S-1(エスワン)の休薬期間は?腎機能・飲み忘れ・副作用を薬局薬剤師が解説

「エスワンを4週間飲んで、そのあと2週間休んでください」
S-1(エスワン)の服薬指導では、このように説明する場面が多いと思います。
しかし、S-1の服用・休薬スケジュールは、がん種や併用する抗がん剤、患者さんの状態によって異なります。
さらに、保険薬局では処方箋に記載された錠数だけでなく、
- 今回は何日間服用するのか
- 休薬期間はどのくらいか
- 腎機能が低下していないか
- 下痢や口内炎が続いていないか
- 他のフッ化ピリミジン系薬が処方されていないか
といった点まで確認する必要があります。
今回は、S-1(エスワン/ティーエスワン)の成分や作用、基本的な飲み方、休薬期間、腎機能、副作用、保険薬局でのフォローアップについて、薬剤師目線で整理します。
※治療スケジュールや休薬・減量基準は、がん種、レジメン、患者さんの状態によって異なります。実際の対応は、処方元医療機関の指示やレジメンを優先してください。
S-1(エスワン)とは?
S-1は、フッ化ピリミジン系に分類される経口抗がん剤です。
一般的には「エスワン」と呼ばれることが多く、先発医薬品の商品名は「ティーエスワン」です。
S-1には、次の3成分が配合されています。
| 成分 | 主な役割 |
|---|---|
| テガフール | 体内で5-FUに変換され、抗腫瘍効果を示す |
| ギメラシル | 5-FUの分解を抑えて、作用を持続させる |
| オテラシルカリウム | 消化管での5-FUの作用を抑え、消化器毒性を軽減する |
3成分は、テガフール:ギメラシル:オテラシルカリウム=1:0.4:1のモル比で配合されています。
単にテガフールを内服するのではなく、5-FUの効果を保ちながら消化器毒性を軽減するよう設計された薬剤です。

S-1は、どのようながんに使われる?
S-1は、次のようながんに使用されます。
- 胃がん
- 結腸・直腸がん
- 頭頸部がん
- 非小細胞肺がん
- 手術不能または再発乳がん
- 膵がん
- 胆道がん
ただし、同じS-1でも、がん種や治療目的によって位置づけが異なります。
例えば胃がんでは、術後補助療法として使用される場合もあれば、切除不能・再発例で他の抗がん剤と併用される場合もあります。
したがって保険薬局では、S-1が処方されていることだけでなく、可能であれば、
- 対象となるがん種
- 術後補助療法か、進行・再発治療か
- 単剤か、他剤との併用か
- 何コース目か
まで把握できると、その後の副作用確認が行いやすくなります。

S-1の基本的な服用量
単剤投与における一般的な初回基準量は、体表面積に応じて設定されます。
| 体表面積 | 1回量 | 1日量 |
|---|---|---|
| 1.25㎡未満 | 40mg | 80mg |
| 1.25㎡以上1.5㎡未満 | 50mg | 100mg |
| 1.5㎡以上 | 60mg | 120mg |
通常は、朝食後と夕食後の1日2回服用します。
ただし、腎機能、肝機能、骨髄機能、年齢、全身状態、過去の副作用などを考慮して、開始時から減量される場合があります。
後発医薬品では「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合錠」などと表示されるため、患者さんが「いつものエスワンと名前が違う」と戸惑うこともあります。
薬局では、3成分を含むS-1の後発医薬品であることを説明すると安心につながります。
S-1の休薬期間は?
S-1単剤療法では、一般的に次のスケジュールが用いられます。
- 28日間連日服用
- その後14日間休薬
- 合計42日間を1コース
いわゆる「4週間服用・2週間休薬」です。
しかし、すべてのS-1処方がこのスケジュールになるわけではありません。
治療法によっては、
- 2週間服用・1週間休薬
- 2週間服用・2週間休薬
- 3週間服用・2週間休薬
- 隔日投与
- 他の抗がん剤の投与日に合わせたスケジュール
などが用いられる場合があります。
薬局で「4週2休」と決めつけない
S-1が14日分処方されていたとしても、単純に処方日数だけから誤りと判断することはできません。
確認したいのは、次の3点です。
- 今回の服用開始日
- 今回の服用終了日
- 次回受診日または休薬終了日
患者さんが持参した服薬カレンダーや治療日記、病院から交付された説明書があれば、処方内容と照合します。

