零売裁判、薬局側が敗訴|東京地裁が請求を全面棄却!処方箋なしの医療用医薬品販売はどうなる?【2026年9月18日】

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零売裁判で東京地裁が薬局側の請求を棄却したニュースを表すイメージ

薬剤師のしぐです。

処方箋がなくても、一部の医療用医薬品を薬剤師の判断で販売する「零売(れいばい)」。

その規制をめぐり、零売薬局を運営する3社が国を訴えていた裁判で、2026年9月18日、東京地方裁判所は原告側の請求をすべて棄却しました。

つまり、今回の第一審では薬局側の主張は認められなかった、ということです。

零売には安全性や受診機会の逸失といった課題があります。一方で、仕事や育児で受診できない人、いつもの薬が切れて困っている人など、実際に助けられてきた人もいたはずです。

ゴールデンウィークやシルバーウィーク、年末年始やお盆期間等、多くのタイミングで助けられた方も多いかと思います。

だからこそ、個人的には今回の結果を単純に「規制されて当然」と片づけることはできません。

助かっている人もいると思うけど……結果的には認められなくて残念。

今回は、零売裁判で何が争われ、東京地裁がどのような結論を出したのか、そして処方箋なしの医療用医薬品販売が今後どうなるのかを、薬局薬剤師の目線で整理します。

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まず結論|零売薬局3社の請求はすべて棄却

2026年9月18日の報道によると、東京地裁の角谷昌毅裁判長は、原告側の請求をすべて棄却しました。

原告は、零売薬局を運営する次の3社です。

  • 長澤薬品(東京都豊島区)
  • まゆみ薬局(福岡市博多区)
  • GrandHealth(東京都台東区)

3社が国に対して確認を求めていたのは、主に次の点です。

  • 処方箋なしで「零売薬」を販売できる地位
  • 零売薬を広告できる地位
  • 「処方箋なしで買える」「病院に行かなくても買える」といった表現で広告できる地位
  • 国の不当な規制によって生じたとする損害への国家賠償

しかし、東京地裁はこれらをすべて退けました。

現時点で公開報道から確認できるのは「請求の全面棄却」という結論が中心です。判決理由の詳細が十分に明らかになるまでは、裁判所が個々の論点をどう判断したのかを断定しないことも大切です。

参考:「“零売”裁判」原告側の請求をすべて棄却/東京地裁(ドラビズ on-line)

そもそも零売とは?

零売とは本来、医薬品を包装単位のままではなく、必要な数量に分けて販売する「分割販売」を指す言葉です。

一般には、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を、処方箋なしで薬局が販売することが「零売」と呼ばれています。

ここで重要なのは、「医療用医薬品なら何でも処方箋なしで買える」という制度ではないことです。

医療用医薬品には、大きく分けて次の2つがあります。

区分処方箋なしの販売
処方箋医薬品原則として不可
処方箋医薬品以外の医療用医薬品従来から処方箋に基づく交付が原則。例外的な販売が問題となってきた

零売で扱われてきたのは後者です。ただし、処方箋医薬品ではないからといって、一般用医薬品、いわゆるOTC医薬品と同じように自由に販売できるわけではありません。

医療用医薬品は、医師の診断と処方を前提として承認されているものが多く、用量調整、禁忌、相互作用、副作用の評価には医療的な判断が必要です。

なぜ裁判になったのか?

厚生労働省は2005年の通知で、処方箋医薬品以外の医療用医薬品についても、処方箋に基づく販売を原則とし、処方箋なしでの販売は「やむを得ない場合」に限定する考え方を示してきました。

その後、零売を日常的な販売形態とする薬局が登場し、「やむを得ない場合」の解釈や広告のあり方が問題になります。

2022年には厚生労働省が販売方法を再周知。原告側は、こうした通知が事実上の規制として働き、営業や医薬品の仕入れに影響を与えたと主張しました。

一方、国側は、通知は自治体に対する技術的助言であり、それ自体が薬局の権利や義務を直接変えるものではないと反論していました。

つまり裁判では、零売の是非だけでなく、厚労省通知が薬局の権利を侵害するほどの法的・事実上の拘束力を持つのかも大きな争点になっていました。

参考:零売裁判、権利侵害争点に―原告と被告の主張平行線(薬事日報)

処方箋医薬品と零売対象となってきた医療用医薬品の線引きを表すイメージ

「全面棄却」で零売は今日からすべて違法になる?

結論からいうと、今回の判決だけを根拠に「2026年9月18日から、あらゆる零売が一律に違法になった」と表現するのは正確ではありません。

今回の裁判は、原告3社が国に対して求めた地位確認と国家賠償について、東京地裁が請求を認めなかったものです。

刑事事件で零売そのものに有罪判決が出たわけでも、すべての医療用医薬品について例外なく処方箋なし販売が禁止されたと新たに宣言されたわけでもありません。

ただし、実務上の意味は小さくありません。

薬局側が求めた「処方箋なしで販売できる地位」や、積極的な広告表現を使える地位が第一審で認められなかったため、零売を通常のビジネスモデルとして広く展開することは、これまで以上に難しくなったと考えられます。

さらに、2025年5月21日に公布された改正薬機法では、処方箋医薬品以外の医療用医薬品についても、処方箋に基づく販売を原則とする枠組みが法律上明確化されました。

今後は、改正法の施行時期、例外となる「やむを得ない場合」の具体的要件、省令・通知の内容を確認する必要があります。

参考:零売薬局とは?原則禁止の背景と2026年時点の制度(薬事日報)

