.pdf
※情報確認日:2026年11月4日。最新の承認内容・発売情報・電子添文をご確認ください。

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