
こんばんは、薬剤師のしぐです。
「ブリーバラセタムで、初回導入例の44%、レベチラセタムからの切り替え例の52%で発作が消失した」
てんかん治療に関する、気になる研究結果が報告されました。
ブリーバラセタムは、日本では「ブリィビアクト」という名前で使われている抗てんかん発作薬です。
今回注目したいのは、発作消失の割合だけではありません。前の治療による有害事象が、導入理由の7割を超えていたことです。
発作を抑えながら、日常生活を送りやすい治療を続ける。その両方を考えるうえで、どのような薬なのか整理します。
ブリーバラセタムとは?
ブリーバラセタムは、神経細胞にあるシナプス小胞たんぱく質2A「SV2A」に結合し、てんかん発作を抑える薬です。
SV2Aは、神経細胞同士の情報伝達に関わるたんぱく質です。ブリーバラセタムとSV2Aの結合が、発作を抑える作用に寄与すると考えられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | ブリーバラセタム(BRV) |
| 商品名 | ブリィビアクト |
| 内服薬の規格 | 錠25mg・錠50mg |
| 国内の効能・効果 | てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む) |
| 成人の通常用量 | 1日合計50mgを、1日2回に分けて服用 |
| 用量調整 | 症状に応じて増減し、1日200mgを超えない |
| 国内販売開始 | 2024年8月 |
用量で混同したくないのは、「1日50mg」と「1回50mg」の違いです。
通常用量の1日50mgは、1回25mgを1日2回ということ。処方ごとの1回量と1日量を分けて確認します。
なお、ここでいう二次性全般化発作は、脳の一部から始まった発作が両側に広がるものです。「全般てんかんなら、どの発作にも国内承認されている」という意味ではありません。

レベチラセタムとの違いは?
レベチラセタムもSV2Aに結合する薬です。
ブリーバラセタムは、同じ標的に作用する別の有効成分で、レベチラセタムのジェネリックではありません。
ブリーバラセタムにはSV2Aへの高い親和性があります。ただし、結合の強さを、そのまま「臨床効果が何倍も強い」と読み替えることはできません。
また、両薬のmg数はそのまま置き換えられません。
切り替え方は、発作の状態、現在の用量、副作用、併用薬などを踏まえて医師が決めます。患者さんが自己判断で切り替えたり、中止したりしないことが大切です。
以前、メーカーさんの勉強会に参加させていただいた際、
「ブリィビアクトはスーパーイーケプラと言っても過言ではない医薬品です!!」
と、紹介していたのを覚えています。