腎機能低下時に注意する理由
S-1の服薬指導で、薬剤師が特に意識したいのが腎機能です。
配合成分のギメラシルは、主として腎臓から排泄されます。
腎機能が低下するとギメラシルの排泄が遅れ、5-FUの分解が強く抑制されることで、5-FUの血中濃度が上昇する可能性があります。
その結果、
- 骨髄抑制
- 下痢
- 口内炎
- 食欲不振
- 悪心・嘔吐
などの副作用が強く現れるおそれがあります。
eGFRだけで判断しない
S-1の投与量を検討する際には、クレアチニンクリアランスが用いられることがあります。
高齢者や筋肉量が少ない患者さんでは、血清クレアチニン値が一見正常でも、実際の腎機能が低下している可能性があります。
保険薬局では投与量を独自に変更するのではなく、
- 最近の血清クレアチニン値
- eGFRやクレアチニンクリアランス
- 前回からの用量変更
- 脱水につながる下痢や嘔吐
- NSAIDsなど併用薬の追加
を確認し、必要に応じて処方元へ情報提供します。

S-1を飲み忘れたときは?
S-1を飲み忘れた場合は、一般的に忘れた分を飛ばし、次回から通常どおり服用します。
一度に2回分を服用してはいけません。
服用後に吐いてしまった場合
服用後に嘔吐した場合も、自己判断で追加服用しないことが基本です。
薬がどの程度吸収されたかを正確に判断できず、追加服用によって過量になる可能性があるためです。
患者さんには、
「飲み忘れや嘔吐があっても、自己判断でもう一度飲まず、記録して次回の確認時に伝えてください」
と説明しておくと分かりやすいと思います。

ただし、病院から個別の指示が出ている場合は、その指示を優先します。
S-1で注意したい主な副作用
骨髄抑制
白血球、好中球、赤血球、血小板が減少することがあります。
確認したい症状は、
- 発熱
- 悪寒
- 強い倦怠感
- 息切れ
- めまい
- 鼻血
- 歯ぐきからの出血
- あざが増える
などです。
特に発熱がある場合は、次回受診日まで待たず、病院へ連絡する必要があります。
下痢
S-1による下痢は、脱水や腎機能悪化を招き、さらにS-1の毒性を強める悪循環につながる可能性があります。
薬局では単に「下痢はありますか?」と聞くだけでなく、
- 1日何回か
- 普段より何回増えたか
- 夜間にも起きるか
- 水分を摂れているか
- 食事ができているか
- 下痢止めを使用したか
- 尿量が減っていないか
まで確認したいところです。
口内炎
口内炎によって食事や水分摂取が難しくなると、治療継続にも影響します。
痛みの有無だけでなく、
- 食事量が低下していないか
- 水分が摂れているか
- 口腔内に白い苔状の付着がないか
- 義歯が当たっていないか
なども確認します。
悪心・食欲不振
食欲不振が続く場合は、体重減少や脱水の有無も確認します。
制吐薬が処方されていても、服用方法を理解できていなかったり、症状が出てからではなく予防的に飲む薬を使えていなかったりすることがあります。

流涙・眼症状
S-1では、流涙、目のかすみ、目の痛みなどの眼症状が現れることがあります。
涙道障害が進行すると対応が難しくなる場合があるため、症状を軽く扱わず、早めの眼科相談につなげることが重要です。
間質性肺炎
頻度は高くありませんが、間質性肺炎にも注意します。
- 息苦しさ
- 乾いた咳
- 発熱
- 階段で息切れする
- 以前より歩くのがつらい
などがあれば、速やかな医療機関への連絡が必要です。
他のフッ化ピリミジン系薬との併用は禁忌
S-1は、他のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬やフルシトシンとの併用が禁忌です。
代表的な薬剤には、
- 5-FU
- カペシタビン
- テガフール・ウラシル
- テガフール製剤
- ドキシフルリジン
- カルモフール
- フルシトシン
などがあります。
併用によって5-FUの作用が過度に増強され、重篤な血液障害や消化管障害が現れるおそれがあります。
処方箋が別の医療機関から発行されている場合や、抗がん剤が院内処方になっている場合は、薬局の併用薬一覧だけでは把握できないことがあります。
お薬手帳、病院の治療計画書、患者さんへの聞き取りを組み合わせて確認することが大切です。
また、他のフッ化ピリミジン系薬からS-1へ切り替える場合や、S-1終了後に別薬へ変更する場合は、投与間隔の確認が必要です。
保険薬局で確認したい10項目
S-1(エスワン)の処方を受け付けたときは、次の項目を確認します。
- がん種と治療目的
- 単剤か併用療法か
- 1回量と1日服用回数
- 服用開始日と終了日
- 休薬期間と次回受診日
- 腎機能と直近の変化
- 下痢・口内炎・発熱・食欲低下
- 流涙などの眼症状
- 飲み忘れと残薬
- フッ化ピリミジン系薬・フルシトシンの併用
前回の処方と日数や用量が変わっている場合は、「減量された」「休薬期間が延長された」と決めつけず、その理由を確認することも重要です。

