エプキンリ+R²療法、濾胞性リンパ腫の二次治療へ|効果・副作用と薬局フォロー

薬剤師のしぐです。
濾胞性リンパ腫の治療で、また大きな動きです。
CD3×CD20二重特異性抗体「エプキンリ(一般名:エプコリタマブ)」に、R²療法を組み合わせる治療が、再発・難治性濾胞性リンパ腫の二次治療以降へ前進しました。
R²療法は「リツキシマブ+レナリドミド」の化学療法を用いない組み合わせです。ここへT細胞を腫瘍細胞へ近づけるエプキンリを追加することで、EPCORE FL-1試験ではR²療法単独に対して病勢進行または死亡リスクを79%低下させました。
ただし、効果が高いぶん、感染症、好中球減少、サイトカイン放出症候群(CRS)などへの注意は欠かせません。さらにレナリドミドは院外処方される可能性があり、保険薬局もこの治療を「注射薬は病院、飲み薬は薬局」と分けて考えないことが重要です。
今回は、エプキンリ+R²療法の内容、EPCORE FL-1試験の結果、海外での位置づけ、日本で考える際の注意点、保険薬局で確認したい副作用までまとめます。
この記事のポイント
- エプキンリ+R²療法が再発・難治性濾胞性リンパ腫の二次治療以降へ
- 第III相EPCORE FL-1試験で、R²療法単独よりPFSを大きく改善
- エプキンリは皮下注、レナリドミドは経口薬、リツキシマブは抗CD20抗体
- 感染症、血球減少、CRS、神経症状、血栓症、皮疹などを多面的に確認
- 海外承認と日本国内の承認・適応は分けて確認する必要がある
エプキンリ+R²療法とは
エプキンリ+R²療法は、次の3剤を組み合わせる治療です。

| 薬剤 | 一般名 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| エプキンリ皮下注 | エプコリタマブ | CD3×CD20二重特異性抗体。T細胞とCD20陽性B細胞を近づけ、腫瘍細胞への免疫反応を促す |
| リツキサンなど | リツキシマブ | CD20を標的とする抗体薬 |
| レブラミド | レナリドミド | 免疫調節作用などを持つ経口抗悪性腫瘍薬 |
R²の「R」はリツキシマブ、「²」はリツキシマブとレナリドミドの2剤を示す呼び方です。
エプキンリを追加すると、CD20を標的とする治療と免疫調節作用を組み合わせ、T細胞による抗腫瘍効果をさらに引き出すことが期待されます。
濾胞性リンパ腫とは
濾胞性リンパ腫は、B細胞由来の非ホジキンリンパ腫の一つです。一般に進行が比較的ゆっくりな「低悪性度リンパ腫」に分類されますが、再発を繰り返すことがあり、早期再発や組織学的形質転換にも注意が必要です。
初回治療後24か月以内に病勢進行する「POD24」は予後不良因子として知られています。そのため、再発時に深く持続する奏効を得られる治療選択肢を増やすことには大きな意味があります。
なぜ「二次治療へ」が大きなニュースなのか
エプキンリは、すでに複数の治療歴を持つ再発・難治性濾胞性リンパ腫で使われてきた薬剤です。
今回のポイントは、R²療法との併用により、1つ以上の前治療歴を持つ患者、つまり二次治療以降へ治療機会が前倒しされたことです。
濾胞性リンパ腫では、治療を重ねるほど奏効期間が短くなる患者もいます。より早い治療ラインから高い完全奏効率を狙える選択肢が加わることは、治療戦略全体を変える可能性があります。
なお、海外での承認内容を日本国内でそのまま適用できるわけではありません。日本では最新の添付文書、承認条件、保険適用、施設要件を必ず確認してください。
根拠となったEPCORE FL-1試験

EPCORE FL-1は、再発・難治性のCD20陽性濾胞性リンパ腫を対象に、エプキンリ+R²療法とR²療法単独を比較した国際共同第III相試験です。
- 対象:1つ以上の前治療歴がある再発・難治性濾胞性リンパ腫
- 患者数:488例
- 比較:エプキンリ+R²療法 対 R²療法
- エプキンリを含む治療は固定期間で実施
病勢進行または死亡リスクを79%低下
主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)では、エプキンリ+R²療法がR²療法単独に対して、病勢進行または死亡リスクを79%低下させました(ハザード比0.21)。
単に腫瘍が一時的に小さくなったというだけではなく、「病気を抑えている期間」を大きく延ばした結果です。
奏効率・完全奏効率も改善
試験では、エプキンリ+R²療法で全奏効率と完全奏効率も高く、R²療法単独を上回りました。特に完全奏効率の改善は、再発を繰り返しやすい濾胞性リンパ腫において注目したい結果です。
一方、全生存期間については観察期間や後治療の影響も受けます。PFSの改善だけで「治癒できる」「必ず長く生きられる」と表現しないことも大切です。
エプキンリ+R²療法で注意したい副作用
1.感染症
3剤はいずれも免疫機能へ影響するため、感染症は最重要の確認項目です。肺炎、新型コロナウイルス感染症、帯状疱疹、CMV感染などが問題になる可能性があります。
発熱だけでなく、咳、息苦しさ、強いだるさ、排尿時痛、皮膚の痛みを伴う発疹なども確認します。発熱を「CRSだろう」と決めつけず、感染症との鑑別を急ぐ必要があります。
2.好中球減少などの血球減少
好中球減少、リンパ球減少、貧血、血小板減少がみられます。
保険薬局では検査値が見えないこともありますが、「次の診察まで様子を見る」では危険な発熱もあります。患者ごとに、何度以上の発熱で、どこへ連絡するのかを事前に確認しておきたいところです。
3.サイトカイン放出症候群(CRS)
CRSはエプキンリで特に注意する副作用です。発熱、悪寒、血圧低下、頻脈、低酸素、息苦しさなどが現れます。ステップアップ投与や前投薬、投与後観察などにより管理されますが、投与後の発熱は自己判断で解熱薬だけを使用せず、指示された医療機関へ連絡する必要があります。
4.ICANSなどの神経症状
頻度は高くなくても、意識の変化、会話がかみ合わない、文字が書けない、強い眠気、ふらつき、けいれんなどは緊急性の高いサインです。
薬局での電話フォローでは、本人だけでなく家族から「いつもと違う」と感じる変化がないかを聞くことが重要です。