発作消失44%・52%は、どのような研究の結果?
ドイツの単施設で、ブリーバラセタム単剤療法を受けた157例を後ろ向きに調べた研究です。
導入経路は、初回導入16例、多剤療法からの減薬30例、レベチラセタムからの切り替え98例、その他の薬からの切り替え13例でした。
| 対象 | 導入6カ月時の発作消失 |
|---|---|
| 初回導入群 | 43.8%(7/16例) |
| レベチラセタム単剤からの切り替え群 | 52.0%(51/98例) |
前治療の有害事象が導入理由だったのは、全体の73.2%です。
レベチラセタムからの切り替え群では、79.6%に既存の有害事象の改善が報告されました。
一方、研究全体の単剤療法継続率は、6カ月時64%から24カ月時29%へ低下しました。
この「単剤療法の終了」には、ブリーバラセタムを続けながら他剤を追加した場合も含まれます。
数字だけで「レベチラセタムより優れる」とは言えない
今回の研究には、レベチラセタムを続けた患者さんとの無作為化比較がありません。初回導入群も16例と少数です。
治療歴や切り替え理由が異なるため、44%と52%を比べて「切り替えた方が効く」と結論づけることはできません。
また、発作消失は、その後ずっと発作が起きないことや、薬をやめられることを保証する数字ではありません。
臨床での可能性を示す結果として受け止め、長期の効果と治療の続けやすさを確認していく必要があります。
注意したい副作用と飲み合わせ
ブリーバラセタムでも、眠気やめまい、精神症状などが起こることがあります。
| 確認したい症状 | 生活場面での聞き取り例 |
|---|---|
| 眠気・めまい | 日中に寝込む、立ち上がるとふらつく、転びそうになる |
| 気分・行動の変化 | 怒りっぽくなる、落ち着かない、気分が強く落ち込む |
| 睡眠の変化 | 寝つけない、夜中に目が覚める |
| 悪心・食欲低下 | 食事量が落ちる、服薬を続けにくい |
電子添文では、重大な副作用として攻撃性が挙げられています。
本人だけでなく、家族が気づいた変化も大切な情報です。自傷をほのめかす言動や安全を保てない状態があれば、速やかに医療機関へ連絡します。
眠気やめまいがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないよう説明します。「発作がなくなったから運転してよい」と自己判断しないことも必要です。
飲み合わせでは、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシンなどに注意します。
飲酒によって注意力や記憶などの機能低下が強まるおそれもあります。肝機能障害、妊娠・授乳についても、事前に医師・薬剤師へ伝えてください。
薬局では「何を改善するための切り替えか」を確認する
今回の報告から実務で意識したいのは、切り替えの目的を把握することです。
発作が残っているのか。眠気で仕事や学校生活に支障があるのか。イライラや気分の変化に困っているのか。
目的が分かると、次回来局時に確認する内容も具体的になります。
| 確認項目 | 薬局で押さえたい内容 |
|---|---|
| 導入・変更の目的 | 発作、眠気、気分・行動、服薬負担のどれが課題か |
| 切り替え手順 | 前の薬をいつまで飲み、新しい薬をいつ開始するか |
| 服用量 | 規格、1回量、1日量、服用回数が一致しているか |
| 発作の変化 | 回数だけでなく、持続時間、意識、転倒やけがの有無 |
| 生活への影響 | 日中の活動、睡眠、通学・仕事、家族の気づき |
| 服薬状況 | 飲み忘れ、残薬、自己調整、旧薬の重複服用 |
| 併用薬・飲酒 | 他院の薬、市販薬、飲酒状況 |
「発作はどうですか?」に加えて、**「前の薬で困っていたことは、今どうですか?」**と聞く。
その一言が、治療の続けやすさを確かめるきっかけになります。

静注製剤もあるが、家庭で使うレスキュー薬ではない
ブリィビアクトには静注25mgもあります。
国内では、一時的に口から服用できない患者さんで、経口製剤の代わりとして使う位置づけです。
家庭や学校で発作が起きたときに介助者が使う、点鼻薬や口腔用液などのレスキュー薬とは役割が異なります。
日々の治療と、発作時の対応をそれぞれ確認しておきたいですね。

よくある質問
ブリィビアクトは単剤でも使える?
日本の錠剤の効能・効果は、他剤との併用に限定されていません。単剤か併用かは、発作の状態や治療歴に応じて医師が判断します。
レベチラセタムで副作用があれば、必ず改善する?
必ず改善するわけではありません。切り替え後も眠気や精神症状などを確認し、症状が続く場合や悪化する場合は医師・薬剤師に相談してください。
発作がなくなったら薬をやめてもいい?
自己判断でやめないでください。急な減量・中止で発作が悪化したり、てんかん重積状態が起きたりすることがあります。
飲み忘れたら2回分をまとめて飲む?
2回分をまとめて飲まないでください。対応は薬の説明書を確認し、次の服用時刻が近い場合など、判断に迷ったら薬局へ相談してください。
まとめ
ブリーバラセタムは、SV2Aに作用する抗てんかん発作薬です。
今回の研究は、発作の抑制と、前治療で困っていた有害事象の改善という両面から注目できます。
ただし、44%・52%は限られた集団の6カ月時の結果です。薬の優劣や、すべての患者さんへの効果を示す数字ではありません。
薬局で大切にしたいのは、発作の回数とともに、患者さんが毎日の生活を送りやすくなったかを確かめること。
効果と生活の両方を見ながら、安心して治療を続けられるよう支えていきたいですね。


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