零売が助けてきた人も、確かにいると思う

零売には、医師の診断を経ずに医療用医薬品を使用するリスクがあります。

  • 症状の裏に別の病気が隠れている
  • 以前と同じ症状に見えても治療が合わない
  • 腎機能や肝機能、妊娠、併用薬によって安全性が変わる
  • 薬で症状だけを抑え、受診が遅れる
  • 長期使用による副作用を見逃す

こうした問題を考えれば、医療用医薬品は診察と処方箋を基本とする、という方向性には理由があります。

それでも、零売を必要としてきた人の事情まで否定することはできません。

「仕事を休めず、診療時間に間に合わない」

「子育てや介護で、自分の受診を後回しにしてしまう」

「連休中に、いつも使っている薬が切れてしまった」

「受診先が遠く、予約もすぐに取れない」

そのような場面で、薬剤師が服薬歴や症状を確認し、必要最小限を販売することで助かった人は、きっといると思います。

もちろん、便利だから医療用医薬品を自由に売ってよい、という話ではありません。しかし、零売を規制するだけで終われば、その隙間で困っていた人は再び行き場を失います。

今回の判決は、薬局側にとって厳しい結果でした。

そして一人の薬剤師としては、安全性を守りながら医薬品へのアクセスを支える道が、司法の場で認められなかったことを残念に感じます。

受診できない患者と医薬品アクセスの隙間を表すイメージ

今後、薬局と患者はどうなる?

零売薬局は従来どおりの営業を続けにくくなる

今回の判決と改正薬機法の流れを踏まえると、「処方箋なしで病院の薬が買える」ことを前面に出した営業や広告は、さらに難しくなるでしょう。

ただし、原告側が控訴する可能性もあり、今回の東京地裁判決だけで裁判が最終確定したとは限りません。今後の発表を待つ必要があります。

例外的な販売の具体的要件が重要になる

災害、感染症流行、医療機関へのアクセスが著しく困難な状況など、保健衛生上の問題を避けるために例外的対応が必要な場面はあります。

どこまでが「やむを得ない場合」なのか。誰が、何を確認し、どの量まで販売できるのか。記録や受診勧奨をどうするのか。

制度を実効性のあるものにするには、現場が迷わない具体的なルールが不可欠です。

受診しやすい仕組みとのセットが必要

零売を狭めるなら、その代わりに患者が医療からこぼれ落ちない仕組みも必要です。

  • オンライン診療とオンライン服薬指導
  • 夜間・休日診療へのアクセス改善
  • リフィル処方箋の適切な活用
  • 長期処方中のフォローアップ
  • OTC医薬品への適切なスイッチと薬剤師によるトリアージ
  • 災害・連休・薬切れ時の緊急対応ルール

「処方箋がないから売れません」で終わるのではなく、受診につなぐ、OTCを提案する、緊急性を判断する。ここは、これからの薬局薬剤師に一層求められる役割だと思います。

薬局薬剤師として思うこと

医療用医薬品を安全に使用するために、診断と処方箋が重要であることは間違いありません。

一方で、制度どおりに受診できる人ばかりではないのも現実です。

零売が担ってきたのは、単なる「処方箋なし販売」ではなく、現在の医療制度が拾いきれなかったニーズの一部だったのではないでしょうか。

今回、薬局側の請求は全面的に棄却されました。

安全性のための規制は必要です。しかし、零売を必要とした患者さんの存在まで見えなくなってはいけません。

助かっている人もいると思うけど……結果的には認められなくて残念。

だからこそ今後は、「零売を認めるか、禁止するか」という二者択一ではなく、薬剤師の判断と記録、販売日数の上限、医療機関との連携、受診勧奨などを組み合わせた、安全なアクセスの仕組みを議論してほしいと思います。

まとめ

  • 2026年9月18日、東京地裁は零売薬局3社の請求をすべて棄却した
  • 原告は、処方箋なしで販売できる地位、広告できる地位、国家賠償などを求めていた
  • 今回の判決だけで「あらゆる零売が当日から一律違法になった」とするのは正確ではない
  • ただし、零売を通常の営業モデルとして展開することは、さらに難しくなると考えられる
  • 2025年公布の改正薬機法と、今後示される省令・例外要件の確認が必要
  • 規制だけでなく、オンライン診療、リフィル処方箋、OTC、緊急対応など、患者のアクセスを守る仕組みも必要

零売の安全性に課題があることは事実です。

しかし同時に、零売によって救われた生活や、受診できずに困っていた人がいたことも忘れたくありません。

今回の敗訴を終点にするのではなく、安全性と医薬品アクセスを両立する次の制度設計につながることを期待したいです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 零売とは何ですか?

一般には、処方箋医薬品以外の医療用医薬品を、処方箋なしで薬局が販売することを指します。医療用医薬品なら何でも販売できる制度ではありません。

Q2. 東京地裁の判決内容は?

2026年9月18日、東京地裁は、零売薬局を運営する3社が求めた販売・広告に関する地位確認や国家賠償などの請求をすべて棄却しました。

Q3. この判決で零売は全面禁止になったのですか?

この判決だけで、あらゆる処方箋なし販売が同日から一律に禁止されたと考えるのは正確ではありません。ただし、薬局側が主張した販売・広告上の地位は第一審で認められず、改正薬機法も含めて零売を通常業態として行うことは厳しくなる方向です。

Q4. 処方箋医薬品以外なら自由に買えますか?

いいえ。処方箋医薬品以外の医療用医薬品も処方箋に基づく販売が原則です。一般用医薬品と同じ扱いではありません。

Q5. 薬が切れたときはどうすればいいですか?

まず、かかりつけ医療機関や薬局に相談してください。休日・夜間診療、オンライン診療、地域の相談窓口が利用できる場合があります。自己判断で他人の薬を使用したり、個人輸入品に頼ったりするのは避けましょう。

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