5.レナリドミドによる血栓症・皮疹・催奇形性
レナリドミドでは、深部静脈血栓症や肺塞栓症、皮疹、血球減少などに注意します。
片脚だけの腫れ・痛み、突然の胸痛、息苦しさは血栓症を疑う症状です。また、催奇形性リスクがあるため、RevMateに基づく適正管理、妊娠回避、薬剤の共有禁止、残薬の適切な取り扱いを徹底します。
保険薬局で確認したいフォローアップ項目

エプキンリとリツキシマブは医療機関で投与されても、レナリドミドや支持療法薬は院外処方される可能性があります。処方箋に見える薬だけで判断せず、レジメン全体を把握することが重要です。
服薬指導時の確認
- エプキンリ、リツキシマブの直近投与日
- レナリドミドの服用日と休薬日
- ステロイド、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬など前投薬の指示
- 抗ウイルス薬、ST合剤など感染予防薬の有無
- 血栓予防薬の有無と出血症状
- RevMateの手順と遵守状況
- 飲み忘れ時の対応を自己判断せず確認できる連絡先
調剤後フォローで聞きたいこと
| 確認項目 | 具体的な聞き方・対応 |
|---|---|
| 発熱・悪寒 | 体温、発症時刻、エプキンリ投与からの時間を確認。CRSと感染症の双方を考える |
| 呼吸器症状 | 咳、痰、息苦しさ、胸痛、SpO2が分かれば確認 |
| 神経症状 | 会話、見当識、書字、強い眠気、ふらつき、けいれんを確認 |
| 感染兆候 | 咽頭痛、排尿時痛、帯状疱疹様の皮疹などを確認 |
| 血球減少 | 強い倦怠感、息切れ、出血、あざ、発熱を確認 |
| 血栓症 | 片脚の腫れ・痛み、突然の胸痛・呼吸困難を確認 |
| 皮疹 | 範囲、粘膜症状、水疱、発熱の併存を確認 |
| 服薬状況 | レナリドミドの服用日・休薬日、予防薬を含めた残薬を確認 |
異常を認めた際は、緊急性を判断して速やかに治療施設へ情報提供します。レジメン確認と調剤後フォローの考え方は、コチラも確認してください。

エプキンリ+R²療法の今後
エプキンリ+R²療法は、従来より早い治療ラインで、化学療法を用いない固定期間治療という新たな選択肢を示しました。
一方で、「化学療法ではない=副作用が軽い」とは限りません。免疫を動かす治療ならではのCRSや神経症状、3剤併用による感染症・血球減少、レナリドミドによる血栓症や催奇形性管理が重なります。
効果の大きさだけでなく、通院回数、患者・家族の理解、感染予防、治療施設との連携まで含めて安全性を支える必要があります。
保険薬局でも、レナリドミドの服薬管理を入口にレジメン全体を把握し、発熱、感染兆候、神経症状、血栓症を継続して確認する役割が、これまで以上に重要になりそうです。
よくある質問
エプキンリ+R²療法の「R²」とは何ですか?
リツキシマブ(R)とレナリドミドを組み合わせた治療です。R-squared、アールスクエア療法などと呼ばれます。
エプキンリは飲み薬ですか?
いいえ。エプキンリは皮下注射薬です。R²療法に含まれるレナリドミドが経口薬です。
どの治療ラインが対象ですか?
海外で承認された併用療法は、1つ以上の前治療歴を持つ再発・難治性濾胞性リンパ腫、つまり二次治療以降が対象です。日本国内では最新の承認内容と添付文書を必ず確認してください。
最も注意したい副作用は何ですか?
感染症、好中球減少などの血球減少、CRS、神経症状に加え、レナリドミドによる血栓症、皮疹、催奇形性管理が重要です。
発熱したら解熱薬を飲んで様子を見てもよいですか?
自己判断は避けてください。CRSと感染症のどちらも考えられ、好中球減少時の発熱は緊急性があります。治療施設から示された連絡基準に従って、速やかに相談してください。


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