フォローアップで聞きたい質問例
患者さんへの電話や次回来局時には、次のように具体的に質問します。
「エスワンは何月何日から何日まで飲む予定ですか?」
「飲み忘れた日はありませんでしたか?」
「下痢は普段より何回くらい増えましたか?」
「口内炎で食事や水分が取りにくくなっていませんか?」
「発熱、息切れ、乾いた咳はありませんか?」
「涙が増えたり、目がかすんだりしていませんか?」
「残っているエスワンは何錠ありますか?」
「副作用はありませんか?」という質問だけでは、患者さんが症状を副作用だと認識していない場合に拾えません。
症状名と生活への影響を具体的に聞くことがポイントです。
病院へ情報提供したい内容
トレーシングレポートなどで病院へ報告する場合は、症状の有無だけでなく、できるだけ定量的に記載します。
記載例
S-1服用開始後から水様便が1日4~5回みられています。通常は1日1回です。食事量は通常の半分程度、水分摂取も低下しています。発熱はありません。脱水および腎機能への影響が懸念されるため、継続可否についてご確認をお願いいたします。
そのほか、
- 症状が始まった日
- 服用何日目か
- 1日の症状回数
- 食事・水分摂取量
- 体重変化
- 服薬状況と残薬
- 支持療法薬の使用状況
- 患者さんが希望している対応
まで記載すると、病院側も判断しやすくなります。
まとめ
S-1(エスワン/ティーエスワン)は、さまざまながんに使用される代表的な経口抗がん剤です。
「4週間服用・2週間休薬」が基本として知られていますが、実際のスケジュールは、がん種や併用レジメンによって異なります。
保険薬局では、次の点が特に重要です。
- 服用期間と休薬期間を治療計画と照合する
- 腎機能低下と脱水に注意する
- 下痢、口内炎、発熱、食欲低下を具体的に確認する
- 流涙や息切れも見逃さない
- 他のフッ化ピリミジン系薬との重複を確認する
- 飲み忘れや嘔吐時に追加服用しないよう説明する
- 症状を定量化して病院へ情報提供する
経口抗がん剤は、患者さんが自宅で服用するからこそ、保険薬局で確認できることがたくさんあります。

処方箋から服用スケジュールを読み取り、患者さんの生活の中に現れた小さな変化を拾うことが、安全な治療継続につながると考えます。
FAQ
S-1とティーエスワンは同じ薬ですか?
ティーエスワンはS-1の先発医薬品の商品名です。一般に「S-1」「エスワン」と呼ばれます。後発医薬品もあります。
S-1は必ず4週間飲んで2週間休みますか?
単剤療法では4週間服用・2週間休薬が基本ですが、がん種や併用レジメン、患者さんの状態により異なるスケジュールもあります。
飲み忘れた分を次回にまとめて飲んでもよいですか?
一度に2回分を服用してはいけません。通常は飲み忘れた分を飛ばし、次回から通常どおり服用します。個別の指示がある場合はそちらを優先します。
服用後に吐いた場合、もう一度飲みますか?
自己判断で追加服用しないことが基本です。嘔吐した時刻などを記録し、医療機関や薬剤師へ相談してください。
腎機能が低下していると、なぜ注意が必要ですか?
ギメラシルの排泄が遅れ、5-FUの血中濃度が上昇して、骨髄抑制や下痢、口内炎などが強く現れる可能性があるためです。
S-1とカペシタビンは併用できますか?
いずれもフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬であり、併用は禁忌です。切り替えの場合も、投与間隔を処方元へ確認します。


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